QLOOKアクセス解析

未来に残したい洋楽&邦楽の名曲

70~80年代の洋楽&邦楽を中心に未来に残したい名曲&名盤を独自にチョイスするBlogです☆
未来に残したい洋楽&邦楽の名曲 TOP > 2013年07月

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

【Re-Edit】 片想い - 浜田省吾 【バラードの名曲】

【Re-Edit】【浜田省吾バラード特集】


片想い






1984年1月25日(水)

ベッドで仰向けになったまま、ボクはおもむろに枕の下に敷かれていたクッションを、あたまの後ろから引っ張り出した。去年の誕生日、ピザ屋で川澄マレンから貰った、ボクの顔らしきイラストがパッチワークされた水色の枕。――彼女と会わなくなってからも、それはずっとベッドに残されたままだった。だけどそれだけじゃちょっと低いので、その上に別の枕を置いていたんだ。

窓の向うには、ちょうどキレイに半分だけを光輝かせている下弦の弦月(はんげつ)が浮かんでいる。
ボクはその淡い月明かりを眺めながら、さっきまでずっと卒業ライブで歌うための新曲の歌詞を考えていた。けれど、どれだけ関係のない言葉をあたまのなかで無意味につむぎ合わせてみても、最後には、結局マレンの面影のほうへとその言葉たちは向かっていってしまう。

ふと、ボクがはじめて『L』でトリップしたとき、幻影のなかでマレンがいっていた、「絶対に当日まで読んじゃいけない手紙」のことを急に思い出し、彼女から、今年の誕生日に貰った枕を調べてみたんだ。けれど、この枕のなかにも、そんな手紙などは縫い込まれていなかった。
(ここにもないとすれば、もうほかには思い浮かばない。やはり、ただの幻覚だったのかもしれないな)
最後の可能性を失ってしまうと、なんとなくそう考えるようにもなり始めていた。

(枕以外で、ボクがマレンから誕生日に貰ったものって、――)
ボクは「ハッ」となり、慌ててベッドから飛び起きる。そして押入れの奥にしまい込んだまま、ずっと捨てずにとっておいた紙袋の束を取り出した。ひとつの紙袋からは、薄っすらと、なにかの匂いが放たれていた。それはたしかに、ボクの記憶のどこかに鮮明に刻み込まれている匂いだった。
(この匂いを、いったいボクはどこで感じたんだろう?)

誕生日にマレンから貰った枕が入っていた赤くて大きな紙袋。――折りたたまれていたその袋を広げると、長いあいだ閉じ込められていた甘い香りが一斉に湧き上がる。
その香りの底に、ボクはようやく見つけ出したんだ。あのとき彼女がいっていた『予言の手紙』らしき封筒を。――

「1983年8月24日、当日の夜まで絶対に読んじゃダメだよ」
その封筒の表紙に綴られた動物の絵のような丸文字。
それは間違いなくマレンの字だった。――


1983年7月23日(土)

ボクは、薄曇りの空を見上げる。その日、マレンは白いワンピースを着ていた。
ちょうど1年前、ボクらがはじめて一緒に横浜の遊園地へ行ったときも、彼女は小さな花柄模様の入った白いワンピース姿だった。
彼女のお母さんが入院している病院を出ると、ボクらは鎌倉の海岸のほうへと向かって歩き出す。時折、風のなかに、なにか香水のような甘い香りが漂っているような気がした。
松の防風林がずっと続く小径(こみち)の先に、くすんだ夏色の雲影を映し出す水面(みなも)が揺らいでいる。――

午前中にマレンから、
「今日のデートを中止にして欲しい」
って電話があって、いまさっき、ボクは彼女のお母さんが入院しているこの病院に着いたばかりだ。マレンのお母さんは依然として昏睡状態が続いており、さらに脳にもなにかの異常が見つかったみたいだった。
夏休みに入って最初の土曜日の今日、本当は2人で横浜へ出掛ける予定だったんだけれど、お母さんの検査結果を聞かされたマレンはひどく落ち込み、とてもデートになんて出掛けられるような状況ではなかった。不安げなマレンをそのままにはしておけず、とりあえずボクは、彼女がお母さんに付き添っている鎌倉の病院へと向かった。

けれど、そんなボク自身も、決して心が晴れ晴れしていたわけじゃない。数日前、両親から突きつけられた現実に打ちのめされ、ずっとその言葉に心が縛り付けられたままだった。
だけどボクは、こないだマレンに約束してしまったんだ。
「もし川澄のお母さんが元気になったら2人で一緒に暮らそう」
って、――

ボクらは手をつないでいたけど、さっきからほとんどなにも話していない。彼女はきっとお母さんのことを心配しているんだと思う。そしてボクは、ずっと両親から浴びせかけられた辛辣な言葉ばかりを思い返していた。――


1984年1月25日(水)

――マレンからの手紙を持つボクの右手が、微かに震えている。
それが少しだけおさまってくると、ギターケースの上に置かれていたバタフライナイフを手にし、封筒の上辺に刃先を差込み、ゆっくりと真横に切り裂いていった。なかには水色の便箋が3枚折り重なるようにして入っていた。あの香りは、どうやらこの便箋に染み込んでいたようだ。
3つに折りたたまれた手紙を広げると、一枚目の手紙の一番上に、

「カミュとマレンの未来について」

と、いう見出しが書かれていた。
ボクは床の上にうつ伏せになりながら、肌寒い蛍光灯の青白い灯りの下でその手紙を読み始めたんだ。そう、一字一句まで決して見逃さないようにしながら、――


1983年7月23日(土)

(マレンと暮らしたい)
ただ漠然とそう思っていたボクに、両親から突きつけられた現実はあまりにも当たり前な正論でしかなかった。けれどその正論は、それまで根拠のない自信によって希望的観測を抱いていたボクの心を粉々に打ち砕いたのだ。

(いまのボクには、なにもできない、――いまのボクには、なにもなかったんだ)
自分自身に対しての圧倒的な無力感を一瞬にして痛感させられたのである。
たかだか、まだ14歳のガキでしかないボクに、ひとりで明日を普通に暮らしていけるだけの力なんてものは、なにもなかったんだ。と、――
ましてや、いっさい親に頼ることなくマレンと一緒に暮らしていくことなど、到底、いまのボクにできるはずもなかった。

