QLOOKアクセス解析

未来に残したい洋楽&邦楽の名曲

70~80年代の洋楽&邦楽を中心に未来に残したい名曲&名盤を独自にチョイスするBlogです☆
未来に残したい洋楽&邦楽の名曲 TOP > スポンサー広告> 【未来に残したい日本の名曲】 > 哀しみと共に過ごす夜 > オリビアを聴きながら - 杏里 【バラードの名曲】

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

オリビアを聴きながら - 杏里 【バラードの名曲】

【邦楽バラードの名曲】


オリビアを聴きながら






浜野ナオとの『飲み友達』のような関係は、
なんだかんだで、すでに3年が経過しようとしている。

その間、ずっとボクには長年付き合っている恋人がいて、
そして、浜野ナオにはボクしかいなかった――


厳密に云えば、すでに『飲み友達』という言葉で、
僕たち二人のアンバランスな関係を定義することは、
もはや出来なくなってしまっているのだろう。

ただし僕自身、結婚をしていたわけでもなかったので、
世間的にいうところの「不倫」という間柄でもない。

しかし「気分」として、ずっとそういう意味合いをどこかに感じてはいる。
太陽の下を堂々と歩けないような感覚――
そんな後ろめたさが常に付きまとっていたことは確かだ。


ナオが中目黒に引っ越してから、早い時間に都内で飲んだあと、
ボクが彼女の家へ立ち寄る機会は、おのずと増えていった。
そう。後ろめたさを引きずりながらも、
僕にはそれを振り返ることなど出来なくなっていたのだ。

彼女と一緒にいるときに、彼女以外のものを見るような余裕――
そんなものは、だいぶ前に僕のなかから消えてしまっていた。

ナオが微笑んだときに漂わすメランコリックな物悲しさ。
それは、太陽の輝きではなく、朧(おぼろ)に輪郭を霞ませる、
月の淡い光が放つ青白い儚さのようだ。

どこまでも満たされることのない心の深淵のほうから、
遥か彼方に、ほんの小さな点として存在している希望の光を見つめ、
刹那に微笑むような――
ときどき、彼女はそんな表情をする。


すでに僕にはわかっていた。
ナオが見つめる希望の光、それはすなわち二人で過ごす時間から、
つきまとう、その後ろめたさを完全に取り払うことなのだということくらい。

いまの僕が同棲している恋人との関係を、もっとも悪く表現すれば、
学生時代から、ずっと一日づつ積み重ね続けてきた時間、
つまりは、そんな「惰性」に流されているだけに過ぎない。


何度か、別れを口にしようとも思った。
けれど、二十歳を挟んで継続されてきた恋人同士の間柄においては、
必要以上に「結婚」というものに対する奇妙なリアリティが、
その根底には残されている。

容易く別れを口に出来ないような感覚――
なにか「特別な誓い」でも交わしてしまったかのような、
そんな目に見えない制約が、僕の心変わりを許そうとはしてくれない。


一緒に過ごして来た「時間の重み」というものは、
唯一、衝動的な恋愛感情に歯止めを掛け得る現実的要素なのだと思う。

それ以外のものでは、こと恋愛において、
一度傾いてしまった相手への気持ちを思いとどまらすことなどは、
ほとんど不可能なことだろう。


けれど、ふたつの恋愛感情を同時に存続させることも、ほとんどない。
結局、どちらか一方の関係は「惰性」によって、ただ繋ぎ止められているだけに過ぎない。
それがいいのかどうかは、この年齢になっても相変わらず良くわからない。


クリスマスの少し前――
浜野ナオとは、これまでに通常の恋人同士が祝うべき
年中行事を一緒に過ごしたことは一度もない。
したがって今年のクリスマスも、ナオと過ごす約束などしていなかった。

もしナオがクリスマスに「どうしても一緒にいたい」と泣いて懇願したとすれば、
僕たちの関係は、暗黙のうちにつくり出されていたルールを、その瞬間に見失う。
それがあまりにも不条理な理屈であることなどは、とっくにわかっている。

けれど、この理不尽さのなかでしか、
僕たちが共に過ごせる時間を生み出すことは出来ないのだ……


「カラオケに行かない?」
その夜、ナオは微笑みながら、そう僕を誘った。

無駄に明るく、無意味にごった返したクリスマス直前の新橋駅界隈は、
連日の忘年会で慢性的に酔っ払っているサラリーマンたちが吐き出す、
日常生活への不平不満と、中年特有のアルコール臭で満ち溢れていた――


部屋へ通されると、薄暗い調光のままで僕らは暫く過ごす。
やがてオーダーしていたウイスキーの水割りが届けられ、
僕たちは、とりあえず乾杯を交わした。

二人の沈黙が、どこかの部屋から聴こえてくる
下手くそな酔っ払いの歌声を大きくさせている。
僕は歌の本をめくり、それを何となく聴いていた。

「やっぱり――」
ナオが美しい輪郭を保ったままで唇を静かに動かすと、
僕は彼女の声がする横顔のほうを見つめた。
「今年のクリスマスもやっぱり、2日間とも会えないんだよね?」
と、ナオはいい、水割りのグラスでその唇を湿らす。

