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未来に残したい洋楽&邦楽の名曲

70~80年代の洋楽&邦楽を中心に未来に残したい名曲&名盤を独自にチョイスするBlogです☆
未来に残したい洋楽&邦楽の名曲 TOP > 2013年11月

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【Re-Edit×2nd】 うつろな愛 - カーリー・サイモン 【70年代ロック】

【Re-Edit×2nd】【70年代洋楽ロックの名曲】


You're So Vain





Epi-28

 その当時、ボクが何歳だったか覚えていない。が、小学校の頃に一度聴いただけで、メロディが鮮明に焼きつけられてしまった洋楽曲がある。それからかなりの歳月が経っていたけど、なにかの拍子に時々、いまでもそのメロディのフレーズがこころのなかで蘇ってたんだ。……

 1983年8月6日(金) 中学3年の夏休み
 午後9時少し過ぎ

 夏休みに入り、ついこないだ、ふと、イトコの兄貴の部屋でその曲のことを思い出し、ボクはアコギでそのメロディのフレーズを弾いて聴かせた。

「あのさぁ、こんな感じの曲って知ってる?」

 ギターを弾きながら兄貴に訊ねると、

「あぁ、カーリー・サイモンの『うつろな愛 (You're So Vain)』だべ、ミック・ジャガーがバックコーラスで参加してるっていうよぉ」

 と、兄貴はセーラムを咥えながら、そういって笑う。

「兄貴は、そのアルバムって持ってないの?」

 ボクはようやくタイトルが判明したその曲を一刻も早く聴いてみたかった。けれど、結局、兄貴はそのアルバムを持ってはおらず、その代わり、なぜかローリング・ストーンズのアルバム『刺青の男(Tattoo You)』をレコードプレーヤーにセットした。

 最近、このオープニングトラック「スタート・ミー・アップ(Start Me Up)」のライブPVをテレビで観たけれど、ストーンズの楽曲のなかでは個人的にはかなり好きだ。――といってみても、ボク自身、これまでストーンズのアルバム自体、ほとんどまともに聴いたことはない。

 彼らの楽曲中、ボクが一番好きなナンバーは、唯一、兄貴にダビングしてもらったアルバム『女たち(Some Girls)』に収録されてた「ミス・ユー(Miss You)」。――

 この抑え気味に纏(まと)わりつくようなミディアムスローのダンスナンバーで、カッティング気味に弾(はじ)かれてるリズムギターがすごくイカしてたし、なんといっても間奏パートで挿入されるハミングのアレンジがアンニュイでやたらカッコよかった。

 それ以外のストーンズ初期の有名なナンバーに関しては、正直あまり聴いたことがない。 
 ボクは寝転がると、音楽雑誌のページをめくり、咥えていたセブンスターの先に兄貴のジッポで火をつけた。けれど兄貴の部屋は暗すぎて、相変わらずに、ほとんど字なんて読めやしなかった。――

 翌日、ボクは朝起きるなり慌ててレコード店へと向かう。
 地元のレコード屋を数軒まわってみたのだが、この「うつろな愛」が収録されたカーリー・サイモンのアルバム『ノー・シークレッツ(No Secrets)』がリリースされたのは、すでに10年も前のことらしく、どの店にも置いてなかった。けれど、どうしても諦めきれずに仕方なく、隣町のデパートまで出掛けていき、ようやくそれを見つけることができたんだ。

 早速、家に帰ると、LPをレコードプレーヤーにセットする。
 ボクは3曲目に収録された「うつろな愛」の手前の溝に針を落とす。やがてくぐもったベース音が爪弾かれると、静かにアクセントをつけたアコギのストロークがインし、4小節目の中間からキックとピアノが乗っかってきた。

 両手で鍵盤の和音コードを叩くようにしながらカーリー・サイモンが歌いはじめる。――その瞬間、本当に心が震えてたんだ。このせつないメロディに触発されて、一気に過去の様々な記憶が蘇りはじめたからだ。

 いったん針を持ち上げ、アンプのボリュームをあげると、ふたたび「うつろな愛」をあたまから聴きはじめる。なぜこのメロディが、幼かったボクの心にこれほど鮮明に焼きついてしまってたのかはよくわからない。

 けれど改めて聴いてみると、たしかにすごいメロディなんだろうなって思う。決して美しく感動的なバラードソングというわけではないが、圧倒的なほどの悲哀が随所に滲(にじ)み、そのメロディからは、茫然たる情念みたいなものが絶えず解き放たれている。サビのあたまで重苦しいマイナーコードから、一瞬だけ「カラッ」としたロック調に転じるが、ふたたびサビの終わりからは2番のAメロへと繋がるマイナー調に戻っていく。

 揺らぐ哀愁の余韻に浸るボクは、どうしてもいまだにマレンの面影を、すぐ心に映し出そうとしてしまう。「失恋」という感情がどういうものかなんてこと、いままで全然わからなかったけど、きっとようやく気づいたのだろう。

 彼女と過ごした日常の些細な出来事のひとつひとつが、出会った頃まで一気に巻き戻されていき、そのときは別に気にもしなかったような、風になびいたマレンの長い黒髪のしなやかな毛先の動きさえもが、鮮明に心のなかに映し出されていってしまうんだってことを。――けれど「この記憶の映像は現実なんかじゃない」ってことを、同時に心は少しづつ受け入れていく。

 それが完全に意識のなかに受け入れられてしまったとき、きっとじんわり深い哀しみは、虚しさとなってはっきり認識されはじめるのだろう。「その人がいない世界に自分がいる」ってことにようやく気づかされるのだ。

 同じように思えてたけど、後悔は、哀しみとはまったく別の感情だ。
「原因が自分にある」と、わかってしまってるからこそ、人はそのときの行為や言動をずっと後悔し続ける。

 そう、これは決して哀しみではない。きっと自分自身に対する苛立ちや憎しみなのだ。――――



【2012.03.20 記事原文】

ボクが幼い頃に、いとこが持っていたカーリー・サイモンのアルバム。
いとこの家で2回程度聴いただけなのに、40年近く経った今でさえ、
強烈にそのメロディが心に刻まれている名曲「You're So Vain」。


しかし、当時は誰が歌っていたのかも分かないままに数年が過ぎ、
だいぶあとになって、ようやくその曲のタイトルを知ったのである。


当時4歳くらいのボクが、なぜ、この曲に
それほどまでのインパクトを受けたのか。。。


「ホンモノ」が持っている力は、年齢に関係なく、
ダイレクトに突き刺さってくるものなのだなぁと思う。


果たして今の若い人たちは、この曲に何かを感じるのだろうか?
もしくは「古臭いね!」と簡単に吐き捨てるのだろうか??


ん?Wikiに書いてあるけれど、この曲って
バックコーラスにミック・ジャガーとポール・マッカートニー
が参加してたの?あ~確かにミックは歌ってるねぇ!






You're So Vain - No SecretsYou're So Vain(うつろな愛) - カーリー・サイモン
3rdアルバム『No Secrets』 1972年
アルバムお薦め度「☆名盤です☆」

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【Re-Edit】 幸せになりたい - 内田有紀 【バラード】

【Re-Edit】【90年代バラード】


幸せになりたい



内田有紀 / 幸せになりたい


Epi-27

 誰かに聞いたような気がする。

「7秒のあいだに存在する過去と未来の中心が現在である」のだ。と、……

 いや、もしかしたら「7秒づつの過去と未来の接点が現在である」だったかもしれない。
 でもそれ以来「現在」ってのは、わずか7秒間の出来事をさすものなのだ、と勝手に覚えてしまったし、なんとなくその数字には納得できた。

「1秒先が未来である」とか「1秒前が過去である」とかって物理学的な時間の単位で「現在」は定義されるものだ。――とかっていわれても、あまりにありきたり過ぎてしまって、いまひとつピンとはこない。なんら根拠がなかろうと、「7秒」という単位には、なんとなく説得力みたいなものを感じたんだ。

 けれど、もしそれが正しいとしても、間違いだったとしても、すぐ目の前に見えている、たった1秒先の未来にボクらが追いつくことは決してない。それだけは確かだ。ボクらの意思とは無関係に、常に1秒づつの過去を永遠に積み重ねていきながらボクらの「いま」は、ただ一方向、未来へとだけ流れ続ける。わずか7秒のあいだに現実と理想を共有させ合いながら、ボクらはただ、ひたすら「いま」を生きている。……

 1983年6月15日(水) 中学3年の一学期
 夕方の午後3時半頃

 最初にその病名と聞いたときにはちょっとだけ安心したんだ。
 ボクの親戚にもその病気にかかってる人は何人かいるけど、普通に食事もしてるし平気で酒も飲んでたから。――
 川澄マレンもどことなくほっとした様子だったが、彼女のお母さんは結局、しばらく入院することになったみたいだ。彼女に父親がいないということは、去年、羽田空港で彼女がこぼした言葉からなんとなく察してはいた。けれど、その理由をボクからは一度もマレンに訊いたことはないし、彼女から話したこともない。

「お母さんが入院してるあいだってさぁ、川澄はひとりで家にいるの?」

 梅雨晴れの空、南からの生暖かい風が、ボクの言葉を彼女のほうへと運んでいった。

「あたしねぇ。ちょっとだけおばあちゃん家に住むんだよ」

 その風に長い黒髪をもて遊ばれながらマレンはそういう。

「ん? おばあちゃん家ってどこだっけ?」

 と、ボクは訊ねる。

「鎌倉なんだけどねぇ。まぁ、ちょっとのあいだだからさぁ、学校まで電車で通うんだよ」

 長い黒髪をピンク色のヘアゴムで結びなおして、マレンは電車通学ができることを少し自慢げに笑った。どうやら鎌倉からは大体1時間くらいで学校まで通えるのだという。

「あぁ! もうヤダぁ!」

 時折強く吹きつける潮風のせいで、なかなか上手くいかずに彼女は何度も横に垂れ下がる髪の束をヘアゴムで結びなおしている。

「あっ」と叫び、ボクの横顔を見つめてマレンは突然、話題を変えた。

「そういえば修学旅行ってさぁ、カミュちゃんとは違うグループなんだよ。あたしさぁ、カミュちゃんのグループのほうに行っちゃおうかな」

 そういって、マレンは「クククッ」と笑った。

「いいじゃん。どうせ夜のホテルは同じなんだからさぁ、昼は別々でも」

 秋に行く予定の修学旅行は、どういうわけだか偶数クラスと奇数クラスに日中の行動が分けられてしまっていた。ボクは偶数、彼女は奇数クラスだったんで、宿泊するホテルは一緒だけれど、昼間はそれぞれが別々の場所へ行くことになるらしい。彼女はなんだかそのことが納得できないようだった。

「え~っ、つまんないじゃん。それじゃぁ意味ないじゃん」

 と、マレンは少しふてくされる。

「ホテルで夜遊べばいいんじゃねぇの?」

 と、ボクは彼女の横顔にささやく。

「だって部屋が違うでしょ?」

 しばらくマレンは「ブツブツ」いっていたけれど、やがてなにかを思い出し、いつものように薄茶色の大きな瞳を輝かせる。

「でもさぁ。ディズニーランドには絶対に行こうね!」

 そういえば今年、ディズニーランドが千葉のほうにオープンしたらしい。ついこないだ夏休みにマレンと一緒に行こうって約束をしたばかりだった。

(でも、はたして夏休みに行ったところで、何時間も待たされるような乗り物なんて、ほとんどなにも乗れないんじゃないのかな)

「いま行っても、すげぇ混んでるんでしょ? まぁ、あと10年もすれば、だいぶ客とかも少なくなるだろうけどねぇ」

 ボクはちょっと意地悪くそういって笑う。マレンは予想通り、大きな瞳に哀しみを浮かべた。なんだか可哀想になったんで、しょんぼりした彼女の右肩を軽く叩いて、

「冗談だって! わかったよ。いいよ、夏休みに行こうよ」

 と、笑いかけた。マレンはすぐに笑顔へ戻り、ボクの左腕に「ニッコリ」微笑んだまま、顔ごとしがみついてきた。

 夕暮れの風には新緑の香りと微かな潮の匂いが混ざり合っている。それはきっと、この街にしかない独特の風味なんだろうなって思う。――――



【2012.05.14 記事原文】

内田有紀さんも宮沢りえさんもそうだが。。。
なんで歌うのかね???とは率直に思う。

でも、この「幸せになりたい」を初めて聴いたとき、
まぁ当時のボクを取り巻くシチュエーションもあったんだろうが、
静寂のなかに漂う哀しさ?みたいなものがダイレクトに伝わってきて、
ものすんごく胸を締め付けられたのである。


無論、広瀬香美さんの楽曲センスも無論良いんだろうけど、
冬の痛いくらいの寒さを思い出させる一曲です☆

まぁ内田さんの場合、デビュー曲がねぇ・・・あれですからねぇ・・・
でも最近、彼女はキレイになったなぁと感じます!



