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未来に残したい洋楽&邦楽の名曲

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【Re-Edit】 スモーク・オン・ザ・ウォーター - ディープ・パープル 【70年代ロック】

【Re-Edit】【70年代洋楽ロックの名曲】


Smoke on the Water





Epi-18


 1983年4月19日(火) 中学3年の一学期
 夕方の午後3時過ぎ

 放課後、――
 ボクは音楽室へ向かっていた。校舎を繋ぐ三階の渡り廊下から西のほうを眺めてみると、海沿いの街並みが一望に見渡せる。そのずっと地平の先、箱根の山々の向こうには、ほぼシンメトリーな美しいシルエットを描いた富士山が、まだ残雪を冠したままにそびえていた。富士山はボクの家のベランダからも見えるけど、駅の北口にいま建設中の商業施設が完全にできあがる頃には、ほとんどがその建物の陰に隠れてしまうことだろう。

 さっきまで小雨がパラついていた渡り廊下を通り抜けてく夕風があまりに清らかで心地いい。この吹き抜けの通路は、ボクがこの学校で、唯一「好きだ」と思える場所かもしれない。――

 敷地のなかに三棟連なって並び建つ、一番北側の校舎三階に音楽室はある。一度だけ中1の音楽の授業で合唱曲を歌わされたことはなんとなく覚えているが、それ以外でこの部屋に行ったという記憶はない。そもそも中学時代、ボクがなにも部活動をしてなかったせいもあるんだろうけど、文化系のクラブに所属している部員のほか、放課後、この北館に用事がある生徒なんてほとんどいなかった。

 音楽室の入り口扉のガラス窓からなかをのぞき込む。数名、部員らしき学生の姿が見える。どうやら彼らは吹奏楽系の楽器を手入れしているようだった。けれど、竹内カナエの姿はそこにはない。と、そのとき、隣の音楽準備室のほうからアコースティックギターの音色が聴こえてきた。ボクは音楽準備室のほうへと向かい、ノックもせずに横開きの扉を開け放つ。

 が、あまりにレールのすべりがよすぎたせいで、鉄製枠に扉の縁がおもいきりぶち当たり「バーン」と大きな音を、ひとけのない北館三階の廊下じゅうに響き渡らせる。

(これじゃぁ、まるで道場破りか討ち入りだわな、……)

 顔は知っているけど名前までは知らない同学年の男子生徒ら数名がギターを手にしたままボクのほうを振り返り、一斉に驚きの表情を浮かべた。彼らと談笑していた竹内カナエも、思わず、

「えっ、どうしたの? シーナ君」

 と、いきなりボクが現れたことに少し驚く。

「まぁ、……なんとなくね。どんなとこなのか見たくなってさ」

 部屋へ入ると、ボクは音楽準備室のなかを見まわしながら彼女に答えた。黒い布カバーに包まれた吹奏楽系と思われる楽器に混じって、数台置かれた大きなアンプの隣にエレキギターやベースが数本づつ並べられており、中央付近にはドラムセットまで置かれている。まるで、いますぐにでも、この場でライブができてしまえそうな設備が整っていた。

「へぇ、この学校ってドラムまであったんだ」

 ドラムセットの前で立ち止まり、ボクは思わず感嘆の声を漏らした。

「あぁ、なんだか、むかしからあったみたいよ。でも最近、うちの部員にもほとんど叩ける人がいないんだけどねぇ」

 と、カナエはアコースティックギターをひざに抱えたままで、静かに答える。

「ふーん、すごいんだねぇ」

 ボクはハイハットを人差し指の爪先で何度かはじく。
 そして部屋の隅へと歩いていき、何本かあるうちのエレキギターのなかから一本引っ張りあげる。それはかなり年季の入った『リッケンバッカー』だった。

「もし弾きたければ弾いてもいいよ」

 座ったままでボクにピックを差し出してカナエは微笑む。オープンで何度かダウンストロークしてみると、どうやらチューニングは狂っていないようだ。ようやくボクの存在にも慣れてきたのか、ほかの男子生徒たちも円陣を組むよう椅子に座り、お互い顔を見合ってタイミングを計り、ギターで曲を弾きはじめた。

 カナエはちょっと前傾姿勢で椅子に座って少し足を開き気味にし、ひざのうえにギターを抱えていた。長いストレートの前髪を右のほうだけ垂れ下げながら、耳のうしろにかけた左の黒髪越しにクールな一重の視線をギターのネックあたりに向けている彼女。その姿が、なんだかやたらと様(さま)になっていた。――

