QLOOKアクセス解析

未来に残したい洋楽&邦楽の名曲

70~80年代の洋楽&邦楽を中心に未来に残したい名曲&名盤を独自にチョイスするBlogです☆
未来に残したい洋楽&邦楽の名曲 TOP > スポンサー広告> 【 70年代 洋楽の名曲 】 > 癒されたいとき > 【ALOHA STAR MUSIC DIARY No.28】 Silk Degrees - ボズ・スキャッグス

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

【ALOHA STAR MUSIC DIARY No.28】 Silk Degrees - ボズ・スキャッグス

【ALOHA STAR MUSIC DIARY No.28】 Silk Degrees - ボズ・スキャッグス





1983年9月


その日の学校帰り
李メイは 倉田ユカリが座った車椅子を押しながら
ようやく艶やかなピンク色の薄い唇を ほんの少しだけ開いた。


「もし良ければ ちょっとだけでもウチに来れば?
シーナ君に何も予定がないんなら。。。だけど」

「うーん。 そうねぇ。 それじゃぁ ちょっとだけ・・・ね」


今さっき 初めて話したばかりのユカリに
" メイの家に今から一緒に来ない? "って いきなり誘われて
ボクもどうしようか少しだけ悩んでいた。

だけど メイがそう言うんならば
別に 暇だったし行ってもいいかな。と思った。


【 でも なんでユカリはボクをメイの家に誘ったんだろう 】


車椅子に座りながら ニコニコとボクの顔を 小さくて丸い
まるでリスのような" つぶらな "瞳で見上げているユカリの誘いを
それ以上 理由も無く断れるような雰囲気ではなかった。

だからって 別に行くのが嫌だったという訳でもない。

メイが纏(まと)う どこか" 涼しげな魅力 "が
最近 少しだけ気になっていたのは確かだった。


もしかしたら 左目の下にある" 泣きぼくろ "のせいで
彼女が余計に大人びて見えているのかもしれない。


【 " ほくろ "ってすごいな。ほんの チョコっとあるだけで 
表情をものすごく変える魔力を持ってる。
しかも " ほくろ "の場所によって その人の雰囲気が全く違って見えてしまう。

そういえば マレンにも唇の上に小さな" ほくろ "があったな。
だから何となく キレイで大人びた顔立ちに思えたんだ。 きっと・・・ 】





ボクが生まれたときから すでにそこにあったんだろう。

錆びたトタン作りの古い酒屋は 昔から何も変わっていない。
まだ昼間なのに 電気が点いてないせいで 光の当たらない店の奥のほうは真っ暗だ。

ボクらは その店でジュースを買ってからメイの家へと向かう。

「ボクが払うよ」と言ったんだけど
「誘ったのは私だから」とユカリがそれをまとめて買った。

ユカリは店を出てからも ずっと車椅子の上で嬉しそうにはしゃいでいる。

ボクは 車椅子を押すメイのちょっと後ろを 買ったジュースの袋を持って歩いた。
きっと他の生徒たちが見たら すごく意外な組み合わせに思うんだろうな。


ボクが通っている通学路の 途中の路地を左に曲がると
両脇に建つ家々の庭先から はみ出すようにして
大きな樹木が生い茂った狭い住宅街の通りへと出る。

木の陰に埋め尽くされ ほとんど太陽の西日が遮られたその通りを
少しだけ入った場所にメイの家はあった。


コリアン3世の彼女の家が どんな作りなのかな。とちょっと気になったが
それはごく普通の ありふれた木造2階建ての住宅だった。


考えてみれば 中学になってから
ボクが女の子の家に遊びに行ったという記憶なんて ほとんどない。
マレンの家にしたって せいぜい門の前にまでしか行ったことがなかった。


メイの家の玄関で ボクはユカリが車椅子から降りるのを手伝った。
勝手にカラダを触っていいものか一瞬悩んだけど
とにかく彼女を左側からゆっくりと抱え上げた。

ユカリのカラダは ボクが想像してたよりも ずっと軽かった。

おそらく片手でも持ち上げられそうなほどに軽く
そして ものすごく細かった。


「ありがとう。 ゴメンね」

ユカリはそう言って 玄関の上り框(あがりかまち)に一旦座ると 
車椅子の座席の後ろから杖を外して 一人で立ち上がった。

ボクが慌ててユカリを支えようと 手を差し出した瞬間
彼女の" か細い "両脚には 不釣合いなほどに重たそうな
メタルフレームの補助具が装着されていることに初めて気付いた。

