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未来に残したい洋楽&邦楽の名曲

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【Re-edit】 Melody Fair - Bee Gees 【70年代ポップス】

【Re-edit】 【70年代洋楽ポップスの名曲】


Melody Fair






1983年8月7日(土)


2週間前、――
あの鎌倉の海岸で、ボクは川澄マレンと別れた。いや、きっと正確にいうならば、いったんボクたちは別れたんだ。

あの日、大きな瞳を涙で潤ませながら、マレンはボクを見つめて最後にいった。
「――いままでぜんぜんカミュちゃんの気持ちなんて考えてこなかった。勝手にカミュちゃんもアタシと同じ気持ちなんだろうなって思ってた。――ごめんね。だからカミュちゃんの気持ちが、もしアタシとはぜんぜん違うんならば、もう迷惑をかけるのはやめるよ。だからカミュちゃんとは、……お母さんが元気になるまでは、とりあえずもう会わない。――」
って、――。

それからすぐ夏休みに入ったけれど、この一週間、ボクは二階の部屋からは一歩も出ていない。開け放たれた南側の窓からは蝉たちの輪唱が、絶え間なくベッドの上へと降り注ぐ。こないだまではうるさくて、とても昼寝なんてしてられなかったけど、だんだんボクはその鳴き声にも慣れはじめてきている。――

よく聴けば、そこには3種類くらいの泣き声が混じっていた。
「ジィー」と、高圧電流が放電するかのように、絶えず一定のノイズを発しているアブラゼミ、潰れたサイレンのように「ヴィーン、ヴィンヴィン」とアクセントをつけて、その鳴き声を変化させるミンミンゼミ、抑揚のある鈴の音のような高音を鳴り響かすヒグラシ。――ボクはベッドの上で天井を見上げ、盛夏がふたたびこの街に訪れたんだということを、そんな蝉たちが震わせ続ける湿った空気のなかに知る。


――まだ中学2年だった去年の夏、マレンがはじめて、このボクの部屋へ遊びにきたとき。
北側の窓の向こうに広がる広大な雑木林を指で差し、ボクは彼女をからかった。

「そういえばさぁ、こないだ窓のとこにリスがきてね、松の実をカジってたんだよ」
なんでそんな嘘をついたのかよく覚えてないけど、とにかくそんなつくり話をしてしまったんだ。

たちまちマレンは、大きな薄茶色の瞳を輝かせ、
「えぇっ! リスがいるの? アタシもリス見たい」
そういって、北側の窓のほうへ歩いていくと窓のフレームにひじをつき、雑木林のほうを眺めはじめる。

てっきり少し時間が経てば諦めるもんだとばかり思ってたけど、彼女は一向にその場を離れようとはしなかった。やがてボクの心に、だんだんと罪悪感が芽生えていった。――けれど、どうしても「ウソだよ」と、そのときマレンの背中にに告げることができなかった。

しばらくしてから、マレンは、ボクのほうを振り返ると、
「窓のとこにさぁ、松の実を置いとけば、リスくるかなぁ」
嬉しそうに、そう訊ねてきた。ボクは、「どうかねぇ?」と、ひと言だけ答える。
やはり、どうしても「嘘だった」と彼女にはいえなかったんだ。――

気づけば、どうやらさっきからFM番組では「ビージーズ特集」をやっている。
ずっと「恋のナイト・フィーバー(Night Fever)」や「ステイン・アライヴ(Stayin' Alive )」などのディスコナンバーが立て続けにかかっていたが、CMがあけると同時に「ラブ・ユー・インサイド・アウト(Love You Inside Out)」の、シックなイントロが流れはじめる。

この曲は、ボクが小学校の頃、なにかのテレビコマーシャルで使用されていたんだけど、なんだかメロディがものすごくカッコよく思えて、この曲が収録されたアルバム『スピリッツ ハヴィング フロウン(Spirits Having Flown)』をしばらくしてから買ったんだ。まぁ親に買ってもらったんだけど。でも、考えてみれば、ボクが小学校時代に自分で買った洋楽作品って、たぶんこのアルバムくらいだったと思う。

――マレンは、相変わらず窓の向こうを眺めている。
膨らんでゆく小さな罪の意識を抱えたまま、ボクはただ、彼女の背中を見つめていた。
奇跡でもいいから、リスが現れてくれることをずっと心で願い続けながら。……

やがて、マレンはふたたびボクのほうを振り返り、少しだけがっかりした様子でつぶやいた。
「もしかしたらさぁ、まだ暑いから出てこないかもね。リスちゃん、――」
ボクはソファから立ち上がり、彼女のひじのあたりをそっと引っ張った。驚いたマレンの瞳のなかに、ボクは言葉を投げかける。

「じゃぁさぁ。いまから北口のペットショップ見に行こうか? リスは売ってないかもしれないけど、たしか、うさぎとかハムスターは売ってたでしょ?」

すると、マレンはふたたび、その大きな瞳を輝かせる。
「うん! 行きたい!」

ボクがステレオのアンプの電源を消そうとしたとき、スピーカーから映画『小さな恋のメロディ』の主題歌、「メロディ・フェア(Melody Fair)」が流れはじめた。

「あぁ、アタシこの曲知ってるよ。すごく可愛い曲だよね」
そういって、マレンが笑った。

ボクはアンプの電源を押す手を止めて、床の上へと座り込む。
気づけば、マレンもボクの左側にひざを斜めにして座り、横目でボクを見つめた。
やがて「メロディ・フェア」がゆるやかにフェードアウトしていったとき、窓の外で蝉たちが大きな声で鳴いていることにボクはようやく気がついた。――

去年マレンが、いもしないリスの姿をずっと探していた北側の窓のほうに目を向ける。
あの日の小さな嘘は、きっとボクがマレンについたはじめての嘘で、……先月、鎌倉の海で吐き出した言葉のすべては、間違いなくボクがマレンに告げた最後の嘘、――ボクと彼女、2人ともを同時に哀しませ、そして苦しませ続ける、どちらにとってもなんら意味のない、もっとも愚かしい嘘だった。



【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】



【2012.03.23 記事原文】
さて。
何だかんだ言っても、ビージーズといえばこの曲でしょう!
1971年公開映画『小さな恋のメロディ』の主題歌「Melody Fair」♪

アレンジ変えたら、ものすごくサイケな曲になりそうだが、
まぁ名曲に間違いない!


そんなこんなでビージーズは、この辺で…






Melody Fair - ビージーズ
オリジナルサウンドトラック『Melody (小さな恋のメロディ)』 1971年


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