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【RE-edit】 春の野を行く - 村松健 【インストルメンタルな名曲】

【RE-edit】 【インストルメンタルな名曲】

春の野を行く







1983年9月6日(火)

中学3年になってから、ずっとなんとなく気にはなっていたんだ。

窓際のほうの席に座って、静かに海を見つめている少女のことを、――

クラスメイトになってから、すでに数ヶ月が経つというのに、ボクはいまだに教室で一度も彼女と話したことがない。羽衣のように透明で、せつないほどに孤独なオーラを身に纏(まと)う、その少女の名前は「李メイ」といった。

まるで氷のように青白く孤独色した情感を、絹糸の香水でも振り撒くようにし、メイは、いつだってうっすらと、みずからの周辺に漂わせていた。その冷たさは絶えず均一に保たれていて、時折、彼女が微笑んだとしても、氷晶の灯火のような、その危ういほどの儚(はかな)さが、平凡な日常の空気と交わることなどは一度もなかった。けれど、いつしかボクは惹かれていたんだ。知性にも思えるような、そんなメイの哀しげな冷たさに――


1984年2月6日(月)

きのうまで、快晴だったこの街を、仄(ほの)かに白い雪が舞う。普段、教室ではかけてない銀色の眼鏡のふちを左手の人差し指で少し上げ、いまさっきボクが弾いたピアノの旋律を、ずっとメイは楽譜に起こし続けている。彼女の真剣な眼差しを、時折、横目で見つめては、ボクはふたたび窓の向こうの北風に目を向ける。

もしかしたら気遣っているのだろうか? 
広い音楽室の、前方の窓際に置かれたグランドピアノの前に、こうしてボクたちが2人並んで座っているだけで、ほかの部員たちの姿は見当たらない。いつもは、この場所で練習している吹奏楽系の音楽部の生徒たちも、どうやら部長の細野にいわれたらしく、今日だけは体育館で練習しているようだ。あの倉田ユカリでさえも、隣の音楽準備室から、まだ一度も顔を覗かせてはいなかった。

おもえば去年の9月、たまたま帰り道で一緒になったユカリに誘われ、ボクは、はじめてメイの家へ行った。――そして、なぜかピアノを弾かされることになったんだ。

あのときのボクの心は、マレンに贈った曲の旋律のなかへと溶け入って、知らずに彼女の面影を辿っていた。やがて、マレンが嬉しそうに心のなかで微笑んだとき、指先は鍵盤の上で「ピタリ」と動きを止めたんだ。――

ユカリやメイと会った日から、半年近く過ぎている。けれど、それまで過ごした2年半の学校生活と、あの日以降、過ごしてきた濃密な日々とでは、「まったく別の人生を歩んでいるのではないか?」と、いった錯覚すら覚えてしまうほどに、……それくらい、ボクという実体そのものをはじめとし、日常をつかさどる、ありとあらゆる構成因子が、劇的なまでに変化していったのだ。

「なんか、考えてみれば、こうして李さんと2人きりになることって、おとといまで、ほとんどなかったんだよね」

ボクの誕生日でもある、おとといの夕方、音楽準備室でボクはメイと2人きりで会っていた。そして、柔らかく射し込む夕陽のなかで、そのときはじめて彼女から告白のような言葉を聞いたのだ。

メイは譜面を書く指先を止め、静かに振り向くと、

「いわれてみれば、たしかに、……そうかもしれないわね」

と、いって、眼鏡のふちを少し上げながらボクの右側でささやく。

「まぁ、いつも倉田さんが一緒にいるからね。あっ、別に悪い意味じゃなくってさ」

ボクはそういいながら、鍵盤を軽く押さえた。

メイは「フフッ」っと、小さく笑い、そして小声でささやいた。

「ユカは、シーナ君のこと大好きだからね」

「えっ?」

ボクは、おもわずメイを見つめる。

メイは眼鏡を外し、瞳を細めて窓の外を眺めた。

「まぁ、ユカの場合は、恋愛感情というよりも、信頼っていうような感じなんだと思うの。ユカはね、シーナ君のことを心から信じているから」

メイは、灰色の北風に揺らぐ細雪(ささめゆき)を見つめ、そうつぶやくと、ボクのほうへ、その涼やかな視線を向けた。

「シーナ君はね、自分では気づいていないかもしれないけれど、まわりのすべての人に対して、同じくらいの思いやりを持っている人なんだと思う。だから、きっと、みんなシーナ君を信じてついてきたんだと思うの」

メイは、ボクを見つめたまま、さらに続けた。

「多くのひとがね、ひとつの目的に向かうためにはどうしても必要なものがある。きっとそれはね、疑うことなく『その目的が正しい』って、みずからが信じる気持ちと、そして、なによりも『その目的が正しい』ってことを、信じさせてくれる誰かの存在なんだと思うの」

「みんな、オレのことなんて信じてるのかね?」

と、ボクは、少しだけおどけながらいう。

メイは、微笑んだままつぶやいた。

「ワタシにはね、ずっと前からわかっていたの。まだシーナ君と一度も話したことのないくらい、ずっと前から、ね。たぶんユカから聞いたことあるんでしょ? 『いつも自分のことよりも、誰かのことを考えているみたいな人』――そうワタシがいっていた、って」

――ずっと気にはなっていたんだ。「どうしてメイは、そう感じたのだろうか?」って、ことを。

「オレって、なにかしたっけ? 李さんが、そういうふうに思うようなことなんて」

ボクは、おもわずメイに問いかけた。

「シーナ君は、全然覚えてないかもしれないけどね」

メイは、また少しだけ笑って、最後にこういったんだ。

「一度も話したことなんてなかったけどね、でも、教室で何度もワタシたち、目が合ってたんだよ。一瞬だったけどね。――そのとき、ワタシを見つめるシーナ君の目がね、なんだかすごく優しかったの。まるでワタシのことを優しく心配してくれているみたいに感じられたの。――本当に優しい人っていうのはね、いつだって心で何かを見つめようとする。だからね、その人に見つめられただけで、その人の心のなかが少しだけわかる。その人がなにもいわなくても、『なにを思ってるのか』ってことがね、言葉以上に相手には伝わるものだと思う」

窓の外の雪は、少しだけ大きな結晶となって、中庭へと静かに降り積もってゆく。メイに寄り添うようにして、少しだけ恥らいながら、ボクはふたたび鍵盤を押さえ始めた。



【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】




【2012.04.23 記事原文】

だいぶ昔のCMで、シンクロの小谷実可子さんの美しい演技をバックに流れた曲が、
この村松健氏の「春の野を行く」でしたね。


※まぁ、あまりウエディングで使える楽曲ではない・・・ですがね・・・
一応、「両親の感謝の手紙~」の候補曲でした(笑)


単純なメロの繰り返しなんですが、刹那さがものすごく心に伝わってきます。



春の野を行く - 村松健
アルバム『夏のぽけっとに』 1986年




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