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未来に残したい洋楽&邦楽の名曲

70~80年代の洋楽&邦楽を中心に未来に残したい名曲&名盤を独自にチョイスするBlogです☆
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【Re-Edit】 Yes - No - オフコース 【ポップスの名曲】

【Re-Edit】【ポップスの名曲】


Yes - No






Epi-14

 1981年10月7日(水) 中学1年の二学期
 3時限目が終わった休み時間

 晩秋にそよぐ風。――ただ、その余韻のなかにしか感じられないはずなのに、嗅覚で記憶されたそれまでのあらゆる匂いを、ときに激しく、絶えずほんのり甘やかなこの香りは一瞬のうちに上塗りし、すべて残らず消し去ってゆく。

 あらゆる風情に紛れ込み、毎年、記憶の深奥(しんおう)へ、その存在を印象づけていく金木犀(きんもくせい)の芳香(ほうこう)だけが、映像のなかに色とともに漂い続け、繰り返し、――繰り返し、積み重なっていきながら、ボクたちの記憶の端に付箋(ふせん)となって残されていく。

 だから、この香りが遠慮しがちにこの街を包み込む季節がくるたびに、ボクらは、その色めく薫香(くんこう)が浮かびあがらす淡い懐かしさの追憶にふけるのだ。

 中学1年になってから三度目の席替えで、春山サエが目の前の席に決まった瞬間、きっとボクは、この学校に入ってはじめてのときめきと沸き立つ喜びを同時に感じていたに違いない。八重歯が印象的な彼女の瞳は、眼鏡をはずすといつだって泣き止んだ直後の子供のように少し寂しげに潤んでいた。

 うららかな春の陽光がこぼれ落ちる4月、この教室ではじめてサエの可憐な笑顔を見たときから、ボクは彼女に惹かれていたんだ。

 校門を出ると、学校の敷地に沿って設けられたネットフェンス越しに軟式テニス部の練習風景が見える。放課後になると、ボクはいつも足早に家路へと向かいながら、先輩部員たちよりも少しだけ背の高いショートヘアのサエのうしろ姿を見つめていた。

 すっかり日没が早くなりはじめた秋の夕暮れ。――

 少し前まで、しなやかな素足を隠さなかった彼女も、いまでは濃紺色のジャージ姿で、細長く延びた影を引き連れながらコート上を懸命に駆けまわり続けている。――

「わたし、オフコースが好きなんだよねぇ」

 ある日の休み時間、春山サエはうしろに座るボクのほうへ、少し陽に焼けた小さな横顔を向けながら突然、そう話しかけてきた。それが中学に入ってから彼女とマトモに話した最初の会話だった。

 ボクがオフコースの「さよなら」をはじめて聴いたのは、小学校5年くらいのときだったろうか。おそらくは、どこかのスキー場のレストハウスで流れていたように思う。ちょうどこないだ、オフコースが二枚リリースしていたベスト盤『セレクション(SELECTION)』のカセットを買ったばかりだった。そのカセットを取り替えながら、毎日、気に入った曲ばかり繰り返し聴いていたんだ。――――

「オレも、たまに聴いてるけどね」

「えっ! シーナ君は、どの曲が好きなの?」

 と、サエは右肩越しに微笑みながら訊ねてきた。

「うぅ~ん、……イエス・ノー(Yes-No)かな」

 この曲が一番好きだというわけでもなかった。けれど、オープニングで奏でられるシンセサイザーのイントロがすごく印象的だったんで、たまたまそう答えてみた。

「あの曲ってさぁ。すっごくイントロがいいよね!」

 と、サエも微笑みながら小さく頷く。結果的に2人の会話はうまくかみ合いながら、よい方向へと繋がっていったんだ。

 授業中、彼女のうしろ姿しか見たことのなかったボクのほうへ、その瞬間、サエは嬉しそうに微笑みながら、おもいっきり体ごとイスの向きを変える。そして眼鏡をしたままの潤んだ瞳でボクのことを見つめた。

 おそらくこんなにも間近で彼女の顔をちゃんと見たことなんてなかったろう。放課後、格子状のフェンスの外側から、遠目にコート上を走りまわっている彼女の姿を追っていただけのボクに、そんなことなんてできるはずもなかったのだから。――

 おもわずサエから目をそらし、教室の窓のほうを眺めた。微笑んだときの彼女の八重歯が、やけに可愛く思えたので、なんだか少しだけ照れくさくなったのだ。

 彼女は、そっとささやいた。

「こないださぁ、シーナ君、『時に愛は』を、はなうたで歌ってたでしょ? だから、もしかしたら『オフコースを聴いてるのかな』って思ってね」

 もう冬も近いせいだろうか。

 弱い西陽に照らし出された窓の外側の世界は、いつも以上に静かに、そしてゆっくりと時間が流れているように思えた。結局、サエにはいわなかったけれど、ボクがホントに好きな曲は「ワインの匂い」なんだけどね。でもそれは、彼女と交わす次の会話のきっかけとしてとっておいたんだ。……

 ほかの人からすれば他愛もないことなのかもしれない。けれどボクにとっては、とても大切なオレンジ色に染まる夕暮れのひととき。

 やがて、深かった新緑の木々たちもいっせいに枯葉色へと変わってゆくのだろう。いまではすっかり色白になってしまった彼女の頬を、北風がピンク色に染めてゆく季節が、もう間もなくこの街に訪れるのだ。――――



【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】



Yes - No - オフコース
ベスト盤『SELECTION 1978-81』 1981年


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【Re-Edit】 告白 - ガガガSP 【パンクの名曲】

【Re-Edit】【邦楽パンクの名曲】


告白






Epi-13

 1983年9月10日(土) 中学3年の二学期
 2時限目が終わった休み時間

 ボクには「愛」という感情が、自分をどう変えてしまうものなのかよくわからない。「恋」というものならば、まだ、なんとなくわかるような気もするけれど。――

「好き」であることとはまったく別の、近くて遠いような距離感。……明日も会えるはずなのに、いまだけは離れたくないと願う、抑えられないほどのわがままで孤独な焦燥感。――もし本当にそれを「恋」だというのであれば、それはあまりにも苦しいものだ。

 中学3年になる前の春休み、川澄マレンのために作った曲。――特にタイトルなどつけてなかったその曲を、「一生大事にするね」と、彼女はいった。去年のクリスマス、――あのとき彼女に対して抱いた、心が徐々に締めつけられてくようなほろ苦い感覚。――たぶん、それが「恋」なのであろう、せつなさにも似たその想い。あの素直な胸の苦しみを、わずか数行程度に吐き出してしまえば済むはずだったんだ。

 何度も自問し、それに自答してみたけれど、すでに彼女に曲を送ってしまったいまでさえ、あの歌詞の内容がボクの本心だったかどうかはわからないままだ。……でも、きっと80%くらいは本心だったんだろうと思う。彼女への想いが、一瞬メーターを振りきってしまうことも何度かあったけど、いつも100%彼女のことだけを考えているわけでもなかった。だからきっと平均すれば80%くらいなんだろうな。ってなんとなく思うんだ。――――

 中学3年になると、川澄マレンとはクラスが離れてしまった。
 互いのクラスのあいだには四つの教室が挟まれていた。階段をあがって一番手前にボクの教室、そしてもっとずっと奥のほうにマレンの教室があった。

 休み時間や体育の授業で彼女が廊下を通るとき、うしろの鉄製扉にはめられたガラスパネルの向こうから、いつだってマレンは小さく手を振ったり舌を出したりていた。そんなときはボクも、ちょっとだけ掌(てのひら)を彼女のほうへ向けるようにしながら笑って応えてた。――そして前方の扉を通り過ぎる際、彼女は決まってうしろを振り返り、ガラスの向こうから大きな薄茶色したいつもの瞳で、もう一度必ずボクのことを見つめてたんだ。――

 9月に入ってからは、きのうくらいまで、ずっとすっきりとしない天気が続いてた。けれど今日は久しぶりに湘南の空は清々と晴れ渡っている。

 揺れ動く白波は波間に無限の影を生み、白銀色の陽光が、蒼い水面(みなも)に「キラキラ」と煌(きら)めく。大きな窓ガラスの向こうに広がる静かな海を眺めて、ボクはずっと思い出してたんだ。振り返ったマレンが、笑顔で入り口のガラスパネルの向こうからボクのことを見つめてた、あの日々のことを。――

 たしかにボクらは、何気ない日常のなか、互いの存在の大きさに気づきはじめ、ときどき2人がずっと寄り添い生きてく未来を語り合ったりしながら、――そして、喜びや悲しみを同じ分量づつ分け合いながら、ボクらなりに精一杯、淡く、せつないほどに光輝く青春の日々を、ともに過ごしてきたんだろう。――――

 9月になっても、依然として真夏の暑さはずっと続く。
 それは彗星が引き連れる長く伸びた軌跡のよう、この街の上空に、もうしばらくは漂い続けることだろう。南側の窓からは、うっすらと潮の香りが風に紛れる。ボクはぼんやり教室のうしろの扉に目をやった。川澄マレンの嬉しそうな笑顔が、もう二度とガラスの向こう側に映し出されやしないことなどわかってるのに、……いや、この学校のどこを探してみたって、彼女の笑い声を見つけ出すことなんて、もう二度とできやしないんだ。

 ボクらがつき合いはじめてから、ちょうど一年が過ぎようとしていたあの日、マレンはボクの前から本当にいなくなってしまったのだから。――

 彼女と過ごした一年足らずの時間のなかで、ボクらが交わした二回のキス。――あのクリスマスの夜、マレンに抱いた「恋」とでも呼ぶべきまったく不慣れな感情を、結局、面と向かって言葉では伝えることができないままにボクは彼女を失った。――いや、悪いのはボクのほうだ。――そんなことなどわかってる。

 けれど、たとえそれがカセットに吹き込まれたものだったとしても、ボクの想いを曲にして彼女へ渡せたことだけが、いまとなってはせめてもの救いだ。

――――ボクはいま、生まれてはじめて誰かに対する愛(いと)しさってものを感じ、その愛しい誰かの面影に、絶えず心を引き裂かれている。――――

 心の内側で湧き起こる欲望や衝動と、心の外側でそれを隠し平静を装う理性的な自分とがひたすら感情のせめぎ合いを繰り返す。――ほかのあらゆる現実を忘れさせてしまうほど、そのことだけに心が捕らわれてしまう。内と外、どちらが本当の自分なのかまったくわからなくなってしまうこと、……もしくは、この衝動と理性がせめぎ合っている状態こそが、きっと「恋しい」って気持ちなのだろう。

 いままで当たり前のようにして目の前にいた人が、ある日からいなくなってしまった風景のなか、やがて時間は、微かに漂うその人の移り香までもを現実と中和させながら、ゆるやかに、――ゆるやかに、――だんだん薄めつつ、あとかたもなく透明にしてゆく。

 その人の存在を日々の暮らしでまったく感じられなくなったとき、残された記憶のなかにボクたちは、その人の面影を見出そうとしはじめるのだ。記憶は音を増しながら鮮明な色彩とともに心のなかで繰り返し再生されてゆく。何度も再生され続ける映像に映し出されたその人は、なぜなんだろう、……いつだって、ずっと笑顔のままだ。

 なにもマレンと、もう二度と会えなくなったわけじゃない。でも、ボクらのあいだに生み出された現実的な距離感よりも、引き離された心の距離感のほうが遥(はる)かに、いまは強く感じられてしまう。

(なぜあんなことをいってしまったんだ、……)

 後悔ばかりが胸の内から湧きあがり、ため息となり吐き出されてく。こぼれ落ちてく憂愁(ゆうしゅう)が現実を溶かすかのよう、彼女のいない日常の風景にぽっかり穴を開けていく。心のなかに刻み込まれた彼女の笑顔は、ボクの意思とは無関係にひたすら再生され続ける。それを止めることなどはボクにはできない。いや、たぶん、……きっと誰にも止められやしないだろう。

 もし「愛する」ということが「恋する」ことより遥かに苦しいならば、誰かを愛した瞬間、いまのボクはこの世から存在しなくなってしまうに違いない。――きっとそこにいるのは、別の自分に支配された、いまのボクなのだ。…………





【2012.05.01 記事原文】

ボク自身、1990年代後半から2000年にかけて、
たまたま音楽系の仕事を片手間にやってた時期でもあり、
足繁く都内のライブハウスにも通っていた訳で・・・

まぁ、従って当時インディーズだったバンドに対する思い入れが
個人的には最も深いといえる。


そんな中からメジャーになったバンドをいくつかご紹介したい。
まずは、コサック前田率いる「ガガガSP」。

彼らは基本的にパンクバンドとされるが、実際歌っている内容の
ほほ90%以上はストレートなラブソングである。


では、彼らの2ndアルバム『卒業アルバム』から
切ない男心を綴ったナンバー「告白」をどうぞ♪




告白 - ガガガSP
2ndアルバム『卒業アルバム』 2002年



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水色ノート - 伊藤つかさ 【バラードの名曲】

【邦楽バラードの名曲】


水色ノート





Epi-12


 1983年4月18日(月) 中学3年の一学期
 3時限目が終わった休み時間

 そういえばまだボクの本名を明かしていない気がする。

 苗字は椎那(シイナ)
 椎那可未宇(シイナカミウ)だ。

 「シーナ」と「カミウ」、――そのどちらも、響きが外国人のような名前のせいで、小学校の頃はよく、いろんなヤツにからかわれたりしたものだ。……

 そんな小学校時代、ボクが好きになった4人の女の子たち。いまにして思えばその子たちに特別な共通点などなにもなかった。低学年の頃に好きだった2人の女の子はどちらかといえば、はっきりとした目鼻立ちの、どこか知的なキレイ系、そして中高学年で好きになった2人のほうは、まったくその逆で素朴な顔立ちのおとなしい雰囲気の子だった。

 ボクが最後に好きになったのは、小6のとき、クラスは違うけど同じ塾に通ってた地味でマジメそうな女の子。――どうしてバレたかまでは覚えていない。けれど「その子を好きだ」ってことが、ほかの塾生たちに知られてしまい、本人の前で冷やかされたことが一度だけある。

 それが間接的だったにせよ、「好きだ」という想いを本人に知られてしまったのは、きっとそのときがはじめてのことだろう。たとえようのない、心を掻き乱される気恥ずかしさをいまでもボクは鮮明に覚えている。

「好きじゃねぇよ」

 と、そのときたしかにそういった。――好きだった彼女に対してボクが語った唯一の言葉はただそれだけだ。うつむき頬を赤らめた彼女からボクに対して発せられた言葉は、その以前にはなく、そのときもなく、そしてそれ以降もなかった。――

 幼いボクらにとって「誰かを好きだ」という気持ちは、誰にも知られてはならない自分だけの秘密の想い。――もし好きな相手に本当の気持ちを知られたとするならば、瞬時に、容易くその幼き恋心は終わりを迎えてしまう。だからこそ「好きだ」という気持ちは、決して相手に悟られてはならないものなんだ、と、誰もがみんな、知らずにそう思い込んでいくのだろう。――――

 中学3年になると、2年のときに仲のよかった連中、……たとえば『サウス』のメンバーとかとは、ほとんどが違うクラスに分かれてしまった。学校側が意図的にそうしたのかどうかは知らないけれど、まぁ、なんとなくそうなんだろうなとは思う。2年の三学期、あれだけの騒ぎを起こしてしまったんだから、……結局、川澄マレンとも別々のクラスになってしまった。マレンはそのことを、なんだかものすごく嘆いてたけど、それは仕方のないことだ。

 中3のこのクラスでは、女子のほうが圧倒的に目立っている。佐藤マキコだけは、小学校の頃から知っていたけどロングスカートに茶髪なんていう格好は、ほかのクラスではほとん見かけない。

 そして、その目立つ女子メンバーのなかには2人、外国系の苗字の子がいた。ひとりはたしか両親が台湾人だったと思うけど、林(リン)ショウカという女の子だ。

 ショウカは小柄で可愛いらしいアニメ顔をしており、クラスの男子のなかにも彼女のファンは何気に多いようである。けれどボクは窓際のほうの席に座って、いつも静かに海を見つめている少女のことがなんとなく気になっていた。無論、いまだに教室で一度も彼女と話したことはない。

 まるで揺らめく氷晶(ひょうしょう)の灯火(ともしび)のように、危ういほどの儚(はかな)さをその身に纏(まと)った茶色い髪の少女、――その子の名前は「李メイ」という。コリアン三世の彼女は、孤独色した絹糸の情感を香水みたいに振りまきながら、いつだって、うっすらみずからのまわりに漂わせていた。

 ショウカもメイも、「小学校時代は、その名前のせいで、かなり陰湿なイジメを受けていた」と、いうような噂を聞いたことがある。けれど中学3年生になったいま、彼女たちをからかうようなヤツなどはもう誰もいないだろう。特にメイの高校生の兄貴は、このあたりでも相当に有名なワルみたいなので、これまで彼女をイジメてきた連中は最近、その兄貴に復讐されるのが怖くて怯えてるみたいだ。

 一方、このクラスの男子生徒のほうは、体育系の部活をやってるヤツらを中心に、なんとなくイキがりたがっているような連中も何人かいたけど、ソイツらとは、きっと仲良くはなれないだろう。――

 担任教師がランダムに決めてしまった席替えで、ボクの両隣には、どちらもこのクラスのなかではわりと真面目そうな女の子が座ることとなった。黒板に向かって右側の席に座る川上ナオは、小柄でふっくらしていて愛嬌のある笑顔が憎めない感じの子。そして左側の竹内カナエのほうは、まっすぐ伸びた長く艶やかな黒髪と、切れ長でどこか冷めた感じの一重まぶたが、とてもクールな印象を与える女の子だった。




水色ノート - 伊藤つかさ 
1stアルバム『つかさ』 1981年

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【Re-Edit】 遠くで汽笛を聞きながら - アリス 【バラードの名曲】

【Re-Edit】【邦楽バラードの名曲】


遠くで汽笛を聞きながら






Epi-11

 1983年2月22日(火) 中学2年の三学期
 夜の9時過ぎ

 さっきから大学ノートに書いたばかりの歌詞を何度も書きなおしているボクは、ついこないだ14歳になったばかりだ。川澄マレンからは、誕生日プレゼントに「手作りの枕」をもらった。たぶんボクなのであろうキャラクターがパッチワークで縫い込まれてる細長く水色の枕。――それをなんとなく気に入って、ずっと抱き枕代わりに使っている。

 今年に入って無理やりさせられた約束がある。それはボクらが中3になる前に、なにかしらマレンのために曲を作なければならないという約束だった。――ロック調のメロディでも何曲か歌詞を書いてはみたけれど、やはり今回だけはバラードっぽいのにしようかなとも思っている。でも彼女に対する思いを過剰に描き過ぎてもウソっぽくてダサイくなる。だから何度も「歌詞を書いてはそれを消す」という作業ばかりを、さっきからずっと繰り返していた。

(これはリアルに存在するマレンに対するものなのか、それともボクの心のなかでイメージしている彼女に対してのものなのだろうか? 去年の夏、羽田空港で抱いたマレンへの一瞬の感情や、クリスマスのとき感じた彼女への激しい想いってなんだったんだろう? 