さっきまでは ずっとひざ掛けをしていたせいで " ソレ "には気付かなかったのだ。


玄関にはメイの兄貴のものと思われる" ヨーロピアン "や" 餃子 "
タイプの大きなサイズの靴が何足か置いてあった。

もし" 悪評の絶えない "不良である彼女の兄貴に出会ったら
何て挨拶したらいいものか考えてたけど
とりあえずは まだ彼は帰って来ていないみたいだった。


玄関を上がってすぐ左手の応接間へと ユカリは先に入っていった。
ボクもその後を追うと そこには茶色いソファセットの奥に
1台の古いピアノが置かれていた。

たぶん彼女が小学校くらいから ずっと使ってるものなんだろう。


「ちょっと待てってね」

メイは応接間の入り口でボクらにそう言うと 2階へと上がっていった。





1983年11月


土曜日


時刻はすでに 深夜零時を過ぎている。

ヤンキー女子高生の彼女たちも さすがに数時間前までの勢いは
すっかり無くなってしまっているようだ。

おそらく まだグラスを持てる気力のある子は
せいぜい2、3人くらいなものだろう。

しばらく前に彼女たちの輪の中に戻っていった浅倉トモミは
目が据わってる先輩らしき女から ずっと同じような" 武勇伝 "みたいな話を
何度も聞かされているみたいだった。


でも・・・
隣のボックス席に すっかり倒れ込んでしまっている子たちを
どうやって彼女たちは 連れて帰るんだろう。


「GENさん ちょっと電話借りていい?」

" ケバい "化粧の先輩風の一人が そう言うと
かなりフラツキながら カウンターへと入ってきた。

シンクの前に立ってセブンスターを吸っているボクを見ると


「アンタさぁ。 あの子は ダメだよ。
西尾のお気に入りなんだからね」

「西尾? 西尾って誰すか?」

「Kf高校の西尾だよ。Ys中学七人集の" 裏番 "だったさぁ」


ボクもその名前は どこかで聞いたことがあるような気がした。
隣町にあるYs中で 確かボクらの2校上の人だったと思う。


【 夏に 一緒にシンナー吸ってたときに
隣町の中学の連中から聞いたんだっけな 】



この界隈の中学では そうした" 何人集 "と呼ばれ
一目置かれている不良集団が何グループかあった。


【 " Ys中 七人集 "で一番 喧嘩が強いとされてたのが
確か その西尾ってヤツじゃなかったかな 】




「まぁ " 西 "は 若い中学生が大好きだからねぇ。
トモミは ヤツの今のお気に入りの1人ってことよ。
" 西 "も 相当に飽きっぽい男なんだけどねぇ。

でもトモミもさぁ。 酔うと 結構 見境い無くなって
おかしくなっちゃうけどね。
まぁ とにかく アノ子には手を出さないほうがいいよ」


【 " お気に入りの一人 " ?・・・
西尾ってヤツの" 彼女 "って 訳じゃぁないんだ 】



" ケバい "先輩は 結構マジな顔をしたままボクにそう告げてから
カウンターの奥へと入って行き 誰かに電話を掛け始めた。

うっすらと聞こえてくる その内容からすれば
暴走族の後輩か誰かを G'Zまで迎えに来させようとしているような感じだった。


ボクは何となく カウンターからトモミのほうを見た。
彼女もさすがに 相当 酔っ払っているように思えた。


【 さっき トモミがボクに言ってた「絶対変なことされる」って
つまりは もし今日 その場所に行ったら 西尾ってヤツらに
" ヤらしい事 "でもされるってことなんだろうな。きっと 】



" ケバい "先輩が 電話からソファに戻って しばらくすると
トモミと先輩たちが ちょっとした口論をし始めた。


「アタシ・・・今日は行きたくない」

「何云ってんの? アンタが来ないと
ヤツがまたスゴク機嫌悪くなるんだからね」

「でも・・・何かカラダの具合が悪いから・・・」


トモミが一瞬 こっちのほうを見たような気がした。

さっきまでの三日月がトロけたような微笑みは すでにそこからは消えている。
彼女の瞳は 明らかに " 哀しみの色 "を漂わせていて どことなく虚ろだった。

なんとなく可哀想だと思ったけど
だからって ボクにはどうすることも出来ない。



30分くらいすると 見るからに" ゾク "っぽい連中が4人
店の中に入ってきた。

ソイツらは GENに挨拶をすると ソファに倒れ込んで
泥酔している女の子たちを 抱え上げて外へと運び出し始めた。

彼女たちには もはや全く意識がなかった。
ほとんど" 死体 "のようだったけど まだとりあえずは生きてるようだ。

数人が運び出された後 そのうちの一人の男が
カウンターでタバコを吸ってるボクのほうを睨んだ。

ボクも睨むという訳でもなく 何となくソイツのことを
別に目を逸らさずに見ていた。

ソイツは ボクのほうへと歩いてきて
目の前のカウンター席に" ドカッ "と音を立てて座り込んだ。
ボクは腕を組みながら ゆっくりとタバコの煙を横のほうへ吐き出した。