幸せになりたい - 内田有紀
4thアルバム『nakitakunalu』 1996年



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【Re-Edit】 クッド・ユー・ビー・ラヴド - ボブ・マーリー&ザ・ウェイラーズ 【80年代レゲェ】

【Re-Edit】【洋楽レゲェの名曲】


Could You Be Loved






Epi-26

 1983年9月3日(土) 中学3年の二学期
 午後9時過ぎ


 隣の家に住む、ボクの3学年上にあたるイトコの兄貴は、高校に入ってから「なんとかウィザード」って名前のバンドを組んでるみたいだ。素人バンドながらもそれなりにいろんなライブハウスで演奏しているらしい。自慢の長髪を団子状にうしろで結わいてる兄貴が、いきなり訊いてきた。

「そういやぁカミュ、オメェ最近ギター演(や)ってんのけ?」

「いや、最近はあんまり弾いてないけどね」

 ほとんど文字が読めない暗がりで、音楽雑誌を眺めながらそういうと、ボクはセブンスターの火を山盛りになった灰皿の奥のほうに突っ込んで揉み消した。

 兄貴はむかしから数種類の洋モクをいつもその日の気分で吸い分けている。まぁロックギター演ってるヤツが国産タバコじゃ、やっぱり格好つかないだろうなぁとはボクも思う。最近は、どうやらキャメルとセーラムを好んで吸ってるみたいだ。

 彼のこだわりは、なんといっても使い古され変色したゴールドのジッポでしかタバコに火をつけないことだろう。それ以外で火をつけると、どうやら味がマズくなるらしい。でもボクはジッポで火をつけたほうがオイルの匂いが付着してマズくなる気がする。


「……オメェって、レゲエとか聴くか?」

 と、ふいに兄貴が訊いてくる。

「いやぁ、レゲエはなんかつまんないから聴かねぇなぁ」

 と、いいながらボクはテレキャスターをイジる。

「クラプトンだってよぉ、レゲエでボブ・マーリーをカヴァーしてんだぞ」

 そういうと兄貴は立ちあがり、レコード棚からLPを引っ張り出す。そして無造作に床へジャケットを投げ捨て、プレーヤーに盤を落とした。

 やがて彼はステレオの脇にある机の引き出しから『何か』を手にし戻ってきた。しばらくするとスピーカーから、ゆるくギターを刻むレゲエ独特のリズム音が聞こえてはじめる。

「オメェ、まだコレやったことねぇべ」

 兄貴は、うすぼんやりした部屋のなかで「ニヤッ」と笑う。いびつにねじれた太い手巻きタバコのようなものを一本ボクに手渡してから、もう一本を自分の口に咥えジッポで火をつけた。ただよってくる匂いは明らかにタバコのものではない。煙の濃さもなんとなくタバコのそれとは違って見える。

 兄貴は深くその煙を吸い込み、そしてゆっくり吐き出した。

「……これってマリファナ?」

 ボクはなんとなく訊いた。

「まぁ『大麻』ともいうがね」

 と、兄貴は笑う。

「へぇー、こんなの普通に買えるもんなんだぁ」

 ボクは興味深く、手にしたソレを眺めた。

「都内に行けばどこのライブハウスでも売ってんよ。でも『混ぜ物』も結構多いんだけどコイツはホンモノだぞ!」

 そんな兄貴の言葉を聞き終えると、特にためらうこともなくソレの先に火をつける。

《大物アーティストはみんなマリファナを吸っている》

 むかしからそう聞かされていたせいか、罪の意識なんかより「それがどんなものなのか」という憧れや好奇心のほうが遥かに強かったんだ。煙をゆっくりと吸い込んでみる。タバコよりもわずかに重く、燻されてない樹木成分の青苦さがほんのり感じられた。でも別にムセるほどのキツさでもない。

「すぐに吐き出さねぇで、吐き出した煙も、こうやってまた吸うんだよ」

 兄貴はそういうと、口に含んだ煙を握り締めた左拳のなかに吐き出し、そこから浮かびあがってくる煙をふたたび吸い込んだ。ボクもそれを真似てみる。

 さっきから流れているレコードは、どうやらボブ・マーリーらしかった。同じテンポと同じようなリズムギターのカッティング・リフが何曲も続いていくうち、そのサウンドがマリファナの煙とともにカラダのなかにじんわり浸透しはじめる。やがてだんだんと心地よい浮遊感が訪れてきた。けれど酔っ払うのとは、少しばかり感覚が違うみたいだ。

 ボクは床からボブ・マーリーのLPジャケットを拾いあげる。
『アップライジング(Uprising)』というアルバムらしいけど、ジャケットのイラストがなんとなく面白かった。ボクはそのことを兄貴にいおうとした。

「このジャケットってさぁ、……」

 そこまでいった瞬間、なぜだかわからないけど、おもわず吹き出してしまった。――そして、それっきり笑いがまったく止まらなくなってしまう。

(なるほど、これが『ハイになる』ってヤツか?)

「ジャケットぉ? ジャケットがなんだよぉ?」

 そう訊く兄貴も、ボクがあまりにもひきつりながら笑い続けてるんで、つい、つられて笑い出す。兄貴のくっきりとした二重まぶたは、よく見るとトロけて垂れ下がり、すっかり一重になっている。

(兄貴! なんか顔が変だよ)

 と、いいたくても、もはやそれすらいえない。ひと言も発せられぬほど強制的に激しい笑いが次々と内側からこみあげてくる。でも、【笑いが止まらなくなる】という症状以外には、特に身体的変化はないように思えた。

 兄貴は立ちあがり、LPをB面に変えながら間延びした口調でいった。

「やっぱ『コレ』キめるときは、ボブ・マーリーが一番トベるんだよ」

 ボクはジャケットの裏に書かれたトラックリストを眺める。A面よりはなんとなく落ち着いたサウンドアレンジの曲が続く。マイナー調で暗い感じの1曲目「ザイオン・トレイン(Zion Train)」が終わる。続く2曲目の「ピンパーズ・パラダイス(Pimper's Paradise)」はレゲエ調バラードっぽい、アダルトコンテンポラリーなナンバーだった。

 トラックリストを眺めながらボクはずっとマリファナを飲み込んでいた。やがて3曲目の「クッド・ユー・ビー・ラヴド(Could You Be Loved)」が流れはじめた途端、そのリズムが完全に鼓動とシンクロし、カラダが勝手に動き出した。目力がまったく入っていない幸せそうな顔した兄貴に向かって、

「兄貴! この曲すんごくいいねぇ」

 ――――ボクはたしかにそういったのだ。――――

 誰かに呼ばれている気がした。
 「ハッ」と我に返ると、兄貴がトロけた眼差しでボクのことを見つめている。

「おーい! 大丈夫かぁ?」

 ボクは、やっといままで見ていた光景が「幻覚」だったということに気づく。けれど、どこからが幻だったのかはまったくわからない。それがあまりにもリアルに現実の風景と一体化していたからだ。

 そう、――つまりは、あたまのなかで描き出される何気ない空想のシナリオが、一言一句、現実の景色のなかになんら違和感なく溶け込んでたんだ。ボクがさっき、兄貴に対して「この曲はすんごくいいねぇ」と、告げてたシーンは明らかに幻覚のなかでの出来事だった。

(えっ、ホントにさっきのが幻覚だったのか? いまだって、普通にちゃんとあたまもまわってるのに、……やっぱヤバいな。こんなのキめて外なんて出たら、なにをしでかすかわかったもんじゃない)

 ボクは想像以上の幻覚効果に、少しだけ恐怖を感じた。

「まぁ、大麻はすぐ抜けるから大丈夫よぉ。『麻(あさ)酔い』は二日酔いより全然楽なんだよぉ。それにタバコよりもカラダに害もねぇし。まぁ所詮『ハッパ』だからな」

 と、一重になった目を垂れ下げながら、兄貴は「ヘラヘラ」笑ってそういった。




【2012.03.17 記事原文】

想うに。。。

どんなにそのアーティストが好きでも、全部のリリース作品を持っている人が
非常に少ないと思えるアーティストは誰?
と聞かれれば。。。



ボクとしてはボブ・マーリー&ボブ・ディランだろうなと。
※まぁボブ・マーリーの場合、オリジナル以外の企画盤がやたら多いのだが・・・


いわずもがなレゲェスタイルの先駆者であるB・マーリーであるが、
多くのベスト盤に収録されている曲は、ほとんど明るいものばかり。
でも実際に歌ってる内容は、主に人種差別や労働差別の話なのだから、
メジャーキーで歌えない曲もそれなりに多い。


クラプトンにもカヴァーされた「シェリフを殺っちまった~♪」
みたいな感じの世界???