あのときはホントに『2人だけで暮らしてもいいかな?』って思ったんだけどな。けど最近は、同じ高校に行くかどうか、たまに話したりするだけの、ごく普通の中学生同士の感情にすっかり戻ってしまった気がする。もし去年の夏やクリスマス、マレンへ抱いた感情のままを曲にするならば、ものすごく恥ずかしいのは我慢して、どんな歌詞だろうときっと歌うことだってできるのにな。……)

 「湘南」と呼ばれるこのエリアは、その響きから、よく南国風の気候をイメージされがちなんだけど、当たり前のようにして、身を切る真冬の寒さもちゃんとここには訪れる。

 海岸線に沿って走る国道134号線を挟み、海からもっとも近い場所に建っているボクらの学校があるほうへ、まっすぐ伸びる通学路には、防風用の巨大な松の木が幾つもの大きな屋敷の庭先から外塀をはみ出すようにし並び立つ。

 湘南の風情そのままに映し出してる松並木の通りは、いわばこの街における「風の通り道」でもある。北のほうから海を目指して路地裏を彷徨い続ける真冬の風は、みずからの往き場を求め、やがてこの通りへと一斉に集まってくる。

 くっつき合って増幅した寒風が一直線に突き抜けてゆくこの道を、早朝や夕暮れどきに一度でも歩いてみればわかるだろう。そこに、南国を連想できるほどの穏やかな優しさなんて微塵も感じられやしないってことを。――――

 ボクの妹であるレナのため、両親がかつて買い与えた高価なピアノは、だいぶ前からすっかり応接間の飾り物と化している。ボクは最初、【ド】の音が鍵盤上のどこにあるのかすらわからなかったんだけど、もしかしたらギター以上にピアノのほうが向いてたのだろうか? ……

いまだにまったく楽譜すら読めないが、カセットデッキから流れてくるビリー・ジョエルの曲を簡素化し、ピアノでそれっぽく再現するのもさほど難しい作業ではなくなってきている。もちろん完璧に弾きこなせているわけじゃない。が、ディミニッシュコードみたく複雑な和音も、鍵盤から探し出すことができるくらいにはなったんだと思う。

 ピアノもギターもそうだけど、「聴いててまったく違和感を感じさせない曲」ってものには、「定番的なコード進行」が必ず存在している。それさえ理解しちゃえば「ソレらしい曲」を誰でも作れるようになってくものだ。

 いずれにしたって、ピアノの旋律って「ちょっとダサいなぁ」と感じてたりする歌詞でさえ、妙に説得力のあるものに変える力を持ってる気がする。それに、なんだか弾いてて心がやけに落ち着くんだ。

 ギターで作曲する場合、自分でメロディラインをハナウタなんかで歌いつつ、ハマりそうなコードを見つけながら主旋律(メロディ)をつくり出していく。

 けれどピアノだと、あたまでイメージした歌詞に対して直感的にその場でメロディをつけていきやすい。ときどき思いもしなかったメロディを右手の指先が勝手に奏でてることだってある。だから、もし主旋律(メロディ)を作曲するのなら、ピアノのほうが絶対向いているように思うんだ。――

 3月に入ると春休みになるまでのあいだ、ずっとボクは作曲してきた主旋律の伴奏パートだけをピアノで練習し続けていた。歌詞はほとんど完成していたんだけど、なんとなく、勢いで書いてしまったような気もいまだにしてはいる。たかだか13歳のボクが「愛」なんて言葉を使っても戯言になるだけだ。

 そんなことわかってたけど、それに代わるような言葉をもはや探し出すことができなかった。……なんとなく「好き」って言葉を使うことのほうが、なんだか余計に恥ずかしいような気がしてたんだ。

(もうすぐボクらは中学3年になるんだな)

 気づけばこの街の風には、冬の終わりを告げる草花たちの息吹が、ほんの微かに漂いはじめていた。――――





【2012.06.14 記事原文】

ボクらの年代には、アリスのファンだった方々が多い。

ボク自身で彼らのアルバムを買ったことはないが、
当時は従兄やら知人やらに借りてよく聴かされたものである。


そんなアリスの楽曲で異彩を放っているのが、
堀内孝雄氏作曲によるバラード「遠くで汽笛を聞きながら」でしょう。

まぁ堀内氏の楽曲はメジャーキーを好むために、
救われない歌詞の割りには、あまり暗くなり過ぎていない。。。
というか、どこか希望的な歌にも聴こえてくるのである。





遠くで汽笛を聞きながら - アリス 
5thアルバム『ALICE V』 1976年




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エーゲ海の真珠 - ポール・モーリア 【インストルメンタルな名曲】

【インストルメンタルな名曲】


エーゲ海の真珠






Epi-10

「いまの子供たちは」

「だから最近の若者たちは」

 さも子供側に立っているかのような素振りをしながら、教育評論家たちがテレビのなかで吐き出す言葉の響きには、たったひとつの現実さえも語れぬほどの美しさばかり満ち溢れている。
「子供に悪影響を与えるから」と、いい、彼らは容易くこう結論づけるんだ。

「だから子供に見せるな」

「だから子供に聞かせるな」

「だから子供に教えるな」

 むかしっから、そんな連中がものすごく好きな言葉だ。――アンタらが、ボクたちを「子供」って定義できるほど、なにか特別なものを持ってるとでも思ってるのか? 大人なんて、結局どいつもこいつもみな同じだ。大人になるほどいろんなものを得ていくものだと勘違いしてやがる。けれど、きっとその逆だ。大人になるほどボクらはみんな、いろんなものを失ってくんだ。――

 大人たちが包み隠そうとすればするほど生み出されていく好奇心、――隠された事実を小さなのぞき穴から、どうしても垣間見たくなってしまう隠微な背徳感は、ありのままの真実を突きつけられる以上にボクらを困惑させながら歪ませていく。

 罪悪感はうしろめたさであると同時に、好奇心によってもたらされる曖昧な達成感でもある。
 いつだってボクらは抑圧されるたびに押し返し、キレイごとではないリアルな日常のなかを彷徨(さまよ)う。さも子供側に立つかのように真顔で語る連中が吐き出す虚構の戯言に救われるヤツなんて誰ひとりとしていやしない。だって、

――――ボクらは、なにひとつとして理由なんてものを持ち合わせていないのだから。――――


 1983年3月12日(土)
 朝の8時半頃

 出席停止処分を受け、ボクが学校に行っていないあいだには、様々な出来事があったみたいだ。どうやらPTA保護者会の席で今回の事件が議題に取りあげられたらしい。

 その席上、クラスメイトの母親が、担任教師の日常的な暴力を非難しはじめたことで、ボクの起した暴力事件については、なんだかうやむやにされていき、その代わり、この中学における恒常的な教師側の暴力行為のほうが問題視されていったのだという。

 これはあとで知ったんだけど、ボクが「キレる」きっかけとなった、あのとき担任に叩かれた女子生徒の母親が、どうやらPTAの御偉いさんだったようだ。

 やがてクラス内ではアンケート調査が実施され、担任の暴力行為が確実に存在していた事実が明らかとなる。――その際、クラスのみんなは、「ボクのことを相当に擁護してくれていた」のだと、昨日の夜、マレンから電話で聞いた。

 こうして原稿用紙三枚程度の反省文を書くことを条件に、ボクは一週間の自宅謹慎を終える。

 朝、久しぶりに教室のなかへ入ると、 クラスのヤツらが笑顔でボクのことを出迎えてくれたんだ。マレンは普段、学校でそんなことなど絶対しなかったのに、このときだけはみんなの前で、おもいきりボクに抱きついてきた。

 ボクも少しだけ照れながら、彼女の背中を抱きしめた。みんな暴力から解放されたことを本当に心から喜んでいたんだと思う。担任の具合のことなど誰ひとりとして気にもしていなかった。

(そういえば、アイツはどうなったんだ? まだ入院してんのかな)

 「自宅療養中」ということで、結局、その担任教師は中2の終業式の日になっても学校へはこなかった。そしてボクらが中学3年に進級してからも、その男が新たに学級担任を受け持つことはなかった。こういういい方が正しいかどうかなんてことは、この際どうでもいい。けれど、


――――ボクらはきっと勝ったのだ。――――







エーゲ海の真珠 - ポール・モーリア 
ベスト盤『ポール・モーリア ベスト・ヒット』

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ピアノソナタ第8番ハ短調作品13『大ソナタ悲愴』第2楽章 - ベートーヴェン 【インストルメンタルな名曲】

【インストルメンタルな名曲】


ピアノソナタ第8番ハ短調作品13『大ソナタ悲愴』第2楽章
Piano Sonata No. 8 in C minor, Op. 13, Adagio cantabile







Epi-9

 1983年1月9日(日)
 深夜の1時過ぎ


 光の速さは、およそ秒速三十万キロメートル、
 たった1秒で地球を七周半もまわれるスピードなのだという。――もし、星の光が何百年以上もかかってここまで到達しているならば、いったい地球とはどれほど距離が離れているのだろうか。――――

【あの星の輝きは数百年以上も前に放たれたものだ】

 幼い頃、誰かがいってたそんな話に、この現実世界を大きく飲み込む巨大な宇宙の真理を知ったとき、まるで大海原を漂いながら、ひとり漆黒の海の底をのぞき見ているような思いがしてなんだか急に怖くなった。美しく光り輝く星空を見上げ、ボクがはじめて宇宙という存在に抱いた感情、――それは間違いなく「無限の距離感」というものに対する畏敬の念だったのだろう。――――

 今年に入ってから、元旦以外はずっと自室に閉じ籠り、マレンへ贈る曲の歌詞を書いてばかりいる。けれど中学2年のボクが書く歌詞には、なにひとつとして現実味なんてものなど存在せず、どっかで聞いたことのある、歯の浮くような台詞(せりふ)ばかりがあたまのなかを駆けめぐる。――

 作詞用の大学ノートには、わずか数行程度で行き場を失くした、そんな中途半端な文字たちが脈略もなく、ただ綴られている。……

 余白だらけのノートをぼんやり見つめていたけれど、やがて立ちあがってベッドに「ドサッ」と倒れ込む。窓の外には濃蒼色(のうそうしょく)の冬の夜空が広がっていた。隣の家が二階建てに増築される前までは、この星空も、もっと遥かに広かったような、――なんだかそんな気がする。

 気圧のせいか、それとも温度差のせいなんだろうか。

 冬になると、いっそう重くなる窓ガラスのアルミフレームを、多少の力を込めて半分だけ開け放ってみる。部屋のなかへと一気に吹き込む、少し甘みのある「冬独特の匂い」を帯びた冷気、――どこか金属の無機質さにも似たその真冬の香気(こうき)を、分厚いかけ布団に包まりながら顔に浴びるのが少しだけ心地よかった。そっとリモコンで部屋の灯りを消す。――夜空の闇色にだんだん目が慣れはじめると、星々はその輝きを急激に増していく。――――

 昼間、北口のデパートへ、エレキギターを見に行った帰り、川澄マレンから「曲の歌詞を見せろ」とせがまれた。けれど恋愛系の歌詞だけはどうしても軽々しくは見せられない。たぶん恋愛の歌詞が恥ずかしくて書けないようなヤツらがパンクとかのジャンルにいくのだろう。

 窓の外に向かって静かに息を吐き出してみる。それは最初、夜のなかへとまっすぐ伸びてゆき、タバコの煙のように白く不規則に揺らめきながら、少し向こうの闇と溶け合い消えてった。白い霧状の呼気がカオス的に彷徨(さまよ)い浮遊する様(さま)を眺めながら、枕元に置いてあった腕時計のボタンを適当に押す。――

緑っぽいライトに映し出されたデジタル表示を眺めてみると、すでに夜中の2時を過ぎていた。

 ボクが小学生の頃までは、おもいっきり野球ができるほどに広大な砂場だった家の隣の空き地には、暗くなるまで走りまわってたかつての思い出の遊び場としての名残りなど、なんら残されてはいない。

 中学に入る少し前、薄緑色の合成樹脂でコーティングされた格子状のネットフェンスが、家の敷地とその空き地との境界線上に張られてしまったことで、そこを自由に行き来することができなくなったんた。いまや格子によって隔絶された、かつての野球場は深々と掘削され、表面に湿り気を滲ます茶褐色の土肌を寒空の下、無機質に露呈している。

 その四分の一にはすでに砂利が敷かれて仮設の駐車場と化し、四分の二が現在、住宅用の造成工事の最中だ。残された四分の一の空き地には、その掘削工事で掘り起こされた赤黒い残土が山積みとなって固められたままに放置されている。

 いずれ来年にもなれば、何軒かの分譲住宅が互いに壁をこすリ合わせるようにしながらこの地に建ち並ぶのだろう。 かつて、ここがボクらの野球場だったことなんて、いつかは忘れてしまうのだろうか。――――

 ほとんど空気振動のない外の世界、――この時間にもなれば、うっすら汚れた窓ガラスの向こうには、濁り気のない真冬の冷気が目に見えるほど充満している。なにひとつ物音がしないせいなんだろうか? 

 微かな月明かりが滲みあがらす、濃密なまでの静けさが凝縮された、まるで刃(やいば)の如き真冬の冷酷さをはっきり五感に感じ取ることができる。――

 街の灯りはせつなくなるほど暗いのに、肉眼で見えるのはせいぜい二等星くらいまでだろうか? 冬の夜空のど真ん中、オリオン座を形成しているベテルギウスとリゲル。――上辺の左端と、そこから斜めに星座を大きく縦断した右下すみで、鮮やかなシグナルレッドとアリスブルーに光り輝くふたつの偉大なる一等星を、凍てつく紺青(こんじょう)の彼方に見つめて思う。

(いったいどこで見たんだっけな。――まるで重力を無視するかのようにして夜空一面を覆い尽くしていた『凄まじいほどの星の海』を、……

 そのとき、たかだか数年しか生きていない人生のなかで『もっとも美しいもの』を見たような気がしたんだ。たしかにそれ以上美しいものを見たことはいまだない。いずれにいたって、人間がどれほど技術的に進化を遂げたとしたって、無限の星空より美しい造形物なんて作れやしない。所詮ボクらは、こんなにも小さな有限世界のなか、わずかな瞬間、そこに存在しているだけに過ぎないのだから。……)

 ふと、ベッドから抜け出してガラス窓をもう一度開け放つ。また、あの「冬独特の匂い」が部屋のなかへ吹き込んでくる。ボクは裸足のまま、凍りついたベランダへと降り立った。

 水滴の微粒子が霜(しも)をつくり、木製のベランダ一面を薄いシャーベット状の氷膜(ひょうまく)で覆っている。

 日付が変わるまでずっとぐずついていた夜空の南東には、哀しげな三日月が「ぺったり」貼りつけられていた。

 リゲルはすでに家の屋根の少し向こう側へと隠れてしまったけれど、幾重にも光の輪郭を纏(まと)ったベテルギウスだけは、夜空を赤く滲ませながら、おおいぬ座のシリウスと、こいぬ座のプロキオンらとともに、大きな正三角形を依然としてディープブルーな真冬のキャンバス上に描き続けていた。

 明日から三学期が始まるんだ。――――




作品13『大ソナタ悲愴』第2楽章 - ベートーヴェン 


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少年





Epi-8

 1983年3月7日(月)
 昼の1時半頃


「だっておかしいだろうが! オレはヤツに50発以上は殴られてんのに、さっきはたった10発くらいしか仕返しできてないんだからさぁ」

 思わずそう叫ぶと、

「本当に君はそんなに殴られたのですか?」

 目を細め、目尻にシワを浮き立たせながら、校長は深刻な表情でボクを見つめた。

「だったら、うしろにいる先生方に聞いてみてくださいよ。ちゃんとみんな見てますから。こないだ職員室で20発くらい殴られてるところを、……ねぇ先生、アナタは見てましたよね?」

 ボクは学年主任の顔を睨みつけながら、そう言葉を吐き捨てる。その教師は声に出さずに口元で、「ブツブツ」と、なにやらずっとつぶやいていた。。

(まったくよぉ、どいつもこいつも自分に都合の悪いことには、すぐそうやって口をつぐみやがって)

 やがて校長が口を開く。

「いずれにしても、暴力に対して暴力で仕返しすることはよくないことです」

 ボクはソファにもたれかかり、少しだけ蔑視(べっし)の眼差しを校長へと向ける。

「じゃぁ、……いったい暴力に対しては、なにで仕返しすればいいんでしょうかね? 毎日誰かが殴られているような風景を知らん顔して正当化し続けてきたのは、アンタらのほうじゃねぇのかよ!」

 そして動揺する校長に向かって、さらに言葉を叩きつけてやったんだ。

「もし、校長がホントに日常的なこの人たちの暴力行為を『自分は知らなかった』っていうんならね、アナタはこの学校で、――この部屋に閉じ籠ったっきりで、いったいなにをしながら毎日過ごされてるんですか? 薄暗い部屋のなかから、いったいこの学校のどんな景色が見えてるんでしょう?」

 翌日から自宅待機をいい渡され、2日後、正式にボクは「出席停止処分」となった。
 あとで知ったことだけど、ウチの中学でこうした対応に踏みきったのは、どうやら数年振りのことだったらしい。
 最近、ほとんどまともに話す機会のなかった親父が、「相当怒るんだろうな」って思ってたけど、妙に機嫌よく自分の子供時代の武勇伝を話していたのがちょっとだけ意外だった。――


 1983年3月7日(月)
 朝の10時半過ぎ

――――たしかにマレンの叫び声が聞こえたような気がする。――――

 振り返ると、大きな瞳に涙を湛(たた)え、ボクを見つめる哀しげな彼女の顔が見えたんだ。――さっきまでは、甲高い高周波の耳鳴り以外、なんら物音などしていなかった。

 ただ風景がぼやけて見える、まるでフロストガラスでつくられた試験管のなかのような世界にボクはいた。――ふと気づくと伊浦ナオトが左側に立っている。――ボクは斉藤ミツキら、数名の男子生徒にうしろから羽交い絞めにされていた。

 上履きが片方脱げたボクの足元には、小さな血溜まりに左頬を浸すよう、担任教師がうつ伏し倒れている。その右耳あたりからじんわり沸きあがってる深紅の露(つゆ)が、蛇行を描いて筋となり、担任の喉仏を伝って「ポタリ」と、真っ赤な湖面へ滴(したた)り落ちていく。

(……そういえば、さっきボクはコイツのことを、ずっと蹴り続けてたんだっけ?)