「オメェ Si中のシーナだろ! こないだDt中の連中とモメたんだってな」

「・・・モメたっていうよりも 一方的に" リンチ "されたんすけどね」

「そんで ナイフで どっか切られたのか?」

「うーん・・・ナイフかどうか分からないけど まぁヤられました」

「刃物使うなんて " 糞 "だな ソイツら」

「まぁ 手を出してたのは 数人だけなんですけどね」


彼は こないだボクが中学の前でDt中の連中に待ち伏せされて
散々殴られた挙句に 刃物で背中を切られたときの話をしていた。


「GENさんは そのこと知ってるのか?」

「いや・・・GENさんには 別に何も言ってないすね」


男はちょっと口元に笑みを浮かべた。

「だろうな。 もしGENさんがその事知ったら
ソイツきっとこの辺 歩けなくなるだろうから」


GENは酔っ払って さっきからソファの上で ずっと大笑いしている。


「知ってるだろ? GENさんって " 組の親分の息子 "だからな」


【 組? ヤクザ? 】



「あの人 最近じゃぁスゲエ大人しくなったんだけどな。
でも 同年代の人達からは 未だに怖がられてるからよぉ。
だからオメェも 絶対に怒らすなよ」

暴走族の幹部って聞いた気がするんだけど 
ヤクザの息子だったということは 初めて知った話だった・・・




帰り際 トモミがボクのほうへと寄って来た。

結局 今から男の先輩の家に連れて行かれることになった彼女の表情に
さっきまで楽しそうに笑ってた面影などは無かった。


「ゴメンね。 たぶん 今日は抜けられそうにないから」

仕事が終わってから彼女の家に 2人で行こうと誘われてたけれど
別にはっきりと そのことを了承した訳じゃぁない。

だけど 彼女との" 何か "を 少しは期待してたんだろうとは思う。


「また今度 店に来てもいいかな」

「あぁ。 いいと思うけど」

「じゃぁ。またそのうち必ず来るからね」


そう言って 慌しく扉を出て行った彼女の唇から 最初に見たとき
すごく気になった真っ赤なルージュの色は 殆ど拭い去られていた。

それさえなければ 彼女は髪の毛の茶色い
ただの中学3年の少女にしか見えなかった。




1983年9月 


「メイはねぇ・・・」

ユカリはオレンジジュースを一口飲んでから
何かを思い出したようにして" クス "っと微笑んだ。


「たぶん シーナ君のこと気に入ってるんですよ」

「えっ。オレを?」

「たぶん いや。絶対そうだと思います」


その言葉は あまりにも唐突だった。

ユカリとは ついさっき初めて話したばかりだというのに
気付いたら すっかり彼女のペースに" はまって "しまっている。


「メイとはね。 中学に入ってから 同じクラスになったことないんだけど
彼女って 小学校時代から あんまり男の子の話をしないんです。
なんか苦手みたいなんでね。

でもね。最近 シーナ君のことを よく私に話すんですよねぇ。
あっ! 私がこんな事言ったなんて内緒にしといて下さいね」


【 そんなの当たり前だ。メイに何て聞けばいいんだ 】


「メイも私も 小学校の頃は よくからかわれたりして
イジメられてたんですよ。

でもメイは すごく強い子だったし それにとっても優しいの。

私は すぐに泣いちゃうんですけど メイは全然平気みたくって
いつも私のことを慰めてくれてたんです。
ものすごくいい子なんですよ」

「そう。 イジメられてたんだ・・・」

