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未来に残したい洋楽&邦楽の名曲

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【Re-Edit】 Hard To Say I'm Sorry - Chicago 【80年代バラード】

【Re-Edit】【80年代洋楽バラードの名曲】


Hard To Say I'm Sorry




1983年9月13日(火)

ボクたちは結局、円覚寺には戻らずに、坊主あたまたち5人の不良学生と決闘を繰り広げた駐車場を出ると、そのまま横須賀線の線路を右手に見ながら鎌倉駅のほうへと向かう。このまま行けば、やがてその細いわき道は、交通量の多い「鎌倉街道(県道21号線)」と丁字(ていじ)状にぶつかるはずだ。

子供の頃、七五三で鶴岡八幡宮へ行った帰りなど、何度かこの道を車で通った覚えはあるが、海沿いの国道134号線から鶴岡八幡宮の参堂に沿って北上し、北鎌倉駅前で横須賀線と並走するように大船駅方面へと通じる鎌倉エリア随一の主要道路ということもあって、当時からこの鎌倉街道は週末などには大渋滞することで有名な道だった。

左右に歩道を配した、さして広くもない二車線道路に突き当たると、ボクたちは鶴岡八幡宮の裏手のほうまでなだらかに続いてゆく、そんな鎌倉街道の坂道をのぼりはじめた。いまはまだ平日の午前中ということもあり、この坂道にそれほど多くの観光客の姿は見受けられない。

林ショウカと李メイは、ボクの少し前を並んで歩き、ボクの数歩うしろを田代ミツオがついてきていた。山向こうの海から鎌倉街道を這うようにして穏やかな南風が絶えず吹き流れてくる。

さっきの駐車場を出てからしばらく経つが、4人のあいだで会話らしい会話などは、その後、ほとんど交わされていない。ただ、ときどきショウカがうしろを振り返っては、ボクのほうへ何度か微笑みかけたりしている。そのたびに、メイもボクのことを涼やかな眼差しで見つめた。ボクは、ショウカの長い黒髪と、メイの肩先で揺れる少し茶色いうしろ髪がふんわり風にそよぐさまをぼんやりと見つめながらウォークマンを聴いていた。湿度が低いせいもあり、木陰に入るとそんな柔らかな南風さえも、なんとなくひんやり感じられる。

基本的には左右ともに一般住宅が建ち並ぶこの通り沿いにも、小さな店舗が「ポツポツ」と点在してはいたけれど、北鎌倉の駅のほうから鎌倉方面へ向かう観光客で連日賑わう目抜き通りのわりに、飲食店や土産物を売ってるようなお店の数があまりにも少ないように思える。

そういえば、さっきは、不良連中に走って逃げられてしまったので、結局、田代が取られたお金を取り返すことができなかった。ボクがサシでやり合った坊主あたまの野郎には、負けこそしなかったものの、最初に蹴られたわき腹がまだなんとなく痛むし、それ以上に田代の大きな顔面を殴ったときの右手首が「ジンジン」と疼(うず)いている。なんだかものすごく無駄なことをしたような気分だった。ショウカはときどきうしろを振り返り、ボクに微笑みかけていた。そのたびに、メイもボクのことを涼やかな眼差しで見つめた。

ヘッドフォンからは、去年、アメリカのロックバンドのシカゴがリリースし、大ヒットした「素直になれなくて(Hard To Say I'm Sorry)」が流れている。――心の奥底をくすぐられるような、この淡くノスタルジックなピアノの旋律を、中2の夏休みに入る少し前まで、ボクは学校から帰ると、よく応接間で弾いていた。そして、この曲をなんとなく弾きこなせるようになった頃、ボクは川澄マレンと付き合いはじめたんだ。

いつだったかな。――学校帰りにマレンがボクの家へ遊びにくるようになった、とある土曜日の午後。両親が留守のあいだに、ボクはこの「素直になれなくて」を彼女の前で一度だけ弾いたことがあるんだ。そのときマレンは大きな瞳を輝かせ、大喜びでその演奏を褒めてくれてたな。たかだか一年ちょっと前の出来事なのに、なぜだろう、――なんだかあの日の情景が、青い靄(もや)が揺らめくような時間の流れの、ずっとずっと遠くのほうで、映し出されているように思えてしまう。

マレンと過ごした日々の記憶は、日常のほんの些細な光景さえも、ほとんどすべてが薄いフィルム状に記録され、一枚一枚積み重りながらボクの心のどこかにしまわれている。

きっといままで生きてきた14年間の人生で、心に焼き付けられたありとあらゆる彼女以外の想い出なんかより、マレンの面影が映し出されるたった一年分の記録映像のほうがはるかに膨大で、ときどき心のなかで勝手に再生されはじめてしまうそれらの映像は、いつだって、なんだかやけに青みがかって見えるんだ。

その青さは、そのときボクが彼女に抱いた感情をあらわしている色なのだろうか? 
青、――はたしてボクはあの頃、心でなにを思いながら彼女と過ごしていたのだろう?

(そういえば、すっかり蝉の声がしなくなったな)
ほんの数週間まで街の空気を振動させ続けていた「夏の風物詩」が、潔く鳴りやんだ深緑の影をボクは見上げた。――



【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】




【2012.03.21 記事原文】

さて。ピーター・セテラといえば、やっぱしシカゴの歴史的バラード
「Hard To Say I'm Sorry(素直になれなくて)」ですよね♪

ボクが中学生の頃の風景が鮮やかに蘇る名曲。


でも…シカゴは、さほど売れていなかった頃のほうが好きだな。






Hard to Say I'm Sorry / Get Away - Chicago XXVIHard To Say I'm Sorry(素直になれなくて) - シカゴ
アルバム『Chicago 16』 1982年



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