――数十分前、

 まもなく中学2年も終わりを迎えようとしていたある日のホームルーム。

【終業式の前に、なにかクラス全員で記念になるようなことをしたい】

 担任教師が突然思いついたような、そんなつまらない提案に、誰も本気で取り組もうとなどしていなかった。コイツは、あれだけ散々ボクらに暴力を振るっておきながら、まだ、「いい教師」としての余韻かなんかに浸れるもんだと思ってやがる。

(記念になるような行事など、なにもしなくたってお前のことは一生覚えといてやるよ)

 担任教師はさっきから明らかに黒板の前で苛立っている。
 先週の帰り間際、「記念行事になにをするか考えてくるように」と、たしかにいってた気もするが、誰も具体的な提案を出さないままで、もうかれこれ10分以上は経過していた。
 大きな「ギョロ」ついた眼で睨まれた生徒たちは、一様に「別に」とか「特にないです」と同じような発言を小声で繰り返すばかりだった。


(記念になるような行事など、なにもしなくたってお前のことは一生覚えといてやるよ)

 担任教師はさっきから明らかに黒板の前で苛立っている。先週の帰り間際、「記念行事になにをするか考えてくるように」と、たしかにいってた気もするが、誰も具体的な案を出さないままで、もうかれこれ10分以上は経過していた。

 大きな「ギョロ」ついた眼で睨まれた生徒たちは、一様に「別に」とか「特にないです」と同じような発言を小声で繰り返すばかりだった。

 やがて、担任の理性のリミッターがいつものように解除されはじめていく。

「お前ら! ちゃんと『考えとけ』っていっといたろうが!」

 足早に一番前の男子生徒の席へと向かい

「お前、本当になにもやらなくていいのか?」

 と、その彼を怒鳴りつけた。――この男はいつだってそうだ。必ず「見せしめ」として、まず誰かをひとりだけ選ぶ。そしてソイツを恫喝し、一気に追いつめることで教室全体を威圧しようとしやがる。

(そんなの、もうとっくに馴れちまったよ!)

「お前、立て!」

 見せしめ役にされた男子生徒は仕方なく立ちあがり、また、殴られることを覚悟した様子だった。その席が一番教壇に近いせいもあるが、なにかあるたび担任に殴られている彼のことを、ボクらは「避雷針」と呼んで同情していた。

「避雷針」役の彼の背中が、殴られた衝撃で大きく左のほうへと傾く。――その瞬間、ボクのなかで急激に『なにか』が覚醒した。――衝動的に椅子から立ちあがろうとしかけたとき、――

「もういい加減にしてください!」

「避雷針」の隣に座っていた女の子がいきなり絶叫したんだ。
 普段マジメですごく大人しい感じの彼女のそんな声を、いままで一度も聞いたことなんてない。だから余計に驚いた。

「なんだ?」と、担任はその女子生徒を睨みつける。

「もう、こういうことするのやめてください!」

 女生徒がはっきり強い口調でそういい放った直後、担任は彼女の左頬をおもいきり平手で叩いた。いつものように、口元には少しだけ歪んだ笑みを浮かべている。

――――パァーン――――

 さっきボクのなかで生まれた『なにか』が砕け散っていく。――そこから先の行動に明確な意思などはなかった。脳が命令伝達するよりずっと速く、カラダはボクの心を置き去りにしていった。――おそらくいまの破裂音は、叩かれた女生徒の頬から響いた音じゃない。ボクの理性が砕け散った音なのだろう。

 ボクは担任教師のほうへと一直線に駆け出していく。――女生徒に気をとられていた担任が足音に気付き、右肩越しに振り返る。――刈りあげられて丸出しになったコイツの右耳のうしろあたりを、ボクは助走をつけたまま右拳で殴り飛ばした。――その衝撃で、右の手首に「ズッ」と鈍い痛みが走る。

 ちょうどカウンター気味にまっすぐ突き刺さった右ストレートにグラつくと、担任はクリーム色した教壇の前板に「ベッタリ」顔を押しつけて、そのまま側板を抱きしめるような格好で「ガクッ」と床にひざまずく。――直後、前のめりに背中を仰(の)け反らせながら伸びてくよう倒れていった。――

体重を支えきれない教壇は、ゆっくり「ズズズッ」と脚を引きずり、やがて黒板の桟(さん)にぶつかり動きを止める。

 ダサいグレーの柄物ベストを着た担任は、筋肉質な背中を反り返らせて教壇にもたれかかっている。その剥き出された後頭部めがけて、上から何度も強烈に踏みつけた。スチール製の教壇に「ゴツゴツ」と、この男が額を打ちつける微かな振動が上履きの底に伝わってくる。

 きっといつものボクであるならば、生活臭が滲み漂う柄物のベストの色を見た途端、

「これって、もしかしたらコイツの奥さんが買ったものかな?」

 とかって、家庭のことやら考えて、罪悪感に駆られてしまっていたかもしれない。けれど、いまのボクに感情なんてものはない。そこにあるのは、目の前に揺らめく風景と、止め処なく湧きあがる攻撃本能。――ただそれだけだ。

 背後から、誰かが止めに入ってきたが、その制止を強引に振りほどき、両手であたまを抱えてうずくまる担任教師の右頬骨あたりめがけてまわし蹴りをぶち込んだ。勢い余って脱げた上履きが「バチィッ」と激しく黒板にぶち当たる。

 そこに明確な殺意なんてものはなかったけれど、「別にこんなヤツ死んでもいいな」って、思っていたのは間違いない。――

もう一撃、左足で担任が剥き出している後頭部を踏み潰そうとした。が、ほとんど同時に、コイツはスチール製の教壇を黒板のほうへ寄り倒しながら床にうつ伏せていった。狙いを外したボクのかかとは、担任の右耳あたりを擦(こす)って強く床を踏みしめた。

【―――― パル! ――――】

 なんとなく遠くのほうで、誰かに呼ばれたような気がした。

【―― パル! ――】

 それは、きっとマレンの声だ。

「パル! もうやめて!」

 思わずボクは「ハッ」と正気を取り戻す。――さっき砕け散った理性のパーツが心のなかで再び結合されたのだろうか?

 いずれにしても川澄マレンの叫び声をものすごく耳の近くで感じた瞬間、我に返って一気にカラダが動かなくなった。――気がつくと、涙を湛えたマレンの大きな瞳の色をボクはただ見つめていた。――ほかのヤツらの声なんてまったく聞こえてなかったけれど、マレンの泣き叫ぶ声だけは、そのときはっきり聞こえてたんだ。――――









少年 - 黒夢 
6thアルバム『CORKSCREW』 1997年



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Epi-7

 1982年5月13日(木)
 四時限目の終わり頃


 おぼろげな春光が南の窓から柔らかく射し込んでいる。―― 担任教師は、薄気味悪いその眼のなかに淡い陽射しを映し出し、ためらうことなく窓のほうから順番に生徒を殴りはじめる。そのたびに彼らはうしろの壁に激突したり床へ崩れたりしていった。

 ボクは担任の顔をずっと見ていた。人を殴ってるときって、いったいどんな顔をしているものなのか、なんとなく興味があったんだ。

――――感傷と歓喜を同時に漂わせたような歪んだ恍惚感――――

 もしも言葉にするならば、きっとそんな感じなんだろうか。
 担任教師の見開いた、魚のように大きな目には、たしかにそういう「いびつな喜び」がうっすら漂っていた。

 やがてボクの順番になる。
 女子生徒たちは隣でずっと泣き続けている。ボクは担任の顔をぼんやり見ながら笑ってた。こみあげてくる「怒り」みたいな感情が、不思議なくらいボクを笑顔にさせている。

(きっと、真顔になったら負けだ。……)

 怯える女子らのために、意地でもボクが余裕を見せていなけなければ、――なんとなくそう思ってたんだ。

「……なに笑ってんだ」

 と、この男は大きなサカナのような眼をボクへと向ける。

「別に、……」

「なに笑ってるんだよ! お前は!」

 担任教師はそう叫び、ボクの左頬骨あたりに重たい右ストレートを突き刺す。その衝撃が脳のなかを一気に揺さぶり、右側頭葉が頭蓋骨の内側に激突した。――衝撃を感じながら、コイツが人を殴り馴れてるってことをボクは瞬時に理解する。けれど、それはボクシングの殴り方ではなかったと思う。たぶん、むかし空手でもやってたんだろう。いずれにしたって、この打撃の重さは素人ではない。――

 二発、三発と、間髪いれずに殴り続けられてくうち、その衝撃のなかに、感傷や歓喜とは違う、なにかもっと別の冷酷な感覚、……おそらくはいっさいのためらいもなく、その対象物を破壊しようとする残虐な「使命感」のようなものを、はっきりコイツの拳から感じ取れたんだ。それはまるであたり前のように容赦なく、そしてものすごく機械的な「破壊行為」そのものだった。

 それでもどうにかしばらくは、笑ってコイツの太い前腕に浮かびあがった血管の本数を数えることもできていた。そのすべてを刃(やいば)で切り裂いてやりたいような気分だった。

 けれど、さすがに上唇のあたりが痺(しび)れはじめ、だんだん笑顔が維持できなくなっていく。苦痛に歪む表情を小馬鹿にするよう見届けて、担任の足音は、やがてボクの右隣で震えてる女子生徒らのほうへと移動していった。

「バシン」という高い炸裂音が静まり返った教室内に響き渡る。――それは「頬を平手で叩いている」ってことを、怖くてうしろを振り返れない、ほかの生徒らに教えている音だった。ただ、同時にこの男が女生徒を拳では殴らなかったってことを意味する音でもあった。痺(しび)れた唇を指先でなぞり、ボクはその担任教師の横顔を睨みつけた。――

 恐怖のあまり、おとなしく服従いていく者たち、――そして、その暴力に対して反逆心を生み出していく者たち、――暴力的な脅威に支配された場合、大抵、人はその二つのタイプに分かれるのだろう。すべての人間を100%暴力で支配することなど到底不可能だ。

 腐った教師たちがどれだけ力で服従させようとしたって無駄さ。誰にもボクらを「力」で支配することなんてできやしない。世の中に対して常に持ち続けている「理由なき反逆心」がバリアとなって、ありとあらゆる外圧から14歳のボクら自身を守ってる限りは、…………


 1983年3月7日(月)
 昼の1時半頃


 敷地内に三棟連なる校舎の真ん中に建ってるのが本館である。その一階、職員室のほぼ真下にあたるこの場所が、おそらく学校で一番陽当たりのいい部屋なんだと勝手に思っていたけれど、射し込む陽射しは奥まで届かず、ボクが座るソファーの少し手前で薄暗い陰影と交わっている。――昼を過ぎてもまったく気温はあがらないままだった。

 壁の上のほうには、歴代の校長らしき人物の肖像写真が高価そうな額縁に収められ、規則的に並んでいる。

(このなかで一番古いのって誰なんだろう?)

 思いのほか、その写真の数が多かったことからも、この中学がいかに歴史ある学校だったのか、ほんの少しだけ窺(うかが)い知ることができた。

 正門あたりで大きく鳴りはじめた救急車のサイレンは、やがてすぐに遠くのほうへと消えていった。校長室の古ぼけた茶色いソファに座りながら、ボクは、この質素な部屋のなかをぼんやり見まわす。

 気がつくと、いつのまにやら生活指導や学年主任ら、主要な教員連中も集まってきていた。彼らは、安そうな合板製テーブルを挟んでボクの目の前に座ってる校長のうしろに並んでこちらを睨みつけている。

 ひとりの教師が慌てながら部屋へ入ってくるなり、校長になにやら耳打ちする。 神妙な顔つきで何度か頷くと、やがて校長は少し垂れた厚ぼったい上まぶたを見開いて、ゆっくりボクのほうを見つめた。ボクも彼の顔を、この学校に入ってからはじめてちゃんと間近で眺めていた。学校行事で挨拶をしている姿を遠めで見ていたときとはずいぶんと印象が違う。年老いた校長の顔は、大小のシミや無数のシワ、さらには細かいほくろで埋め尽くされていたんだ。――


「……とりあえず担任の先生はいま、病院へ向かわれました」

 校長は穏やかな口調で、そう語りはじめる。

「君のしたことは暴力行為です。そのことはわかりますね?」

 ボクは小さく頷いた。

「先生は、もしかしたら大変な怪我をされているかもしれません。君はそのことを反省していますか?」

 ボクは黙っていた。

「……なぜ君は先生を殴ったりしたんですか?」

 と、校長は相変わらず穏やかに、その理由をボクに問う。

「それは、先生が生徒を殴るから、……です」

 ボクは、うつむきながら小さく言葉を吐き出した。

「先生が殴る? いつ先生が生徒を殴ったのですか?」

 校長のそんな言葉に、少しだけ「フッ」と嘲笑しながらボクはつぶやく。

「いやぁ、『いつ』というより『いつも』なんですけど」

 すると校長は顔をしかめ、うしろに並んでる教師たちのほうを振り返った。
 教員連中は誰も校長と目を合わさずに、隣同士、お互い首を傾げるような仕草をし合う。

(ふざけんな! ちゃんとお前ら見てただろうが! 職員室でボクが殴られてる姿をよぉ)

「いずれにしても暴力はいけないことです。君は先生に対してきちんと謝らなければならない」

 と、校長はボクのほうへ向きなおると静かにいった。

「じゃぁ、先生だったら生徒に暴力を振るってもいいんですか?」

「いいえ、決して暴力を振るってはいけません」

 少しだけボクは苛立ちはじめる。

「おかしいでしょ!校長のいってることは!先に暴力を振るってきたのはアイツのほうなんだからさぁ、だったら、まずはアイツに謝らせてくださいよ!」

「お前! 校長先生に対してなんていう口の利き方してるんだ!」

 校長のうしろにいた生活指導の中年教師が怒鳴る。よくある学園ドラマの台詞みたく本当にそういった。ボクはだんだん、教師たちに対して湧きあがる憤りの感情が抑えきれなくなっていく。

「だっておかしいだろうが! オレはヤツに50発以上は殴られてんのに、さっきはたった10発くらいしか仕返しできてないんだからさぁ」

 思わずそう叫ぶと、

「本当に君はそんなに殴られたのですか?」

 目を細め、目尻のシワを浮き立たせながら、校長は深刻な表情でボクを見つめた。

「だったら、うしろにいる先生方に聞いてみてくださいよ。ちゃんとみんな見てますから。こないだ職員室で20発くらい殴られてるところを、……ねぇ先生、見てましたよね?」

 ボクは学年主任の顔を睨みつけながらそう吐き捨てる。その教師は、声にならない言葉を口元のあたりで「ブツブツ」とつぶやいていた。――



亡き王女のためのパヴァーヌ - モーリス・ラヴェル(演奏:辻井伸行)
1stアルバム『debut』 2007年








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Epi-6

 1982年5月13日(木)
 四時限目の終わり頃

 最初はクラスの誰かが「むかしの漫画の主人公」に似ている担任の髪型をからかったことがきっかけだった。教室内には的を射た、その誰かの言葉に小さな同調の笑いが起こる。

 忘れもしないけど、担任教師はそのとき確かに笑ってた。――口元に笑みを浮かべたまま、ゆっくりとその生徒に近寄っていき、ただひと言「お前なぁ」と、だけいった。……いや、それをいい終わる前に、なんの前触れもなくおもいきり彼の顔面を素手で殴り飛ばした。――――

 そもそもボクらは教師に平手で叩かれたり、あたまをゲンコツで殴られたことはあっても「拳で顔面をぶん殴られる」なんて、それまでの人生では、ほとんど経験したことがない。その担任はずっと口元に微笑を浮かべ続けながら、唇を押さえ、顔をそむけたその生徒の左頬をさらに激しく右フックの軌道で殴りつけた。

「ゴツッ」と頬骨が放つ鈍い衝撃音とともに彼はイスから真横へ転がり落ちる。――教室内は一瞬にして静まり返った。――誰かが殴られている光景を日常のなかで間近に見ること自体、きっとそれまでの人生で一度も経験がなかったからだろう。

「いま笑ったヤツは全員立て」

 担任はゆっくり教壇に戻ると、「ギョロッ」と飛び出した眼球を小刻みに震わせながら教室を見渡し、あまりにも普通の口調でそういった。当然、誰もすぐに席から立ちあがることなんてできるはずもない。すると担任は窓際のほうの席へと歩きはじめ、一番前に座っていた男子生徒の脇に立つなり、無表情のまま彼のあたまをおもいっきり上から殴りつけた。

「お前、さっき笑ってただろ。俺は『立て』といったんだぞ」

 ゆっくり立ちあがったその生徒は、すっかり顔面蒼白になっていた。きっと一瞬で血の気が引いてしまったんだろうから、視界のなかは「チラチラ」と灰色がかった暗がりに包まれ、耳もまともには聴こえていないはずだ。――教室内は、痛いくらいに重々しい戦慄の空気によって支配されていく。

「ほかにはいないのか?」

 ボクにはこの殺伐とした空間がものすごく息苦しくなってきた。同時に、なんだかすごくバカらしく思えてきた。不思議なんだけど、誰かほかの生徒が殴られている姿を見ると自分も殴られなきゃいけないような気になってくる。別にソイツのことをかばうわけじゃないが、ソイツだけ殴られてるのが、なんとなく可哀想に思えてしまうからだ。

 少し笑いながらボクは椅子から立ちあがった。こうした極度の緊張感に支配された場所にいると、おかしくもないのに、むかしからなぜだかいつも笑ってしまう。我慢しようとすればするほど、余計吹き出しそうになっていく。だからお坊さんが延々とお経を唱える法事やらがものすごく苦手だ。とてもじゃないけど沈痛な顔をして、じっと座ってなんかいられやしない。

 ボクのあとを追うように、5人くらいの男子が重そうにイスを「ズズズッ」と引きずって渋々立ちあがる。担任はさらに窓際の列をうしろへ移動していきながら、

「お前も笑ってただろう。『立て』といってるんだよ」

 そういうなり、ひとりの女子生徒のあたまをおもいっきり「ゴォンッ」と、力いっぱい殴りつけたのだ。ボクはその光景におもわず目を疑ってしまう。いきなり殴られたその女子生徒はショックのあまり、震えながら泣き出した。

「立てよ早く」

 この狂った担任教師は泣いてる女の子を無表情のままそういって脅し、無理やり立ちあがらせる。すると連鎖反応的に数名の女子生徒らも顔色を失い、うつむきながら立ちあがる。なかには怯えて「ガクガク」と、足が震え出す子もいた。……そのなかにマレンの姿はなかった。彼女は自分の席に座ったままで、その大きな瞳に恐怖の色を浮かべている。

(大丈夫だよマレン。もしコイツがキミに手を出そうとしたら、ボクが絶対許しはしない。半殺しにすらしない。――その場で始末してやるからさ)

「お前ら、こっちにこい」

 すごく冷静な口調で、そうヤツは指示した。ボクたちは教室のうしろの壁に沿って横一列に並ばされた。一番窓側に立っていたのは伊浦ナオト(イウ)だ。担任教師は黙ったまま窓際のほうへと移動し、「ギョロ」ついた眼球でイウを見つめる。……と、同時に「メリッ」と木製ボードの軋む音がし、イウがうしろの壁におもいきり後頭部を打ちつけた。――――



【2012.03.17 記事原文】

マイケル・シェンカー・グループ2nd「MSG」より。
アルバムとしては、3枚目よりもカッコイイ!

