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未来に残したい洋楽&邦楽の名曲

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【ALOHA STAR MUSIC DIARY No.25】 Heartbreaker - フリー

【ALOHA STAR MUSIC DIARY No.25】 Heartbreaker - フリー






1983年11月


まるで常緑色の松林のなかに ひっそりと隠れるようにして佇むこの街には
樹々の深い緑色と その針葉の先に広がる遠い空の青さ
そして松の防風林の向う側で 白銀の煌めきを" みなも "に湛え続ける
湘南の海だけしか存在していない。

南口の駅前から海岸のほうへと向かう道は
バスが行き交う二車線の駅前通りと
ボクが小さい頃から何ら風景の変わらない
薄汚いスナックの看板が左右の壁面を埋め尽くす
狭い一方通行の繁華街通り。

昔から僅かにその2本だけしかない。


その繁華街の中央付近に建つ さびれた雑居ビルの3階。
それが 隣の兄貴たちの溜まり場となっている" G'Z "というライブ・バーだ。


「GEN(ゲン)」と名乗るこの店のマスターが 何歳なのかは分からない。
だけど高3の兄貴のちょっと上だと言ってたから
せいぜい19か20歳くらいなんだろう。

彼の両腕には " ドクロ "や" ハートマーク "をモチーフにした大小のタトゥが
まるで落書きのようにして不規則に彫られている。

普段は隠れて見えないけれど 胸や背中にも
様々なデザインのアメリカン・タトゥが入ってるのだという。

彼の髪型は 大量のポマードでガッチリと固められたリーゼントスタイル。
だからこの店は ポマード特有のやたらと甘ったるい匂いがいつだって充満している。


下面に褐色系のフィルターカバーを装着し 薄暗く調光された
ダウンライトが淫靡に照らし出すコンクリート剥きだしの店内は思いのほか広い。

カウンターとテーブル席を合わせれば きっと30人程度は座れるはずだろう。

ボックス席のソファに挟まれるようにして置かれた
JBLの大型スピーカーがやけに目立つこの店の一番のウリは
カラオケ用の小さな舞台を GENが勝手に改造したという
自慢の" 特設ライブステージ "があることだった。

" マーシャル "の巨大な中古アンプが4台積まれ ミニマムユニットのドラムセットが
中央に置かれてるだけでも 半分以上のスペースを取っているのだが
ステージに高さを合わせたハンドメイドの木製ボックスを何個か並べて 
舞台を前面にせり出しさせているので どうにか5人くらいまでなら
演奏が可能な広さが確保されている。


この周辺の街には ライブの練習スタジオなんてほとんど無いらしい。


G'Z では(GENはこの店を" MY ハウス "と呼んでいるが・・・)
夕方から店がオープンする夜7時00分くらいまで
音楽の練習用に店内を解放しているので
平日でもバンドを演ってるような連中が結構集まって来ていた。

たぶん他のスタジオよりも 使用料も安いんだろう。
だから週末には 一日中予約が殺到しているみたいだった。


「ウチはよぉ 建物古りぃくせに 防音が結構効いてるんだわ。
だから そこそこでけぇ音出しても文句言われねぇんだよ」

GENはハイライトを吹かしながら自慢げに続けた。


「さすがにフルで深夜にドラム叩かれちゃマズイけどな。
まぁ。でもよぉ 下の店が1時過ぎにゃぁ終わるから
その後は 別に朝まで騒いでたって誰にも文句言われねぇわさ」


GENというマスターが どういう人物なのかは分からないけれど
" このエリアでも有名な暴走族の幹部だった男 "
というような話を 隣の兄貴がしていたような気がする。