「彼女って すごく人見知りというか 特に男の子には
自分から絶対に話し掛けたりしないんです。

他の男の子の話は 昔からほとんどしないのに
なぜかシーナ君の話だけは この頃 かなりするんですよね。

だけど きっと本人もそのことには気付いてないと思うんです。

だから私がね。 今日 ちょっとシーナ君を誘ってみたんです。
というよりも 機会があれば " いつかは誘ってみよう "
と ずっと思ってたんですけどね。

でも やっぱり シーナ君がメイの家に来るのを
彼女は全然 嫌がらなかったでしょ?
まぁ 絶対に嫌がらないとは 思ってたんですけどね」


ユカリはイタズラっぽく笑いながらそう言った。

ユカリが今日 突然 ボクをメイの家に誘ったのは
つまりは" メイのために誘ってあげた "ということなんだろうか。

メイがユカリに どんなことを話してるのか なんだかものすごく気になった。
それとなく探ろうとしたとき 階段を下りてくる小さな足音が聞こえた。

" シーッ " と ユカリは その小さな唇に左手の人差し指を少しだけ当てた。


【 何だかものすごく不思議な雰囲気を持ってる子だな 】


もしかしたら 単におせっかいなだけなのかもしれないけど
彼女のしぐさや話し方には 素朴な子供のような" 繊細な純粋さ "を感じる。

やがて 銀縁の眼鏡を掛けて 黒っぽいワンピース姿のメイが応接間に入ってきた。
普段 見慣れた制服姿ではなく 私服のメイには どこか" しとやかな気品 "が漂っていた・・・




「こないだ メイに映画館へ連れてってもらったんですよ。
私ね。どうしても『戦場のメリークリスマス』が観たくって 」

「" ワタシが連れていった "っておかしいでしょ。
ユカリンと一緒に観に行っただけなんだから。
それに ワタシも観たいと思ってたんだし」


李メイは倉田ユカリの横に座ってそう話しながら
内側にカールしたセミ・ロングの襟髪を
両手の人差し指で後ろのほうへとそっと流した。


【 メイって 家では 普段 眼鏡を掛けてるんだな 】



「あの坂本龍一の曲って すごくいい曲でしょ。
だから 私 あの後 メイにピアノで弾いて欲しいって すぐお願いしたんです」

「ワタシ 譜面がないと弾けないから・・・困ったんだけどね」

「メイ ちょっと弾いてみてよ」


メイはまるでユカリのお姉さんのようだった。
ワガママな妹のお願いを 何でも笑いながらきいてあげてるように思えた。


メイは 奥のピアノの前に座った。
ボクは彼女のうしろ姿を眺めた。

黒いワンピースが 彼女の緩やかで女の子らしい
両肩のシルエットにフィットしていて すごく似合っている。
というよりも 彼女自身 黒い服が とても似合うんだろうと思う。



戦場のメリークリスマス Piano Ver.






メイがイントロの旋律を弾き始めた。

右手の主旋律は 相当高いオクターブで奏でられているようだ。
ものすごく哀愁を秘めた 儚げなメロディだった。

そして あの有名な Aメロの旋律へと移行していく。
Aメロの主旋律が何小節目かで和音を奏で始めた。
するとピアノのシンプルな演奏に厚みが一気に増してゆく。

左手の伴奏はひたすらベースコードで 切ないメロディラインを下支えしている。

やがて 後半のCメロで おそらく両手で四和音づつ鍵盤を強く叩く感じの
メゾフォルテが絡むパートに差し掛かると 強弱記号に合わせるようにして
ペダルを踏み込むメイの肩や背中は前後に揺れた。