(マレンは、お母さんのことで相当に落ち込んでいる。だから、少なくとも今日、この話をするのはやめるべきだ)
そんなことはわかっていた。――わかっていたはずなのに、ボクの口から勝手に滑り落ちていった言葉は、そんな彼女の心をまるっきり無視していた。
「あのさぁ、……こないだ会ったとき、いったんだけどさぁ、『一緒に暮らそう』って。だけど、やっぱりすぐには無理だと思う」
「カミュちゃんのご両親に反対されたんでしょ? それは仕方ないよ。だって普通は反対するんだろうからねぇ」
海岸に積み上げられた防砂ブロックの上に座りながら、そうささやいたマレンの首のあたりから、柔らかく立ち上がる甘い香水の香りが、鎌倉の潮風と溶け合う。
「香水、つけてるの?」
と、ボクは訊ねた。
「あぁ、これね。むかしからずっとお母さんがつけてた香水なんだ。この匂いを感じたらさぁ、もしかしたらお母さんが起きてくれるかもしれないでしょ。だからね、――」
そういって、マレンの言葉は止まる。
ボクがどんな顔をしてたのかはわからないけれど、きっと彼女の言葉を断ち切ってしまうような表情をしていたのだろう。希望を語った笑顔とともに、――

濃厚で尖った甘さを含む、その香水の匂いが少しだけボクにはキツ過ぎた。それに、まだ若いマレンには、あまり似合ってない匂いのような気がしたのもたしかだ。けれど彼女にとって、それは昏睡状態のお母さんを目覚めさせるための希望の香りだったのだ。そんなことはわかってたんだ。

「匂い、……気になる?」
マレンの口調が、だんだんと弱まってゆく。
「いや、別に気にはならないけど、なんかまだ、川澄には似合ってないかもね」
そういって、ボクは微笑みもせず、彼女を見つめてしまった。
「ゴメンね。こんなの、――やっぱりつけてこなければよかったね」
と、小さくつぶやいたマレンの瞳の色が、あまりにも寂しげに思えた。いつだって彼女の艶やかな瞳のなかに浮かび上がっていたはずの、星空のように光り輝くあの色は、そこに浮かんでいなかった。

いつものボクならば、きっとこんな事なんて絶対にいわなかったろう。だけど今日のボクは、彼女が傷つくとわかっているのに、傷つけたり、悲しませたりするような言葉を平気で口にしてしまうんだ。
絶対にマレンを傷つけたくないのに、なぜなんだろう、――
ボクは、彼女になにをいいたいんだろう、――


1983年12月24日(土)

ボクは、ステージ上から観客席に笑いかける。
そして、メジャーコードをストロークしながらぼんやり考えていたんだ。――

ボクらが生きてる理由なんて、考えるまでもなく単純なことさ。
「生まれてきたから、ただ生きているだけ」
もし、それ以上の理由を求めるとすれば、きっとそれは真理ではなく、単なる恩寵(おんちょう)への希求だ。
「やりたい仕事」だの「将来の夢」だのってものは、別にボクらが生きていくためにどうしても必要なものってわけじゃない。そんなものは「生きている理由」なんかじゃなくって、暇つぶしのための、単なる手段に過ぎない。
生き甲斐を見つけられないからって、別に死ぬわけでもない。
「つまらない人生を生きている」
ただそれだけのことだ。

【なんで生まれてきたと思う?】
たぶん奇跡によって、……かな

【あなたは、なにをしたいの?】
もし、しなくてもいいなら、なにもしたくない。
しなきゃいけないことがあるのなら、なんとなくそれをするだけ。

【なんのために生きてると思う?】
まぁ、自分の人生を見届けるため? なのかな。

【じゃぁ、誰のために生きてると思う?】
きっと、幸せにしたい誰かのためだろ?

【あなたにとって、幸せとは?】
ボクの幸せ? ボクの幸せ、――
それは、……きっと心から「幸せになって欲しい」と願う誰かが幸せになってくれること。つまりは、幸せにしたいと想う、たったひとりのその誰かと、何十億もの人々が暮らすこの広い世界のなかで巡り会えること。なのかもしれないね。

そう、大切なその誰かのことを絶対に「幸せにしよう」とする自らの覚悟。――
もしそれだけあれば、それ以外なにもなくたって、きっと楽しく生きていけるんだとボクは信じている。
ボクらはいつだって、自分が生きていることの理由ばかりを求めがちだ。だからいつも見失う。けれど、もし大切にしたい誰かと、ともに生きていくのであれば、決してその理由を見失ったりなどはしない。

あの日、川澄マレンはいっていた。
「どんなに『嬉しい』って思うことがあってもね、もしひとりきりじゃさぁ、その嬉しさって絶対に感じられないんだよ。本当に『嬉しいな』って感じるときってね。一番喜ばせたいと思っている誰かがね、一緒になって心から喜んでくれたとき、……喜ばせたいと思う誰かが、嬉しそうに笑ってくれる顔を見れたときに、きっとはじめて感じられるものなんだよ。……だから、どちらかひとりだけが嬉しいだけじゃきっとダメなんだよ」

たしかに、そうなんだろう。
「その誰かが、心から嬉しそうに笑ったときの笑顔」――
それさえあれば、きっとボクらは生きていける。その誰かのことを、ずっと笑わせ続けていくためだけに、きっとボクらは生きているんだ。

たとえ、そこが眩い陽射しを水面(みなも)に湛えながら、エメラルド・ブルーに光輝く海の色に囲まれた楽園でも、荒涼とした大地に雷鳴轟く極寒の地獄だったとしても、もし2人でならば、「きっと笑って生きていける」――そう信じられる誰かと出会えたならば、それ以上、ほかになにが必要だというのだろうか。

いまのボクが、いったい誰のためにこの曲を歌おうとしているのかはまだわからない。 その答えが曖昧なまま、ずっとギターの弦を奏で続けていた。――



【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】




【2012.04.10 記事原文】


浜田省吾の代表曲のひとつ「片想い」。
ちょいブルーが入ってる人ならば誰でも泣ける。
紛れもなく別れの名曲?…ですね。


しかし...何でこんな曲が書けるんだ???


しかし。。。
今まで全く気にしてなかったんだが、
果たしてどっち目線の歌なんだろう???
女性目線だったのかな?