「Looking for love」は、哀愁を帯びたメロと
後半の鳴きまくるギターソロがCOOL♪







Looking for love - マイケル・シェンカー・グループ
2ndアルバム『MSG』 1981年
アルバムお薦め度 「持っていても良いでしょう」

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The Piano Concerto No. 5 in E-flat major, Op. 73 Adagio un poco mosso in B major





Epi-5

 1982年11月4日(木)

 ボクらが生まれるわずか20数年前まで、この国が戦争をしていたなんてまったく信じられない話だ。けれど昭和一桁生まれの親父が小学生のときはまだ、確実にこの国は戦争の真っ只中だった。――

 たしか沖縄がアメリカから返還されたのって、ボクが生まれた年あとのこと。当時、テレビなんかでやたらと大騒ぎしていたような覚えがぼんやり記憶に残ってる。

「沖縄」といえば、小学校低学年の頃、体育館で上映された映画『ひめゆりの塔』――それしか思い浮かばない。すべての内容を覚えてるってわけじゃないけれど、見終わったあと、なんだかとてつもないやるせなさが心に刻み込まれてしまった。

 『二十四の瞳』や『はだしのゲン』も、学校で見させられたはずなのに、「戦争」といえば、なぜか真っ先に沖縄のことを連想するようになってしまったのである。

――――お爺ちゃんは戦争のとき外国で死んだ――――

 毎年ってわけじゃなかったが、子供の頃、終戦記念日になると地元の海岸に親戚たちと出掛け、一度も会ったことのないお爺ちゃんの話をよく聞かされたりしていたものだ。けれど、お爺ちゃんがどこの国で死んだのかは、―― たぶん南アジアの海だったと思うけど、けっきょく何回聞いても覚えられなかった。

 ただ、海に捧げられた花束が、なかなか沖へと向かわずに、何度もボクらの足元へ戻ってきてたことだけは、なんとなくぼんやり覚えている。

 こうして、ただ、なんとなく過ごしている日常のどんな部分を切り取ったって、その戦争の痕跡をリアルに見出すことなんてできやしない。もし誰かに教えられなければ、きっとこの国に戦争があったことなんてボクらはずっと知らないままだったのかもしれない。

けれど、ボクらが生まれる20数年前までは、命の奪い合いが間違いなく行われていた。――だから、流れるボクらの血のなかには、相手の命を奪ってしまえるほどの激烈な闘争本能が脈々と受け継がれているような気がするんだ。
 
 きっと誰も気づいてないだけさ。

――――そう、覚醒しない限り。――――

 きのう、学校から帰る道中、薬局でオキシドールを買った。
 結構な分量を左手にすくい取って、伸びた前髪の左右に擦(こす)りつけ、しばらく至近距離からドライヤーの熱風をあて続けてみた。――すぐ蒸発したオキシドールの、なんともいえない生暖かな異臭があたりに充満しはじめていく。

「狙い通り!」と、まではいかなかったけど、髪の毛はたしかに茶色く変色していた。

(担任には、また殴られるかもな)

 なんだかボクは最近、やたらと教師や先輩らに対して挑発的な気分になっている。2学年上の先輩たちは相当ワルかったけど、一校上のいまの3年は、どいつもこいつもみな一様にダサいヤツばっかりだ。

 理由は全然大したことじゃなかったけれど、――

 こないだ職員室で 担任教師に20発以上殴られ続けたんだ。15発目くらいまでは覚えてたけど、あとのほうはだんだん間隔があいてきて、ふと、担任が思い出しては時々ボクを殴る、……みたいな感じだったんで、最終的に何発殴られたのかまではちゃんと数えてない。

 まわりにいたほかの教師連中は、ほとんど誰もそれを見ていなかった。きっと目には入っていたんだろう。が、鮮血の飛び散ったYシャツ姿のボクのことなど誰もまともに見ようとしていなかった。彼らは普通に談笑したり自分の机に向かって事務作業をしたりしていた。

―――― 別にいいさ。隠蔽と保身好きなボンクラどもが! ――――

 この担任教師は、ほんの些細なことでも平然と拳で顔面を殴ってくる。暴力系教師なんてこの学校にも何人かいたけれど、大抵の場合、「平手打ち」だ。 顔面を拳で平然と殴れるようなヤツは、さすがにコイツくらいなものだろう。――

 これは殴られてみないとわからない感覚なんだろうけど、その瞬間って、突然、目の前の風景がまるで、勢いよく「あっち向いてホイ」をさせられたみたいに、一瞬のうちに変化する。―― いや、衝撃によって強制的に変化させられる。大抵の人は、なにが起こったかまったくわからないので、この感覚には即座に順応することができない。

「ゴォッ」という鈍い衝撃のあと、おそらくは前かがみになったりするせいなんだろうけど、自分の上履きが、いきなりすぐ鼻の先に見えたりするんだ。

 何発も顔面を殴られ続けていると、だんだん神経が麻痺していくんで、受ける衝撃ほどの痛みは感じなくなっていく。けれど、何度も脳が頭蓋骨の内側にぶつかってるからなんだろうけど、あたまのなかが「ズキンズキン」と疼きはじめる。

 でもやはり一番キツいのは鼻を殴られたときだ。鼻骨の奥のほうで「ツーン」と錆びた鉄のような匂いがする。きっとそれは血の匂いなんだろうけど、……とにかくすんごく嫌な気分になる。だから鼻を殴られるよりは頬とかのほうが全然マシだ。

(この担任教師は、たしかボクらが中学2年になると同時に他校から転任してきたんだったな。『ギョロッ』っと飛び出した魚のように大きな目、額を横断するよう何本も刻み込まれた深いシワ、色白の肌に青々と残された髭剃り跡、そして短く刈あげられたうしろ髪、……この男が新しいクラスの担任としてはじめて教室に入ってきたとき、なんだかものすごく薄気味悪い印象を覚えた。最初の頃は、バカ真面目で大人しいヤツかとばかり思っていたんだけど、ある日を境に、この担任教師は突然豹変したんだ。――)

 ――――うす気味悪いその顔を忘れることなんてきっと永遠にできやしない。――――

 そういえば、――
 職員室で殴られてる最中、ひとりだけ止めようとしたのか、途中でボクに土下座するようにいってきたヤツがいたんだけれど、その担任から、

「立ってるほうが殴りやすいですから」

 と、いわれたら、なにもいわずにあっさりその場を立ち去ってしまったんだ。背を向け去っていったその中年教師が、たしかボクたち2年生の学年主任だったな。……まったく笑える話だね。

 学校のなかでなら、 当然許されるものだと勝手に思い込んでる故意による傷害行為のことを教師どもは、「罪」ではなく「(体)罰」と呼んで正当化している。コイツらは生徒を殴ることに快楽を覚えてしまったサディスティックな変質者か、殴ることで自分は「指導してるんだ」と、自己満足な妄想に取り憑かれたサイコパスだ。
 どんな理由があろうとも人を拳で平然と殴れるヤツなんて、暴力に快楽を覚え、みずからの理性を制御できない異常者、もしくは変人だ。

【みんながみんな、悪い教師ばかりじゃない】

 そりゃあ、たしかにそうなんだろうけど、目の前で繰り広げられてる同僚たちの暴力行為を批判も制止もしないまま、日常の風景にすっかり同化させちまってるようなほかの連中が正常だとも思えない。――歴然たる暴力が存在している学校のなかにいて「自分は知らなかった」なんて真顔でいわせやしない。結局、教師なんて異常者ばかりだ。

 そんな異常者たちが平然と存在している「学校」という名の密室、――そこは、復讐心を持てない弱者にとって、決して安らぐことのできない、まるで戦場のような場所なのである。けれどボクは、そんなに甘くない。――教師たちに対して抱く敵意は日増しに高まり続ける一方だ。少なくとも担任教師のことだけは絶対許したりしない。

 争いの歴史のなかを生き延びてきた先祖たちの血流を伝って、ボクに受け継がれた様々な遺伝的本能が心を煽(あお)る。

「ヤツられたら、必ずやり返せ」って、――いわれなくてもヤってやる。

――――そんなの当たり前のことだ。――――

 教室に戻ると、川澄マレンが心配そうな顔をしてボクのそばへとやってきた。ボクは笑いながら「大丈夫だよ!」と答えたが、しばらくすると頬の表面が硬くなり、内出血の塊が何個もできはじめていく。休み時間、トイレの鏡で眺めてみると、両頬や右目の下が薄紫に変色し、腫れているのがわかった。
 頬の内側にできた血腫を舌先でなぞりながらボクは思ってたんだ。

「でもまぁ、あれだけヤラれたにしてはそんなにヒドくもないかな」って、…………

 最近、ボクのまわりではUKパンクを聴く連中がやたらと増えてきている。「パンク」といえば、……こないだ鈴本タツヤに借りたセックスピストルズのアルバムをたまに聴いている。こんな程度のギターなら、誰でもすぐにでも弾けそうな気がするけれど、このバンドのアルバムはわかりやすいんでキライじゃない。

 セックスピストルズ唯一のスタジオアルバムとなった『勝手にしやがれ(Never Mind the Bollocks, Here's the Sex Pistols)』で、ボクが一番好きなのは、やっぱり「ゴッド・セイヴ・ザ・クイーン(God Save the Queen)」かな。この曲は聴いててすごく気持ちいい。「No Future(未来なんてない)」か、――なんだかすんごくいい響きだ。――

 帰り道、マレンはずっと説教し続けていた。たしかに上級生や教師たちとの揉め事は、このところ妙に増えてきているし、こないだ3人の相手に怪我をさせたのも事実だけれど、……彼女が「ブツブツ」隣で小言をいっているあいだ、あたまのなかでは、なぜかセックスピストルスの「アナーキー・イン・ザ・U.K (Anarchy in the U.K.)」のリフがリピートしていた。

(そういえばアナーキーってバンドもあったな。いつだったか斉藤ミツキに『亜無亜危異都市(アナーキーシティ)』ってアルバムを聴かされたことがある。そのアルバムに収録されていた「探し出せ」って曲のイントロのベースラインが、ものすごくイカしてたんだ)

「あんまりさぁ。先生とか先輩に反抗しないほうがいいんだからね!」

 と、マレンは大きな瞳を曇らせる。

「うーん、でもさぁ。それがパンクなんだけどね!」

 ボクは、腫れあがり突っ張った笑顔で答えた。

「なにがパンクなのよ! 全然、意味わかんないんだけど! もう! ちゃんと真面目にあたしの話、聞いてるの?」

 さほど真剣に答えたつもりはないけれど、バカにされてると思ったみたくって、マレンは「ムッ」としながらそういっていた。

――――よくわからないんだけど、きっとそれがパンクなんだろうな、って、ただなんとなく思っただけさ。――――

 なにかにつけてボクたちは、いつだって理由を求められてきた。みずからの行為や選択を正当化するための大義名分。……そもそも、それが理由なんてものの本質だ。つまりは、いい訳にもなるし、欺瞞(ぎまん)や詭弁(きべん)にもなる。

―――― どうして、そんなことしたの? ――――

 子供の頃からそうやって、いつも理由ばかり問われながら生きてきたボクたちが、無意識や衝動的にしてきた行為のほとんどに、明白な理由なんてものなど存在しやしない。
 だから一番正しい理由は、

「……よくわからないけど、なんとなくそれをした」

 が、きっと正解なのだろう。

 もし、「なんとなく」のうしろに副次的な大義名分としてなんらか要素をつけ足すならば、

「面白そうだから」

「興味があったから」

「ムカついたから」

「欲しかったから」

 まぁ、そんなものいくらでも思いつく。子供たちのそんな正直な答えになんてなんの意味もない。けれど大人たちはいつだって無意味にその理由を真顔になって知りたがる。……そして最後にさらに訊く。

――――で? 本当の理由はなに? って、――――

 だから子供たちは必要に迫られて、それらしいウソを覚えざるを得なくなってゆく。いつだって理由ばかり求めようとするようなヤツらには、ボクらがなぜ、それをしたのかなんてことなど決してわかりはしないんだよ。

 もし、そんなんでいいんなら、いくらでもアンタらの目の前に、アンタらの好きそうなキレイ事を並べてやるさ。そんなふうに上手に嘘がつけるヤツらのことを、きっと正直者だとかって褒めるんだろうね。大人たちはいつだってボクらのことをわかったような振りをする。生ぬるい理想的尺度から「こうあるべきだ」って、無意味な願望のフィルターを何枚も重ね合わせ、ボクらのことを身勝手に定義付けようとする。――――




ピアノ協奏曲第5番『皇帝』第2楽章 - ベートーヴェン(演奏:フジコ・ヘミング)



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Epi-4

 1982年7月28日(水)
 夕方の3時少し前

 やっと唇に届くまで伸ばし続けた前髪を無造作に吹きあげてった潮風は、この小さな境内のなかをずっと彷徨(さまよ)い続けている。――

 神社の奥にそびえる巨大な老樹へ突き当たり、生い茂った深緑の枝先を「サラサラ」揺すって、ボクのほうへと舞い戻り、今度は右頬を「ふうわり」優しく撫でていく。――南風は、さっきからそんなことを繰り返してばかりいる。

 この街のなかでもかなり樹齢が古そうな老樹たちの揺らめく影がもたらす静けさに埋もれて、ボクは波打つ枝葉の透き間に空の青さを探し出す。――そのさんざめきが大きくなるほどに、静寂はいっそう深まりながら外界の騒音(ノイズ)を遮断してゆく。 ――――

 石段に寝転んだまま、ウォークマンのカセットを、サザンオールスターズの『ステレオ太陽族』と交換した。こないだ発売されたばかりのニューアルバム『ヌードマン(NUDE MAN)』と、去年りりースされた『ステレオ太陽族』――その二本のカセットを、ついさっき斉藤ミツキからもらったばかりだ。

 今日も最高気温は30℃を超えてるはずなのに、さほど暑さは感じられない。そう、……この場所にいる限りは。――

 古くて小さなお堂とは、まったくもって釣り合わぬほど真新しい賽銭箱がやけに目立ったこの神社の名前をボクはなかなか覚えられない。

 けれど、この場所を守る巨大な護衛のような老木たちによって生み出された木陰のなかは、単なる日陰とまったく違った別次元の空間にいるかのようで、不思議なほどに凛(りん)とした静寂と、季節感を失ってしまうほどの涼しさ、――そしてなにより優しい安らぎを、いつだって心にもたらしてくれるんだ。

 一曲目の「ハロー・マイ・ラブ(Hello My Love)」を二回リピートさせてから五曲目まで一気に聴いてみる。二曲目、「マイ・フォープレイ・ミュージック(My Foreplay Music)」のイントロで、キーボードにかぶさる哀愁の余韻を滲(にじ)ませたようなギターフレーズがなんだかすごく好きだ。

 そしてAOR風アレンジの三曲目「素顔で踊らせて」から五曲目「恋の女のストーリー」までは、洗練されたバラードナンバーが流れるように続いていく。かつてこのバンドが得意としていたシンプルでアーシーなサザン・ロック系のバンドサウンドとは違って、ストリングスを際立たせたキーボードの使い方や、リズムギターの刻み方などがものすごく上品だ。もしかしたらアレンジャーでも変わったのだろうか?