だから地元界隈の いくつかの不良高校のヤンキー連中からも
「GEN兄ぃ」とかって言われて かなり慕われているようだ。


G'Z には 夕方の早い時間帯や休日になるとバンド系が集まって来て
夜の9時過ぎくらいから 入れ替わるようにして不良系の連中が姿を見せ始める。

たまにバンド系と不良系がブッキングする日もあるのだが
今のところは さほど大きなトラブルにならずに済んでいるらしい。


この店でライブが開催される日には テーブルをほとんど取り払い
スタンディングで50人以上もの観客が入っているみたいだ。

「最高で80人以上がこの店に入ったことがある」とGENは胸を張っていたけど
さすがにちょっとそれは無理じゃないかな。とは思う。




1983年2月

先月の" サウス事件 "のせいだろうけど
ボクら 自称" チーム・サウス "のメンバーは
それなりに学校の内外から注目されていた。

" チーム "といってもその実態は 理系や文学系の秀才などが入り混じった
単に帰る方向が同じというだけの" 帰宅部 "に過ぎない。

でも ボクと" イウ "こと伊浦ナオトの2人だけは
そのチームの中心人物として勝手に様々な噂話が広められていったのだ。

それ以降 ボクの家には 知らない学校の野郎連中から 脅迫めいた電話が一気に増えた。
それと同様に 見知らぬ中学の女の子からの告白のような電話も増えていった。


中1のときと中2の今年とで
明らかな" 質量 "としての差異があるとするならば。

それは間違いなく バレンタインに渡されたチョコレートの数だろう。
きっとこれも 数少ないメリット面での" サウス効果 "なんだろうとは思う。

去年は 母親と妹からの" 連盟チョコ "を加えても
片手くらいに収まっていたのに 今年は正直 数え切れないほどだ。

同じ学年の女子からは " 義理チョコ "程度しか貰ってないのだが
それでもなんだかんだで20枚近くになった。


まぁ クラスは違うけど 佐藤マキコには
小学校4年のときからずっと毎年チョコレートを貰っていた。
そういう意味では 彼女もすごく義理堅い子なんだろうなぁと思う。


それにしても 今年は まだ小学生のような
1学年下の女の子達からの人気が急激に跳ね上がったようだ。
休み時間のたびに 数人連れの1年生の女子生徒たちがボクの教室に尋ねてきた。

でも「シーナ先輩に・・・私の友達から頼まれて」
という代理人経由での手渡しが結構多かった。

当然 本人も一緒に来てるのに なんだか恥ずかしがっていて
ボクの顔すらロクに見ないままで ずっと友人の影に隠れていた。


だから誰から貰ったものなのか良く分からなかったけど・・・


" シーナ先輩 "


考えてみれば ボクは この学校で 初めて" 先輩 "という呼称付きで
そのとき呼ばれたような気がする。



先週末にも 知らない中学校の女性徒から 夕方
「ちょっと チョコレートを渡したいんで 駅まで来てもらえませんか」
というような感じの電話が何件もあった。

もし「付き合って欲しい」というような内容の電話ならば その場でも断れるけれど
「そんなの要りません」とかって すげなく断る訳にも何だかいかないような気がしたので
大抵の場合 ボクのほうから駅まで出掛けて行った。



いずれにしたって こんなにチョコレートを貰えることなど
全く想像もしていなかったので さすがに全部は持って帰れなかった。

カバンや制服に入る分だけを無理やり詰め込んで
残りは明日 紙袋でも持ってくればいいかなと思っていたけれど
当然ながらマレンは そんなボクを見て かなりムっとしているようだ。


「良かったねー。パル! チョコいっぱい貰っちゃってさぁ」

「いやぁ。 どうやって持って帰ろうか悩むね」

「なんならアタシが持って帰るの手伝ってあげてもいいけどね」


たまに通りを吹き抜ける北風がやたらと肌寒い学校帰り
すごくトゲトゲしくそう言ったマレンからは
そういえば まだチョコレートを貰っていない。


「なんかさぁ 昨日とかも 知らない中学の子からも貰っちゃってね」

どうやらボクは余計な自慢話をした。


「はぁ? なんでーっ! 信じらんないよぉ」

「だって 会ったこともないのに断るのってマズくねぇ?」

「どうしてよ? 会ったことないから断るのが普通なんじゃん!
あーぁ パル。 ホワイトデーのお返しが大変そうだねぇ」


マレンはボクに赤いハートのシールが貼られた
リボン付きのチョコレートの包みを突きつけながら言った。


「・・・パルのバカ! バカパル!」




1983年10月

ボクはここ数日 兄貴のライブ演奏用のナンバーを覚えるために
歌詞カードのコピーを見ながらカセットを繰り返し流し続けている。

別に単なる練習用の仮ボーカルなんだから
こんなに真剣に覚える必要もないんだけど
何となく ずっと この演奏予定曲が録音された
カセットばかりを学校の行き帰りにも聴いている。