従って、オリジナルアルバムには、
暗い作品ばっかりなのも無論ある。

ボクもそれなりに揃えたほうだが、
1度しか聴かなかったアルバムも結構ある。



今回紹介する「Could You Be Loved」は、
彼の晩年、1980年にリリースの12thアルバム『Uprising』に収録された、
B・マーリーの楽曲では、やや色合いが違う作品。
まさにレゲエとグルーヴィーなベースラインが融合した名曲です。



基本的にベスト盤は紹介したくないのですが、
オリジナルアルバムよりも、この曲が収録されているベスト盤
『Legend』のほうがお薦めです♪

※ただ「コンクリート・ジャングル」が入ってないのが個人的に残念。。。







Could You Be Loved - ボブ・マーリー & ザ・ウェイラーズ
ベストアルバム『Legend』
アルバムお薦め度 「☆名盤です☆」



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【Re-Edit/2nd】 アイム・ノット・イン・ラブ - 10cc 【70年代バラード】

【Re-Edit/2nd】【70年代洋楽バラードの名曲】


I'm Not In Love






Epi-25

 1983年6月13日(月) 中学3年の一学期
 夕方の午後3時半前

 ヘッドフォンから流れはじめたイギリスのバンド、テンシーシーの「アイム・ノット・イン・ラブ(I'm Not In Love)」――

 その淡く儚げな旋律は、生ぬるい空気をしっとり湿らす梅雨空が生み出す時間の流れと違和感なくシンクロし続けている。

 小雨そぼ降る学校帰り、曲が終わるとボクは左耳に挿してたヘッドフォンを外し、隣を歩くマレンに訊ねた。

「そういえばさぁ、お母さんの検査結果ってどうだった?」

 それは、もしかしたら単に太陽を遮る薄曇りの空のせいだったのかもしれない。――でも、いつもとは少しだけ様子の違う彼女のよそよそしい態度に、なんとなくボクのほうから「そう訊かなきゃいけない」ように思えてきたんだ。

「うーん、まだはっきりとは、いってくれないんだけどね。……」

 マレンはヘッドフォンの一方をボクに手渡しならそういった。水色の傘で顔は隠れていたけれど、きっと彼女は、ずっとうつむきながら話しているんだろうな、と思った。
 やがて少し時間を置いて、

「――でも、やっぱりちょっと入院するみたいなんだよ」

 と、マレンは弱々しい口調でそうつぶやく。

「えっ! そうなんだ、……でもさぁ、ウチの親父も、ついこないだ入院してたしねぇ」

 無理やり明るくそういってはみたけれど、さほど慰めにもならないような、そんな言葉くらいしかボクには思い浮かばなかった。

(こんなこといわなきゃよかったな)

 と、いってしまってから少しだけ後悔する。――

 マレンは、こないだはじめて「結婚」という言葉を口にした。彼女がどの程度ホンキでいっていたのかはわからない。別にそのことを深く考えたりはしないんだけど、なんとなくその言葉の「重み」みたいなものだけが、残響として、いまだにボクの心のどこかでこだまし続けているのは確かだ。

「もし、マレンと一緒に暮らすんであれば、それならそれで構わない」と、思いながらも、永遠に彼女と一緒に暮らすことに対しては、いますぐ即答することができなかった。「即答してもいいかな」と、思える瞬間は何度もあったけど、結局は、その答えを意味なく先延ばしにしようとしている。

 あの日、「結婚」という言葉のなかに含まれたリアルな未来に触れたとき、ある種の拒絶反応が起きたのだ。なんだか自分の未来を一瞬、ものすごく間近に感じてしまったんだ。――

 中学を卒業してからの自分のことなんて、いままでなにも考えたことなどはない。ましてや「将来、なにをするか」なんてことは、もっとずっと先に考えるものだと勝手に思ってた。だから、あのとき感じた感覚は、「未知なる未来からの逃避」、……もっと厳密にいえば「みずからの人生を、みずからで決断することからの逃避」だったんだろうと思う、たぶん、きっと。――

「だからさぁ、このあと、家帰ったらお母さんの入院の準備とかいろいろ手伝わなきゃいけないのよねぇ」

 マレンは、ため息とともに言葉を吐き出す。

「どのくらい入院するとかってわかってんの?」

 と、ボクは傘で隠れた彼女の横顔に訊ねた。

「うーん、そうねぇ、……でも長くても10日間くらいだとは思うんだけど」

 マレンは左の掌を空にかざしながらそう答えると、ちょっとだけ雲を見上げて水色の傘をたたみ、ようやく今日はじめてボクのほうをちゃんと見つめた。そんな彼女の大きな瞳には、不安と哀しみの色が同時に浮かびあがってた。

(きっと大丈夫だよ!)――そういうべきなんだろうと、ボクはそのときとっさに思った。 
 けれどそんな言葉じゃ、いま彼女が抱えている不安をすべて消し去ることなんてできないだろうな、とも思っていた。――やがて、

「あっ、そうだパル! 今年の夏休み、ディズニーランドに連れてってよ」

 と、マレンは急に、少しだけ笑顔を浮かべてそういうと、また、足元の水溜りを見つめた。

「あぁ、別にいいよ」

 ボクは、無理して微笑む彼女の横顔を見つめ続けていた。

「なんか、ここんとこお母さんのことがちょっと心配だったんでさぁ、もしね、お母さんが退院したら、すんごく楽しいことがやりたいんだよねぇ。もうとにかくハジけたいんだよぉ。だから、とりあえずはね、まず『ディズニーランドには絶対行く』ってもう決めたんだ。わかった? パル、絶対行かなきゃダメだよ?」

 ボクは黙って頷いた。――

 ――最近、いや中3になってからだろうか。彼女はボクのことを以前のように「パル」とは呼ばず、名前を「ちゃん」付けで呼ぶようになったんだ。まぁ、彼女以外、誰もボクのことを「パル」などとは呼んでなかったし「なんでパルなの?」と、いろんな人から聞かれるのにもなんだか疲れてたんでちょうどよかった。

 そもそも「渋谷のパルコが好きだから――」なんて冗談に決まっているのに、それをすっかり真に受けた彼女もちょっと問題だとは思うんだけど、……

 このところ、ほとんど間違わなくなっていたけれど、今日にかぎってマレンは中3になってから呼びはじめた「カミュちゃん」じゃなく、ボクのことを、むかしみたいに「パル」って時々呼んでいる。

 ボクのほうから、なにか違う話題を探さなきゃと思ったけれど、マレンが無理して『いつもの通りの彼女』を装っていることが痛いくらいに感じられ、なんだかものすごくせつなくなった。そして、ボクは彼女のことを、とにかく無性に抱きしめたいと思ってたんだ。

 それはクリスマスの夜のときとは明らかに違う感覚なんだろうと思う。哀しみを抱え込んだ、いまの彼女を救えるものは、きっと安易な慰めの言葉なんかじゃない気がしたんだ。

「ポツリ」――やがて、雨粒がひと粒、頬に当たる。
 結局、彼女を抱きめることも慰めることもできぬまま、足元の路面がだんだんと黒い粒状の染みで重たく覆われていくのを、ただボクは眺めていた。濃い灰色の雲を見上げてマレンがつぶやく。

「絶対だよ! ディズニーランドだからね」

「いいよ。わかった。ディズニーランドでもドリームランドでも、どこでも行こうよ」

「んもう! ちゃんとディズニーランド行くんだからね。……ちゃんと絶対一緒にきてね。カミュちゃん、……」

(やっと『カミュちゃん』って、呼んだな)

「わかったよ、――」

 当然、マレンのお母さんの容態とディズニーランドが同じ「重み」なわけなどない。でも、いまの彼女にとって、ディズニーランドに行くことだけが唯一の心の拠りどころなんだろうな。「その年齢はもう大人だ」と、ボクが勝手に思ってるだけで、彼女はまだ、たかだか15歳の少女に過ぎないのだ。

 マレンがいま、もう一度ホンキで「結婚して欲しい」と、この場でいったのならば、きっと「いいよ」って、すんなりいえそうな気もする。だけどボクからは、その言葉を彼女に伝えることがどうしてもできない。

「いつか結婚しようね」って冗談ぽくでも、もしいえば、少しはマレンが救われるんだろうなって、……ずっと思っているくせに、――――




【2012.03.23 記事原文】

せっかくなんで「Artists United Against Apartheid」
の参加にクレジットされている何人かのアーティストの名曲を
ご紹介していきたいと思う。


まずは 10ccの3rdアルバム『The Original Soundtrack』から
コーラスアレンジが斬新な彼らの代表曲となったバラード
「I'm Not In Love」をどうぞ♪






I'm Not In Love - テン・シー・シー
3rdアルバム『The Original Soundtrack』 1975年
アルバムお薦め度「持っていても良いでしょう」

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【Re-Edit】 星空のディスタンス - アルフィー 【ロックの名曲】

【Re-Edit】 【邦楽ロックの名曲】


星空のディスタンス





I selected "Distance of a Starlit Sky "
from 8th album "Lifetime" of The Alfee released in 1984.



Epi-24
 
 今年の春、マレンに贈った曲の歌詞をここ数日、なぜだかやたらと思い出してしまう。もしかしたらマレンは、あのとき渡したカセットテープをいまはもう聴いてないのかもしれない。

 けれどあの曲はマレンだけに伝えるため、何度も繰り返し「これでいいのか?」と歌詞の中身を心に問いかけ続けた果てに生み出されたあの頃のボクの決意だ。――それに、そんな想いが音としてちゃんと残されてるものは、彼女に渡したあのカセットテープ、ただ一本だけしかない。

 だから、もしマレンがあの曲をもう二度と聴くことがないとするのなら、彼女に対するボクの想いは、もはやその存在理由を失って、きっとこの世界からは永久に消え去ってしまうことだろう。――けれど、それならそれでも構わない。

 誰かを大切だと想う気持ちって時間と比例していくものなのだろうか? 一緒に過ごした時間のぶんだけ、その気持ちは大きくなっていくものなのだろうか?

 ――――それは違うと思う。――――

 きっと一緒に過ごす時間の長さじゃなく、互いの距離の問題だ。

 近くにいると、全然気づかないものなのかもしれない。けれど、その人との現実的な距離が離れれば離れるほどに気づかされてゆくんだ。

「どれほど大切だったのか」を。――

 距離の近さは心に安らぎを、そして距離の遠さは、せつなくなるほど愛しさをボクらに教えてくれるものなのだろう。ふと、なにかのきっかけでマレンの笑顔が心のなかに映し出されてしまうと、えもいわれぬほど寂しい気持ちになってしまう。

 その寂しさはいつだって心のなかのどこか、――微笑むマレンが記憶されてる心のどこか深いとこまで、ボクを引きずり込もうとしてくんだ。彼女と会わなくなってから、そういう瞬間が夜、眠りに就く前よく訪れる。そして、そんなときだけは、ものすごく「誰かと一緒にいたい」と痛切に感じてしまう。

 ズルいことかもしれないけれど、もし佐藤マキコが隣になんていたならば、容易く彼女を抱きしめてしまうんだろうな。きっと、…………

 マレンがこの街を引っ越すことが急に決まった、あの6月の大雨の夜。
 結局、ボクはちゃんとキミを見送ることができなかったんだけど、……

「もし鎌倉に引っ越したからって、なにも転校するわけじゃないんだからさぁ」

 前日に「だから見送りにこなくていい」って、受話器越しにキミからいわれ、ボクはつい「そうだね」って答えてしまったんだよね。

 でもね、マレン。……

 本当はあの夜、キミの家に行ったんだよ。最初は行くつもりなんてなかったけれど、なんだか勝手に想像しちゃったんだ。

「本当はボクに見送りにきて欲しかったんじゃないのか」

 って、ね。

 一度そんな想像をしてしまったらどうしようもないほどボクのなかでそれが現実に変わっていってしまったんだよ。ボクを待ってるマレンの姿が心のなかから、なんだか全然消えなくなっちゃったんだ。

 あの夜、――
 煌(きら)く閃光が西の空を覆った暗雲を真っ白に明滅させ続ける雨のなか、ボクは傘もささずに駆け出していた。――。なにか特別な言葉を伝えたかったってわけじゃない。来週になれば学校でも会えるはずなのに、そんなことさえ忘れてしまって、ボクは上空に稲妻が光るキミの家のほうへと向かって走り続けた。

 キミがこの街に残した14年足らずの思い出を途絶えさせる最後の瞬間を、ボクはただ一緒に過ごしていたかったんだ。

 やがて雷鳴が天空を震わせて激しい豪雨を呼び起こす。ほんの数秒ですっかりずぶ濡れにされてしまったボクがキミの家に辿り着いたときにはもう、すでにキミはこの街からいなくなってしまってたんだけどね。――

 すっかり人の気配が消えてしまった彼女の家の前に立ち、もしかしたらボクがくるのを本当はずっと待っていたかもしれない、そんなマレンが湛えた哀しげな瞳の色を勝手に想像しながらボクは彼女の面影をスクリーン状に降りしきる雨のなか、ずっと映し出していた。