 見上げれば、境内と現実世界を遮断するようそびえ立つ巨大な老木たち。――彼らは、みずからを覆い隠す無限の葉々のその奥に、深淵なる神秘の闇を宿している。それはきっと、ながきに渡ってこの場所で、街の変遷(へんせん)を見守ってきた神木たちが醸(かも)し出す、時の重みの気高さだ。


 ふと、制服の胸ポケットに、小さく折りたたまれた大学ノートの切れ端を見つける。――無造作に取り出すと、枝葉の先の青空に透かすよう、そっと片手で広げてみた。


―――― カミュはなんて呼ばれたい? ――――


 そう。……ボクの名前はかなり珍しいんだろうな、と思う。

 正しくは「可未宇(カミウ)」だけれど、大抵は省略されて「カミュ」と、みんなから呼ばれてる。川澄マレンとは、斉藤ミツキたちと一緒にドリームランドへ行った日からつき合っているらしい。……いや、たぶんつき合ってるんだろうな。

 はたしてこれが「カレ」とか「カノジョ」、まして「恋人」なんて呼ばれるような関係なのかどうか、ボクには、まだよくわからないんだけどね。――授業中、こうしてノートの切れ端に書かれたメッセージが、前のほうの席から何人かの友達らを経由して送られてきては、それに対する曖昧な返事を同じルートで送り返してるってだけな気もする。

――さっきのマレンからの質問メッセージ、

【ボクのことをどう呼んで欲しいか】

 に、対する返事には、

「渋谷パルコが好きだから『パル』って呼んで」

 って書いたんだ。

 無論、冗談のつもりだったんだけど、マレンはなんとなくその響きが気に入ったらしくって、ふたりっきりでいるときは、最近、ボクのことをそう呼んでいる。

(ホントはまだ渋谷のパルコには、行ったことがないんだけどね、……)

 もしそういうことを「つき合っている」というのなら、ボクらはきっとつき合ってることになるんだろうな、と思う。

 巨木たちに弾き返され、みずからの往き場を失った潮風を飽きもせず、ボクはぼんやり追いかける。木々のわずかな隙間をかいくぐってこぼれ落ちた白い木漏れ日は、本格的な夏の始まりを告げる天からの啓示なのだろうか。――それは幾束もの光の線状となって「ゆらゆら」揺らめきながら、あいも変わらずいつまでもボクのまわりで遊び続けている。


Tsunami - デビー・ギブソン
カヴァーアルバム『MS.VOCALIST』 2010年





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グッドラック・アンド・グッドバイ





Epi-3

 1982年7月25日(日)
 朝の9時半頃

 日曜の朝、――

 ボクたち4人は地元の駅で待ち合わせる。斉藤ミツキはまだきてなかったけれど、川澄マレンと大野スミカはすでに駅前ロータリーに到着していた。マレンは小さな花柄がいくつも胸元に刺繍された白いワンピースを着ている。見慣れない私服姿の彼女に、少しだけ照れているのが自分でもわかる。

 だから、ちょっとだけ遅れてあとからやってきたミツキに対してその照れを隠すよう、あれほどムダに絡んでいったのだろう。――

 ホームで上り列車を待つあいだ、斉藤ミツキと大野スミカは、さっきから大笑いしながら2人だけで盛りあがっている。ボクの左隣には、線路の上にこぼれ落ちてく初夏の陽射しの揺らめきを静かに眺めるマレンがいた。

 うっすらと微笑んでいる彼女の視線のなかに、そっとウォークマンを差し出す。

「いまオレが一番聴いてるレコードって、これなんだけど」

 振り向いたマレンが、やがて不慣れな手つきでヘッドフォンを耳にあてると、ボクは早送りしておいたカセットの再生ボタンを掌(てのひら)のなかで押した。――きっと、もうすぐエリッククラプトンの「ワンダフル・トゥナイト(Wonderful Tonight)」の心地よいイントロのギターフレーズが聴こえはじめる頃だろう。

(彼女はどんな気持ちでこの曲を聴くのかな?)

 マレンは長いまつ毛で隠すよう、そっと目を閉じ黙り込む。彼女にとってもよく似合う、白いワンピースの裾(すそ)が夏色の風にそよぐたび、やんわり撫でていくように、ボクの左足をくすぐり続けた。――



「うん! すごくいい曲だねぇ」

 聴き終わるとマレンは静かに微笑んでヘッドフォンをボクへ手渡す。――それを受け取ろうとした瞬間、ほんの少し小指の先がマレンの細長い人差し指に触れる。反射的にマレンの大きな瞳に目をやったけど、彼女は特に気にする素振りもみせないで、「また今度さぁ、カミュの好きな曲とかいろいろ聴かせてね」と、ささやきながら「ニッコリ」笑った。そのとき、――数年ぶりに出会った彼女の瞳がこんなにも薄茶色かったんだってことを、ようやくボクは思い出したんだ。

――あの夏の日、

「流れ星に三回願い事をすれば、その願いが叶うっていうのは有名だけどね、――『好きな人と2人きりで、流れ星を一緒に見ると、その人と結婚できるんだ』ってね、誰かに聞いたことがあるんだ」

 ボクがそういうと、マレンは大きな瞳を輝かせ、少しだけその小さな口元を微笑ませる。――やがて「ニッコリ」笑ってささやいた。

「だったら楽だね。流れ星に願うことなんて、きっと、みんなそれくらいしかないもんね」

 そして静かに言葉を続けた。

「じゃぁさぁ、もしカミュと一緒に流れ星見たらさぁ、あたしたちっていつか結婚しちゃうのかな?――」

 そう、小学校4年の夏休み、スイミングスクールのキャンプで行った山のなかの草原で、あの夜、ボクはマレンの潤んだ瞳のなかに「キラキラ」と映し出された、星空の輝きをたしかに見ていた。

(あの頃のマレンときたら、まるでモンチッチみたいに短い髪の毛をしちゃっててさぁ、それに、……それに、――)


 傾斜のついた天井が細長く初夏の陽射しを、遥(はる)か向こうのほうまで遮(さえぎ)っていた。まだ、さほど人の気配が感じられないホームのなかは、薄墨色(うすずみいろ)のゆるやかな影に覆われている。吹き抜けていく心地よい真夏の涼風に、長く伸びたマレンの黒髪がキレイになびく。

 電車の到着を待つわずかな時間、まだショートカットだったスイミングルスクール時代の彼女の面影を、ボクがその風のなかに思い出すことなどはもう二度となかった。――――





グッドラック・アンド・グッドバイ - 荒井由実
4thアルバム『14番目の月』 1976年



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魔法の鏡





Epi-2

1982年7月24日(土)


 少しは大人になったはずのボクが、久々に再会した川澄マレンの大きな瞳を、あの頃みたいに淡々と見つめることができなくなってしまったその理由、――

 それは決して湿度によって曇らせたライトグリーンの水中ゴーグルをつけてないから、……ということだけではないのだろう。

 「スッ」と、しなやかに美しい富士型の曲線を描き出してるマレンの上唇、――そのすぐ左脇に幼い頃からずっとある、つつましやかで可憐なほくろが、どんなに艶(あで)やかな化粧をするより、彼女をいっそう大人びて見せてしまっているからなんだと思う。


 
 月曜日の休み時間、―― 

「みんなでさぁ。今週の日曜にドリームランド行こうぜ」

 いきなり小学校時代からの友人、斉藤ミツキに誘われる。たしかに、ボクは以前からシャトルループに一度は乗ってみたいと思ってたんた。けれど、それ以上に子供の頃からずっと乗ってみたかったドリームランド行きのモノレールは、すでに数年前から運行が止まったまま、いまだにその錆びついた軌道と無機質なコンクリート製の支柱だけが街のなか、儚げに、ただ取り残されている。

「みんなって誰よ?」

 ボクは顔色をうかがいながら、そうミツキに訊ねた。

「こないだ大野にさぁ『みんなで行こう』って誘われたんだよ」

 と、いって、ミツキは「ニヤッ」と笑う。大野スミカと川澄マレンは、このクラスで一番の親友同士である。

「川澄も?」

 当然、「そうに決まってるだろうな」って思いながらもボクは、わざとそんな質問をミツキにしてみたんだ。――――


 1982年7月24日(土)
 昼の1時過ぎ

 土曜日の放課後、――

 雨曇りの空の下、ボクたちは4人並んで市営球場のほうへと向かって歩いていた。もちろん川澄マレンや大野スミカたちと、こうして学校帰り、一緒の時間を過ごすなんてはじめてのことだった。――南西のほうから吹き抜ける、ぬるくて湿った浜風が、市営球場に隣接しているこの公園の木製ベンチ、自然と二組に分かれて座るボクたちに、さっきから明日の天気の行方を気にさせていた。

 ボクが、ぼんやり重苦しい曇り空を見上げてると、ふいに、

「あのさぁ、最近って、ギター弾いてるんだって?」

 と、右隣に座っていたマレンが、横顔へ問いかけてくる。

「あ、……うん。だけどフォークギターしか持ってないんだけどね」

 彼女のほうへは目をやらず、曇った空へボクはつぶやく。

 それが中学2年で同じクラスになった川澄マレンとの、短い日常の挨拶以外で交わされたはじめての会話だろう。ボクは曇り空からゆっくりと、マレンのほうへと視線を移す。

 彼女は薄茶色した大きな瞳でボクを見つめて笑っている。かつて2人が通ってたスイミングスクール時代の甘酸っぱい気恥ずかしさが生み出していた距離感は、やがて次第に風に溶かされ薄れていった。

「いまってさぁ、どんな音楽聴いてるの?」

 と、ボクの横顔へマレンはさらに訊いてくる。

「日本人のじゃないから、たぶんわからないと思うよ」

 そう答えると、マレンは大きな瞳を微笑ませ、そっとささやく。

「じゃぁさぁ、明日、あたしに聴かせてよ」

 中学生になってから、躊躇(ちゅうちょ)してきたマレンとの、そんな他愛のない言葉のやりとり。――きっとボクは心のどこかで彼女と話すきっかけを、ずっと探し続けてたのかもしれない。そう、窓ガラスの向こうを桜花が春風に舞い散っていたあの日、川澄マレンをこの教室でふたたび見つけ出したときから、

――ボクはずっと、――――




【2012.04.14 記事原文】

荒井由実の「魔法の鏡」です。
この曲もものすごく好きですねぇ☆


変に狙わずに、こんなスゴいメロディ展開なんて作れないよなぁ。。。
この当時のユーミンは確かにものすごいモノ「持ってる」ね。


この曲が収録された1974年リリースの2ndアルバム『MISSLIM』も含めて、
初期のユーミンサウンドは、ベースで細野晴臣、コーラスで山下達郎等が参加してることでも有名!
まぁ、確かに・・・当時の日本で、あのクオリティは、音楽を知っている本物たちが支えなければ成立しない

カヴァーも何曲かあったケド・・・
やっぱオリジナルアレンジがダントツっす。

※著作絡みで削除されたらスンマセン。。。


魔法の鏡 - 荒井由実
2ndアルバム『MISSLIM』 1974年



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【Re-Edit】 そして僕は途方に暮れる - 大沢誉志幸 【ポップスの名曲】

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そして僕は途方に暮れる






Rakiより。
ご無沙汰しております。諸々雑用にてブログ更新が滞ってしまってます。。。
思えば、ボクがなんちゃって小説を書き始めたのが、ちょうど去年の今頃だったとおもいます。
あれから一年、終わってみれば(まだ終わってないですけど)原稿用紙2000枚超えのとんでもない長編になっておりました。――現在、校正しなおし作業の真っ只中ですけどもねぇ。しばらくは校正用にこのブログを使っていくので、見れない記事もあろうかと存じますが、その辺はご了承ください。
まぁ、いまのところ、どうにか書籍化を目指して、日々努力しております☆

そんなこんなで校正が完了した順に、ランダムですが作品記載していこうと思います。まずは冒頭部分をどうぞ☆



Epi-1
序章『残響(Reverberation)』

 遥(はる)か大洋の彼方から届けられた春風に、一瞬、潮の芳香(ほうこう)が漂う。――――

 その微かな香りは、無味無臭な静けさに支配され、どこか無機質な厳冬の余波(なごり)を沸々(ふつふつ)大地から生まれし希望の息吹きが上空へと押しやる初春(はつはる)の兆し。――柔く漂う、そんな早春の風のなかに、淀み穢(けが)れた晩夏の余韻を浄化してゆく金木犀(きんもくせい)ほどの鮮烈な芳(かぐわ)しさを感じることはない。

 けれど、地中にまどろむ草花たちの、目覚めを告げる初心(うぶ)な吐息が、淡青(たんせい)な晩冬の空をまったり暖めていくこの感触が、なんだかボクは好きなんだ


「湘南」――そう呼ばれてるこの街に、四度目の春が訪れたとき、ボクは海辺に建つあの中学を卒業した。

 秋には静寂とせつなさを、春には希望と懐かしさを、この街を吹き抜けてゆく風の匂いはいつだってボクらに与えてくれていたような、――なんだかそんな気がする。
 否応なしにひとつずつ、大人にされていきながら、この街をつつみ込む風の匂いとともにボクたちは今日まで生きてきたんだ。――――



 1982年4月16日(金)
 昼の1時過ぎ

 昨日の激しい豪雨は、もしかすると幻だったのだろうか?

 まぶたを突き刺す春の陽射しに、ぼんやりボクは目覚めていった。長方形の板ガラスを一面に張り巡らした南の窓際に並ぶ合板机の表面が、あまりにも艶やかにコーティングされ過ぎてるせいで、強烈な可視光が机の上ではねっ返り、部屋じゅうを眩(まばゆ)い白光で満たしている。

 正確にはそれほど長い時間ではなかったろう。昼食を終え、ウォークマンを聴いているうち、どうやらボクは眠ってしまっていたようだ。まだ眩しさに馴れない右目をこすりながら、海辺のほうへ目を向ける。――湘南海岸に沿ってはしる国道134号線は、あいも変わらず渋滞していた。中学2年になって、教室がこの海側の三階に移動したせいなのだろうか? 濃い藍色の水面(みなも)を白銀に輝かせてる海の色味が、なんとなくいつも以上にキレイに思えた。――

 隣の女の子がなにかをいっている。

「それ見つかったらヤバイよ」

 ボクはボリュームを落とし、その子の言葉に小さく頷く。彼女がいうよう、もし厄介な教師にでもバレたとすれば、どんな目に遭うのかなんて、なんとなくわかってた。

「カチャッ」と、微かな金属音が鳴り響き、やがてカセットは自動的にリバース再生される。しばらくすると、大滝詠一が去年リリースしたアルバム『ア・ロング・バケイション(A LONG VACATION)』B面に収録された「雨のウェンズデイ」のイントロが流れはじめた。ボクが小6のとき親から買ってもらった山下達郎のアルバム『ライド・オン・タイム(RIDE ON TIME)』も、当時は相当聴いていたけど、この『ア・ロング・バケイション』ばかり、このところ毎日、ずっとウォークマンで聴いている。

 トロピカルなジャケットが物語るよう、このアルバムにはリゾートカラーが色濃く反映された楽曲が多数収められている。漠然とハワイへの憧れを抱きはじめていたボクは、まだ見ぬ楽園の情景を、流れゆくその音楽のなかにきっと夢見てたんだろう。――

 そういえば、つい先月、大滝詠一は新たなユニットを結成し、ニューアルバム、『ナイアガラ・トライアングル・ヴォリュームツー(NIAGARA TRIANGLE Vol.2)』をリリースしたばかりだった。

(学校から帰ったら買いに行こうかな?)
 ボクはまた、窓の向こうに目をやると、一片たりとも雲のかけらが見当たらぬ仲春(ちゅうしゅん)の青空を見上げた。ふと、誰かの視線を感じたような気がし、なんとなく廊下のほうへと視線を移す。――ひとりの少女と目が合う。

 南の窓から射し込んだうららかな春の陽射しは、ちょうど彼女が座ってる机のあたりまでを柔らかく照らし出していた。――ボクは少しだけ微笑んでみる。大きな瞳でボクを見つめて、彼女も口元にほのかな笑みを浮かばせる。

 その子とは中学2年ではじめて同じクラスになったんだけど、すでにボクは、ずっと前から彼女のことは知っていたんた。――
 海風にたゆたうような「スピーチ・バルーン」の心地よいメロディが、ちょっとだけノスタルジックな気分にさせたせいかもしれないけれど、ボクはなんとなく、はじめて彼女と出会った日のことを思い出していた。――――


シーン1 『素晴らしき日々(Wonderful Days)』

 あの頃は「熱がある」だの「お腹が痛い」だのといっては布団の奥に潜り込み、よく母親に仮病を使ったりしていたものだ。行きたくもないような習い事、――そんなものを一方的に押し付けられながら、きっとボクらはリアルな嘘を、知らずに覚えていくのだろう。

 川澄(かわすみ)マレンと出会ったのは、消毒用の塩化石灰が大量に投入されて、うすら濁った水のなか。――そう、小学校4年のとき、無理やり通わされてたスイミングスクールの生ぬるく半透明な水のなか、曇った競泳ゴーグルのレンズ越しに、その小さな女の子の姿をすでにボクは見ていたんだ。

 中学2年で川澄マレンと同じクラスになってからしばらく経つが、彼女とは挨拶程度の会話しかいまだに交わしたことがない。あれから4年の月日が流れ、少しは大人になったはずのボクが、久々に再会した川澄マレンの大きな瞳を、あの頃みたいに淡々と見つめることができなくなってしまったその理由、――

 それは決して湿度によって曇らせたライトグリーンの水中ゴーグルをつけてないから、……ということだけではないのだろう。

 「スッ」と、しなやかに美しい富士型の曲線を描き出してるマレンの上唇、――そのすぐ左脇に幼い頃からずっとある、つつましやかで可憐なほくろが、どんなに艶(あで)やかな化粧をするより、彼女をいっそう大人びて見せてしまっているからなんだと思う。






【2012.06.19 記事原文】

さて。現在ブロともになったFC2音楽系ブロガーさんと共有の音楽ランキングサイト
ローリングストーン誌の代わりにFC2ブロガーが選ぶ音楽100選ランキング
なるブログを立ち上げました☆


ボクを含めてまぁ個々のブログだと、何となくアフェやランキングを気にしがちですが、
そういうのを抜きでダラっとできるサイトがあってもいいなぁ・・・
というのが設立の趣意でしょうか?


そちらのサイトでは、第一弾企画として「雨の日に聴きたい洋楽の名曲
を特集中です♪


宜しければそちらもヨロシク!