1曲目 演奏予定のヴァン・ヘイレン「You Really Got Me」

エディの弾くヘヴィなリフは 去年 結構練習したんで さほど難しくない。
でも さすがに間奏パートの" ライトハンド "までは無理だ。
ギターをこんなにも縦横無尽に早弾きするほどのテクなんて ボクにはまだ無い。

デイヴの音域も決して高くないんだけど 彼特有のノドに引っ掛けるようにして発せられる
奇妙な" 裏シャウト "はどうしても出せない。
まぁ 彼の特技といえるんだろう。


エリック・クラプトンの「Cocaine」や フリーの「Wishing Well」は
ボクにもギターで弾けるようなレベルだし 歌ってても逆にキーが低いくらいだ。

だけど クラプトンの『Slowhand』とフリーの『Heartbreaker』。
どちらのアルバムも 隣の兄貴からカセットを貰った当時は良く聴いていた。


特に クラプトンのバラードナンバー「Wonderful Tonight」がすごく好きだったな。


この美しいバラードは 去年の夏
マレンとの初デートで横浜ドリームランドに出掛けたとき
一番最初に彼女に聴かせた曲だった。

だから ボクらにとって 忘れられない思い出の1曲なのである。


でも『Slowhand』の他の収録曲は 当時 もっとハード系な音を好んでたせいか
イマイチ馴染み切れなかったように思う。

フリーの『Heartbreaker』のほうは アルバムとして全くハードじゃないけれど
ブルース系のスローなロックをしんみりと夜に聴き流す分には
丁度いい感じの曲が多かったような気がする。


いずれにしても 「Cocaine」と 「Wishing Well」を もしライブで演っても
聴いてるほうも全然面白くないんじゃないかな。


ハノイ・ロックスの「Tragedy」は一転してハードなリフが際立つ
アッパー系のロック・チューンだ。

マイケル・モンローの歌声も この手のロックナンバーにしてみたら
特別高くはないんだけれど 今回 ライブ予定の選曲中では
ステージで歌ったら一番気持ち良さそうだ。

彼らの1stアルバム「Bangkok Shocks Saigon Shakes」は
ボクが洋楽ロックを聴き始めた最初の頃に自分で買ったアルバムだ。
でも「Tragedy」の歌詞までを真剣に聴いたことは一度もなかった。


問題は やはりイーグルスの「Hotel California」・・・
ボクも割りと高音域は出せるほうだから オリジナルのキーでも歌える。
だけど歌声が何だかすごい" 子供っぽく "思えてしまう。

ボクの声には ドン・ヘンリーのような大人の" 艶っぽさ "が足りていない。

それにこの曲の場合 リードヴォーカルよりも
サビでのコーラスのほうが重要な気がする。
そこのハモリがダラけると全然締まらなくなる。

兄貴のバンド・メンバーがどんな連中かは知らないが
こんなにキレイなコーラスが出来るとはどうしても思えない。


歌詞カードを読みながら ボクは繰り返しカセットを再生させる。
結局 英語の曲を歌うには 丸ごと歌詞を覚えるのが一番手っ取り早いのだ。



数日後 ボクは学校が終わると 制服のまま駅へと向かい
南口の駅前ロータリーのガードレールに腰掛けながら兄貴を待っていた。

少し涼やかな秋の夕風が" とうとう "と流れ過ぎていく。

羽毛がゆっくりと舞い降りるかのようにして訪れ来る秋の気配が
まるでサングラスをしているときのように この街の空気をセピア色に染める。
いつもは混雑している時間帯なのに 今日はほとんどロータリーには車も停まっていない。