 心のなかで何度もマレンの名前を叫びながら、ボクはひたすら後悔し続けてたんだ。ちゃんと彼女を見送ってあげられなかったことを。――この街を去って行く彼女の寂しげな瞳の色を見つめながら、最後にちゃんと笑いかけてあげられなかったということを。――――



【2012.06.28 記事原文】

先日、ボクのブロとものmikaさんが
アルフィーの高見沢氏に顔が似てるとカミングアウトしてましたので。。。


高見沢氏が突如フライングV(でしたっけ??・)をかき鳴らす以前から
彼らのフォーキーなアルバムは、さだまさしフリークのイトコの影響で
かな~り聴かされてましたけどねぇ・・・
ですんで初期アルフィーに関してはツウです(笑


まぁ、日本音楽史に残るイメチェンを果たした彼ら☆
ハードチューンにサウンドを変化させた「メリーアン」を引き継いでリリースされたのが
「星空のディスタンス」ですね♪


ドラマ『無邪気な関係』の主題歌で使われてましたが、
おそらく当時ではかなり画期的な楽曲の使用方法だったと記憶してます☆
かなりおぼろげですが・・・主人公が直前の演技のなかで、
ふとカセットかなにかを押した瞬間に主題歌が挿入される!みたいな。。。


ということで「星空のディスタンス」をチョイス♪
でも。。。。この曲は侮れませんね。。。

メロディアスロックな名曲といったら個人的には上位に入ります☆
何に収録されてるか不明ですがYにあったかなりロック色が強調された
リズムやリフの(Long Version)をどうぞ♪






星空のディスタンス - THE ALFEE 
8thアルバム『THE RENAISSANCE』 1984年


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【Re-Edit/3rd】 いとしのシェリー - ムービング・ピクチャーズ 【80年代ポップス】

【Re-Edit/3rd】【80年代洋楽ポップスの名曲】


Sweet Cherie





I selected "What About Me"
from 1st album "Days of Innocence"
of Moving Pictures released in 1982.




Epi-23 

1983年8月7日(土) 中学3年の夏休み
 夕方の午後5時過ぎ、

 不思議と人の気配が薄れてしまった夕暮れどき。あらゆる物音は、かげろうのように揺らめきながら、そこらじゅう存在してはいるけれど、 降り注ぐ太陽熱に溶かされて住宅街の風景とすっかり融和しているみたいだ。 ――
 
 日暮れのビーチに残されたサンオイルのねっとり人工的でどこか不自然な甘み、草木の吐き出す真新しい息吹きや生き物たちが蠢(うごめ)く微かな余香。――それらが複雑に交じり合いつつ調合されて、一斉に大気へ放出されてるせいなのだろうか? この季節の風にだけは、唯一「夏色」とでも呼ぶべき青く滲んだ光の色味を感じ取ることができるような、――そんな気がする。

 小学校のときクラスメイトだった佐藤マキコとは、中学3年になってからふたたび同じ教室のなかで出会う。川澄マレンも顔立ちがすごくはっきりしてたけれど、佐藤マキコは小学生の頃から外国人のように透き通る色白の肌と大きな二重まぶたがものすごく印象的な女の子だった。

 それに「フワッ」と天然カールした金に近い茶色い髪を授業中、うしろに束ねている様は、まるでどこか英国あたりのテニス好きな令嬢のようでもある。
 
 去年の夏休み、中学に入ってからは一度も同じクラスになったことのない、……いや、ほとんどまともに会話すらしていなかったマキコから突然電話がかかってきて、

「どこかへ遊びに行こう」

 と誘われたことがある。――ボクが覚えている限り、それがマキコからもらったはじめての電話だったろうと思う。そのときはまだ川澄マレンとつき合ってたんで、結局どこにも行ってはいないが、そんな誘いの電話からちょうど一年が過ぎようとしていた今日の夕方、昼寝をしてると、ふたたび彼女から電話がかかってきた。

「盆踊りを見に行かない?」

 マキコはそう切り出すと、一年前に受話器の向こうでささやいた台詞を少し変化させながら最後に笑ってこういった。


「マレンと別れたんなら、もう遊びに行っても怒られないでしょ?」って。――

(そういえばクラスは違ったけど、マキコもマレンのことは小学校の頃から知ってるんだよな)

 寝ぼけながらボクは、つい、

「べつに行ってもいいんだけどね、……」

 って、答えてしまったもののあまり気乗りはしていなかった。

(っていうか、はたしてマレンとは、完全にもう別れてしまったのだろうか? ……)

 佐藤マキコのことが嫌いなわけではないけれど、ボクの心のなかはまだマレンの面影の欠片(かけら)ばかりで満ち溢れてしまってたんだ。しかも激烈な後悔の余情を伴いながら、……
 
 きっといまならば「はじめて誰かを失ってしまった」喪失感をボクに残して去っていったマレンに伝えられる言葉なんていくらでもあるんだろうな、とは思う。――――



 1983年9月2日(金) 中学3年の二学期
 5時間目の授業が終わる頃、

 オーストラリアのバンド、ムービング・ピクチャーズが去年リリースしたデビューアルバム『デイズ・オブ・イノセンス(Days Of Innocence)』の7曲目に収録された「いとしのシェリー(Sweet Cherie)」のエンディングフレーズがフェードアウトしていった。――

 ウォークマンの停止ボタンを押すとヘッドフォンを外し、ボクは南側の窓から晴れ渡る空を見つめた。
(しかし、昨日降った大雨はすごかったな。あの雨で、一瞬のうちに街の汚れがすべて洗い流されてしまったような気がする)

 このアルバム自体、まともに最後まで聴いたことなんてないけれど、中2のとき、ラジオから流れてきた「いとしのシェリー」を、はじめて聴いたマレンが、

「この曲ってさぁ、なんだか、すごくせつなくなる曲だねぇ」

 と、やけに気に入ってたんで、なんとなくLPを買ってみたんだ。たまたま今朝、カセットを選んでるとき、ふと、そんなマレンの言葉があたまをよぎった。そして、最近ほとんど聴くこともなくなってたこのアルバムのカセットを、ケースの奥のほうから探し出し、ウォークマンに挿し込んだんだ。――





【2013.05.10 記事原文】

オージー系ロックバンドであるムービング・ピクチャーズが
1982年にリリースしたUS1stアルバム『Days of Innocence』 ☆

ボクがこのアルバムを買った最大の理由は・・・
単にこの曲が聴きたかったからですねぇ☆

「Sweet Cherie」

まぁ今聴けば何てことない気もしますけど・・・
やはり当時の思い出のシーンと併せて記憶された曲って
どうしたって心に深く刻まれててしまうもんですわ♪


このアルバムジャケットって
当時 " ベストヒットUSA " で良く見た気がするんですけどね。

この曲自体は ビルボードチャートにランクインしてなかったんですね・・・

まぁ 確かにベストヒットって
「ラジオ&レコーズ」のチャートがベースだったんですけど

はて? 

この曲ってソッチのチャートではランクインしてたんだろうか???


まぁ どうでも良いです。。。


いずれにしたって 「Sweet Cherie」のイントロが流れると
この曲のメロディの中に染み込まれた中2のときのセピアカラーな思い出が
心の中に蘇り 何だか鼻の奥をくすぐられるような 
そんな郷愁の想いに駆られてしまいます・・・




【2012.03.21 記事原文】

軽~い演奏なのに ちょいギャップのあるシャウトめなヴォーカル。
何となく印象に残ってたのでムービング・ピクチャーズの
「Sweet Cherie」をご紹介しておきます。

どことなくチェッカーズのナンバーっぽくも聴こえるケドねぇ。




Sweet Cherie - ムービング・ピクチャーズ
1stアルバム『Days of Innocence』 1982年

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【Re-Edit】 ガラスのジェネレーション - 佐野元春 【ポップスの名曲】

【Re-Edit】【邦楽ポップスの名曲】


ガラスのジェネレーション





Epi-22

 1982年8月18日(木) 中学2年の夏休み
 おそらく夕方の午後5時過ぎ

 中学2年のボクたちは、これでもう、13回目の夏を迎えたことになる。
 残香(ざんこう)をわずかに湛(たたえ)え、地表からそっと解き放たれてゆく湿った熱気を、柔(やわ)かに冷ましていきながら薄暮(はくぼ)の空を彷徨(さまよ)い続ける夏の夕風。その涼風を頬のあたりにふと感じたとき、過ぎ去りし幼き夏の思い出が、一瞬心に蘇る。

 たそがれてゆく街のなか、絶えずたゆたうその風は、時間軸の規則性などないままに記憶のなかを自在に行き交う「タイムマシーン」と、どこか似ている。――たとえいまのボクがどれだけ変わってしまっても、どこでなにしていようとも、心の内面から直接投影されてくる真夏の情景は、鮮明なまでにあの幼き頃のままなのだ。

 庭先の静寂を絶えず震わす蝉時雨(せみしぐれ)、――その音は、さっきまでうつら見ていた夢のなかでも、ひたすらずっと鳴り響いてた。遅めの昼食を終えてから、すっかり寝込んでしまったボクは、ついさっきようやく目覚めたばかりだ。――

 けれど、はたしていまが明け方なのか、夕方なのか、すぐには判断できずいる。 ベッドの上、わずかに射し込む西陽を浴びて、ボクは雲ひとつない空を見上げた。

(あぁ、もう夕方か、……)

 開け放たれた窓から紛れる夕風が、蝉らの声と交わって、まるで呼吸をしているかのよう、琥珀に染まった白いレースのカーテンをゆっくり大きく膨らまし、やがて柔(やわ)かに萎(しぼ)ませてゆく。

 川澄マレンはお盆のあいだ、鎌倉のおばあちゃんの家に行ってるらしい。
 ここ数日、こうしてボクは、ただ時間をいたずらに消費しながらぼんやり毎日過ごしていた。

(やたら海へとばかり行きたがっていた小学生の頃とは、夏休みの過ごし方がすっかり変わってしまったな)

 いまのボクが休みのあいだにしていることといえば、――少しだけアンプのボリュームをあげ、一日中レコードを聴いてるか、せいぜい夕食のあと、隣に住むイトコの兄貴の部屋へ行き、タバコをくゆらせエレキギターを弾いているくらいなものだろう。たまにベッドに寝転がり、親父が買い揃えた歴史小説なんかを眠くなるまで読むこともあった。が、いずれにしてもこの3週間近く、ほとんど外出などはしていない。週に二、三度、川澄マレンと会ってた以外は。――
 
 ベッドから起きあがり、レコードプレイヤーとアンプの電源を同時に入れる。しばらくすると佐野元春のセカンド・アルバム『ハートビート』のオープニングナンバー「ガラスのジェネレーション」のポップなイントロが流れてきた。このLPは、たぶんこれまでボクが聴いてきた邦楽アルバムのなかでも、かなり再生回数は多かったはずだ。

 どのくらい聴いたかなんてよく覚えてないが、少なくとも中1になったばかりの頃は一時期、毎日このアルバムばかりを聴いていた。――

 昨夜、ある女の子から電話があったんだ。
 小学校の高学年までずっと同級生だった佐藤マキコとは、中学生になってから、まだ一緒のクラスになったことはない。うっすらと緑色した大きな瞳に、金色を帯びた赤茶色の髪の毛がすごく印象的な色白肌の彼女は、むかしからどことなく外国人の女の子のような雰囲気だった。