片想い(1978) - Illumination片想い - 浜田省吾
3rdアルバム『Illumination』 1978年

関連記事
スポンサーサイト

【Re-Edit】 愛という名のもとに - 浜田省吾 【バラードの名曲】

【Re-Edit】【浜田省吾バラード特集3】


愛という名のもとに







1982年8月10日(火)

東京タワーを後ろに抱えるようにしながら、ボクと川澄マレンは東京プリンスホテルと増上寺のあいだの緩(ゆる)い坂道を浜松町の駅に向かって歩いている。もうすぐ午後4時になろうとしていたけど、まだ強い陽射しが居座り続ける東京の空に夕焼けの気配は訪れていない。正面から吹いてくる南風には、少しだけ生臭い東京湾の匂いが混ざっていた。

「パルさぁ、アタシの誕生日はちゃんと覚えてるんでしょうねぇ?」
と、マレンは大きなセーブルカラーの左眼を薄く閉ざしながらボクの横顔へ問いかけた。
「あぁ。たしか、……『ハニワ』だったっけ?」
ボクがそういうと、マレンが少し焼けた赤い頬を膨らます。
「うそうそ! 『ハニィ』だろ?」
そう、いいなおすと、ふたたび大きな瞳をボクに向けながらマレンはニッコリと笑った。
彼女の誕生日は8月21日。――だから「ハニーの日」って、そうマレンは呼んでいる。


「今年の誕生日は絶対にパルと一緒にいるんだからね? わかってるでしょ? 絶対に予定とかいれちゃダメだからね」
と、マレンは、訴えかけるように念を押した。
「わかってるよ。『ハニワ(8月28日)』は、ちゃんと空けとくよ」
ボクがそういってからかうと、マレンはまた赤い頬を「プクッ」と膨らませた。
彼女は、まるで風船みたいだ。――

浜松町駅からモノレールに乗り込むと、マレンは車内を見まわして大はしゃぎし始めた。ホームに並んでいるときから、どこに座るかでいろいろ悩んでいたけれど、扉が開いた瞬間に目に入った、中央の少し高い位置にある横座りタイプのシートを彼女は選んだ。

「アタシさぁ、モノレールに乗るのはじめてなんだぁ! パルは? 乗ったことあるの?」
と、マレンは真横に流れてゆく東京湾の風景を見ながら訊いた。
「あぁ。小さい頃はウチの親父が出張から帰ってきたときとか、よく羽田まで迎えに行ったりしてたからね。」ボクは、芝浦の運河を眺めながら、そう答える。
「え~、いいなぁ。あっ! そういえばさぁ。『アタシに見せたいもの』って、なに?」
と、マレンはボクの横顔に問いかけた。

「まぁ、行けばわかるよ」

と、いって、ボクは笑った。


やがてモノレールは、大井競馬場前駅のホーム上を滑るように加速していく。
「へぇ~。モノレールってこんなに振動もなくって静かなんだね」
マレンは、少しだけ影の色が濃くなってきた東京の街並みを見つめ、そうつぶやく。
「だって車輪ついてないからね。知ってた? モノレールって宙に浮いて走ってるんだよ」
と、ボクは真顔でいった。
「えぇっ? そうなの?」
と、マレンが瞳を輝かせながら驚くと、ボクは、また笑う。
「そんなわけないじゃん。それはリニアだし」
そうからかわれて、また膨らみ始めたマレンの横顔を見つめ、ボクはそっとつぶやいた。
「川澄に見せたいもの、――それはね。ボクが子供の頃、一番好きだった『色』だよ」

――幼い頃は、そりゃあ車酔いがひどいもんだった。

雨の日に海外出張から帰ってくる父親を迎えに行くときなどは特に悲惨で、首都高湾岸線を羽田空港へ向かう車中、ボクはほとんど言葉を失い、助手席のウインドウを少しだけ開けて深い深呼吸と生あくびを何度も繰り返していた。それでも羽田空港は幼い頃からとても好きな場所のひとつだ。国際空港が成田へ移ったいまでもそれは変わらない。


さっきからマレンはずっと双眼鏡を覗いたまま、遮るもののない乾いた潮風にその長い黒髪を揺らし続ける。金色に染まる夕暮れの世界のなかに、マレンが溶けてゆく後ろ姿をボクはずっと見つめていた。

ボクらが住む街よりも遥かに西の彼方へと、ようやく夕陽が沈みかけた頃には、羽田空港の展望デッキから見渡すこの広大な滑走路も、きっと鮮やかな光のガーデンに変わっているのだろう。夕暮れの滑走路に広がる、青、緑、そして赤い誘導ランプが織りなす光たちのイルミネーション。――ボクが子どもの頃、一番好きだったこの風景を、どうしてもマレンに見せたかったんだ。

茜色に染まったマレンの毛先は宙を舞い、まるでそこだけ彼女の意思とは無関係に、暮れゆく夕空をミッドナイトブルーに染め始めた夜風と遊ぶようにしながら躍(おど)り続けている。

ボクらが想像しているよりも遥かに短い間隔で、何機もの飛行機が滑走路から飛び立っていく。幼い頃は、空へと舞い上がり、上空で様々な方向へと旋回しながら瞬く間に小さくなってゆくその機影を見送っては、見知らぬ国への憧憬(じょうけい)を抱き続けていたものだ。
垂直尾翼に、見たことのない航空会社のマークを見つけるたび、幼いボクは胸をときめかせながら想像していたんだ。
「あの飛行機はどこへ行くのだろうか」と。――

光に彩られた滑走路の上で、離陸前のジャンボ旅客機は出力を上げてゆく。主翼下のエンジンのタービン音が最大音域に達すると、巨体は一気に急加速しながら、幼い頃に抱いていた見知らぬ国への小さな憧れを、その両翼に携えながら次々と空の彼方へと消えていった。


マレンは、夜風に言葉を吹きかけるようにつぶやく。
「パルはさぁ、飛行機に乗ったことあるの」
「小学校のときに、何度かあったな」
ボクが上空を見上げながらそう答えると、
「うそぉ、いいなぁ」
と、マレンはちょっとだけ羨ましそうな顔をした。

ボクの記憶をずっと遡っていって、映像として思い出せる最初の記憶。――
それは「上空から富士山頂を眺めていた」ときのものだろう。話によれば、ボクが3歳の頃、家族で長崎へ旅行した機中から見たものらしいのだが、そのときの光景だけは、山頂を覆っていた雪色までもが、いまでも鮮明にボクの心のなかに焼きついているんだ。それ以外には、幼い頃の映像としての記憶というものはほとんど残されていない。


ボクは、展望デッキのフェンスに寄りかかるマレンを見つめた。
(最近のマレンはさらに大人びた気がする。まぁ、ボクの記憶のなかに、はじめて登場する小学校4年くらいの彼女と比べたら当然のことかもしれない。だけど、あのショートヘアの女の子がこれほどまでに変わるとは正直思ってもいなかった。彼女はクラスのほかの女子たちに比べても、遥かに大人びたキレイな顔立ちをしていると思う。当然そんなこと、本人の前でいった事もないし、恥ずかしくってこれからもいわないんだろうけど)