ボクは すごく感動していた。
久し振りに 誰かの生演奏を聴いて心が震えた。
ユカリもじっと 瞬きもせずに メイの後ろ姿を黙って眺めている。


演奏が終わると 思わずボクとユカリはメイに拍手を送っていた。


「いやぁ すごいねぇ 李さん」

「でしょ。メイはすごくピアノが昔から上手だったんですよ。
私も本当はピアノを弾きたかったんですけどね・・・」

ユカリはそういって 自分の右手の指先を一度眺めてから
ボクのほうへとかざした。


「子供の頃 車椅子のスポークに指を挟んじゃったみたいで
そのとき 右手の人差し指と中指を骨折しちゃったんです」

ボクはユカリの細い指先を見つめた。
確かに中指は 第2間接から 横にちょっと曲がっている気がした。


「なんか中指の爪の生え方がおかしくなっちゃったみたいで
あと間接もうまく曲げられなくなっちゃたんでね。
それで私 ピアノは諦めたんです」


あんなにも明るかったユカリの声が
その一瞬だけ " フッ "と どことなく沈み込んだように思えた。


「じゃぁ 次は シーナ君も なにか弾いて下さいね」

ユカリは ボクのほうを 二つの" つぶらな "眼差しで見つめながら
再び笑顔に戻って そう言った。


「じゃぁ・・・ホントに久し振りなんで 上手く弾けるか分からないけど」

「ピアノは ちょっと練習しなくなっただけでも
指先が鈍って すぐ弾けなくなっちゃうものね」


メイは 椅子から立ち上がって 静かに笑いながら そう呟いた。

ボクはメイと入れ替わるようにしてピアノの前に座る。
そこには まだ微かに残る メイの温もりが感じられた。


しばらく鍵盤を眺めてから 適当な和音コードを両手で押さえた。

徐々に 和音コードを組み合わせながら
ひとつの楽曲風に音を変化させていった。

でも 特定の曲を弾いてる訳じゃなくって
そのコードに合ったメロディラインを何となく指先で探していたのだ。


【 まだ少しは動くみたいだな。じゃぁ・・・何を弾こうかな 】


テンポを一旦スローに戻していきながら
Gコード上の鍵盤をしばらく" ポーン ポーン "と数回押さえ続ける。


【 このまま簡単にメロディへ移行できるのは「Let It Be」とか
ボズ・スキャッグスの「We're All Alone」あたりだろう 】



ボクはオリジナルよりも少しテンポを下げて
We're All Alone」のAメロの主旋律を
イントロを飛ばして右手で奏で始めた。

特に違和感もなく 普通に弾けていることに自分でも少しだけ驚きながら・・・



「すごーい!ホントにすごい上手ですね!
全然ピアノ弾けてるじゃないですか。
もしかして" 天才 "なんですか? シーナ君って」


曲を弾き終えると ユカリは驚きと喝采の声を しばらく上げ続けた。

彼女は 厭味っぽくならない ギリギリの褒め方がとても上手い。
しかし そこまで褒められると さすがにボクも少し照れる。

メイも 小さく何度か手を叩き
ボクのことを 薄っすらとした微笑みを湛えた瞳で見つめていた。


「じゃぁ 今度は シーナ君が作ったっていう曲を弾いてみてくださいよ」

「えっ! あれはちょっと難しいから たぶん弾けないと思うんだよねぇ」


「絶対に弾けますよ。 じゃぁ 弾けるとこまででいいんで聴かせてください」

ユカリは相変わらず 押しが強い。
彼女にそう頼まれると 不思議と何だかどうしても断れなくなってしまうのだ。



【 もしかしたら今でも弾けるのかも知れない。
でも この曲を軽々しく弾いていいんだろうか。

これは" マレンのため "だけに作ったメロディ。
この曲を彼女以外の人に 聴かせてしまってもいいんだろうか 】




ボクは瞳を閉じた。

今年の3月 この曲をマレンに初めて聴かせた日の情景が
自然と少しずつ瞼(まぶた)の裏にうっすらと浮かびあがってくる。


無意識のうちに 指先が鍵盤に添えられている感触を感じ取っていた。


【 この曲って イントロコードは" B "から始まるんだったな 】



ボクの両手は やがて鍵盤を一気に強く押し下げた。

一度 メロディを覚えた指先は もし そこに何ら意識がなかったとしても
自然と勝手に動き続けてゆく。


何度も繰り返し 繰り返し 耳で 指先で そして心で奏で続けられたこのメロディ。
どれだけの時間が経とうが 心に刻み込まれた この旋律を忘れるはずもなかった。


長くて複雑なマイナーコードのイントロが終わると
やがて静かにメジャー・コードのAメロが始まる。


ボクは瞳を閉じたまま この曲の主旋律上に 心で歌の歌詞をずっと書き綴っていく。

サビのパートに差し掛かる。

マレンが瞳を閉じて ウォークマンを聴いていたときの
あの穏かな表情がはっきりと思い出されていた。


あのときは恥ずかしくって 彼女に感想すらまともに聞けなかったけど
今ならば マレンの目の前でも ちゃんと恥ずかしがらずに
この曲を歌えるような気がする。


やがて カセットを聴き終わり マレンがそっと その瞳を開けた瞬間の
眩いくらいに輝いていた嬉しそうな笑顔が ボクの心を一気に締め付けた。


1番が終わって 間奏に差し掛かったところで 主旋律のメロディを間違えた。
ボクは ふと我に返る。 その瞬間 指先も" ピタリ "と動きを止める。


今度は さっきのような大きな驚嘆の声は 2人からは上がらなかった。
おそらく 変な終わり方をしちゃったせいだろう。

「やっぱ 途中で間違えちゃったなぁ」

ボクは そう笑って2人のほうを振り返る。


ボクを見つめているメイと目が合った。
彼女はさっきと同じような微笑みを瞳に浮かべていた。

だけど その瞳から頬にかけて 一滴の涙が伝っていくのが分かった。


「すごい・・・  ホントにすごいよ。シーナ君・・・
ものすごくいい曲。 ホントにいい曲。 ワタシはそう思う」