さて。雨の日に聴きたいジャパニーズソングといえば。。。

まず思い出すのは、カップヌードルのCM使用され、誰もに「良い曲だなぁ」と思わせた
大沢誉志幸氏1984年のヒットナンバー「そして僕は途方に暮れる」です☆

当時、高校1年だったかな?
まぁ懐かしき恋の思い出とともにボクの心に深く残る名曲です☆

今の技術であれば楽に趣味のDTMレベルでも作れてしまいそうなメロディアレンジですが、
このイントロって、何気に奥深い気がします。。。
書けそうで書けない。。。そんな感じの曲ですね♪



そして僕は途方に暮れる - 大沢誉志幸 1984年
ベスト盤『TraXX -Yoshiyuki Ohsawa Single Collection-』



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THE OVER






1984年3月25日(日)

白いストラトキャスターを背中へまわし、ステージの縁(へり)にかがみ込んでリョウを手招くと、彼は唖然としたまま立ちあがり、ゆっくりボクのほうへと近づいてきた。ボクが差し出す右手をわけもわからずリョウが握り締めた瞬間、

「リョウ、――お前はこっち側にこい!」

ボクはリョウのカラダをおもいっきりステージ上へと引っ張りあげた。

「シーナさん?」

きっとリョウは本当に、いまなにが起こっているのかわからないんだろうと思う。
ボクはステージのセンター・マイクの前で彼に微笑みかける。

「だって今日しかねぇだろ? お前の想いをちゃんと倉田さんに伝えられるのはさぁ。でも、きっと言葉じゃうまくいえないんだろうからな。だったらその想いをな、……彼女のためだけに歌えばいいさ」

「えっ! 無理っすよ。こんな大勢の前でなんて」

リョウはいきなりそういわれてひどく動揺した。「キョロキョロ」と落ち着かないリョウのあたまを両手でそっと押さえると、額を付け合せるようにし、鼻先が触れ合う距離でボクはささやく。

「こないだ音楽室であんだけ一緒に練習したじゃんか。大丈夫だよ。歌えるって! ホントはオレひとりで歌おうと思ってたんだけどね。やっぱこの曲は、お前とデュエットで歌うことにするわ。それにさぁ、この曲はね、……オレがはじめて倉田さんの前で歌った曲なんだよ」

濡れた前髪の向こうにリョウの大きな瞳を見つめながらボクは笑った。

去年の秋、同級生たちが修学旅行へ出掛けているとき、その旅行に行かなかったボクとユカリが2人で初デートした、あの夕暮れ時の神社の匂いをなんとなく思い出す。

【――この曲ってさぁ。もしオレたちが、いつかライブ演るときにね、歌ってみようと思ってるんだ。まだタイトルも決めてないんだけど、……そのときは、キミにはちゃんと最前列で聴いてて欲しいんだ。ほかに誰も客がいなかったら、やっぱりちょっと歌いづらいからね】


あの日、ボクのお気に入りの神社で、老木たちからこぼれ落ちるまどろみの吐息のなかに包まれながらユカリは静かに微笑み、やがて大きく頷きながらこうささやいた。

「こないだ私がいったこと覚えてますか? 『いつも自分のことよりも、誰かのことを考えてるみたいな人』って、――メイがシーナ君に対して抱いてる印象なんですけどね。でも、私から見れば同じなんですよ。メイもシーナ君も、……メイもね、いままでずっと、自分のことよりも、私のことばかり考えてくれていたの。だから私にとっては、ものすごく大切なんですよ。メイも、シーナ君も2人とも、……そして、そのどちらからも私に与えられている、本当に素敵なこの優しさも」


ボクはなにも答えず、この曲を歌いはじめたんだ。そう。――あの夕暮れ色した街の空へ向かって。――たしかにボクが修学旅行へ行かなかった理由には、みんなに遠慮して旅行へ参加しなかったユカリに対する同情心もあったんだとは思う。でもね、ボクはもうキミのことを憐れんだりなんかはしないよ。だって、キミはこんなにも愛されているんだからね。

だから気を使う必要なんてないんだ。キミのことを大切だと想うヤツにはさぁ、目一杯甘えちゃえばいいんだよ。ユカリ、――きっとキミならわかるだろ? ソイツの言葉がホンモノかどうかくらいは、さ。――ホントは、中2のとき、マレンの誕生日に葉山で見た流れ星や、去年のクリスマスにマレンと過ごした日のことを考えながら作った曲なんだけどね。この曲は、どうかキミに受け取ってもらいたい。
 
キミからもらった、こんなにも素敵な時間に対するお礼として歌わせて欲しいんだ。


ボクはマイクに向かう。――

「ボクらはなにかをやる前に、なんでもすぐ諦める癖を覚えさせられていく。誰かが真剣になにかをやってる姿を見て、指さして笑うようになってゆくんだ。『そんなこと絶対できっこないのにね』って、……この中学って場所はね、そういう事しか教えてくれねぇところさ。そうやって他人の評価ばかりする人間を作っちまうとこなんだ。――

だけど彼女はボクに教えてくれた。『できるかどうかまずはやってみてから考えろ』ってね。だからボクらは、いまこうしてこのステージに立っているんです。ボクにとっては最高の恩人でもあるその人に、……ボクら、アロハスターと一緒に今日、ストリングスやコーラスで参加してくれてるこの彼女たちとともに、一番時間をかけて練習してきたこの曲をね。このバンドを作った……このアロハスターを作ってくれた倉田ユカリさんのためだけに歌いたいと思います」

ボクはステージの最前列に座るユカリのことを見つめながらつぶやいた。小刻みに震える細い背中を小山ミチコに擦(さす)られながら、ユカリは唇の前で指先を握り合わせたまま、つぶらな瞳に涙を溜め続けている。ボクは目でユカリに微笑んだ。

「じゃぁいくよ!」

ボクはカナエとタツヤにそう声をかけ、うしろを振り返りヨシトに頷く。ヨシトと一緒にイウとメイ、そしてコーラス少女隊の彼女たちもボクに向かって小さく頷き返してきた。

「いいな。――もう覚悟を決めろよ。……リョウ」

「――はい」

そう小さくつぶやいたリョウを、タツヤが笑いながら自分のスタンドマイクの前へと引き寄せた。――深田さんたちのストリングスの余韻が消えると同時にカナエの黒いストラトが、冒頭でヴァイオリン・ソロが奏でたリードフレーズを1小節分なぞり、次小節あたまからボクとタツヤがレゲエ調のバッキング・リフをヨシトの変則8ビートに合わせてインさせる。――

ボクのリズムギターのリフに乗せるように、メイの電子ピアノがイントロの主旋律となるメロディを奏ではじめると、イウのギターが偶数拍のみをカッティングでミュート気味に刻んでいった。

「オレが先にいくからな」

レゲエ調のイントロ・リフを刻み続けながら、リョウの横顔にそうつぶやく。――ボクのほうを見ずに、祈るよう両手を顔の前で握り締めているユカリだけを見つめて、リョウはほんの少しだけ頷いた。――ボクはマイクへ向かって歌いはじめた。…………


会場は静まり返っていた。――ボクら自身、ステージ上でしばらく動くことができなかった。ユカリは両手で顔を覆ったまま、ずっと肩を振るわせ泣き続けている。

ボクはうつむくリョウにそっと訊ねた。

「想いをちゃんと伝えられたか? 彼女にさ」

茶色い髪の毛を何度か小さく縦に揺すると、やがてリョウは潤んだ瞳で「キッ」と、まっすぐユカリを見つめ、そのままステージから飛び降りた。――ステージの最前列に座るユカリの前でゆっくり床に左ひざをつき、彼は大きな声で彼女に告げた。

「ユカリ先輩! オレ絶対ね、絶対に投げ出したりしないですから! どんなことがあったって、絶対投げ出したりなんてしないですから! だからオレのこと、信じて欲しいんです。いや、いまはまだ信じられなくたって仕方ないんですけど、――でも、絶対に倒れませんからね、……オレ、どんなことがあったって先輩のことを背負ったままでも絶対に倒れないで、ずっと歩き続けていけますから!」

リョウの叫び声が、静まり返った体育館内に響き渡る。

「――まだ14歳のガキだし、オレなんかのいってることなんて嘘っぽく聴こえちまうかもしれねぇんですけど、……だけどオレは裏切らない。もし先輩がオレのことを信じてくれるんならね、オレは絶対に先輩を裏切ったりなんてしません。オレは死ぬまでずっと、ユカリ先輩のことを支え続けていきたいって思ってる。――

返事はいまじゃなくていいんです。いつか先輩がオレの言葉を信じてくれるまでね、ホンキでオレがユカリ先輩を『好きだ』ってことを、いつか先輩がちゃんと信じてくれるまでね、これからずっと毎日、証明し続けていきますから! だから、オレに背負わせて欲しいんですよ。……ユカリ先輩のことを、……先輩のこれからを」

そして、リョウは最後にありったけの大声を振り絞って叫んだ。

「――先輩の未来を、オレだけに背負わせて欲しいんです!」


ユカリは唇を震わせたまま、ずっとリョウを見つめていたが、やがて少しだけ、その可憐な口元に笑みを浮かべると、そっとささやきはじめた。

「バカねぇ、まだ中学生なのに『オレは死ぬまで』って、――佐久間君が死んじゃったら駄目じゃない。そしたら、いったい誰が私を支えてくれるの? だって、……これからずっと背負ってくれるんでしょ? ずっと毎日、私のことを倒れずに背負っていってくれるんでしょ? 佐久間君が、……私のことを、……ずっと私のことを、――」

そういって、両手で顔を覆ったユカリの前にかがみ込むリョウのうしろ姿を、ボクはステージの上から見つめていた。

【そう。きっといま使うのが一番正しいんだよ。――誰かのことを、どうしようもないほど『好きだ』って思う気持ちに年齢なんて関係ないんだ。もし、結果を恐れず、その言葉を伝えるための勇気を持ってるんならば、――絶対に、いま使うのが一番正しいんだよ。リョウ、――その『好き』って言葉を。さ】



【2012.09.02 記事原文】

まぁたぶんすぐにYから削除されるんでしょうが・・・
最近聴いたなかでカッコいいなぁと思ったのがUVERworldの「THE OVER」☆

榮倉奈々さん主演ドラマのエンディングテーマで聴いたんですけど
異様にドラムプレイがカッコいいですねぇ!
う~ん。。。彼らは別格な気がします・・・実にイイですねぇ♪

歌詞もスゴイです・・・最近こんな歌詞見たこと無い!!
歌詞 → 歌ネット

最近まったく良いと思う曲がなかったんで
とりあえずです☆でも・・・
ホントにすぐ削除されるとは思いますよ☆





THE OVER - UVERworld
7thアルバム『THE ONE』 2012年



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↑ ニコニコにログインしないと見れないかもしれませんが・・・





小学校4年の夏休み、――

四回目の交代で、ようやく半周ばかり離れていたマレンをボクのパートナーに迎えた。さっきまで、ややションボリしていた彼女は、ボクと目が合うと、ほんの少しだけ喜びをその大きな瞳のなかに湛(たた)えはじめた。ボクは彼女の両手の指先を右脇で抱えるようにして握り締める。――マレンはステップを踏みながらボクの横顔にささやく。

「カミュ、あとで一緒に花火やろう?」

すぐには返事ができなかった。ほかのヤツらにまたいろいろと、からかわれるのがイヤだったからだ。

(マレンのことなんて、なんとも思ってない、……はずなのに)

――彼女を一回転させ終えて、別れのお辞儀をしたあとで、ボクは小さくつぶやいた。

「……いいよ」

(――さっきもらったチョコのお礼だ)

「ニコッ」と笑ったマレンは、やがて次の男子と踊りはじめた。

そのとき誰かが大声で叫んだんだ。

「あっ! 流れ星だ!」

って、――


「――さっきの子って本当に流れ星が見れたのかなぁ」

マレンはしゃがみ込み、ススキ花火の火花が変色する様を見つめながらそうつぶやいた。ボクが手にしたスパーク花火は、火薬の匂いに包まれて円形に弾けながら黄金色の火の粉をマレンのほうまで飛散させている。

「どうかねぇ、アイツって平気でたまに嘘つくからなぁ」

と、いってボクは笑う。

「流れ星さぁ、見れるといいね」

マレンは、足元で「パチパチ」弾ける花火の色など気にもせず、煌(きら)めく星の海のなか、未知なる光跡が紺青(こんじょう)の夜空に描き出されるのを待ち焦がれてた。――

真夏の夜の山風が無限に茂った樹々の枝葉を揺さぶって、一斉に金属質なさんざめきを轟(とどろ)かせている。木立の影に冷やされはじめた山からの吹きおろしは、遮るものなどなにもない草原の芝生の枝先を這うようにボクらの足元を駆け抜けていった。

ミッドナイトブルーの夜空に散らばるいくつかの恒星の輝きは、宵闇が深まるにつれ、緩(ゆる)やかにその輝度を増しはじめていく。夏の夜空で、ひときわ煌々(こうこう)とアリスブルーの彩光を輝かせる、こと座のベガ。そのベガの左側、――手前と向こう側で輝いてるのが、わし座のアルタイルと、はくちょう座のデネブ。――この三つの一等星が夏の大三角を形成しているんだ。

ボクは半分くらい水を張ったバケツに、消えた花火の芯を投げ入れ、ジーンズ生地の短パン姿でかがみ込むマレンのほうを見つめた。

(寒くないのかな、マレン、――)

「オレさぁ、ずっと、いつか流れ星が見たいと思ってたんだ。けど、ウチらの街ってさぁ、なんか街明かりが眩しいみたいでね、だから流れ星が見えないんだって」

大きな瞳をボクへ向け、マレンは「ニッコリ」微笑んだ。

「だったらさぁ、今日がチャンスかもよ! ここならさぁ、流れ星見れるかもしれないじゃん」

ベガの少し西側に見えている北斗七星の下のほうには、うしかい座のアルクトゥルスが、――そこから緩い弧を描くよう同一線上を辿っていったその先に、おとめ座のスピカが淡白い煌(きらめ)きを浮かばせる。さらに遥か南の低空では、さそり座のアンタレスが赤い彩色を滲ませていた。

(たしかにそうだ。こんなにすごい星空を浮かびあがらせている場所が、日本にあったなんて本当に信じられない。ここでなら、きっと流れ星だって見つけられるかもしれない、――)

遠くのほうで誰かが叫んだ。

「あっ、ほら! 流れ星!」

マレンはその言葉に敏感に反応し、小さなピンク色のTシャツを「ピクッ」とさせた。すぐに上空を見上げてみたが、ボクたちには見つけられなかった。

「わぁ、すっごーい! いま見た?」「見た! ものすごく長かったよね、白い光の線がさぁ」

向こうのほうで何人かの子らが、そういって「ワイワイ」と騒ぎはじめる。

「あー、見逃しちゃったね」

ボクがそう笑いかけると、マレンはなんだか悲しそうな眼をしながら、ずっと上空を見つめ続けていた。

「あたしも絶対見たい!」

と、少しだけムキになって立ちあがると、彼女は青白い月明かりにその身を染められながら、空の彼方を「キョロキョロ」と見渡しはじめる。

「おーい! そろそろ片付けろ。もう宿へ戻るぞ」

おっかないコーチが大声でそう叫ぶ。ボクは、花火の棒だけが浮かんでるバケツを手にし、立ちあがる。マレンはまだ星々の煌(きら)めきから目を離そうとはしない。

「仕方ないよ。もう帰ろう」

ボクがそう声をかけると、マレンは大きな瞳に涙を溜(た)めながら振り返った。

「あたし、どうしても流れ星が見たいよ!」

「たぶんさぁ、またいつか見れるチャンスだってあるよ」

「どうしても今日、一緒に見たいんだよ」

絞り出すようマレンは、なんだかせつなそうな声でつぶやいた。

(もしかしたら、彼女はさっきの話を信じてるのか?)

あのとき、ボクは彼女にいったんだ。

「――流れ星に三回願い事をすれば、その願いが叶うっていうのは有名だけどね、――『好きな人と2人きりで、流れ星を一緒に見ると、その人と結婚できるんだ』ってね、誰かに聞いたことがあるんだ」

するとマレンは大きな瞳をボクへ向け、少しだけその小さな口元を微笑ませる。――やがて「ニッコリ」笑ってささやいた。

「だったら楽だね。流れ星に願うことなんて、きっと、みんなそれくらいしかないもんね」

 そして静かに言葉を続けた。

「じゃぁさぁ、もしカミュと一緒に流れ星見たらさぁ、あたしたちって結婚しちゃうのかな?――」


――マレンはまだ、「ヒクヒク」と半べそかいたまま、ひたすら夜空を見上げ続けている。

「ねぇ、またいつかチャンスはあるって」

ボクは、彼女が背負った背中の影にそっと優しく声をかけた。

「だってあたし、カミュとね、――」

振り返り、そう訴えかけるマレンに、煌々(こうこう)と煌(きらめ)く空を見つめたままで、ボクは優しくささやいたんだ。

「だから、またいつか2人で一緒に見られるときもさぁ、きっとくるよ。いつかきっとね、――」

驚いて、ボクを見つめたマレンの潤んだ瞳には、「キラキラ」と、さっきより遥(はる)かにキレイな星空の輝きが映し出されていたんだ。――


1982年8月21日(土)

――ボクには、はっきりと見えたんだ。その星の光は、つま先の向う側に揺らめく波の上をまっすぐしなやかに飛んでいき、白くて長い光の尾を引き連れながら濃蒼の闇色のなかへと溶け入り消えた。

「パル、……見えたよ、見たでしょ?」

マレンはうっすら涙を流しながら、そういって笑った。

「うん、……見えたよ」

「すごい! 流れ星が本当に見れたんだよ。すごいよ! パル、――」

「オレも、はじめて見た、……こんなにはっきりと、空を飛んでる流れ星を」

ボクたちは、砂浜に仰向けになったまま歓喜の声を静かに空へとそよがせていた。

「また見えると思う?」

と、マレンは問いかけてくる。ボクは少し彼女のほうへ顔を傾け、そして静かに答えた。

「きっと、……見えるよ」


「覚えてる? 小学校のとき、スイミングスクールの合宿でさぁ、カミュちゃんがいってた言葉。あたし、その言葉をね、ずっといままで信じてきたんだよ。『好きな人と2人きりで、流れ星を一緒に見ると、その人と結婚できる』って」

「あぁ、なんとくなそんなこと、いったような気もするね」

右腕のなかで、彼女が見つめる星のあたりへ向かってそういってボクも笑った。

「それからね、パルは、流れ星が見れなくって泣いてるあたしにね、こういってくれたんだよ」

マレンは、ボクの顔のほうへ少しだけ寄り添って、嬉しそうにささやいた。

「いつか2人で一緒に見られるときも、きっとくる」

って。――

「う~ん、そっちはあんまし覚えてないねぇ」

ボクがそういってからかうと、マレンは星明りの下で「プクッ」と頬を膨らました。

(なんちゃってね、……ちゃんと覚えてるさ。けどまぁ、まさかこうして2人で寄り添いあって見れるなんて思ってなかったけどもね)



【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】
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Moon Crying





小学校4年の夏休み、――

ボクらの街では、決して見られぬ三等星より遥かに小さい、まるで霧粒みたいな星々が、光の渦を描き出し、闇と溶け合う濃藍(こいあい)色の空の彼方、 ひときわ輝く恒星たちのまわりを「チラチラ」と揺らめいている。

「流れ星さぁ、見れるといいね」
マレンは、足元で「パチパチ」弾ける花火の色など気にもせず、煌(きら)めく星の海のなか、未知なる光跡が紺青(こんじょう)の夜空に描き出されるのを待ち焦がれてた。――


さっき、ボクが樹林のなかへマレンを捜しに行っているあいだ、広場ではキャンプファイアがすでに始められており、ボクらが着いた頃にはもう、みんなして焚き火を囲んで歌かなんかを歌っている最中だった。スイミングスクールのなかで一番おっかないコーチが、遅れてきたボクたちを見つけ、ものすごい剣幕(けんまく)で怒鳴り始めると、ボクはさっきマレンと示し合わせていたとおり、「急にお腹が痛くなって、マレンがボクに付き添ってくれた」っていい訳したんだけれど、どうやら先に広場へきていた女の子のうちの誰かが、「マレンがひとりで部屋へ戻っていった」ってことを告げ口してたらしくって、「お前、嘘いってんじゃない!」って、ボクは怒鳴られ、その後、コーチはずっとマレンのことだけを叱り続けた。

怯えながら大きな瞳を潤(うる)ませている彼女がなんだかすごく可哀想に思えてしまい、「彼女にお菓子を取ってきて欲しいとボクがお願いした」って、また嘘をついた。コーチはボクのあたまを、おもいきり平手で叩き、とりあえず彼の気は、なんとなくその一発でおさまったようだった。

正直いって、あのときボクがマレンのことを探しに行く必要なんてなかったんだ。そんなのコーチにやらせればよかったことなのかもしれない。――けれど、なぜかボクは彼女のことをなんだか放っておけなかったんだ。別に好きでもないのに、――どうしてなんだろう?