彼女を大人びて見せている理由、――それは、やはりマレンの上唇の左脇にある小さなほくろがそうさせているんだろう。彼女はそれをすごく嫌だというけれど、クリスタルのように大きく艶やかに光り輝くセーブルカラーの瞳よりも、そのほくろがあることでマレンはとても大人びた顔立ちを得ているんだ。
マレンと昼に竹下通りを歩いていて、改めて感じたのだ。普段、学校にいるときはあまり気づかないのだが、多くの人々が行き交う都会の雑踏のなかで、彼女はひときわ輝いているように思えた。

――ボクはときどき、マレンのことをからかう。付き合った当初、授業中、彼女から、

「ボクのことをどう呼んで欲しい?」

と、メッセージで送られてきて、

「渋谷の『パルコ』が好きだからパルって呼んで」

なんて、別に本気で答えたわけじゃなかったけど、最近は2人でいるときだけボクのことを「パル」とか「パルさん」と呼ぶようになった。たまに「カミュ」ともまだ呼んでいるような気もするけどね。

そういえば、先月の終わり頃、別になんの理由もなかったのだけど、付き合ってすぐ冗談でマレンに「別れよう」といった事がある。
「なんで」
そう訊き返しながら、マレンの大きな瞳は長いまつ毛が閉じられる直前に、一瞬だけ憂いで翳(かげ)った気がした。でも、しばらくしてから、
「わかった」
と、一言だけいい残して彼女は去っていった。そのときボクは、「冗談だよ」と、彼女にいえなかった。どうしていえなかったのかは、いまでもわからない。

翌日になって、ボクは大野スミカにものすごく怒られた。昨夜、スミカの家にマレンから電話がかかってきたらしいんだけど、なにも言葉を発することなく、ただひたすら受話器越しに「ずっと泣いていた」のだと、スミカはいった。

そして、こう付け加えたんだ。
「シーナ君たちはもう、正式に付き合ってるんだからね。マレンを泣かせたりしちゃダメじゃん」
ボクには付き合うってことの意味がいまだにどういうものなのか、あまりよくわかってはいない。そんなにも別れが悲しいほどに、ボクらはなにかを共有していたというのだろうか? でも、すごく悪いことをしてしまったのだという想いに、なんだか胸が絞めつけられた。そして、あのとき「冗談だよ」と、すぐマレンにいえなかったことを、あとになってから悔やんだんだ。――


日暮れとともに、だんだんと無数に輝く光彩の粒が滑走路上を彩ってゆく。マレンは灯火が誘導路に描き出すいくつもの光のラインを見つめながら東京湾の潮風に、その長い黒髪を躍らせ続ける。

そういえば、――マレンと同じスイミングスクールに通っていた小学校の頃、ウチの母親から彼女のお父さんは「海外に勤務している」のだと聞かされていたような気がする。考えてみれば、たしかにプールへの送迎で彼女のお父さんの姿を見たことは一度もなかった。
ボクは、背中でフェンスにもたれながら、マレンの横顔に訊ねた。
「川澄のお父さんって、まだ海外とかにいるのか」
ほんの一瞬だけ彼女の大きな瞳に、かつてボクが彼女に「別れよう」っていった時と同じ、憂いの翳が漂った気がした。

東京湾を取り囲む臨海エリアの街灯りが、彼女の後ろで寂しげに揺れる。海はほとんど漆黒色に染まっていたが、陸地に近い僅かな波間にだけ、その街灯りを「キラキラ」と漂わせていた。
「――いないよ」
と、マレンは少し時間を置いてから小さくつぶやいた。ボクは、それがどういう意味なのかを訊くことはできなかったし、なんとなく訊くべきではないんだろうと思った。
「ほら、ここ、……」
そういって、彼女は自分の左目尻のあたりを人差し指で差した。
「むかしね、酔っ払ったお父さんに、投げられてぶつけたときの傷なんだ」
そう言葉を続けながら、ボクを見つめて彼女は少しだけ寂しげに微笑んだ。ボクはゆっくりと彼女が指で差したそのあたりへと顔を近づけてみる。

彼女を斜め横から照らす街明かりの陰影のなかで、そこだけがほんの小さく窪(くぼ)んでいるのが、なんとなくわかった。間近で見つめた彼女の瞳のなかには、まだ微かに哀しみの色が滲んでいる。果たしてボクはいま、彼女にどんな顔をしてるんだろう。

潮風がまたマレンの長い髪を夜空へと舞い上げた。
「あたしもね、飛行機に乗ってどこかに行きたいなぁ。いつかキレイな無人島とかで暮らしてみたいんだ。パルは? どこ行きたいの?」
と、マレンは夜風のほうへ問いかける。
「えっ! まぁハワイかカリフォルニアに行きたい。……かな」
そうボクが答えると、マレンはボクのほうを向きなおし、
「じゃぁ、あたしもそこに行きたいな」
と、微笑んだ。

ボクは、いつものようにその答えをからかったりはしなかった。
いや、――どうしてもできなかったんだ。
「じゃあさぁ。いつか一緒に行こうよ」
ボクは、静かにそうつぶやいた。
「ホントに? パル、絶対だよ! 絶対に行こうね」
と、マレンは口元に嬉しさを湛(たた)えながら、大きな瞳でボクを見つめ続けた。
「うん。絶対に連れて行くから」
それが本心だったのか、それとも単に言葉だけのものだったのかは、自分でもよくわからなかった。でも、彼女の瞳のなかに、さっきまでの憂いが消えているのを知ったとき、
マレンに対するなにか「愛しさ」のようなものを、たしかにボクは感じたのだ。

さすがにボクらの年代で恋だとか愛だとかっていう言葉を使うのには無理がある。でもなんとなく、どんな気持ちになるのかわかるような気もする。


恋とは、現実の世界で誰かを想う気持ち。
愛とは、きっと2人きりで空想のような世界を、どこまでも一緒に生きていけそうな気がする一瞬のエネルギー、――

もしボクが、いまここでマレンに抱いた気持ちが、愛という感情に近いとするならば、マレンとこのまま飛行機に飛び乗って、どこかへ行こうと思えばおそらく本当に行けたのかもしれない。もし、ボクたちがパスポートとチケットさえ持っていたのなら、きっと本当にどこへでも一緒に行けたんだと思う。なんでいきなりこんな気持ちになったのかなんてわからない。
けれどボクには、明日からの現実よりも、いま、こうして目の前で笑うマレンのほうが遥かに大切に思えていたんだ。

いまのマレンが、きっと、ものすごく愛しかったんだ。――

「ホントだぁ。すごくキレイだね。パル」
滑走路を彩る誘導ランプの光を、大きな瞳のなかに映し出しながらマレンは笑う。
「どうしてもね。川澄に見せたかったんだ。オレがむかし一番好きだったこの景色をさ。
どうしても川澄と2人で見たかったんだよ」
マレンの横顔に笑顔が溢(あふ)れた。
「もしね、ホントはイヤだけどさぁ。もし、いつかパルがひとりで外国とかに行って、日本へ戻ってきたときにはさぁ、……アタシがここでずっとパルのこと待ってるからね。だけど、――」
そういって、嬉しそうに振り返ったマレンの瞳のなかに、微笑むボクが映っていた。