「――カミウさぁ。明日って、なにか予定あるの?」

 数年振りに話す彼女は、受話器の向こう側から突然、ボクにそう訊ねてきた。

「えっ、明日? 特にはないけど、……なんで?」

 とりあえずそう返事はしたけれど、久々に声を聞いたマキコから、いきなりそんな質問をされるなどとは思いもしなかった。

「もし暇ならさぁ、明日どっか遊びに行かない?」

 少しも動じず、マキコはまるで当たり前のような口調でそういった。

「えっ、2人で?」

 少しだけ動揺しながら、ボクはそう聞き返した。

 当時はまったく気づかなかったけど、いまにしてみればなんとなくわかる気がする。小学校4年のときから授業の一環で採り入れられた文化活動の時間、マキコはなぜか、いつもボクと同じ科目を選んでた。なんで女の子の少ないその科目をマキコが選んだのか、ずっと不思議だったんだ。

 それに、運動会で披露するダンスの練習をしてたとき、彼女の手を握った瞬間、幼いながらもほかの女の子とはちょっとだけ違うような感触を指先に覚えたりして、……まぁ、いずれにしたってあの頃は、恥じらいみたいな感情を単なる違和感ということで片付けてしまっていたのだろう。

 もしかしたら彼女が「小さな恋心」をボクに抱いてたんじゃないのかな? と思うようになったのは、つい最近になってからのことだ。――

 マキコからなにも返答が返ってこなかったので、ボクのほうからふたたび口を開くしかなかった。

「どこに行くの? オレと2人でってこと?」

「2人だと、……やっぱり無理っぽい?」

 彼女は少し寂しげにそういった。いくらクラスが違うとはいえ、ボクとマレンがつき合ってるってことくらい彼女も知っていたはずだ。いずれにせよ、「もしマキコと2人だけでどこかへ遊びに行った」なんてことを知ったなら、さすがにマレンも怒るだろうなと思い、ボクがなにも答えられずにいると、

「……マレンに怒られるかな?」

 少し疑問系でマキコのほうからそう訊いてきた。

「たぶん。……怒るかもしれないけどね」

 と、ボクが少し笑って答えると、

「やっぱり、そうだよねぇ」

 と、照れるようにし、マキコも笑った。彼女が本心で諦めたのかどうかはわからなかったが、そう納得されちゃうとボクも「ちなみに、どこに行きたいの?」などとは、それ以上訊くこともできず、しばし無言となる。

「――また今度、電話してもいい?」

 マキコは最後にそういってから電話を切った。…………

 『ハートビート』のA面が終わると、アンプのラインをチューナーに切り替え、ふたたびベッドの上で寝転がる。――まるでヨットのセイルのように潮風を受けてカーテンが舞いあがるたび、夕暮れの淡い陽射しが部屋のなかへと一斉に引き込まれてきて、天井に光と影の満ち引きをぼんやり描き出してゆく。

 そんな揺らめく光を眺めているうち、マキコとの昨夜の会話を思い出す。――FMラジオからは佐野元春の代表曲、「サムデイ」のイントロが流れはじめた。ドラマチックに昇華していくBメロの途中あたりに差しかかるとボクは、それを一緒に口ずさむ。そして思った。

(マレンは、鎌倉の親戚の家からいつ帰ってくるんだっけ?)

 小さな蝉が発し続ける大音量のノイズのことなどすっかり忘れ、もて余される時間のなかで、なんだか無性にマレンに逢いたくなっていた。

 なぜだろう。誰かに対する恋しさは、安らぎばかりをボクたちに与えてくれるわけじゃない。 いや、――むしろ、その逆ばかりがいつだって与えられてるようにも思う。

 けれど、「誰かを好きになる」ってことは、せつないほとの苦しみを伴うものだ。……とかってことをいえるほど、恋をしてきたわけじゃないけど。――――






ガラスのジェネレーション (LPヴァージョン) - Heart Beatガラスのジェネレーション - 佐野元春 
2ndアルバム『Heart Beat』 1981年

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水色の朝 - 松田聖子 【バラードの名曲】

【邦楽バラードの名曲】


水色の朝






Epi-21

 1983年6月11日(土) 中学3年の一学期
 午後7時半過ぎ


 その日の夜、マレンを送る帰り道、
 しばらく黙り込んでた彼女は少しだけ複雑な微笑みを浮かべながら、やがてボクを見つめた。

「あたしさぁ、カミュちゃんの家にいつか一緒に住んでもいいのかなぁ?」

 そういった彼女の口元に浮かんだ微笑が、なんだかやけに儚(はかな)く思えた。

「ウチ? 別にいいんじゃない」

 少しだけ語尾をゆるませボクは笑ってそう答える。 彼女の言葉が意味するところは、なんとなくだが理解できた。すると、突然マレンは不安そうな顔をして、

「――ウチのお母さんね、来週、精密検査するみたいなんだけどさぁ」

 と、小さな声でつぶやいた。

「えっ? 検査って病気の検査ってこと?」

 ちょっと驚き、ボクは訊ねる。

「うん。まだよくわかんないけど、……お母さんさぁ、少し前からなんだかすごく疲れやすかったみたいでね、こないだ病院に行ったんだけど、……血液検査の結果が悪かったんで、もう一回ちゃんと検査するみたいなんだよ」

 そういうと、マレンは大きな瞳を曇らせた。

「まぁ、たぶん大丈夫でしょ。オレも最近疲れやすいし」

「……大丈夫だよ、ね?」

 と、みずからを説得するようマレンは付加疑問系でそうつぶやいた。が、その言葉に含まれたわずかな不安がきっかけとなって、急速に膨らみはじめたネガティブな空想が、マレンの笑顔を跡形もなく心の内へと吸い込んでいってしまうような、――なんだかそんな気がしたボクは、彼女を引き戻そうと慌てて言葉を探し出す。

「まぁ、もしさぁ、――」

 とっさに、そういってはみたけど、次の言葉がすぐには思い浮かばない。あとに続くボクの言葉がなんであれ、お母さんの検査結果が悪かった場合の慰めになるだけだろうと思ったからだ。――マレンも、しつこくその先までを聞こうとはしなかった。

「カミュちゃんは、アタシのこと好き?」

 ふいにマレンは話をそらす。

「え? あぁ、……たぶんね。」

「あたしはね、……ずっとカミュちゃんが大好き。――」

 いつもの、そんな他愛ないやりとりにさえ奇妙な空白が断片的に混じり込む。
 南からの潮風が彼女の長い黒髪や制服のスカートを「さらさら」と、優しく揺すった。
 うしろで手を組み、ボクの少し前をゆっくり歩きながら、やがてマレンは、わずかに口調を変化させた。

「アタシね、もしかしたら来年から働こうかなって、ちょっと思ってるんだよねぇ。だからね。もしいつかアタシと結婚してもカミュちゃんの迷惑にはならないと思うよ」

 そういうと、ボクを見つめて彼女は微笑んだ。

 いまの言葉が、「マレンは高校へ行かない」ってことを意味するものなのか、すぐ聞き返そうとしたんだけれど、その意味を訊ねるよりも先に「結婚」というふた文字が、一瞬なんだかものすごく重たいものに感じられ、ついボクは言葉に詰まってしまう。別にマレンと結婚するってことが嫌だったわけではない。けれど、その響きがやけに重たかったんだ。

(もし去年のクリスマスの夜ならば、きっといますぐここで結婚の約束なんて簡単にできたんだろうな。……そういえばあの感情は、また最近、すっかり影を潜めてしまった気がする)

 もしマレンと一緒に暮らすのなら、それでもいいとは思ったが、「結婚」というリアルな言葉を含む返答がどうしてもこの場ですぐにはできなかった。さっき感じた「重たさ」は、彼女の人生そのものの重さだったのだろうか? それともボクの人生に対する微かな不安の表れだったのだろうか。――

「将来、なにをしようか」なんて、まだ一度も真剣に考えたことはない。けれど、「彼女がボクのそばからいなくなってしまう」なんてことも、いままで一度も考えたことなどはない。

(まぁ、もしさぁ、……)

 途中までいいかけて、やめてしまったさっきの言葉。……もしあのままの勢いで続けてたなら、きっと、こういってたことだろう。

(まぁ、もしさぁ、どんなことになってもね、川澄のことはオレが守るから! だからなにも心配しなくていいよ)って。――

 決してその場しのぎの慰めなんかじゃなくって、限りなくそれがボクの本心に近い言葉のはずなんだ。けれど、そうかと思えば、「やっぱり、いますぐ結婚するかどうかなんて決められない」というためらいが、「ふつふつ」と沸きあがってくる。

「結婚してもいい」って思う気持ちと「まだ結婚なんて決められない」と思う気持ち。――相反する、そんな二つの想いが「ぐるぐる」と心のなかでまわり続ける。
 もし、いますぐそのどちらか一方の答えに決められなくても、

「マレンと一緒に暮らしてもいい」

 っていう想いだけは同じだったはずなのに、どうしても、そのときボクにはなにも答えることができなかった。――――


【2012.04.14 記事原文】

ボクが中学時代、やはりひとり熱狂的な聖子ファンの友人がいた。
当時、洋楽カブレしてたボクは、全く興味なかったが、
アルバムを無理やり貸されたので、仕方なく聴いてみた。


そんな中で、ものすごく曲から情景が浮かんだのが
この「水色の朝」だ。
今聴いても名曲だと素直に思う。


ほぉ~財津さんが作ってたんだ!
ってか、これも30年以上前のアルバムなんだぁ。。。


そりゃ老けますわいな・・・ボクも聖子ちゃんも・・・






水色の朝 - 松田聖子
5thアルバム『Pineapple』1982年



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【Re-Edit】 ブルースはお好き? - エルトン・ジョン 【80年代バラード】

【Re-Edit】【80年代洋楽バラードの名曲】


I Guess That's Why they Call it the Blues






I selected "I Guess That's Why they Call it the Blues"
from album "Too Low for Zero" of Elton John released in 1983.