ユカリが何かを言おうとする前に
メイは 涙を拭わずにボクの目を見つめたままで
そっと 優しくこの曲を褒めくれた。


ボクも なぜだか少しだけ涙がこみ上げてきそうな気分になっていた。





Silk Degrees - ボズ・スキャッグス



 1 What Can I Say
 2 Georgia
 3 Jump Street
 4 What Do You Want The Girl To Do
 5 Harbor Lights
 6 Lowdown
 7 It's Over
 8 Love Me Tomorrow
9 Lido Shuffle
10 We're All Alone

リリース 1976年3月 |レーベル コロムビア

" ボズ・スキャッグス氏=AOR "という認識を大いに印象付けたAORの歴史的名盤☆ 後のTOTO結成に繋がる若手スタジオミュージシャンを集結させたことで ダンサンブルなディスコナンバーから 珠玉のバラーソソングまで 実に幅広いジャンルのサウンドが凝縮された1枚☆中でもTOTOで中心的役割を担っていくデヴィッド・ペイチ氏の存在が非常に大きいですね♪彼がいなければ このアルバムも生まれなかったんでしょうなぁ☆





ALOHA STAR MUSIC DIARY

Rakiの名盤紹介 洋楽アルバム編

Rakiの名盤紹介 邦楽アルバム編
関連記事
スポンサーサイト
コメントの投稿












管理者にだけ表示を許可する
トラックバック:
この記事のトラックバック URL

Masterpiece of the Western music of the 70s/70年代洋楽の名曲
If you want to cry/泣きたいとき
If you want to be healed/癒されたいとき
Drinking alcohol/お酒を飲みつつ
While driving/ドライブしながら
If you want to Fever/血が騒ぐ
Masterpiece of the Western music of the 80s/80年代洋楽の名曲
80's Ballard masterpieces/80年代バラードの名曲
80's Rock masterpieces/80年代ロックの名曲
80's Pops & AOR masterpieces/80年代ポップスの名曲
70's Dance masterpieces/70年代ダンス系の名曲
Masterpiece of the Western music of less than 70s/70年代未満洋楽の名曲
Less than the 70's classic Ballad/70年代未満バラードの名曲
Less than the 70's classic Rock/70代未満ロックの名曲
Less than the 70's classic Pops & AOR/70代未満ポップスの名曲
Masterpiece of the Western music of more than 90s/90年代以上洋楽の名曲
Ballade more than of the 90s/90年代以上バラードの名曲
Rock more than of the 90s/90年代以上ロックの名曲
Pops & AOR more than of the 90s/90年代以上ポップスの名曲
90's Dance masterpieces/90年代ダンス系の名曲
Masterpiece of the Japanese music/未来に残したい日本の名曲
Dedicated to sweethearts/恋する二人に捧ぐ
Spend the night with sadness/悲しみと共に過ごす夜
Nostalgic feelings/ノスタルジックな想い
In the room which shines with the morning sun/朝日が差し込む部屋で
While looking at the setting sun in a hotel/夕陽が見えるホテルで
Memories of youth/若かりし日々の思い出
If you want to fuss/タテノリしたい気分なとき
If you want to feel the Rock/かなりRockな気分
Masterpieces of Instrumental/インストルメンタルな名曲
 
Profile

rakiworld21

Author:rakiworld21
Hai ☆I m Raki  (*^・ェ・)ノ ☆


Group / Duet 【 A ・ B ・ C 】
Group / Duet 【 D ・ E ・ F 】
Group / Duet 【 G ・ H ・ I 】
Group / Duet 【 J ・ K ・ L 】
Group / Duet 【 M ・ N ・ O 】
Group / Duet 【 P ・ Q ・ R 】
Group / Duet 【 S ・ T ・ U 】
Group / Duet 【 V ・ W ・ X 】
【 Artist V 】
Van Halen
Vapour Trails
The Velvet Underground
The Ventures
Virus

【 Artist W 】
The Wailers
Wang Chung
Was (Not Was)
Wishbone Ash
The Who

【 Artist X 】

Group / Duet 【 Y ・ Z 】
【 Artist Y 】
Y & T
Yazoo
Yes

【 Artist Z 】
ZZ Top



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。