マレンは静かに言葉を続けた。

「だけど、もしパルが外国に行くときは、ホントはアタシも一緒に連れていって欲しいんだからね」

ボクらのあいだを潮風が緩やかに通り過ぎていった。

「いいよ」

そういうと、ボクは笑って頷いた。


(過去の思い出と、未来の希望は、いまのボクらに大したものを与えてくれやしない。

ボクの人生における唯一の現実は、
『この瞬間、ここの場所にマレンと2人でいるということ』
そう。もしボクらがこの場所で同じ思いをひとつにできるのならば、たとえボクたちが何歳であろうとも、そんなことなどは関係なく、過去も未来も関係なく、本当にすぐにでもこの空を飛び越えていけるような気がしたんだよ)

ふと気づけば、いくつもの投光器が放つすさまじいほどの光源によって、ボクらがいる展望デッキは昼間のように明るく照らし出されていた。
「もう帰ろうか」
ボクはマレンの横顔にそう告げた。飛行機を見送る人々が、時折大きな歓声を上げる展望デッキを、ボクらは滑走路を背にし、ゆっくりと歩き出した。
「パル、あたしの夢はね、早く結婚してね。ベランダに乾した布団を『パンパン』叩くことなんだよ」
と、いって、マレンはつま先を見つめながら微笑む。
【一緒に無人島で暮らすのに?】
思わずそういいそうになったけど、ボクはその言葉を飲み込んだ。
「男ってさぁ。20歳で結婚できるんだっけ」
ボクは、そう訊ねる。
「違うよ18だよ。あたしはねぇ、次の誕生日がきたらあと2年後。パルは、あと5年も先だね」

投光器の眩い光を背中に受けて歩き続けるボクらの影が、前方に巨大なアルファベットの【M】の字を描き出しているのは、きっと知らぬ間に、マレンがボクの左手を握っていたからだ。

ボクは彼女と手をつないだまま、離れたりくっついたりしながら、その巨大な【M】の字を、アコーディオンのように大きく広げたり縮めたりして笑った。
眩い光のなかに飲み込まれたボクらとはまるで違う生き物のようにして、その大きな影は、いつまでもボクらの前で楽しそうに演奏を続けていた。――

地元へ帰る東海道線は、休日のせいか思いのほか空いていた。
ボクたちは横座りシートに並んで座っている。ヘッドフォンのLとRをそれぞれ片方づつ耳にあて、ふたりの前髪が重なるくらい寄り添いながら、そこから流れてくる曲を静かに聴いていた。
いま、ボクらのあいだに流れているのは、さっきカセットを入れ替えたばかりの浜田省吾のアルバム『愛の世代の前に』、――

列車が多摩川を渡る少し手前で3曲目の「愛という名のもとに」が始まる。さっきからずっとつないだままのボクの右掌をマレンがほんの少しだけ強く握り締めたような気がした。

ボクは右手の小指をいったん静かに浮かせる。

そして、ボクの掌を握り続ける彼女の左手の甲を上から数回、そっと優しく叩くと、マレンはボクの肩に長い黒髪を柔らかく寄り添わせてきた。
ボクは、微かにマレンの髪に残る真夏の太陽の香りに、そっと小さくキスをした――


【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】




【2012.04.10 記事原文】

浜田省吾「愛という名のもとに」。
このVer.はバラードベスト『Sand Castle』でしょうかね?
ちなみに・・・このアルバムは名盤です☆





愛という名のもとに (1983) - Sand Castle愛という名のもとに - 浜田省吾
7thアルバム『愛の世代の前に』 1981年

関連記事

Maybe Tonight - Earl Klugh 【インストルメンタルな名曲】

【インストルメンタルな名曲】


Maybe Tonight





ボク自身、あまりジャズ&フュージョン系の
インストルメンタル作品に関する知識はない。

唯一、ハマったのはアコースティックギターの名手である
アール・クルー氏のサウンドくらいなものだろう。

彼の名前を一躍有名にさせたのが、ボブ・ジェームス氏と共演しグラミー賞を受賞した
1979年発表のアルバム『One on One』。無論、ボクが初めてアール・クルー氏が奏でる
ギターの音色を聴いた作品でもある。

特に、あまりにも有名なオープニングトラック「Kari」は、
アール・クルー氏の卓越したギターセンスを如何なく発揮した名曲だろうと思う。
ボブ・ジェームス氏のエレピの音は、はっきりいって別に無くても
成立してるような気もする。


さて、アール・クルー氏作品といえば、
天気予報系のBGMでやたら使用されていることでも有名である。
たしかに、風景の移ろいを淡い音色で表現する彼のサウンドは、
穏やかに晴れ渡る空のようでもあり、琥珀に染まる海を漂う夕風のようでもある。

もう間もなく、夏の夕空が街の上に涼風をそよがす時間が訪れる。
アルコールを片手に、「Maybe Tonight」でも聴きながら、
心に清涼感を染み渡らせてみるのも、この季節、なかなかに粋な過ごし方だろう。




メイビー・トゥナイト - Sudden Burst of EnergyMaybe Tonight - アール・クルー
アルバム『Sudden Burst of Energy』 1996年

関連記事

マイホームタウン - 浜田省吾 【ロックの名曲】

【邦楽ロックの名曲】


マイホームタウン






1983年3月9日(水)

最低気温は、きっと0度近かったと思う。

ガラス窓の向こう側に広がる空はどこまでも晴れ渡っている。アルミフレームの隙間から微かに響く乾いた北風の音色を聴きながらボクは布団に包まり、眩い陽射しに思わず目を細めた。

おととい、両手であたまを抱え込みながら教壇の手前でうずくまる担任教師を、ボクは思いきり上から蹴り続けた。やがて担任教師は救急車で運ばれていき、ボクは校長室へと連れていかれた。そして、その場で翌日からの自宅待機をいい渡されたのだ。

家に戻ると、すでに学校から「自宅待機」ではなく、「出席停止処分になるかもしれない」との報告があったようだ。母親は散々、怒鳴り散らしていたけど、ボクは気にしていなかった。ボクの暴力行為だけを非難し、慢性的な教師たちの暴力行為を「体罰」と称して学校側が容認する以上、いずれ誰かが報復しなければならなかったのだ。――

