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未来に残したい洋楽&邦楽の名曲

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【Re-Edit】 What A Fool Believes - Doobie Brothers 【70年代ポップス】

【Re-Edit】【70年代洋楽ポップスの名曲】


What A Fool Believes








1983年8月7日(土)

夕方4時過ぎ、――

ボクは、ベッドの上で目覚める。きっと、海のほうで打ち上げられた花火の音が南風のなかに聴こえたせいだろう。ステレオのほうへ目をやると、ずっと電源が入ったままだった。どうやらレコードをかけっ放しで眠ってしまったらしい。さっき眠る前に聴いてたのは、ドゥービー・ブラザーズのアルバム『ミニット・バイ・ミニット(Minute by Minute)』――

マイケル・マクドナルドの歌声にはいまだに馴染めなかったけど、このアルバムのオープニングトラック「ある愚か者の場合(What a Fool Believes)」は、なんだかすごく気に入っていた。グラミー賞の最優秀レコード賞と最優秀楽曲賞をダブル受賞したこの上質でポップなメロディラインが、どういうわけか、やたらアメリカという国の風景や匂いをボクの心に思い浮かばせるんだ。

――ふと、ボクを呼ぶ母親の声がした。

どうやら佐藤マキコから電話がかかってきているらしい。ボクは下の階へと降りていき、ダイニングで受話器を手にする。

「あっ、カミュ! 夏休みにどっか行った? ちゃんと元気にしてるの?」

マキコは、そういって話を切り出す。

「どこにも行ってないねぇ、……まぁ、ほとんど毎日家にいるけど」

と、ボクは寝ぼけながら、そんなふうに棒読みで答える。

「あのさぁ、今日ってこれから会えないかなぁ? 中学校の近くの公園で盆踊りがあるでしょ? よかったら一緒に行かない?」

そういってマキコはボクのことを誘う。

「別に行ってもいいんだけど、――」

と、答えたものの、なんとなく人混みが面倒くさかった。

それに、なんだかマレンにも申し訳ないような気がしたんだ。

きっと、彼女とはもう会えないんだろうとは思うけど、2週間前、あんなふうにマレンを傷つけてしまったくせに、すぐさま、ほかの女の子と遊びに行くってことに対しては、なんとなく心のどこかに躊躇(ためら)いがあった。

「たまには外に出たほうがいいよ。それに、もうそんなに暑くもないからさ」

マキコはそういって、どうにかボクを外へ連れ出そうと説得しはじめる。

マレンにすなまいと思う気持ちとは別に、マキコに対する申しわけなさもだんだんとボクの心に生まれていく。去年も一度、マキコからの誘いを断ってしまっているし、今年に関しては、それを断る理由も、あるような――ないような、至極曖昧なものでしかない。

「わかったよ。じゃぁ、どこに行けばいいの?」

ボクは、そういってマキコと会うことにしたんだ。――

たしかに外に出てみれば、マキコがいったとおり、それほど蒸し暑さは感じられなかった。

赤橙(あかだいだい)に染まりゆく夕空に揺らめきただよう夏雲は、淡い青紫色の柔らかな煙の結晶のように、この街の上空を幻想的な色彩で覆っている。

ボクはだんだん薄暗くなっていく、いつもの通学路である細い路地裏を歩き、建ち並ぶ家々の屋根の隙間から暮れゆく空を見上げた。普段はさほど人通りも多くないこの道も、さすがに今日は家族連れや浴衣を着た若いカップルたちの姿が目立つ。

けれど道幅が狭いくせに、やたらとバイクや車が前後から通り過ぎてくものだから、そのたびに歩行者たちの歩みは止められた。

そんなふうに何度も立ち止まる人波の歩調に合わせるようにし、ボクも流れるままに海のほうへと向かって歩く。やがて路地の小さな交差点の角までくると、車椅子に乗った少女が電柱の影に隠れているのが見えた。なにげなくその子のほうへと目を向ける。一瞬、ボクと目が合ったけれど、慌ててその子は視線を逸らした。

(あの子って、たしかウチの中学の3年生だったよな。誰かのことを待ってるんだろうか?)