 どうやらビートルズの「イエスタデイ(Yesterday)」をギターの重奏用にアレンジし、彼らは演奏しているようだ。カナエはリードギターでメロディパートを弾いていたが、出だしの数音、アルペジオで弦をはじいただけですぐにわかった。彼女は本当に驚くほどギターが上手い。ボクは腕を組み、しばらく彼らの演奏に聴き入っていた。――

 夕暮れを舞う浜風が、また降り出した春雨(しゅんう)の微粒を窓のほうへと吹きつける。「パチパチ」と、ガラスをはじく雨粒の微かな律動にボクは目をやる。

「シーナ君って、なにが弾けるの?」

 音合わせの休憩中、カナエが笑って話しかけてきた。

「あぁ、たぶん指がもう動かないんだけどね」

 手にしたリッケンバッカーで「スモーク・オン・ザ・ウォーター(Smoke on the Water)」のイントロリフを弾きながらボクは照れ笑いを浮かべた。急にカナエは椅子から立ちあがり、部屋の隅に立てかけられてた黒いケースを手に戻ってくるなり、なかからベースを取り出して、微笑みながらボクを見つめた。

「シーナ君、ちょっとこっちにきて」

 彼女は棚からシールドケーブルを二本選ぶと、巨大なアンプが並べられている窓際のほうへとボクをクールな眼差しで誘(いざな)う。そしてシールドをギターとベース、それぞれに接続してから入力プラグをマーシャルアンプのインプットジャックへ差し込んだ。

 電源を入れるとすぐ、「ヴゥーン」と、低周波の低い通電ノイズが唸りはじめる。左右の鼓膜を小刻みに震わされ、「これはきっと相当なワット数なんだろうな」と思いつつ、ボクは巨大アンプの下に組み込まれたスピーカーを眺めた。

「さっきの、もう一回弾いてみて」

 振り向くとボクを見つめてカナエはいった。

「えっ? 『スモーク・オン・ザ・ウォーター』?」

 思わず聞き返す。

「そう。もう一回弾いて」

 そうカナエに促され、ボクはふたたびリッケンバッカーを手にすると、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」のイントロ・リフを弾きはじめた。――瞬時にマーシャルの巨大アンプは、部屋の空気を「ブワッ」と揺さぶり、凄まじい音圧で一気にボクの弾いたギター音を外へと押し出す。やがてカナエのベースラインがボクのリフに重なってくると、重低音が弾丸みたいに背中を叩いていった。――

 その残響が音楽準備室の窓ガラスを「ビリビリ」揺さぶる。――ボクの家にあるポータブルアンプとは、まったくもって次元の違う凄まじいほどの出力、もはやこれは単なる音ではない。音振動の衝撃波にカラダを直撃されているような感覚だった。

――――これが、……ライブの音なのか、―――― 

 ボクは、大音量で室内の空気を揺さぶり続けるこの巨大アンプの前に立ち、それまで感じたことのない快感と興奮に酔いしれていたんだ。

「じゃぁ、オレがリズム入れようかな?」

 そういって、ひとりの男子生徒がスティックを手にしながらドラムセットの丸椅子に腰かける。ボクらはふたたびイントロから「スモーク・オン・ザ・ウォーター」をセッションしはじめる。ボクの奏でるリフに、イントロ3ターン目で16ビートのハイハットが刻み込まれ、4ターン目でスネアの打音が響き出す。そして5ターン目からキックとカナエの重いベースラインが乗っかってきた。――

 それはものすごくシンプルな音だった。けれど、それは紛れもなくバンドサウンドだったんだ。実際に大音量で演奏してみれば誰でも絶対にわかるはずだ。たしかに、音楽に言葉なんていらないんだな。って、――

 けれど、ボーカルが入るAメロ直前になって、ギターを弾くボクの手がふと止まる。

「オレ、……この曲ってイントロしか知らないんだよね。つうか歌詞も知らないし」

 カナエに向かってそういうと、

「まぁ、それが普通なんじゃないの?」

 と、カナエはクールな一重を薄く細めて「フッ」と笑った。――――




【2012.03.14 記事原文】

イマサラながら感はありますが、
まだ当ブログで一曲も選曲していなかったので、
まとめてディープ・パープルを数曲チョイスしときます。


エレキフリークじゃなくとも必ず一度は弾いてみたであろう
世界で最も有名なギターフレーズ「Smoke on the Water」♪
ロックのビギナーバンドにとっては入門書みたいなもんすかね。


ハードさを追求してない「だらだら感」が良いのかなぁ?


まぁ、本当にイマサラですけどね。。。
でも・・・忘れた頃にふと聴くと、相変わらずクールです!!







Smoke on the Water - ディープ・パープル
6thアルバム『Machine Head』 1972年
アルバムお薦め度「☆名盤です☆」



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