昨夜、現役の女子大生たちがラジオパーソナリティを勤めるラジオの深夜番組を流しながら、ボクは澄んだ夜空をベッドの上から見上げていた。去年くらいまでは、ちゃんと雨戸を閉めていたのだが、寝る時間がだんだんと遅くなるにつれ、上空に輝く月や星々の光を眺めて眠るほうが、暗闇よりも遥かに安らげるようになっていった。

やがて、ラジオから浜田省吾の「マイホームタウン」が流れてくる。――

ボクは、去年の夏、川澄マレンと東京へ出掛けた帰りに、2人で電車のなかで聴いた浜田省吾のアルバム『愛の世代の前に』だけは、中1の頃、さんざん聴いていたけど、そのアルバム以外の楽曲は、ほとんど知らなかった。だから、この「マイホームタウン」も、昨夜はじめて聴いたんだ。

アルバム『愛の世代の前に』のオープニングを飾るタイトルトラック「愛の世代の前に」も、かなりハードなロックナンバーだったけど、この「マイホームタウン」で弾かれている、ミディアムテンポなバッキングのリフが、なんだかものすごく印象に残った。マイナーコードなんだけど、ものすごい力強い信念みたいなものがこの曲には込められているような気がしたんだ――

あのとき、ボクにはマレンの声だけしか聞こえなかった。きっと、ほかにもいろんな音が教室のなかには存在していたはずなのに、「パル!」と叫ぶ彼女の涙声しかボクには聞こえなかったんだ。きっと、心のどこかで「彼女のことを泣かせてはならない」という意識が働いたのかもしれない。

――うしろ向きで教壇にもたれかかる担任教師の剥きだされた後頭部付近を、ひたすら上から何度も強く踏みつけた。そのたびにスチール製の教壇に〝ゴツゴツ〟と、担任が額を打ちつける微(かす)かな振動が、鈍い響きとともに上履きの底へと伝わった。


誰かが背後から止めに入ってきたがその制止を強引に振りほどき、両手であたまを抱え込みながらうずくまる担任教師を、ボクはおもいきり蹴り続けていた。
きっと、そこに明確な殺意などはなかったけれど、「別にこんなヤツ死んでもいいな」って、少しだけ思っていたのかもしれない。

【パル!】
なんとなく遠くのほうで、そういわれたような気がした。

「パル!」
川澄マレンの叫び声をものすごく近くで感じた瞬間、ボクは我に返って一気に動けなくなった。ほかのヤツの声などはまったく聞こえなかったけれど、マレンの泣き叫ぶ声だけは、そのときはっきりとボクには聞こえたんだ。



1983年3月12日(土)

ボクが学校に行っていないあいだに、様々な出来事があったようだ。
PTA保護者会の席で、今回の事件が議題に取り上げられたらしい。どうやらクラスメイトの母親が、この担任教師の暴力を非難し始めたことで、ボクのほうの暴力事件はうやむやとなり、恒常化されたこの中学における教師側の暴力行為のほうが問題視されたのだという。
あとで知ったことだが、ボクが「キレる」きっかけとなった、担任に叩かれた女子生徒の母親がどうやらPTAの御偉いさんだったみたいだ。

やがてクラス内でアンケート調査が実施され、担任の暴力行為が確実に存在していたという事実が明らかとなった。同時にクラスのみんなは、ボクのことを相当に擁護してくれていたみたいだ。

こうして、400字詰め原稿用紙3枚程度の反省文を書くことを条件に、ボクは数日間の自宅謹慎を終えた。

――朝、久しぶりに教室に入ると、クラスのヤツらが笑顔でボクのことを出迎えてくれた。
マレンは普段、学校でそんなことなど絶対しなかったのに、このときだけはみんなの前でボクにおもいきり抱きついてきた。ボクも照れながら、彼女の背中をほんの少しだけ抱きしめた。みんな暴力から解放されたことを本当に心から喜んでいたんだ。担任の具合のことなど誰ひとりとして気にもしていなかった。

「自宅療養中」ということで、結局、その担任教師は中2の終業式の日になっても学校へは来なかった。そしてボクらが中学3年に進級してからも、その男が新たに学級担任を受け持つことはなかった。



【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】


【2012.04.09 記事原文】

当時、川島なお美などがラジオパーソナリティを勤めていた
文化放送の超人気番組「ミスDJリクエストパレード」。


たまたま番組で、この浜田省吾「MY HOMETOWN」が流れた。
それまでは、爽やかロックな印象しかなかったハマショウであったが、
この曲は、そんなイメージとは大きく異なるロックテイストのリフが
クールなメッセージソング。


ちなみに。。。
この曲を聴いてから、ハマショウの過去のアルバムを全部視聴してみた。
どうやら、ロックテイストが強まったのは、前作7thアルバムの
「愛の世代の前に」あたりから。


まぁ、ハマショウってバラードとロックテイストのバランスが
ちょうど五分五分くらいのアーティストなのであるが、
個人的には、バラードソングのほうが好きな歌が多いかな?


「愛の世代の前に」と「PROMISED LAND」の2枚は、
ジャパニーズロッカーを代表するハマショウお薦めの傑作アルバムですね。
※J・BOYはアルバム的には…です。。。





マイ ホーム タウン(1982) - PROMISED LAND ~ 約束の地マイホームタウン - 浜田省吾
8thアルバム『PROMISED LAND ~約束の地』 1982年

関連記事

【Re-Edit】 Jump - Van Halen 【80年代ロック】

【80年代洋楽ロックの名曲】


Jump





I selected "Jump"
from 6th album "1984" of Van Halen released in 1984.



1984年の洋楽ヒットチャートから


しっかし、
いつ聴いてもこのイントロって、
鳥肌が立ちますなぁ。。。

まぁ、ボクと同世代の方々も、きっと同様だろうかと存じます。


それまで、いまいちパッとしなかったヴァン・ヘイレンを、
一躍メジャーバンドへ押し上げたエレクトリックポップナンバー
「Jump」ですね☆ ※さすがにロックではありません・・・

彼らにとって、初にして唯一、ビルボードのシングルチャートで
No.1ヒットとなったナンバーですが...
この曲は、なんてったってイントロ2小節のインパクトに尽きるでしょうね。


エディが奏でるシンセの音色、突き抜けるデイヴの高音シャウト、
そしてエディの兄貴がフィルインで叩くタムまわし。。。
ぶっちゃけ、この3人の音しかないんでしょうけど、
ものすごいサウンドクオリティを感じるわけですね。

楽曲全体としては、リズム音がすんごく前めに来てるのが良いですわね。
この心地よいドラムサウンドが、いわばこの曲の生命線なんだろうなって思うのです。
別に、間奏のエディのソロなんてどうでもいい・・・ってわけじゃないですが、
そんな重要ではないだろうな。と思います(笑

いずれにせよ、80年代を象徴するナンバーなのは間違いありませんね♪





【2012.03.25 記事原文】

日本が最も元気だった80年代中期にリリースされた
大御所たちのアルバムから楽曲をチョイスしていきましょう。


それまで、ややロックマニア向けの作品が多かったが、
このキャッチーなイントロであらゆる世代にその名を知らしめた
1984年リリースアルバム『1984』からヴァン・ヘイレンの「Jump」♪


今、日本のチャートでも新作『A Different Kind of Truth』
が大ヒットしてますね。。。


今度聴いてみようかな?