そう思いながら、ボクはふたたび人波を大通りのほうへと向かっていった。――

海岸線沿いに建つボクらの中学のほうへと伸びる松並木の通りと、この街の東西を繋ぐ大通りが交差するその角に、ずっとむかしから空き地になったままの広大な広場がある。ボクはマキコと、その交差点で待ち合わせをしていた。

彼女がくるまで、なんとなく広場のまわりを歩いてみた。敷地の外周を囲うように提灯が吊り下げられ、すでに燈色(だいだいいろ)のあかりが灯されはじめている。その提灯の儚(はかな)げな灯りが、松並木の通りをほんのりと照らし出す。その淡い吐息のように「めらめら」と、力なく揺れ動く灯火(ともしび)の脆(もろ)さが、涼やかな夏の夜風と相まってなんだかやけに刹那かった。

しばらくすると、白っぽいワンピース姿のマキコが、ボクのほうへ手を振って駅のほうから歩いてくるのが見えた。ボクも、少しだけ彼女に向かって右手をあげた。

それとほとんど同時に、交差点の向こう側から青信号を渡ってくる、さっき見かけた車椅子の女の子の姿が見えた。何気なくその子のほうを振り向くと、彼女の車椅子を、ボクのクラスメイトの李メイが押していることに気がついた。

(あの子って、李さんの友達だったんだ。――)

3年になってからすでに4が月過ぎているけれど、ボクは、まだ教室でメイと話したことは一度もない。いつだって、メイはどことなく近寄り難い、薄い氷のようなオーラを常にその身に纏(まと)わせていた。少なくとも、これまで彼女がこの学校のなかで、心から笑っている姿なんてものは、まったく記憶にない。

せいぜい休み時間にマキコたちと談笑しているとき、口元を微かに微笑ます程度だったんだ。――

けれど、いま横断歩道を渡ってきているメイの表情は本当に優しげで、決して作り物ではない純粋な笑顔を湛え続けている。メイがあんなふうな顔をして笑えるんだということに、正直ボクは驚いていた。

やがてその車椅子の少女がボクの前を通り過ぎるとき、なんとなくメイのほうを振り返って、笑いかけたように思えた。メイは「チラッ」と、ボクのほうを横目で見ると、少しだけ恥ずかしそうにうっすらと、そのしなやかな口元に笑みを浮かべ、なにもいわずにそのまま通り過ぎていった。ボクが2人のうしろ姿を眺めていると、少し遅れてマキコがやってきた。

「久しぶりじゃん! カミュ!」

大きな薄緑色した瞳でボクを見つめ、マキコは嬉しそうに笑った。

「あぁ、――あっ、そういえば、いまさっき、李さんが通ったよ」

ボクは、マキコにメイがきていることを告げる。

「じゃぁ、あの子も一緒だった?」

マキコは、そう訊ねる。

「あの子って? 車椅子の子?」

と、ボクは何気なく問い返す。

「そう、『ユカリ』っていうみたいなんだけどね。――メイのね、小学校のときからの親友なんだって」

マキコの言葉を聞きながら、ボクはメイたちが広場のなかを踊りやぐらのほうへ歩いていくうしろ姿をネットフェンス越しに見つめた。

(李さんの親友、――)

ボクには、2人の関係はよくわからなかったけれど、さっきメイが見せていた純粋な笑顔を思い出し、きっと「メイは唯一、そのユカリって子にだけは心を許しているんだろうな」って、なんとなく勝手に理解する。

気づけばマキコはボクの左腕に、白くて細い右腕を絡ませていた。

ウチの中学校のヤツらも大勢きてるんだろうとは思ったけれど、なんだか別にどうでもよくなった。ボクは、そのままマキコに腕を引っ張られ、すでに踊りがはじまっている広場のほうへと連れて行かれた。見上げた湘南の空はすっかり日も暮れ落ち、時折、吹き抜けてゆく少し強い南風が、踊りやぐらから放射状に吊るされた提灯の灯りを「ゆらゆら」揺らし続けてた。



【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】




【2012.03.26 記事原文】

そういえば。。。

ここまで70年代のロックバンドを紹介してきたが、
ドゥービー・ブラザーズは、まだ一曲も無かったなぁ・・・


ということで!
昔からのドゥービーファンは絶句したであろう
超ポップな大ヒットアルバム『Minute by Minute』から、
マイケル・マクドナルドがケニー・ロギンスと共作し、
グラミー賞最優秀レコード賞などなどを受賞した
「What A Fool Believes」をチョイスです♪


個人的にマイケル・マクドナルドは嫌いなんだけどねぇ。。。
やっぱ気持ちいい曲っすよね!






What a Fool Believes - Minute By MinuteWhat A Fool Believes - ドゥービー・ブラザーズ
8thアルバム『Minute by Minute』 1978年
アルバムお勧め度「持っていても良いでしょう」



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