1983年の洋楽ヒットチャートから


Epi-20

 1983年6月11日(土) 中学3年の一学期
 午後1時半過ぎ

この街に新緑の匂いがふたたび感じられるようになってくると、やがて風は変わる。晩春色した風景も少しだけ薄く青みがかった夏色へと揺らめきながら変化してゆく。蒸し暑さを帯びはじめた潮風を背中に受けて、放課後、ボクはマレンと松並木の通りを歩いていた。中学3年になってから毎週ではないけれど、土曜日の学校帰り、マレンはよくボクの家へ遊びにきている。「遊ぶ」といったって、FMラジオをずっと流しっ放しで、夕方まで他愛のないことを話したりしてぼんやり過ごす。ただそれだけのことだった。――

 マレンは、すっかり彼女の指定席となった南の窓際に座り込み、水無月(みなづき)の、ほのかな陽光を肩先に浴びながら相変わらずファッション雑誌かなんかを読んでいる。

 ボクはソファにもたれかかってFM番組を聴いていた。――やがてスピーカーからはエルトン・ジョンの「ブルースはお好き?(I Guess That's Why They Call It The Blues)」が流れてくる。

「エルトン・ジョン」 と、いわれても、爽やかなピアノのメロディが心に残る「僕の歌は君の歌(Your Song)」くらいしか彼の曲を知らない。でも、この「ブルースはお好き?」のPVを、こないだはじめてテレビで観たとき、なんだかやけに感動したんだ。

「川澄、――」

 ボクは窓際に座るマレンのほうを見つめた。

「えっ?」

 雑誌から目を離し、少しだけ顔をあげると、マレンはその大きな瞳をボクのほうへ向ける。

「オレさぁ、最近、この曲がすごく好きなんだよね」

「ん? この曲って 誰の曲なの?」

 と、マレンは少し微笑み、そう訊いてきた。

「エルトン・ジョン」

「ふ~ん」

 濃紺色した制服姿のマレンは雑誌を閉じると立ちあがり 、ソファに背中をもたれかからすボクの右隣へ、ひざを抱えて座り込んだ。

 レースのカーテンに遮られた初夏の白く柔らかな陽光が、ペーパーフィルターで「ろ過」されたよう南の窓から力なく射し込んでいる。時折吹き込む少し湿った潮風にカーテンがふわりと舞っていた。――

「プロモーション・ビデオでね、男女数人がチークダンス踊るシーンがあるんだけどさぁ。
なんかね。その感じがすんごくいいんだよ」

 そうボクがいうと、「ニヤニヤ」なにかを思いついき、マレンは少しだけ嬉しそうに微笑む。やがて彼女はゆっくり立ちあがると、ボクの左手の指先を引っ張った。

「……じゃぁさぁ、踊ってみようよ。 カミュちゃん」

「えぇっ! いいよ、別に」

「いいから。 ほらほら!」

 そういって、照れてるボクを強引に立ちあがらせたマレンの左腕が、そのまましなやかにボクのうなじのあたりを抱きしめる。――

「なんかさぁ、スイミングスクールで行った合宿のとき以来だね。カミュちゃんと踊るのって」

 そういって微笑む薄茶色の大きな瞳がすぐ目の前にある。

「あぁ、あの夜、フォークダンスだかを踊らされたんだっけか?」

 と、ボクは彼女の右耳の近くでささやいた。仕方ないんでなんとなく、ゆるやかにステップを踏みはじめると、胸のあたりにマレンはそっと左の頬を寄せてきた。――ボクも、その背中をほんの少しだけ自分のほうへと抱き寄せる。気づかれない程度に少しだけ、その指先に力を込めて、――

(なんだろう、この感じは? まぁいいか、……)

 番組がとっくにCMに入ったことなど気づかぬ振りで、ボクたちは柔らかな陽射しのなかをしばらくは、そんなふうにし、揺らぎ続けた。――

 ウチの親父も母親も、マレンのことは小学校の頃から知っている。かつてボクらが通ってたスイミングスクールの行き帰り、彼女をウチの車で送ってあげたことが何度もあったからだ。けれど中学に入ってからの彼女のことはまったく知らない。だから久しぶりに大人びた彼女を見たときには「マレンちゃん、すごく可愛くなったわねぇ!」と、母も相当、驚いたようだった。

 マレンは、たまにウチの親に勧められ一緒に夕食を食べていくこともあったが、特に遠慮も緊張もせず、いつもすごく喜びながら母のつくった手料理などをやたらと褒めたりしていた。

「マレンちゃんも、いつかカミウと結婚したら毎日食べられるようになるわよ」

 気分をよくした母親のそんな余計なひと言に、大きな瞳を瞬(しばた)かせ、マレンは「ニッコリ」何度も頷く。けれど、さすがにボクらはまだ中3だ。「結婚」という言葉に現実味を覚えることなどあるはずもなかった。

 このところ、両親と一緒に食事をしてるとき、ボクらはほとんど会話を交わしていない気がする。
 しばらく前からなにかのきっかけによって作り出された、どこかよそよそしい空気によって食卓が、なんだか急に居心地の悪い場所になっていたんだ。

 だから、こうしてたまにきて、いつもは無言の食卓を大いに盛りあげてくれるマレンには、ものすごく助けられてるんだろうなって思う。 ボクも、……そしてボクの両親も。――

 日が暮れてしまえば初夏の蒸し暑さも幾分和らぎ、潮風がほんのり優しく感じられる。けれど、もうすぐ静かなこの街に、あの騒がしい夏が訪れるのだ。――





エルトン・ジョン氏 1983年のアルバム『Too Low for Zero』から
スティービー・ワンダー氏がハーモニカを吹き
ビルボードのシングルチャートで最高4位を記録した
オールディーズアレンジなロッカ・バラード
「I Guess That's Why they Call it the Blues」をチョイス♪






I Guess That's Why they Call it the Blues - エルトン・ジョン
アルバム『Too Low for Zero』 1983年


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【Re-Edit】青春の輝き - カーペンターズ 【70年代バラード】

【Re-Edit】【70年代洋楽バラードの名曲】


I Need To Be In Love






Epi-19

 1983年9月10日(土) 中学3年の二学期
 2時限目が終わった休み時間

 ボクにはまだ「愛」という感情が、自分をどう変えてしまうものなのかはよくわからない。「恋」というものならば、なんとなくわかるような気もするけどね。――「好き」であることとはまったく別の、近くて遠いような距離感。……明日も会えるはずなのに、いまだけは離れたくないと願う、抑えられないほどのわがままで孤独な焦燥感。――もし本当にそれが「恋」だとするならば、それはあまりにも苦しいものだ。

 中学3年になる前の春休み、川澄マレンのために作った曲。――特にタイトルなどつけてなかったその曲を、「一生大事にするね」と、彼女はいった。去年のクリスマス、――あのとき彼女に対して抱いた、心が徐々に締めつけられてくようなほろ苦い感覚。――

 たぶん、それが「恋」なのであろう、せつなさにも似たその想い。あの素直な胸の苦しみを、わずか数行程度に吐き出してしまえば済むはずだったんだ。何度も自問し、それに自答してみたけれど、すでに彼女に曲を送ってしまったいまでさえ、あの歌詞の内容がボクの本心だったかどうかはわからないままだ。……

 でも、きっと80%くらいは本心だったんだろうと思う。彼女への想いが、一瞬メーターを振りきってしまうことも何度かあったけど、いつも100%彼女のことだけを考えているわけでもなかった。だからきっと平均すれば80%くらいなんだろうな。ってなんとなく思うんだ。――

 中学3年になると、川澄マレンとはクラスが離れてしまった。
 互いのクラスのあいだには四つの教室が挟まれていた。階段をあがって一番手前にボクの教室、そしてもっとずっと奥のほうにマレンの教室があった。

 休み時間や体育の授業で彼女が廊下を通るとき、うしろの鉄製扉にはめられたガラスパネルの向こうから、いつだってマレンは小さく手を振ったり舌を出したりていた。そんなときはボクも、ちょっとだけ掌(てのひら)を彼女のほうへ向けるようにしながら笑って応えてた。――そして前方の扉を通り過ぎる際、彼女は決まってうしろを振り返り、ガラスの向こうから大きな薄茶色したいつもの瞳でもう一度、必ずボクのことを見つめてたんだ。――

 ウォークマンからは、カーペンターズの儚いバラードナンバー、「青春の輝き(I Need To Be In Love)」が流れている。ボクが幼い頃、はじめて好きになった洋楽曲は、カーペンターズの「トップ・オブ・ザ・ワールド(Top of the World)」と、ママス&パパスの「夢のカリフォルニア(California Dreamin')」、その二曲だ。……ママス&パパスのレコードはいまだに持ってないけれど、小学生のとき買ってもらったカーペンターズのベストアルバムは、中学に入ったいまでもたまに聴いている。

 まだそんなに長く生きてるってわけじゃない。けれど、彼らの歌を聴いてると、郷愁心を煽(あお)られるような、なんだか甘酸っぱい懐かしさに心の奥がくすぐられる。とにかく、やけにセンチメンタルな気持ちにさせられてしまうんだ。――

 9月に入ってからは、昨日くらいまで、ずっとすっきりとしない天気が続いてた。けれど今日は久しぶりに湘南の空は清々と晴れ渡っている。揺れ動く白波は波間に無限の影を生み、白銀色した陽光が、蒼い水面(みなも)に「キラキラ」と煌(きら)めく。大きな窓ガラスの向こうに広がる静かな海を眺めて、ボクはずっと思い出してたんだ。

 振り返ったマレンが、笑顔で入り口のガラスパネルの向こうからボクのことを見つめてた、あの日々のことを。――たしかにボクらは、何気ない日常のなかで互いの存在の大きさに気づきはじめ、時々2人がずっと寄り添い生きてく未来を笑って語り合ったりしながら、――そして、喜びや悲しみを同じ分量づつ分け合いながら、ボクらなりに精一杯、淡く、せつないほどに光輝く青春の日々を、ともに過ごしてきたんだろう。――

 9月になっても、依然として真夏の暑さはずっと続く。
 それはまるで彗星が引き連れる長く伸びた軌跡のよう、この街の上空に、もうしばらくはただよい続けることだろう。南側の窓からは、うっすらと潮の香りが風に紛れる。ボクはぼんやり教室のうしろの扉に目をやった。川澄マレンの嬉しそうな笑顔が、もう二度とガラスの向こう側に映し出されやしないことなどわかってるのに、……いや、この学校のどこを探してみたって、彼女の笑い声を見つけ出すことなんて、もう二度とできやしないんだ。

 ボクらがつき合いはじめてから、ちょうど一年が過ぎようとしていたあの日、マレンはボクの前から本当にいなくなってしまったのだから。……

 彼女と過ごした一年足らずの時間のなかで、ボクらが交わした二回のキス。――あのクリスマスの夜、マレンに抱いた「恋」とでも呼ぶべきまったく不慣れな感情を、結局、面と向かって言葉では伝えることができないままにボクは彼女を失った。――いや、悪いのはボクのほうだ。――そんなことなどわかってる。

 けれど、たとえそれがカセットに吹き込まれたものだったとしても、ボクの想いを曲にして彼女へ渡せたことだけが、いまとなってはせめてもの救いだ。

――――ボクはいま、生まれてはじめて誰かに対する愛(いと)しさってものを感じ、その愛しい誰かの面影に、絶えず心を引き裂かれている。――――

 心の内側で湧き起こる欲望や衝動と、心の外側でそれを隠し平静を装う理性的な自分とがひたすら感情のせめぎ合いを繰り返す。――ほかのあらゆる現実を忘れさせてしまうほど、そのことだけに心が捕らわれてしまう。内と外、どちらが本当の自分なのかまったくわからなくなってしまうこと、……もしくは、この衝動と理性がせめぎ合っている状態こそが、きっと「恋しい」って気持ちなのだろう。

 いままで当たり前のようにして目の前にいた人が、ある日からいなくなってしまった風景のなか、やがて時間は微かにただようその人の移り香までもを現実と中和させながら、ゆるやかに、――ゆるやかに、――だんだん薄めつつ、あとかたもなく透明にしてゆく。
 その人の存在を日々の暮らしでまったく感じられなくなったとき、残された記憶のなかにボクたちは、その人の面影を見出そうとしはじめるのだ。記憶は音を増しながら鮮明な色彩とともに心のなかで繰り返し再生されてゆく。何度も再生され続ける映像に映し出されたその人は、なぜなんだろう、……いつだって、ずっと笑顔だ。

 なにもマレンと、もう二度と会えなくなったわけじゃない。でも、ボクらのあいだに生み出された現実的な距離感よりも、引き離された心の距離感のほうが遥(はる)かに、いまは強く感じられてしまう。

(なぜあんなことをいってしまったんだ、……)

 後悔ばかりが胸の内から湧きあがり、ため息となり吐き出されてく。こぼれ落ちてく憂愁(ゆうしゅう)が現実を溶かすかのよう、彼女のいない日常の風景にぽっかり穴を開けていく。心のなかに刻み込まれた彼女の笑顔は、ボクの意思とは無関係にひたすら再生され続ける。それを止めることなどボクにはできない。いや、たぶん、……きっと誰にも止められやしないだろう。

 もし「愛する」ということが「恋する」ことより遥かに苦しいものならば、誰かを愛した瞬間、いまのボクはこの世から存在しなくなってしまうに違いない。――きっとそこにいるのは、別の自分に支配された、いまのボクなのだ。…………



【2012.03.23 記事原文】

ちょっと登場が遅かった気もするが、
70年代といえば、やはりポップスの先駆けとなったカーペンターズ!