Jump - 1984Jump - ヴァン・ヘイレン
6thアルバム『1984』 1984年

関連記事

Pink Houses - John Mellencamp 【80年代ロック】

【80年代洋楽ロックの名曲】


Pink Houses





I selected "Pink Houses"
from 7th album "Uh-huh" of John Mellencamp released in 1983.



1984年の洋楽ヒットチャートから


さて。
ボクが聴いてた中学生当時は、まだ「ジョン・クーガー」と呼ばれていた
ジョン・メレンキャンプ氏なのではございますケド・・・

正直、ボクが作品として持っていたのは、
彼の代表作でもある1982年リリースの6thアルバム『American Fool』のみでして・・・
それ以前に関しては、まったく知らず、それ以降の作品については、
MTV等々でPVを観たときに「あぁ~彼!」と思う程度でした。

あれから30余年・・・・
ん?おいおい!ホントかよぉ~っって気もしますが、
そう。すっかり永い歳月が過ぎてしまったのですね。

ジョン氏の楽曲は、基本的にスタンダード&クラシカルなR&Rがベースなのですが、
30年経て、改めて聴いてみると、やはりしっくり馴染みます。
ボクが「追いついた」ってわけじゃないですけど、
音楽に古いだの新しいだのって概念がないことをつくづく実感します。

音楽には、「いい作品」か「まぁどうでもいい作品」の
2種類しかないのでしょう。そこに時間的な定義などは不必要なんですね☆


では、ジョン氏が1983年にリリースした7thアルバム『Uh-huh』から、
ビルボードのシングルチャートで最高8位を獲得した
ミディアムスローなフォーク・ロック「Pink Houses」をチョイス☆





Pink Houses - The Best That I Could Do (1978 - 1988)

Pink Houses - ジョン・メレンキャンプ
7thアルバム『Uh-huh』 1983年


関連記事

Kiss A Me Ooo - Jeff Harrington 【70年代AOR】

【70年代洋楽AORの名曲】


Kiss A Me Ooo





いつまでもこうして坐って居たい
新しい驚きと悲しみが静かに沈んでゆくのを聞きながら
神を信じないで神のにおいに甘えながら
はるかな国の街路樹の葉を拾ったりしながら
過去と未来の幻燈を浴びながら
青い海の上の柔らかなソファを信じながら
そして なによりも
限りなく自分を愛しながら
いつまでもこうしてひっそり坐って居たい


詩人、谷川俊太郎氏の「静かな雨の夜に」――
そもそも「詩的表現」という言葉があるように、詩というものは、
比喩、言い回しにおける美的表現が最優先されるのであり、
結果、読み手にいくつもの疑問を抱かせるものです。

そこに物語性などは一切存在せず、
多少の韻律を準拠し、一瞬の感情を数行に綴る。――
まぁ、そういった感覚的表現手法のひとつとでもいえましょうか?


さて、接続助詞である「~ながら」を連発しまくるこの詩が、
何をいわんとしているのか? と問われれば、
「いつまでもこうして坐って居たい」
ということですわね。

さて、ボクであれば、この詩をどう書くだろうか???
――おそらく、もっと韻の美しさを追求するかもしれませんなぁ。
つうか、「静かな雨の夜に」ってタイトルだとすれば、
もうちょい「雨」の話を入れたいもんですね。


たとえば……

いつまでもこうしてここに坐って居たい
そほふる雨の香りのなかに新たなる驚きと
清らかな悲しみが静かに沈んでゆくのを聞きながら
神を信じず神のにおいに甘えながら
はるかな国の街路樹が舞い散らす運命の影を拾ったりしながら
過去と未来の幻燈を心のなかに浴びながら
青い海に漂うソファのやわらぎを信じながら
そして なによりも
闇色の雨音に抱かれるそんな自分を愛してやりながら
いつまでもこうしてひっそり坐って居たい

みたいな・・・(笑





Kiss A Me Ooo - ジェフ・ハリントン
2ndアルバム『Jeff Harrington』 1977年




関連記事

Always On The Run - Lenny Kravitz 【90年代ロック】

【90年代洋楽ロックの名曲】


Always On The Run





ボクが90年代以降にハマったアーティストというのは、
実際、さほど多くはないのですけどね。

ことROCKというジャンルでいうならば、
レニー・クラヴィッツ氏くらいしかいなかったように思えますなぁ。

それまでのロックの常識を覆し、ドレッド・ヘアを振り回しながら
ギターを弾いてる姿にはビックリしましたわねぇ。。。
シン・リジィのフィル・ライノットのアフロっぽいヘアも斬新でしたけどね・・・

さてさて。
80年代後半くらいから、
劇的に時代は高速系のロックへとシフトしていくんですけど、
そんな中にあって、クラヴィッツ氏はミディアム&スローの絡みつくような
ギターサウンドで成功するのですね。

そんな彼の名前を一躍有名にさせた1991年リリースの2ndアルバム
『Mama Said』 から、シングルカットされた「Always On The Run」をチョイス☆

ロックというよりは、どことなくスライ&ザ・ファミリー・ストーンを
彷彿とさせるようなファンク系のリズムギターがツインで絡むナンバーですが、
まぁ、なかなかにイカしてます☆





オールウェイズ・オン・ザ・ラン - Mama SaidAlways On The Run - レニー・クラヴィッツ 
2ndアルバム『Mama Said』 1991年






関連記事

Come On - The Rolling Stones 【60年代ロック】

【60年代洋楽ロックの名曲】


Come On





さて・・・
「ローリング・ストーンズのデビューシングル」っていわれても、
ボクらみたいに、さほど彼らの音楽にノメり込まなかった人たちからすれば、
まったくわからない訳なのですね。

正解は、チャック・ベリー氏のナンバーをカヴァーした「Come On」☆
さらに2ndシングルは、ビートルズのカヴァー「I Wanna Be Your Man」・・・

ちなみに...
彼ら自身がオリジナルの楽曲をライティングし始めるのは、
もっと先のことなのですわねぇ~。
まぁ。。。誰にでも触れて欲しくない過去なんてのはあるもんです!

