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未来に残したい洋楽&邦楽の名曲

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【Re-Edit】 Honesty - Billy Joel 【70年代バラード】

【Re-Edit】【70年代洋楽バラードの名曲】


Honesty






1983年9月13日(火)


すべてのことを観念するよう、自嘲(じちょう)気味に吐き出されてくミチコの儚(はかな)いため息が、ほんのりと風に交わるその様(さま)をボクは見ていた。

すると、メイの隣で高欄(こうらん)の丸太に寄りかかっていたショウカが、少し泣き腫らした大きな瞳をミチコのほうへと向ける。――そして静かにささやきかけた。

「こないだ、シーナ君が谷川たちのことをやっつけたでしょ? だからもう、いままでみたくアイツらがミチコを教室でイジメたりすることもないんじゃない? だとすればさぁ、それだけでもきっと少しは変わると思うよ。ミチコがそうやって『すっかり慣れてしまってきた日常の風景』がね。これから少しずつ変わっていくと思う。――」

「ワタシの日常の風景が、……変わる?」

つぶらな瞳でショウカを見つめ、ミチコは独り言のようにそうつぶやく。しばらく黙り込んだまま、彼女は小さくカールした髪を肩のあたりでつまんでいたが、やがて「ポツリ」と、最後にひと言ささやいた。

「変わったらいいな。――本当に」

おかしないい方だけれども、いまこの回廊に座り込んでる5人の、ボク以外のみんなは、過去にイジメを受けてきた2人と、現在進行形でイジメを受け続けている2人とにちょうど分かれて座っている。ボクは林ショウカ以外の李メイ、田代ミツオ、小山ミチコの3人とは、中3で同じクラスになってから、この半年ものあいだ、ほとんど会話を交わした覚えなどはない。

けれど唯一、教室内で何度も話したことのある林ショウカと、今日はじめて一緒に過ごしてみて、彼女が抱え持つ心の複雑さをつくづく思い知らされたんだ。――おそらく彼女はむかしから他人のことを慈しみ、そして思いやることのできる優しくて清らかな心を持っていたのだろうとボクは勝手に判断している。

けれど、それに二律背反し、時折、どこかしら他人を見下し蔑(さげす)むような、すさんだ感情を心のすき間に浮かびあがらすことがある。

そのどちらの自分も、肯定も否定もできないままに、ショウカの心のなかでは絶えず、本来あるべきピュアな自分と、いくつもの辛い現実によってあとから生み出された、歪んだ別の人格とのあいだでせめぎ合いや葛藤が繰り返されてるのだろう。――

すでにショウカはそのことに、みずから気づいているのだ。――にもかかわらず、よこしまな感情をすべて消し去ることができないのは、彼女がそれほどまでに深い傷を心に背負ってしまっているせいなのかもしれない。

いずれにしたって、そのどちらの自分もショウカは正直に、あっけらかんと表へ出しちゃうものだから、よりいっそう捉えどころのない性格を、多くの人に印象づけてしまっている。――

なんとなくそんなことをぼんやり考えているうちに、やがてショウカが寄りかかる高欄の向こうから、バスガイドに先導された団体客たちが「ゾロゾロ」近づいてくるのが見えてきた。

「ぼちぼちこの寺も混んできたみたいなんで、そろそろ移動するか? きっとあの連中も、ここにのぼってくると思うからね」

と、ボクは石畳を迫りくる長い行列を見つめながらいった。――

楼上(ろうじょう)の二階から、回廊をうしろへまわり込み、狭くて急な階段を降りきると、山門のすぐ脇に吊り下がってる古さびた「梵鐘(ぼんしょう)」に目が止まる。ボクたち順々に靴を履くと、そちらのほうへと近づいていった。

「これって国宝なの?」

手前に掲げられた立て札を読みながらショウカがそういう。

そこには、一番上に横書きで「梵鐘(ぼんしょう)」、そして二行目に「重さは2.7t 国宝」と記されている。

「なんか、あまり目立ってねぇな。一番重要な『国宝』っていう部分が、――それになんだか書き方おかしくない?」

そういって、ボクは、まだらに黒ずむ青銅色の吊り鐘を見つめた。

「う~ん、これって、たしかに古いんだろうけどさぁ、だったら、絶対に、いまの山門のほうがスゴいよね。でも、あっちは、『重要文化財』なんでしょ? なんでかな?」

そういって、ショウカは「クスッ」と笑う。

やがて、ボクたちは参道を山へと向かって歩きはじめた。建長寺は、この参道に沿って主要なお堂や社殿が配置されている。柏槙(ビャクシン)と、いう巨大な古木が参道両側の植樹帯にそびえ立つその正面には、石階段三段分ほど、「ぐるり」外周を石組みされた「基壇(きだん)」と呼ばれる基礎台座に、どっしり構える寄棟造(よせむねづくり)の仏殿が見えている。石畳の参道は、シンメトリーな輪郭を美しく纏(まと)う、その荘重な社殿によって行く手を塞がれていた。

上空からは太陽が、青銅色(せいどういろ)した屋根瓦と、社殿を支えるコンクリートの基礎台座の表面を、ムラなく白一色に染めあげている。開け放たれた仏殿の正面扉の向こう側には、漆黒の陰影が凛然(りんぜん)と揺らめくように漂っていた。

それらのコントラストにつくり出された明暗の境界に、ボクはふと、歴史の折り目を垣間見たような気がしたんだ。


【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】



【2012.03.22 記事原文】

ビリー・ジョエル1978年のグラミー最優秀アルバム賞受賞
の『52nd Street(ニューヨーク52番街)』から
誰もが知っているバラードナンバー「Honesty」をどうぞ♪


日本でのビリーの知名度は、
ネッスルのCMで使われたこの曲に拠るところが大きい。


なんなんだろうか?
この歌が放つ圧倒的に哀愁漂う空気感は。。。


名バラードは世にいくつもあるが、
哀愁を切実に痛感させるような曲は、
今でもなかなか出現していない。


当然ながら、ボクが最初に買ったビリーのアルバムも
『52nd Street(ニューヨーク52番街)』である。






Honesty - 52nd StreetHonesty - ビリー・ジョエル
6thアルバム『52nd Street(ニューヨーク52番街)』 1978年



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