兄妹の関係で、ここまで売れたのも珍しいデュオ。


ヘレンも「一番好きだった」と言う名バラードで、
日本でもドラマに使用され、カーペンターズを知らない世代にも
一躍その存在を知らしめた「I Need To Be In Love(青春の輝き)」
をチョイス♪






I Need to Be In Love - A Kind of HushI Need To Be In Love(青春の輝き) - カーペンターズ
7thアルバム『A Kind of Hush』 1976年




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Smoke on the Water





Epi-18


 1983年4月19日(火) 中学3年の一学期
 夕方の午後3時過ぎ

 放課後、――
 ボクは音楽室へ向かっていた。校舎を繋ぐ三階の渡り廊下から西のほうを眺めてみると、海沿いの街並みが一望に見渡せる。そのずっと地平の先、箱根の山々の向こうには、ほぼシンメトリーな美しいシルエットを描いた富士山が、まだ残雪を冠したままにそびえていた。富士山はボクの家のベランダからも見えるけど、駅の北口にいま建設中の商業施設が完全にできあがる頃には、ほとんどがその建物の陰に隠れてしまうことだろう。

 さっきまで小雨がパラついていた渡り廊下を通り抜けてく夕風があまりに清らかで心地いい。この吹き抜けの通路は、ボクがこの学校で、唯一「好きだ」と思える場所かもしれない。――

 敷地のなかに三棟連なって並び建つ、一番北側の校舎三階に音楽室はある。一度だけ中1の音楽の授業で合唱曲を歌わされたことはなんとなく覚えているが、それ以外でこの部屋に行ったという記憶はない。そもそも中学時代、ボクがなにも部活動をしてなかったせいもあるんだろうけど、文化系のクラブに所属している部員のほか、放課後、この北館に用事がある生徒なんてほとんどいなかった。

 音楽室の入り口扉のガラス窓からなかをのぞき込む。数名、部員らしき学生の姿が見える。どうやら彼らは吹奏楽系の楽器を手入れしているようだった。けれど、竹内カナエの姿はそこにはない。と、そのとき、隣の音楽準備室のほうからアコースティックギターの音色が聴こえてきた。ボクは音楽準備室のほうへと向かい、ノックもせずに横開きの扉を開け放つ。

 が、あまりにレールのすべりがよすぎたせいで、鉄製枠に扉の縁がおもいきりぶち当たり「バーン」と大きな音を、ひとけのない北館三階の廊下じゅうに響き渡らせる。

(これじゃぁ、まるで道場破りか討ち入りだわな、……)

 顔は知っているけど名前までは知らない同学年の男子生徒ら数名がギターを手にしたままボクのほうを振り返り、一斉に驚きの表情を浮かべた。彼らと談笑していた竹内カナエも、思わず、

「えっ、どうしたの? シーナ君」

 と、いきなりボクが現れたことに少し驚く。

「まぁ、……なんとなくね。どんなとこなのか見たくなってさ」

 部屋へ入ると、ボクは音楽準備室のなかを見まわしながら彼女に答えた。黒い布カバーに包まれた吹奏楽系と思われる楽器に混じって、数台置かれた大きなアンプの隣にエレキギターやベースが数本づつ並べられており、中央付近にはドラムセットまで置かれている。まるで、いますぐにでも、この場でライブができてしまえそうな設備が整っていた。

「へぇ、この学校ってドラムまであったんだ」

 ドラムセットの前で立ち止まり、ボクは思わず感嘆の声を漏らした。

「あぁ、なんだか、むかしからあったみたいよ。でも最近、うちの部員にもほとんど叩ける人がいないんだけどねぇ」

 と、カナエはアコースティックギターをひざに抱えたままで、静かに答える。

「ふーん、すごいんだねぇ」

 ボクはハイハットを人差し指の爪先で何度かはじく。
 そして部屋の隅へと歩いていき、何本かあるうちのエレキギターのなかから一本引っ張りあげる。それはかなり年季の入った『リッケンバッカー』だった。

「もし弾きたければ弾いてもいいよ」

 座ったままでボクにピックを差し出してカナエは微笑む。オープンで何度かダウンストロークしてみると、どうやらチューニングは狂っていないようだ。ようやくボクの存在にも慣れてきたのか、ほかの男子生徒たちも円陣を組むよう椅子に座り、お互い顔を見合ってタイミングを計り、ギターで曲を弾きはじめた。

 カナエはちょっと前傾姿勢で椅子に座って少し足を開き気味にし、ひざのうえにギターを抱えていた。長いストレートの前髪を右のほうだけ垂れ下げながら、耳のうしろにかけた左の黒髪越しにクールな一重の視線をギターのネックあたりに向けている彼女。その姿が、なんだかやたらと様(さま)になっていた。――

 どうやらビートルズの「イエスタデイ(Yesterday)」をギターの重奏用にアレンジし、彼らは演奏しているようだ。カナエはリードギターでメロディパートを弾いていたが、出だしの数音、アルペジオで弦をはじいただけですぐにわかった。彼女は本当に驚くほどギターが上手い。ボクは腕を組み、しばらく彼らの演奏に聴き入っていた。――

 夕暮れを舞う浜風が、また降り出した春雨(しゅんう)の微粒を窓のほうへと吹きつける。「パチパチ」と、ガラスをはじく雨粒の微かな律動にボクは目をやる。

「シーナ君って、なにが弾けるの?」

 音合わせの休憩中、カナエが笑って話しかけてきた。

「あぁ、たぶん指がもう動かないんだけどね」

 手にしたリッケンバッカーで「スモーク・オン・ザ・ウォーター(Smoke on the Water)」のイントロリフを弾きながらボクは照れ笑いを浮かべた。急にカナエは椅子から立ちあがり、部屋の隅に立てかけられてた黒いケースを手に戻ってくるなり、なかからベースを取り出して、微笑みながらボクを見つめた。

「シーナ君、ちょっとこっちにきて」

 彼女は棚からシールドケーブルを二本選ぶと、巨大なアンプが並べられている窓際のほうへとボクをクールな眼差しで誘(いざな)う。そしてシールドをギターとベース、それぞれに接続してから入力プラグをマーシャルアンプのインプットジャックへ差し込んだ。

 電源を入れるとすぐ、「ヴゥーン」と、低周波の低い通電ノイズが唸りはじめる。左右の鼓膜を小刻みに震わされ、「これはきっと相当なワット数なんだろうな」と思いつつ、ボクは巨大アンプの下に組み込まれたスピーカーを眺めた。

「さっきの、もう一回弾いてみて」

 振り向くとボクを見つめてカナエはいった。

「えっ? 『スモーク・オン・ザ・ウォーター』?」

 思わず聞き返す。

「そう。もう一回弾いて」

 そうカナエに促され、ボクはふたたびリッケンバッカーを手にすると、「スモーク・オン・ザ・ウォーター」のイントロ・リフを弾きはじめた。――瞬時にマーシャルの巨大アンプは、部屋の空気を「ブワッ」と揺さぶり、凄まじい音圧で一気にボクの弾いたギター音を外へと押し出す。やがてカナエのベースラインがボクのリフに重なってくると、重低音が弾丸みたいに背中を叩いていった。――

 その残響が音楽準備室の窓ガラスを「ビリビリ」揺さぶる。――ボクの家にあるポータブルアンプとは、まったくもって次元の違う凄まじいほどの出力、もはやこれは単なる音ではない。音振動の衝撃波にカラダを直撃されているような感覚だった。

――――これが、……ライブの音なのか、―――― 

 ボクは、大音量で室内の空気を揺さぶり続けるこの巨大アンプの前に立ち、それまで感じたことのない快感と興奮に酔いしれていたんだ。

「じゃぁ、オレがリズム入れようかな?」

 そういって、ひとりの男子生徒がスティックを手にしながらドラムセットの丸椅子に腰かける。ボクらはふたたびイントロから「スモーク・オン・ザ・ウォーター」をセッションしはじめる。ボクの奏でるリフに、イントロ3ターン目で16ビートのハイハットが刻み込まれ、4ターン目でスネアの打音が響き出す。そして5ターン目からキックとカナエの重いベースラインが乗っかってきた。――

 それはものすごくシンプルな音だった。けれど、それは紛れもなくバンドサウンドだったんだ。実際に大音量で演奏してみれば誰でも絶対にわかるはずだ。たしかに、音楽に言葉なんていらないんだな。って、――

 けれど、ボーカルが入るAメロ直前になって、ギターを弾くボクの手がふと止まる。

「オレ、……この曲ってイントロしか知らないんだよね。つうか歌詞も知らないし」

 カナエに向かってそういうと、

「まぁ、それが普通なんじゃないの?」

 と、カナエはクールな一重を薄く細めて「フッ」と笑った。――――




【2012.03.14 記事原文】

イマサラながら感はありますが、
まだ当ブログで一曲も選曲していなかったので、
まとめてディープ・パープルを数曲チョイスしときます。


エレキフリークじゃなくとも必ず一度は弾いてみたであろう
世界で最も有名なギターフレーズ「Smoke on the Water」♪
ロックのビギナーバンドにとっては入門書みたいなもんすかね。


ハードさを追求してない「だらだら感」が良いのかなぁ?


まぁ、本当にイマサラですけどね。。。
でも・・・忘れた頃にふと聴くと、相変わらずクールです!!