「もしかしたらイブの夜なら少しだけ会えるかもしれないけど……」
僕は、ラッキーストライクを一本咥えながらいった。

今年のクリスマスは、どちらも平日にあたっている。
だから「イブに、会社の連中と軽く飲んでくる」
とあらかじめ同棲中の彼女にいっておけば、どうにか時間は作れるかもしれなかった。

「本当?」
ナオは大理石の彫刻のように、
上まぶたが緩やかなカーブを描き出す、
大きな二重の瞳を僕に向けて優しく微笑む。

薄暗いままの部屋の扉からこぼれてくる廊下の灯りが、
ナオの左側の表情だけをほんのりと強調させる。
ナオの口元に描き出された微笑のシルエットは、
まさに月の光が放つ淡い儚さそのものに思えた。

僕はもう、「彼女に聞いてみなければわからない」
などとナオには云えなくなった。


「私から先に歌うね」
微かな微笑みを湛(たた)えたままにそういうと、
やがてナオは、リモコンで何かの曲を予約した。

僕はタバコの煙を吐き出しながら、ふたたび歌の本を眺める。

やがて曲のイントロがスピーカーから聴こえてくる。
それはかつて、どこかで聴いたことのある曲だった。
何気なく僕はモニターに目をやる。


ナオが一曲目に選んだ曲は、杏里の「オリビアを聴きながら」――

僕は、マイクを手にしているナオの横顔を見つめた。
この曲は、たしか失恋ソングのはずなのに、
彼女の口元には、ずっと微かな微笑みが湛えられたままだった。

彼女の歌声とともに、モニターへ映し出される歌詞のテロップを目で追う。
なんだか、いつもはずっと閉じ込め続けたままの、
ナオの素直な想いを初めて聴かされているようで、
曖昧だった僕の心は、曲が終わるまでずっと、
狂おしいほどに揺さぶられ続けていた――




オリビアを聴きながら - Single - 杏里オリビアを聴きながら - 杏里 
1stアルバム『杏里 -apricot jam-』 1978年



関連記事
スポンサーサイト
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック:
この記事のトラックバック URL

Masterpiece of the Western music of the 70s/70年代洋楽の名曲
If you want to cry/泣きたいとき
If you want to be healed/癒されたいとき
Drinking alcohol/お酒を飲みつつ
While driving/ドライブしながら
If you want to Fever/血が騒ぐ
Masterpiece of the Western music of the 80s/80年代洋楽の名曲
80's Ballard masterpieces/80年代バラードの名曲
80's Rock masterpieces/80年代ロックの名曲
80's Pops & AOR masterpieces/80年代ポップスの名曲
70's Dance masterpieces/70年代ダンス系の名曲
Masterpiece of the Western music of less than 70s/70年代未満洋楽の名曲
Less than the 70's classic Ballad/70年代未満バラードの名曲
Less than the 70's classic Rock/70代未満ロックの名曲
Less than the 70's classic Pops & AOR/70代未満ポップスの名曲
Masterpiece of the Western music of more than 90s/90年代以上洋楽の名曲
Ballade more than of the 90s/90年代以上バラードの名曲
Rock more than of the 90s/90年代以上ロックの名曲
Pops & AOR more than of the 90s/90年代以上ポップスの名曲
90's Dance masterpieces/90年代ダンス系の名曲
Masterpiece of the Japanese music/未来に残したい日本の名曲
Dedicated to sweethearts/恋する二人に捧ぐ
Spend the night with sadness/悲しみと共に過ごす夜
Nostalgic feelings/ノスタルジックな想い
In the room which shines with the morning sun/朝日が差し込む部屋で
While looking at the setting sun in a hotel/夕陽が見えるホテルで
Memories of youth/若かりし日々の思い出
If you want to fuss/タテノリしたい気分なとき
If you want to feel the Rock/かなりRockな気分
Masterpieces of Instrumental/インストルメンタルな名曲
 
Profile

rakiworld21

Author:rakiworld21
Hai ☆I m Raki  (*^・ェ・)ノ ☆


Group / Duet 【 A ・ B ・ C 】
Group / Duet 【 D ・ E ・ F 】
Group / Duet 【 G ・ H ・ I 】
Group / Duet 【 J ・ K ・ L 】
Group / Duet 【 M ・ N ・ O 】
Group / Duet 【 P ・ Q ・ R 】
Group / Duet 【 S ・ T ・ U 】
Group / Duet 【 V ・ W ・ X 】
【 Artist V 】
Van Halen
Vapour Trails
The Velvet Underground
The Ventures
Virus

【 Artist W 】
The Wailers
Wang Chung
Was (Not Was)
Wishbone Ash
The Who

【 Artist X 】

Group / Duet 【 Y ・ Z 】
【 Artist Y 】
Y & T
Yazoo
Yes

【 Artist Z 】
ZZ Top



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。