今年の誕生日 ボクはマレンとこの場所で待ち合わせをしていた。


あの冬の夕暮れ時 プレゼントの大きな紙袋を抱えた彼女が
駅前通りを微笑みながら自転車でやって来たんだ。




隣の兄貴がバンドメンバーらしき学生たちと一緒に南口の階段を下りてきた。
みんな髪を長く伸ばしていたけれど 見た目にそれとなく" ロッカー "っぽいのは
スラっと背の高い兄貴だけだった。


「これ 俺の従弟」

「おーっ いいねぇ! 何かすげぇロックっぽくて」


【 は? " ロックっぽい " って 一体どういうヤツを指すんだ? 】



兄貴がメンバーにボクのことを紹介すると
茶髪ロン毛で なんだか冴えない小太りの男がボクにそう言った。
きっとドラムかなんかだろう。


「どうも・・・従弟です」

「彼ってまだ中学生?」

「ん? そういえばおめぇ いま何年だっけ?」


兄貴が聞いてきた。


「中3・・・」

「わぉ! まだ中3かぁ。うわぁ ヤッベェ 若けぇなぁ」


【おめぇも たかだか高3だろうが】


茶髪ロン毛がイチイチ過剰に騒ぐんで
何だか だんだんうっとうしくなってきた。
こういうタイプは 大抵すごく馴れ馴れしいヤツが多いものだ。


「とりあえず行くべ」

兄貴は繁華街のほうへ向かって歩き出した。
この繁華街通りには " いかがわしい " 小さな飲み屋が
大小のビルの中に 無数に封じ込められている。


【 こんなにも同じようなスナックやキャバレーばっかり同居してて
果たして 全部の店が儲かってんだろうか? 】



しばらく歩くと 繁華街の左手に建つ雑居ビルの外階段を兄貴は登りはじめた。
そして3階に辿りつくと 「チワーッス」と挨拶をしながら
分厚そうな木製扉のなかへと足早に消えて行った。

扉が開けられた瞬間 異様に生暖かくて甘ったるい匂いが
"ブワ"っと一斉に店の外へと放出された。

ボクは店の扉に打ち付けられた鉄製の店名プレートを眺めた。
白いアクリルプレートを切り取った「G'Z」という文字が貼り付けられている。
その下に それよりもずっと小さなサイズで「Music Bar」と白く焼付けられていた。


店の中に入るなり

「モーニング!エブリバディ」

いきなり大声で そう笑いかけてきたのが 黒のタンクトップ姿で
両腕のタトゥを露にした この店のマスターGENだった。





Heartbreaker - フリー



 1  Wishing Well
 2  Come Together In The Morning
 3  Travellin' in Style
 4  Heartbreaker
 5  Muddy Water
 6 Common Mortal Man
 7 Easy on My Soul
 8 Seven Angels

リリース 1973年1月|レーベル アイランド

後に"バッドカンパニー"を結成するポール・ロジャース氏を中心にUKで結成されたブルース系ロックバンドのフリー☆当時20歳そこそこのメンバーたちが織り成すストイックなまでにシェイブされたシンプルにして究極のブルース・ロックサウンドに衝撃を受けたアーティストも多いようですね☆そんな彼らが1973年にラストリリースした6thアルバム『Heartbreaker』も 彼らならではのスローなブルースロックが展開されたツウ好みな1枚です☆まぁ子供が聴く音楽じゃないでしょう。これがいわゆる大人の為のロックですなぁ☆





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この曲は素晴らしい!

このシリーズの物語も素晴らしい!
[ 2013/02/19 06:20 ] [ 編集 ]
Re: タイトルなし
mikaさん☆
お久しぶりです ・゚(✪ฺ∀✪ฺ)゚・

ど~もありがとうございます☆
まぁ。このストーリーは かつて貴女に褒められたんで
続けてるっつう部分も多大にありますんでね☆

[ 2013/02/19 16:55 ] [ 編集 ]
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