Smoke on the Water - ディープ・パープル
6thアルバム『Machine Head』 1972年
アルバムお薦め度「☆名盤です☆」



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Magic






Epi-17

 1983年4月18日(月) 中学3年の一学期
 夕方の3時少し過ぎ


「新しいクラスはどう? 面白い?」

 放課後、桜の花びらで埋め尽くされた正門までの道を楽しそうに歩きながら、川澄マレンはずっと微笑んでいる。

「あたしのクラスはねぇ、なんだか大人しい子ばっかりでイマイチなんだよねぇ」

「2年のときのヤツとかは? 誰か一緒のクラスになったんだっけ?」

 と、ボクは彼女の横顔に訊ねる。

「う~んと、まぁ、何人かいるけどさぁ。でも、あまりその子たちとは仲良くなかったからねぇ」

 と、いいながら、マレンは満開を少し過ぎたばかりの枝先に目を向ける。白々とおぼろな春光がマレンをほんのり照らし出す。優しく霞(かす)んだ霧状の光を浴びてる彼女がなんだかやけにキレイに思えた。

「ふぅーん。オレのクラスもそんなに面白くはないけどね。ウゼェ野郎連中が休み時間とかに騒いでて、なんだかスゲェうるせえしさぁ」

 吹き抜ける春風に桜の薄片が「フワッ」と一斉に舞いあがる。浮遊する淡い桜色の雨は、やがてボクらの上に「ヒラヒラ」と舞い降り、そのたびにマレンの艶やかな黒髪にはピンク色の花びらが数片づつ残されていく。

「あたしさぁ、パルのこと、これから『カミュちゃん』って呼ぼうかな」

 マレンは相変わらず微笑みながらそういって、「チラチラ」降り落ちてくる薄桃色の花びらに手をかざした。

「まぁ別にいいんじゃねぇの。……じゃぁオレは『マレンちん』って呼ぼうかな」

 と、ボクはなんとなく彼女のことをからかってみる。

「なんで『ちん』なのよ」

 と、マレンは予想通り、少しだけ「プクッ」と頬を膨らます。

「なんとなく、……」

「いやだ!」

「いいじゃん『マレンちん』で、別に」

「絶対にイ・ヤ・だ!」

 彼女は頬を膨らませたままでボクの左腕をつねってきた。ボクは彼女の左頬を指先で押しながら笑う。海にほど近い、この界隈に建ち並ぶ大きな屋敷の庭先には、パステルカラーの花々と新緑の若葉が眩しく咲き誇っている。ほんのり暖かな風のなか、ただようそれらの香りが、風景の彩りを淡色に変化させてゆく。新しい季節の到来を告げるその春風は、たゆたいながらマレンの長い黒髪をなびかせ続けていた。――――

 マレンを家のほうまで送ってから自宅へ帰ると、すぐ二階へあがりレコード棚をあさる。
 昼間、竹内カナエと話したせいかもしれないが、無性にレインボー5枚目のアルバム『アイ・サレンダー(Difficult to Cure)』が聴きたくなったんだ。このLPも、中1のときにはよく聴いていたけれど、最近ほとんど聴いてなかった。

 ようやく棚のなかから見つけ出すと、ジャケットを広げレコード盤を取り出した。新しい印刷物に似たようなレコード特有の濃密な異香(いこう)がほんのりただよう。――
 どことなく上品なこの匂いがボクはすごく好きだ。さすがにちょっと汚れてたけど、構わずプレーヤーにセットし針を落とした。

 1曲目のタイトルトラック「アイ・サレンダー(I Surrender)」のイントロがステレオの両脇に置かれてる大きなスピーカーから鳴り響いてくる。ボクはさらに少しだけボリュームをあげる。ジョー・リン・ターナーのボーカルは、この曲のメロディには合ってると思う。でも新たなドラマー、ボビー・ロンデイネリの音は、やはりコージー・パウエルとは明らかに質感が違う。もしコージーのキックをこのボリュームで聴いたとすれば、もっと「ズシン」との重低音が体に響き渡るはずだ。ボクは部屋の壁に立てかけてあったエレキギターを数ヶ月振りに手にした。弦は少しサビついてたが、適当にペグをまわしてチューニングし、埃を被ったアンプにプラグを差し込み電源を入れる。

 そして、いったんレコードの針を持ちあげ、ふたたび「アイ・サレンダー」をあたまから聴いた。

(この曲は、去年、よく練習したんだよな)

 イントロのリフをギターで同時に弾きはじめる。しばらくはリッチーのリフに合わせて弾くことができた。でもサビの前でコードを数箇所間違えると、もはやそのあとの音を追えなくなってしまった。やはりブランクのせいで指先が全然動かない。――アルバムは2曲目の「スポットライト・キッド(spotlight kid)」に変わった。久しぶりに聴いたんだけど、この曲の間奏部分のリードとシンセのソロパートは、やはりすごい。

 ギターを床に置き、なんとなく竹内カナエのことをぼんやりと思いはじめる。別に「好き」とかそういうんじゃないんだろうけど、「一度彼女の演奏を生で聴いてみたいな」って思ったんだ。

 展開が激しい3曲目の「ノー・リリース(No Release)」が終わると、ドラマティックな「マジック(Magic)」のイントロフレーズが流れてくる。

(この曲もむかしは、すごく好きだったな)

 ボクは寝転がって天井を見上げる。なんだか中学1年の頃が、ものすごく懐かしく感じられた。あのときって、どんな気持ちでこのアルバムを聴いてたんだろう。たかだか2年しか経ってないが、なんだか、なにもかも変わってしまったような気がする。ボクは窓際に寝転がり、射し込む太陽の残光を浴びて、金色っぽく変色した長い前髪を一束摘みあげると、しばらくは鼻先でその色を眺め続けていた。――――




【2012.03.12 記事原文】

リッチー・ブラックモア率いるレインボー1981年のアルバム
『Difficult to Cure』から、
イントロが爽やかなロックナンバー「Magic」をどうぞ♪







Magic - レインボー
5thアルバム『Difficult to Cure(アイ・サレンダー)』 1981年



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Da Ya Think I'm Sexy





Epi-15

 1983年4月18日(月) 中学3年の一学期
 三時限目終了の休み時間、

 担任教師がランダムに決めてしまった最初の席替えで、ボクの両隣には、どちらもこのクラスのなかではわりと真面目そうな女の子が座ることとなる。黒板に向かって右側の席に座ってる川上ナオは、小柄でふっくらしていて愛嬌のある笑顔が憎めない感じの子。そして左側に座る竹内カナエのほうは、まっすぐ伸びた長く艶やかな黒髪と、切れ長でどこか冷めた感じの一重まぶたが、とてもクールな印象を与える女の子だった。

 これはまぁ、癖みたいなものだけど、大抵、ボクが机にうつ伏し寝ているときは、真下じゃなくって左側へ顔を向けてることが多い。だから左隣に座ってる竹内カナエにしてみれば、なんだか横顔を「ジッ」と見られているような気がして、もしかしたら落ち着かないかもしれないな。

 いずれにしても川上ナオや竹内カナエとは、まだ一度もまともに話したことはない。彼女たちも、ボクの噂をいろいろと聞いてるせいかもしれないけれど、なんとなく怖がっているみたいだったし、ボクも彼女たちに対しては特に興味などはなかったんだ。


 三時限目終了の休み時間、――

 ボクはいつもみたいにカナエのほうへ顔を向けつつ浅い眠りに落ちていた。快晴の穀雨(こくう)の空から柔らかな陽射しが教室内に降り注ぐ。けれど気温はまだ20℃に届いてないだろう。少しだけ肌寒さを感じて目覚めたとき、カナエがカバンのなかから一冊のバンドスコアを取り出すのをたまたま目にする。

なんとなくそれが誰のスコアなのか、ボクは気になりはじめた。彼女が時折ページをめくるたび、その背表紙が浮きあがる。どうやらそれはビートルズのバンドスコアのようだった。

 カナエはずっと譜面を見つめ、ギターコードのようなものを、さっきからノートに書き写している。――ボクは机にうつ伏したまま、何気なく彼女へ声をかけた。

「ビートルズ聴くの?」

(この何気ないひと言が、ボクと竹内カナエとの会話のきっかけになったのは間違いない。 ――けれど彼女がやがて、絶対に失えぬほど重要な存在になってくことに関しては、まだこのとき、ボクは当然ながら気づいていない。…………)

 ふいにそう聞かれて、彼女は「ビクッ」と肩を揺らした。最初はまさか自分に話しかけられているとは思ってなかったみたいだが、確かめるよう、ボクのほうへ一重の眼差しを向けると、

「あぁ、今度、部活で何曲か演奏するから、……」

 表情を少しこわばらせ、カナエはそう答えた。

「部活って音楽部?」

 と、ボクはうつ伏せたまま、さらに訊ねる。

「軽音楽部。……」

 と、カナエはひと言だけつぶやく。

「へぇ、そんなクラブ、ウチの学校にあったんだね」

 この中学に吹奏楽部があるのは知っていたけど、軽音楽部があることなんていままで知らなかったんだ。そんな会話を右隣で聞いていいた川上ナオが、ボクのあたまのうしろから、少しだけためらいながら話しかけてきた。

「……アタシもね。最近、ビートルズ聴いてるんだよ」

 ボクはうつ伏せのまま、顔だけナオのほうへと振り返らせる。

「お姉ちゃんがねぇ、結構、洋楽のレコードを持ってるからなんとなく聴くようになったんだけどね」

 と、目を細め愛嬌のある笑顔をナオは浮かべた。

「へぇ、そうなんだ。けどオレ、あまりビートルズってちゃんと聴いたことないんだけど」

 そう、ボクが笑いかけると、

「でもさぁ、アタシはなんてったって、ロッド・スチュワートが一番好き!」

 と、急にナオは話題の対象を変化させた。

「はっ? ロッド・スチュワート?」

「え? ロッド・スチュワート知らない? 『アイム・セクシー(Da Ya Think I'm Sexy?)』とかって、聴いたことない?」

「いやいや、そりゃぁ名前くらいは知ってるけどさぁ。……でも、ちゃんとレコード聴いたことってないかな」

 すると今度は竹内カナエが、ボクのあたまのうしろから会話に加わる。

「ロッド・スチュワート、いいよね! アタシも好き」

「でしょ! すんごくカッコいいのよねぇ、これがまた!」

 机にうつ伏しているボクのあたま越し、ナオとカナエは、すっかりロッド・スチュワートの話題で盛りあがりはじめる。こうしてボクは、両隣の女の子たちとのはじめての会話を同時に成立させたのだ。

「シーナ君は? 最近どんな音楽を聴いてるの?」

 ようやく緊張がとけたのだろう。カナエは警戒色が薄らいだクールな眼差しでボクを見つめながらそう訊ねてくる。

「オレ? うーん、……まぁ、中2の頃は結構、洋楽ロックとか聴いてたけどねぇ」

 ボクはようやく上体を起こし、カナエを見つめた。

「じゃぁ、ディープパープルとか?」

 口元を微笑ませ、カナエはさらに訊いてきた。

「いや、ディープパープルよりもレインボーかな」

 と、腕を組みながらボクは少し笑って答える。

「レインボーならさぁ、アタシは『アイ・サレンダー』が好きかな」

 まさかカナエがレインボーを知ってるなんて思わなかったので、

「あぁ、まぁ、オレも好きだけどね。えっ、竹内さんってレインボーのアルバム持ってるの?」

 と、ボクは少しだけ驚いた顔で、そう問い返す。

「う~ん、アルバムは何枚か先輩に借りて録音したよ。ロジャー・グローヴァーが好きだから」

「ロジャー・グローヴァー? あぁ、ベースの人ね。オレはグラハム・ボネットとコージー・パウエルがいたときの『ダウン・トゥ・アース(Down to Earth)』が一番好きだけどね」

 そんな2人だけの世界へ、川上ナオが強引に割って入ってくる。

「アタシさぁ、あとデヴィッド・ボウイとかも好きだよ」

 ボクは、ナオのほうを振り返りながらつぶやいた。

「川上さんってさぁ、なんかさっきから『ソッチ系』ばっかだね」

「だって顔がさぁ、すごくカッコいいじゃん! 洋楽って顔でしょ? やっぱり」

 ボクはなんだか本当に可笑しくなってきてしまって、おもわず声を出して笑った。
 この真面目そうな2人が洋楽好きだったってことには驚いたけれど、このクラスのなかで、気軽に話せそうな相手が新たに見つかったような気がして、少しだけ嬉しくなった。――――





【2012.03.23 記事原文】

ロッド・スチュワートが日本で認知されたのが、
この「Da Ya Think I'm Sexy? (アイム・セクシー)」のヒットから。


当時、中学の同級生の女の子が
ロッド・スチュワートと根津甚八の熱狂的ファンでしたねぇ。。。


う~ん!!
言われてみれば、たしかにどちらもセクシーな男である…






Da Ya Think I'm Sexy? (アイム・セクシー) - ロッド・スチュワート
9thアルバム『Blondes Have More Fun』 1978年
アルバムお薦め度「一度聴いてみたら」



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