――歌の時間が終わると、今度は「フォークダンスを踊る」ってコーチたちがいい始める。
まぁ、小学校の運動会で踊らされた気もしたけれど、あまりよく踊りなんて覚えていなかった。

「じゃぁ、男女交互に並んで大きな輪を作れ!」

そう、おっかないコーチがいうと、「キャーキャー」いいながら、「誰の隣がいい」とか「誰々ちゃん、こっちきなよ」とかっていいながら、みんな一斉に騒ぎはじめた。すると、ボクが少し気になっていた女の子が走りながらボクとマレンがいるほうへ近づいてきて「ニッコリ」笑うと、ボクの腕を掴み、なにもいわずに友達たちのいる側へと引っ張りはじめた。

ボクは肩越しに、その場に佇むマレンを振り返ろうとしたけれど、――振り返らずにそのまま、その女の子に連れられていったんだ。

広場のある草原を囲う、さほど標高を感じさせない峰々は、そのいびつな輪郭を空との境界に違和感なく馴染ませている。山肌を覆った木立の幹はすっかり漆黒(しっこく)の闇のなかへと身を潜め、それらを包み込むよう生い茂った無数の深緑のうわべには、まるでカラスの羽みたく「ぼう」っと艶(あで)やかな月明かりが映し出されていた。

さっきこの広場へ入った瞬間、夜空一面を覆い尽くしていた星々の煌(きら)めきを、ふと思い出す。ボクは山影の向こう側に広がる空を見上げた。

立ちのぼるキャンプファイアの炎と煙に燻(いぶ)されて、ほとんど星の輝きなんて隠れてしまってる。ただ白々と浮かんでる月の輝きだけは、灰色がかった煙炎(えんえん)の向こうで、光りの輪を放ちながらこの草原の草花を滑らかに彩っていた。

結局、ボクは当初の念願通り、むかしから少し気になっていた女の子とフォークダンスで手を繋ぐことができたんだ。それにさっきは、彼女のほうからボクのことを誘いにきててくれていた。――けれど、思っていたほどには嬉しくなかった。――みんなで広場へくる前、ひとり、部屋へと戻っていったマレンに対して、「マレンのことなんて放っておけばいい」って、彼女が笑っていったとき、それまで抱き続けてた、その子への憧れにも似た想いが一気に変化してしまったのだ。

なんていうんだろうな、――とにかく、「好きだ」とかって感情は、その瞬間ほとんど消えてしまったんだ。それに、さっきボクの手を引っ張っていったのだって、なんとなくマレンに対するイジワルのようにも思えた。そのことに薄々気付いてはいたけれど、ボクは、マレンを置き去りにしてしまった。

(なんでこんなに罪悪感を感じてしまうんだろう?)


前から気になってた女の子と手を繋ぎながら、なぜだか急に思い出したんだ。さっきマレンと2人して、遅れてこの広場へ辿りついたとき、ボクのうしろで夜空を見上げたマレンの大きな瞳のなかに映し出された星々の輝きのことを、――

(あのとき、本当に彼女は艶々(つやつや)とキレイな目をしていたな)

焚き火を挟んで、ほぼ反対側の輪のなかに小さな体のマレンはいる。さっきコーチに怒られたせいだろうけど、どことなくまだ彼女の表情は冴えないままだった。もしかしたらボクと離れてしまったせいなのかもしれないけれど、――

「マイムマイム」がラジカセから大音量で流れてくると、ボクたちは左右の子らと手を繋ぎ、みんなで作ったその大きな輪をまわすようにしながら踊りはじめる。真ん中でコーチたちが見本で踊る姿を真似してボクもステップを踏んでいく。そのコーチらの向こう側、ションボリしながらマレンも同じよう、見よう見まねで踊ってる。

「川澄はカミュのことが好きだ」

「カミュはマレンのことが好きなんじゃない?」

いろんなヤツから散々冷やかされたそんな言葉が、あたまのなかにぼんやり浮かびあがる。

(ボクはマレンのことなんて、別になんとも思ってない)


――やがて曲は「ジェンカ」へと変わる。この哀愁漂うメロディとは、やや不釣合いにも思えるほどの軽快なリズムが逆になんだかすごく心地よかった。ボクは、少し気になってた女の子の両肩に手を置いて、焚き火のまわりを前へ、うしろへ跳ねるようステップしながらまわりはじめる。向こうのほうでは、マレンも小さい体で「ピョンピョン」飛び跳ねていた。

――最後に「オクラホマミキサー」が流れはじめる。この曲の場合、先の二つのダンスと違って、唯一、ダンスパートナーが1小節ごとに変わっていく。おもえば、去年の運動会でこれを踊らされたときが一番恥ずかしかったような気がする。何度目かのパートナーチェンジで、当時好きだった子とはじめて手を繋いだんだけど、きっと、その瞬間は、あからさまに、ボクのしぐさや表情に不自然なほどの恥らいが現れてしまっていたに違いない。――



【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】



【2012.10.04 記事原文】

さて。今週も納期が迫ったプレゼンに追われております故、
週明けまではブログ更新もままならないものと思われます・・・


こないだユーミンが荒井由美時代も含めた
初のベストアルバムをリリースするとかって
何かで読みました。。。40曲くらいだったか???

なんかついこないだボクが特集したユーミンネタとモロに被ってますが、
決してそういうニュースを知ってたうえでのものじゃぁ御座いません。
あくまで偶然です☆☆☆

まぁどんだけボクのチョイスと同じ曲が収録されるのか?
ちょいと気になるところでしたが・・・まぁそこそこ被ってましたかね(笑)


では!!
そんなこんなで多少足早かつ唐突に。。。
2000年代の邦楽でボクが良いと思ったバラードを数曲ご紹介☆

ボクは決して90年代以降の邦楽を聴いてない訳ではありませんが、
アルバムを買ったのはホントに記憶に無いくらいの枚数だけですね。

90年代以降の邦楽を一言でいえば「聴き飽きる」・・・コレに尽きます。
無論、カラオケ印税を意識した楽曲が主流となってますので、
「覚えやすく歌いやすい作品」というものがレコード会社からの指示として
出されているんだろうとは思いますが、半年後もカラオケで歌われるような曲って
ほんの数パーセントしかないだろうな。。。と個人的に感じます。


そんな中でボクがメロディと歌詞が非常に優れたバラードをチョイスするとしたら・・・
まずは倖田來未さんが2008年にリリースした40枚目(そんな出してるんか?)の
4曲入りシングル「MOON」のオープニングトラック「Moon Crying」をご紹介♪


以前も書いた気がしますが・・・
倖田さんの声域って今日の若手男性ヴォーカルに比べても非常に狭く、
通常の女性シンガーであれば絶対に成功しないように思えますが、
独特の艶やかなアジを持っております。。。

この曲がスゴイのはサビ小節が2回繰り返されてるところでしょうね。
そうすることでドラマティックさが非常に増幅されてるように感じます☆

PVの彼女のスッピン顔はなかなか素朴で好きですね☆
でも・・・もし街で会っても「倖田來未に似てませんか?」とは言われないかも???






Moon Crying - MOONMoon Crying - 倖田來未 
7thアルバム『TRICK』 2009年

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【Re-Edit】 Didn't We Almost Have It All - Whitney Houston 【80年代バラード】

【Re-Edit】【80年代洋楽バラードの名曲】


Didn't We Almost Have It All






1984年2月4日(土)

「ワタシね、本当はもう諦めかけてたの。『シーナ君にはアロハのメンバーがいるんだから、ワタシなんていなくても、――』ってね。そしたらユカリが、金曜日の夜、電話口でワタシに泣きながら2時間以上もね、ずっと訴え続けていたのよ。――絶対に後悔だけはもうしないで。――本当に欲しいものがあるんなら、大きな声で『それが欲しい』って相手に伝えなきゃ、なにも手になんて入らないんだよ。ってね」

メイは優しげにユカリの寝顔にそういった。――そして、ボクのほうを横目で見つめた。

「――だから、今日の夕方、シーナ君に本当の気持ちを伝えることができた。きっとユカのおかげなんだろうな。……本当の気持ちをいえたからね、ワタシにはもう、なにも後悔することなんてないの。来月、卒業ライブが終わったとき、どんな結果が待っていたとしても構わない。一番いいたかったことを一番訊いて欲しかった人に、ちゃんと伝えられたのだから。――」

夕方、音楽準備室でメイは、はじめて彼女の本当の気持ちをボクに告白してくれたんだ。マレンに対する後悔を心のなかに閉じ込めたまま、どうすることもできなかったボクに、メイは、かつてボクがマレンへ贈った曲を「卒業ライブのとき、みんなの前で歌って欲しい」って、そういっていた。――

【歌ったあとに、シーナ君がなにをどう感じるのかはわからない。でも、シーナ君は絶対に歌うべきだと思う。――もしワタシがそれを聴き終わったとき『絶対に川澄さんには叶わないな』と感じたのならば、ワタシはシーナ君を好きでいることをやめる。でも、歌ったことで、その後悔が少しでも晴れて、『彼女のことを完全に忘れられなかったとしても、シーナ君が先に進められそう』だとワタシ自身そう感じたならば。……

もしワタシがそう感じたのならね、――ワタシはシーナ君を、いまよりもっと好きになる。――もしワタシがそう感じられたのなら、いままでいろんなものを得る前に自分のほうから諦め続けてきたワタシ自身、ちゃんと生まれ変わりたい。……生まれ変わって一番好きなその人に、『一緒にいて欲しい』って、もう一度ちゃんと伝えたいって思ってるの。――】

ボクが、家の玄関を出ようとすると、白いスウェットに薄紫色のカーディガンを羽織ったメイが微笑みながら閑(のど)やかにささやいた。

「そう、さっきユカがいってたこと、――『いつか3人だけで暮らせたら』って話ね、……もしそうなれたらすごい幸せなんだろうなって、ワタシも本当に思ったの。それにね、『シーナ君とワタシがいなければ修学旅行に行く意味なんてなかった』って、ユカがいってたでしょう。――

それもね、本当だったのよ。……たぶんマキコも同じことを感じてたんでしょうけど、……ワタシ、クラスのみんなと旅行に行ってるあいだじゅう、ずっと『シーナ君がいないのなら、旅行になんてきたって仕方なかったな』って、思ってた。どこに行ってもね、ずっとそうだった。たとえほかに何人いようとも、誰と一緒にいようとも、そこにシーナ君がいなければね、ワタシも旅行になんてくる意味なかったんだって、ずっと思ってた。――」

ボクは一瞬、ものすごくメイのことを抱きしめたくなったんだ。それはきっと、今夜のボクらにしてみれば、さほど難しいことではなかったはずだろう。けれど、なぜだか妙に格好つけて最後にはいつだってスマートさを気取ってしまう。――まったくホントにイヤになっちまう。――結局、ボクは彼女に抱いた衝動を「グッ」と堪(こら)え、

「じゃぁ、明日、昼くらいにまたくるからね」

と、メイに別れを告げてから玄関を静かに開け、星明りが灯る氷点下の路地裏へと出ていった。――漆黒の街に点々と浮かびあがった街灯の淡い光はまるで、きめ細やかなヴェールのように向こう側の景色を白く霞(かす)ませている。――ボクは、そんなサンドブラストされたような水銀灯の白光色に包まれながら、ふと立ち止まり、そしてメイの家のほうを振り返った。

マレンへの後悔の想いが決して小さくなったわけじゃあないのだろう。けれど今日、メイがボクにくれたいくつもの素直な想いが、――はじめて解き放たれた正直な言葉が、彼女の穏やかな口調そのままに、後悔だけしかなかった闇色の心の奥から、何度も繰り返し聴こえてきていた。いや、――そうやって彼女の声を繰り返し再生せているのは、なんてことない、……ボク自身の意思なんだ。ボクが彼女の声を、いつまでも繰り返しずっと「聴いていたい」と願っていたからなんだ。――



【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】


【2012.03.17 記事原文】



↑ Live. Ver


誠にタイムリーなことに。。。
ボクのipotに収められた「洋楽バラード集」の1曲目が、
ホイットニー・ヒューストンのセカンドアルバムに収録された
この「Didn't We Almost Have It All」なのである。


ホイットニーは、ライブでバラードを
原曲とは全く違ったテンポアレンジにして歌いあげる。


YouTubeでは、いくつかのLIVE ver.がアップされているのだが、
特に、このライブは、彼女のヴォーカリストとしての
才能と艶やかさが一番現れていると感じる。


ちなみにボクが行ったコンサートでは、この曲はメドレーで
全編歌わなかったよぉ~な?定かではありませんが。。。



しかし。。。
マライアでもなく、ビヨンセでもなく、
率直に歌の上手い人なんだなぁとつくづく思うのである。







Didn't We Almost Have It All - ホイットニー・ヒューストン
2ndアルバム『Whitney』 1987年



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【Re-Edit】 We're All Alone - Boz Scaggs 【70年代バラード】

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We're All Alone






1984年2月4日(土)

「ユカはね、小学校の頃からいつも寝るのがすごく早かったのよ」

ぼんやり薄暗い部屋のなか、すでに小さな寝息をたてはじめてるユカリの寝顔を見つめてメイがささやく。

「倉田さん、なんだか今夜はやけにハシャいでたねぇ」

両ひざを「くの字」にし、ボクも畳の上へと座り込み、枕元のスタンドの灯りに映るユカリの艶やかな長い黒髪を見つめた。

「ユカにとっては、去年はじめてこの家で、シーナ君と会った日のことが忘れられないんだと思うの」

ユカリの寝息を見つめて、そっと静かにメイがつぶやく。

「そりゃまぁ、オレだって忘れられないけどね」

と、メイの隣でボクも声を潜ませる。やがて彼女はボクのほうへとゆっくり視線を移し、涼やかな瞳で微笑んだ。

「ユカにとっては、――まぁ、ワタシもなんだけど、あの頃、学校の男の子となんてほとんどまともに話したことなんてなかったのにね、あの日、シーナ君と会ってからワタシたちふたりとも、本当にいろんなことが変わっていったの。アロハのみんなとも急に仲良くなりはじめて、あれから僅か半年足らずで、すごい数の知り合いがね、気がついたときにはワタシたち、――特にユカのまわりには大勢いたの」

赤々(あかあか)と色温度を帯びた電気ストーブのヒーターが、ボクらの足元の畳を柔らかく照らし出す。透き通るほどに白いメイの表情も、ほのぼのと赤褐色(せっかっしょく)に染められていく。

「ワタシ、小学校のときからずっとユカのことを見てきたからね、……そのことが堪(たま)らなく嬉しかった。彼女のまわりにいろんな友達がいるっていう風景がね、本当に信じられなかったの。――きっとミチコもそうだけれど、シーナ君のそばにいるとね、いままでどれだけ欲しくても決して得ることができなかったものを、みんな自然と手にすることができるようになっていくんだと思う」

暗がりをふうわり漂うしじまのなかで、ボクはメイの横顔に映し出される安堵の色を見つめていた。

「ユカね、いまでも、たまにあの日のことをよく話すのよ。シーナ君とはじめて会った日のことを、――ユカにとっては本当に忘れられない日なんだろうなって思う」

口元を微笑ませ、そっとささやくメイの声にはなんだか不思議な懐かしさが滲んでいる。

「だって、倉田さんや李さんとは、あれからほとんど毎日、学校で――」

そこまでいいかけたが、繋がるべき次の言葉を急に見失ってしまった。ボクとメイ、それにユカリの3人だけで、こんなにも長いあいだ一緒の時間を過ごしたことなんて、考えてみればあれから一度もなかったんだ。ユカリは放課後、アロハスターの練習を音楽準備室へ見にきてたんで、よく一緒に帰ったりもしてたけど、メイとは今年に入ってからの2ヶ月間、ほとんど学校でも会話などしていなかった。

「あの日以来、ユカはずっといってたのよ。『いつかまた、あのときみたいに3人で遊べるかな』って。ワタシは『きっと、またそのうち3人で会えるんじゃない?』って、答えてたんだけれどね、そのあとシーナ君とは、ワタシほとんど一緒の時間を過ごす機会がなかったから。――

ユカは、アロハのバンド練習が終わってから、たまにシーナ君と一緒に帰ってたみたいだから、ユカったら、なんだか自分だけシーナ君と会ってるってことが、すごくワタシに対して申し訳なかったみたいでね、『私がシーナ君をもう一度誘うから、また3人で一緒に遊ぼう』って、ずっと気にしてくれてたの。別にそんなに気を使わなくてもいいのにね。――だけど、このところシーナ君、なんだかすごく様子がおかしかったでしょ?」

(たしかにボクは、ほんのつい数日前まで暗闇の真っ只中にいたのだ。激烈に蘇った川澄マレンへの懺悔の想いと、あの幻覚の戦場で見せられたロミイという名の少女の死、そして『L』と『MDMA』を続けざま服用したことによるドラッグ・オーバードーズ、――アロハのみんなが闇のなからか引っ張りあげてくれるまで、メイに対する想いなどすっかり忘れてしまっていたことだけは確かだ。――)


【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】



【2012.03.21 記事原文】

ボズ・スキャッグスといえば、やはり外せないのが
70年代を代表する不朽の名曲「We're All Alone」♪
※ボクもカラオケで良く歌いますね♪


彼の出世作となった1976年のアルバム『Silk Degrees』収録曲。

彼のアルバム作品としては、一番聴き応えのある内容ですかね。。。





We're All Alone - ボズ・スキャッグス
アルバム『Silk Degrees』 1976年



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Save the Best for Last






1984年2月4日(土)

おそらくは、メイから借りたのであろうキャラクターがプリントされた薄いピンクのトレーナーとスウェットに着替え、まだ濡れた髪のままの倉田ユカリが杖をつき、先に一階の応接間へと戻ってきた。メイだって相当細いはずなのに、ユカリが着ると袖口やウエストまわりが、やけにダブついて見える。

「なんだかお湯が熱くって、ちょっとノボせちゃったみたいです」

ほんのりピンク色に頬を染め、ユカリがそういって笑う。

「李さんは? まだお風呂入ってるの?」

部屋の一番奥に置かれていた、去年はじめてメイの家にきたとき、無理やりユカリに弾かされたピアノの椅子の背もたれに右ひじをかけたまま、ボクはユカリのほうを振り返る。濡れた前髪を青っぽいバスタオルで拭いながら、

「せっかくだからシーナ君も私たちと一階にお風呂入ればよかったのに、混浴気分で」

と、ユカリはニンマリ笑って、そんな冗談をいった。

「あ~、そいつは残念だったわ。オレもね、さっきそのことでかなり悩んでたんだけどね。せめて2人を覗きくらいには行こうかなって」

椅子から立ちあがると、ボクは応接セットのテーブルへ向かい、オレンジジュースをグラスに半分ほど満たしてからユカリを見つめて、それをそっと差し出す。

「あぁ、ありがとう」

グラスを受け取ったユカリがソファへゆっくり沈み込む。しばらくすると扉が静かに押し開かれ、白いバスタオルで髪の毛を包んだメイが、少しばかりの恥じらいを口元に浮かべながら応接間へと入ってきた。

「お待たせ」

そんなのあたりまえのことだけど、彼女らの、ほんわか頬を火照らす白い素顔や、しっとり潤(うる)んだ濡れ髪なんて、いままで一度も見たことなんてあるはずもない。おもわずボクは照れてしまってメイから視線を逸らす。そしてまた、奥に置かれた黒いピアノを見つめる。――

あの日ユカリに促され、仕方なくこの場所でピアノを弾いてから、マレンを失い、虚ろな日々をぼんやり過ごしていたボクの生活は一気に変化していったのだ。

マレンに贈った曲の間奏の手前でミスってしまい、はにかみながらうしろを振り返ったとき、ボクはメイの瞳からこぼれ落ちてゆく透明な涙の雫(しずく)をはっきり見たんだ。あのとき、なんで彼女が泣いていたのかなんてこと、いままでまったく考えたことなどなかった。けれど、ボクは確かにあのとき感じたんだ。――

普段、感情の起伏をまったく表情に浮かばすことのなかったメイの閉ざされた心の奥のほうまで辿り着ける光のような音楽を、もし作ることができるのならば、きっとありとあらゆる人々の感情をも、音楽の力で揺さぶることができるんだろうなって。――そう、音楽だけは唯一、人の心の一番深いところまで光を射し込ませることができるんだ。って、はっきりと、あのときボクは感じてたんだ。

「シーナ君、なにか一曲弾いてくださいよ」

バスタオルをあたまに乗せながらユカリが、そういって笑う。

「さすがにもう遅いからね、それに倉田さんは明日、さんざんオレらのピアノ聴くことになるんだから」

ボクは深々と茶色いソファにもたれて微笑む。

「卒業ライブのときって、何曲くらいシーナ君が作った曲を演奏するんですか?」

ユカリは、つぶらな瞳をボクへと向ける。ボクはユカリの隣でオレンジジュースを口にするメイを見つめてささやいた。

「今回は、かなり演るよ。まぁ、メンバーの誰かがぶっ倒れるまでは、ね。だから李さんも覚悟しといて。明日の譜面作りも多分、相当大変になるだろうからね」

湿った艶やかな髪を指先でとかしながら、素顔のメイが静かに頷く。彼女は普段、教室でそれほど濃い化粧をしてるわけじゃない。せいぜいリップスティックで、きれいな形の唇を潤(うる)ます程度だろう。けれど、いつだってほかの子よりも大人びて見えるはずのメイが、なんだかいまは、ごく普通の15歳の少女にしか思えなかったんだ。――

玄関を入ってすぐ左にある応接間とは通路を挟んだ反対側に六畳ほどの客間があって、どうやらそこに布団が敷かれているみたいだった。すでに深夜の1時をまわり、さっきからユカリも半分目を閉じてしまってたので、そろそろボクは帰ろうと思った。

「えぇっ、シーナ君帰っちゃうんですか? 私たちと一緒に寝てかないんですか?」

と、ユカリは少々駄々をこねてたけど、どうやら彼女も眠気には勝てなかったようで、ボクが客間へ連れてくと、そのまま掛け布団のなかへ寒そうにしながら潜り込んだ。二階には、ちゃんとメイの部屋があるようだけど、どうやらメイも今夜はここでユカリと一緒に寝るらしい。



【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】



【2012.03.12 記事原文】

ちょいと90年代で印象に残ったバラードを2曲ほどご紹介!

まずは、美しいメロディラインが心に残る名曲
ヴァネッサ・ウィリアムズの「Save the Best for Last」をどうぞ♪







Save the Best for Last - ヴァネッサ・ウィリアムズ
2ndアルバム『The Comfort Zone』 1991年


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The First Time





I selected "The First Tim"
from 1st album "3Deep" of
Surface released in 1990.



1991年の洋楽ヒットチャートから



1984年2月4日(土)

やがて、ボクたちは南口のバスターミナルの前で、細野と竹内カナエの2人と別れる。

去年の誕生日、

「どうもお待たせー!」

そういって、ワインレッドのフード付きコートに白い毛糸の帽子姿で、大きな紙袋を片手に抱えたマレンが自転車で姿を現した、駅前通りの暗がりのほうをなんとなくボクは見つめた。――

街灯の蒼(あお)く滲(にじ)んだ光彩がぼんやり寂しく路面に浮かんだ路地裏で、

「実は今夜ね、私、これからメイの家に泊まるんですけど」

ユカリはフロスト状に霞(かす)む言葉を純白のマフラーの上にくゆらせる。そして、彼女のうしろをメイと並んで歩くボクのほうを振り返り、

「シーナ君も、今夜一緒に泊まりませんか?」

ユカリは、楽しそうに「ニコリ」と笑った。

はじめて彼女と話した9月のあの日もそうだった。ユカリはメイになんら承諾も得ず、いきなりボクのことをメイの家へ一緒にくるよう誘ってきたんだ。

「だって家族の人とかいるんでしょ?」

冗談半分に笑いながらボクは白い息をユカリのほうへと吐き出した。果たしてユカリにそう訊いたのか、それとも隣で微笑むメイに対する問いかけだったのかはよくわからなかったけど。……(それにメイの兄貴、リケンだっているんだろうに、――)

「お母さんはね、今夜親戚の家に出掛けてるの。それにお兄ちゃんは最近、あまり家には帰ってきてないから」

薄いピンク色のマフラーを巻きなおし、メイは静かに微笑んだ。

「そうですよ! だからシーナ君がきたって大丈夫ですって」

ユカリは、相変わらずうしろを向いたまま「アハハ」と、可愛らしい声で笑った。

「けど、いくらなんでも、さすがにオレが泊まるのはヤバいでしょ」

ユカリの車椅子をゆっくり押しながら、ボクは隣を歩くメイの横顔を見つめる。

メイは少しだけ目を細め、北風が通り過ぎるのを待っていた。過ぎ去る風の音を見送ると、彼女は蒼い街灯の光に照らし出されたリップクリームの仄(ほの)かな光沢を唇に漂わせ、柔らかな口調でささやきはじめる。

「もしあとで帰りたくなったら、帰っても構わないからね、――今夜だけはもう少し、ワタシたちと一緒にいて欲しい。せめて日付が変わるまで、……シーナ君の誕生日が終わるまではね、みんなで一緒にいたいの」

メイにそういわれてしまったら、断る理由なんて見つけられやしない。

「私、もしかしたらお邪魔虫ですかね? でも、私も2人と一緒にいたいんです。たった1日だけでいいので、メイとシーナ君、――この3人だけで一緒の時間を過ごしたいんです」

そんなユカリのささやかな願いは、乳白色に揺らぐ薄霧の吐息となって真冬の空へ浮かんでいった。

「いったいどうしちゃったのさ? 2人とも」

なんだかボクは、ちょっとだけ恥ずかしくなった。

「去年、みんなが修学旅行へ行ってるとき、シーナ君と2人でデートしたでしょ? 本当はメイも『修学旅行には行かない』っていってたけど、結局、あのとき私が怒ってメイのこと、強引に行かせちゃったじゃない? 私もね、あの頃は少しだけ旅行に参加できなかったってことを悔やんだりしてたけど、でもね、……もしメイやシーナ君たちと一緒に行けないのなら、『修学旅行になんて行かなくてよかったな』って、そういまは思ってるんです」

正面を見つめたままユカリがつま先のほうへ、そう言葉を吹きかける。ユカリのか細い肩先へ、いたわるようにメイがそっと声をかける。

「ユカ、……そんなこと、――」

ユカリはメイの言葉を柔らかく遮った。

「もうすぐ私たち卒業しちゃうでしょ? でも結局、この3年間で、メイとシーナ君だけしかいなかったんだもの。――-私の車椅子を、ふたりきりのときに押してくれた人はね。――私、どちらかが一緒じゃなかったら、絶対そんな遠くになんか行けないなって思ったの」

ボクたちがなにもいえずにいると、ユカリは微笑みながら振り返る。そして、いつものイタズラっぽい表情で、ちょっと嬉しそうにささやいた。

「私にとってはね、シーナ君ってなんとなくお兄さんみたいで、メイって、なんだかお母さんさんみたいなんですよねぇ。だから、2人にはいつだって甘えたり、わがままいえたりしちゃうんですよ」

メイは、少しだけ口元を緩ませ、

「なんでワタシがユカのお母さんになっちゃうの? せめてワタシもお姉さんくらいにしてよ」

と、いって笑った。

「いや、絶対にメイはお母さん」

ユカリはそうささやくと、群青(ぐんじょう)の夜空、微かに片影(へんえい)を覗かす細い三日月を見つめた。

「ホントはね、いつまでもずっと3人で一緒に暮らしていけたら、すごく幸せなんだろうなぁって思うんです。もし、地球上に私たち3人だけしかいなくっても、――ううん、もし3人だけしかいなければ、きっとすごく幸せなんだろうって、本当にそんなふうに思えるの。別に三角関係って意味じゃないですよ。――シーナ君は、きっと私たちのことを一生守ってくれるだろうし、――メイもね、ずっと私たちのことを優しく見つめ続けてくれる。……まぁ、絶対に無理なんでしょうけどね。だけど、シーナ君やメイがね、私の家族だったら、どんなに幸せだろうって、ときどき本気で考えちゃうんです」

するとメイが「フッ」と笑って、うっすら閉ざした瞳のような三日月にささやいた。

「そうなれたら本当に幸せなのかもしれない」

ユカリの言葉を聞いてるうちに、なんとなく、そんな暮らしができるならボクもなんだかそれでもいいように思えてきたんだ。

「わかったよ、しょうがないからとりあえず今夜は妹が眠るまでは一緒にいるよ。考えてみればオレも修学旅行に行ってないんだしね、――じゃあさあ、3人で修学旅行気分でも味わおうか。枕投げでもしながら。ねぇ? お母さん」

そういってメイのほうへ笑いかけると、彼女は一瞬、少しだけ唇を尖らせてから、緩やかに微笑みへと変えていった。――


【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】


【2013.04.06 記事原文】

さて。以前この曲を紹介したのは 去年の3月ってことなんで
ボクがこのブログを始めた当初ってことになりますね。

つまりは それだけ個人的な評価の高いバラードってことでしょう。

コンテンポラリー系のコーラスグループであるサーフェスが
1990年にリリースし 突如ビルボードのシングルチャートで
No.1を獲得したのが このスーパーメロウなバラードナンバー
「The First Time」でした☆

特に90年代初期には バブルに湧く恋人たちを
トロけさせるような スイートバラードの名曲が
数多く生み出されるんですけど まあこれも
そんなナンバーのひとつでしょうかねぇ☆




【2012.03.12 原文】


90年代のバラードソングからもう1曲!
まぁ、名曲に認定すべきかギリギリの線ですが。。。


サーフェスの「The First Time」をチョイス♪
こてっこての甘いナンバーっすが…







The First Time - サーフェス
1stアルバム『3Deep』 1990年(たぶん廃盤かな)





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Somewhere Out There





1984年2月4日(土)

土曜日の夜、すでに9時半近かったろうか。――
ピザ屋を出た瞬間、すぐに凍った北風が纏(まつ)わりついて、まるで砕けたガラスの破片みたいに冷々とした痛みを指先の爪のあたりに思い出させた。小さな掌で口元を覆(おお)い、そのなかに「ハーッ」と、白い息をほんわり浮かばす倉田ユカリの車椅子を押しながら、ボクは駅へと向かう。大気を漂う微(わず)かな湿り気さえも、すべて夜風に凍らされ、そのシャーベット状の微粒子が街明かりに「キラキラ」輝く真冬のこの街の気配そのものがなんだかやけに眩しかった。

ユカリはその胸のなかに、ボクの学生カバンと、さっきユカリとメイからもらった誕生日プレゼントの入った紙袋を抱きかかえながらうしろを振り返る。

「なんだか、すごく空気が澄んでますね」

ユカリにそういわれ、ボクは光瞬く夜空を見上げた。

(もう15歳になっちまったんだな)

なんとなく、さっきまでボクらがいた、――ちょうど1年前の今日、川澄マレンとともに過ごしたピザ屋のウィンドウからこぼれる暖かな明かりを見つめた。すこし感傷的にもなったけど、「ガヤガヤ」と、ざわめく酔っ払いたちの喧騒が賑やか過ぎて、そんな気持ちなどずぐにどこかへ消え去ってしまった。――


「これ、メイと私からなんですけど、シーナ君へのお誕生日プレゼントです」

ソファに隠してあった白い紙袋を差し出すと、ユカリは「ニッコリ」笑ってそういった。

「えぇっ! マジで」

ペーパーナプキンで口を拭きながらボクは驚き、ユカリと、その隣で微笑むメイを交互に見つめる。

「なんかさぁ、アタシたちが手ぶらっていうのが目立つんだけど」

ボクの隣で竹内カナエがそういうと、細野も少し笑いながら、

「じゃあ僕たちは、この店の分をいくらか多く払おうか」

と、カナエを見つめた。

やがてメイが、その淡いピンク色の唇を静かに開く。
「なにがいいか、ユカと結構悩んだんだけど、――シーナ君がね、普段しているのが少しだけ切れてたみたいだから」

ボクは、紙袋からプレゼントの中身を取り出してみる。包装紙をひざの上で広げると、そこには「レヴィース(LEVY'S)」というブランドの黒い革製ギターストラップが入っていた。

「うわぁ、スゲエかっこいい!」

おもわずボクは目を輝かせ、歓喜の声をあげた。丸め込まれた、その丁寧かつ重厚な仕上がりの黒いストラップをひざの上でまっすぐに伸ばしていく。そして笑いながらいった。

「たしかにいま使ってるのはさぁ、去年、音楽部の棚で拾ったヤツだしね」

レモンティーを一口飲んでから、メイがつぶやく。

「お店の人に訊いたらね、なんか有名なギタリストが愛用してるっていうからね」

オレンジジュースが半分入ったグラスのなかでストローを「くるくる」まわし、ユカリが言葉を繋いだ。

「それに、なんかシンプルでカッコよかったからね。シーナ君に似合うかな、と思って」

ボクの隣で竹内カナエが目を細めた。

「あぁ、レヴィースね」

「レヴィース?」

ストローを止めて、ユカリはそう繰り返す。

「あぁ、レザー製のギターストラップではすごい有名なブランドなんだよ。コレ、かなり高かったでしょ?」

そういうとボクはまた、手にした黒いストラップを眺めた。そのとき、長さ調節用のホール部分に、赤っぽいお守りみたいなものが紐で巻きつけられ、ぶら下がっていることに気づく。ボクがそれをつまみあげると、メイが、「フフッ」と笑ってユカリを見つめた。

「それは、ユカが冬休みから一生懸命手編みでね、作っていたものなのよ」

赤い布地には楕円形の黄色い波型のフレームが縫い込まれ、その上には、サーフボードに乗ってるようなローマ字のフォントが刺繍されていた。

(ALOHA STAR、――)

ユカリが少し恥ずかしそうに口を開く。

「ホントはね、クリスマスのライブまでに間に合わせたかったんですけど、――あっ、でも今回は、ちゃんとカナエさんの分とかも作りましたからね。アロハのみんなに、卒業ライブでつけてもらえるように」

横からカナエはボクのストラップについているそのお守りを見つめ、嬉しそうに笑った。

「えぇっ、本当に! じゃぁ、アタシもストラトにぶら下げようかな」

「いいよ! すごくイカしてるじゃん。これってさぁ、倉田さんがデザインしたの?」

正直、ユカリにこれほどのデザインセンスがあるなんて思ってなかったんで、ボクは本気で感心しながらそういった。照れるユカリはつぶやく。

「私ね、将来、パッケージとかのデザイナーになりたいなって、最近思うんです。それならば、別に車椅子でも毎日、仕事できるじゃないですか」

ユカリを優しく横目で見つめてメイがささやく。

「むかしからユカは手先が器用だったし、絵を書くことも好きだったものね、――すごく素敵な職業だとワタシは思う。――」


【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】



【2012.03.21 記事原文】

1986年、ジェームス・イングラム&リンダ・ロンシュタットという
実に意外なカップがデュエットし大ヒットとなった
「somewhere out there」をチョイス♪

映画『アメリカ物語』の主題歌です。
※この映画、日本でやってない気がするが。。。



Somewhere Out There - ジェームス・イングラム&リンダ・ロンシュタット
オリジナルサウンドトラック『アメリカ物語』 1986年





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