そんなこんなで、1963年にリリースされた記念すべき
1stシングル「Come On」をどうぞ☆




Come On - Big Hits (High Tide and Green Grass) [UK]Come On - ローリング・ストーンズ
1stコンピレーション・アルバム
『Big Hits (High Tide and Green Grass)』 1966年

関連記事

A Song for You - The Carpenters 【70年代バラード】

【70年代洋楽バラードの名曲】


A Song for You





さて。
こないだ書いたサイモン&ガーファンクルの「Bridge Over Troubled Water
のなかでも、少し触れておりますけども・・・

レオン・ラッセルの代表的バラードナンバー「ソング・フォー・ユー(A Song For You)」
は、やはりそのメロディの秀逸さから、数多くのアーティストに
カヴァーされてる訳ですね☆

まぁ、原曲があまりにシンプルなアレンジなんで、
ちょい音を足せば、オリジナルよりもゴージャスに聴こえてしまうんですが・・・
一番有名なカヴァーは、やっぱカーペンターズが1972年にリリースした
4thアルバムのタイトルにも冠された『A Song for You』でしょう♪

こちらは、すごくジャジーでデカダンスなアレンジでございまして、
間奏のサックスなんて、すっかりオリジナルのことなど忘れたかのように、
実に気持ちよく鳴り響いておるのですなぁ。

まぁ、この曲を聴いてて思うのは、
やっぱヘレンさんの歌声ってのは、ハイトーン系向きではないっつうことでしょう。
この程度の音階を、リラックスしながら歌っていただくのが、
最も適しているんだろうなって思いますですね☆

――どうしてもサビのエンドフレーズが、あたまのなかで
小林明子 さんの「I'm just a woman fall in love~♪」
に変化してしまうんですケド・・・


まぁ、それはさておき。
でも・・・なんで、このアルバム収録曲にして、
彼女たちのキャリアを代表する大ヒットナンバーとなった
Top of the World(トップ・オブ・ザ・ワールド)
がアルバムタイトルにならなかったのでしょうかね?





A Song for You - ア・ソング・フォー・ユー

A Song for You - カーペンターズ
4thアルバム『A Song for You』 1972年

関連記事

Rock N Roll Damnation - AC/DC 【70年代ロック】

【70年代洋楽ロックの名曲】


Rock N Roll Damnation





ふと気付けば・・・
すっかりと、どっぶり本格的な夏を迎えておりますねぇ。。。
7月に入って早々の、凄まじい猛暑続きの日々に比べれば、
幾分、暑さも和らいでおるのかなぁ?とは思いますけども。。。


さて!
ボクも最近、めっきり週一ペースにブログ更新頻度も落ちておるのですけど、
まぁ、夏が終わるまではこんな感じでノンビリやっていこうかな?
と思っております。

と、まぁそんな感じで!

まずは、1978年にリリースされたAC/DCの5thアルバム『Powerage』から!
オープニングトラック「Rock N Roll Damnation」をチョイス☆
「ど」が付くくらいシンプルなリフですけどもね。。。
な~んか、カラダが自然と動いてしまうのですわぁ~♪
なかなかウエストコーストっぽいノリで気持ち良いナンバーでござんす☆




Rock 'N' Roll Damnation - PowerageRock N Roll Damnation - AC/DC 
5thアルバム『Powerage』 1978年

関連記事

Bridge Over Troubled Water - Simon & Garfunkel 【70年代バラード】

【70年代洋楽バラードの名曲】


Bridge Over Troubled Water






1983年7月15日(金)

さっきからボクは、川澄マレンの小刻みに震える背中を、左掌でそっと包み込みながら、大きな声でずっと泣き続ける彼女がいつか泣き止むのをただ黙って待っている。

――古いケヤキの老樹に囲まれた小さな神社の真新しい賽銭箱の脇にボクたちは2人並んで座っていた。磯の香りが僅かばかり含まれたこの街の風は、ボクらが生まれたときからなにも変わっていない。この湘南の海を身近に感じながら、いままで成長してきた彼女を最後に癒すことができるのも、きっとこの潮風だけなんだろうな。と思う。
しばらくすると「スーッ」と波が引いていくように彼女の気持ちも少しだけ落ち着いてきたようだった。
「――ごめんね、カミュちゃん。さっきは恥ずかしかったでしょ?」

マレンはピンク色のハンカチで鼻を押さえながらそういった。
「なんで? 別に恥ずかしくなかったけどね」
ボクはマレンを見つめた。
「アタシ、なんだか毎日泣いてる気がするよ。もう泣くのヤなんだけど……夜になるとね。考えちゃうんだ。嫌なことばかり」
きっと、まだ完全には払拭しきれない哀しみを心の内側に抱え込んだまま、マレンはそうつぶやいた。

真夏の陽射しが、かろうじて日陰になっているボクらの足元の石畳にまで迫ってきていた。この場所は相変わらず緩やかで優しい特別な風に包まれている。ケヤキの緑がザワめくたびに彼女の心が、少しづつ穏やかになっていくのがわかる。木々の隙間からは無数の光が煌(きらめ)きながらこぼれ落ちている。

この神社に祭られているものがなんなのかは知らないけれど、その木漏れ日が描き出す神々しいオーロラのような帯状の光には、たしかに「神の力」が宿されているような気がした。
この街の潮風は、彼女の心を癒してくれるかもしれない。そしてこの木々の隙間から静かにこぼれ落ちる光は、彼女の心を穏やかにさせてくれるかもしれない。でも、いまの彼女が唯一、感触としてすがりつけるもの、――彼女が遠慮せずに思いきりしがみつけるもの。それはきっと、いまのマレンが長い髪を寄り添わせているこのボクだけなんだろう。

「この場所って、一緒にきたことあったっけ?」
と、ボクはその白いオーロラのように揺らぐ木漏れ日を見つめ、ずっとボクの左肩に長い黒髪をそよがせながらあたまを預けているマレンに聞いた。
「ううん。きたことないよ」
マレンは、小さくつぶやく。
「ここにはさぁ。去年よくひとりできてたんだよね。今年くるのは、もしかしたら今日がはじめてかもしれないけどね」
と、ボクは彼女の艶やかな髪を横目で見ながらいった。
「誰もいないし、すごく静かなとこだね」
マレンは、そういうと小さく微笑んだ。
「シャーッ」と重く低く、地面の落葉をさらってゆく風の音は、やがて上空へと舞い上がり、頭上を蔽(おお)い尽くす樹々の緑をゆっくりと揺らしていった。

やがてボクは、脇に置いてあったカバンからウォークマンを取り出す。そのなかには、洋楽バラードのお気に入りナンバーばかりを集めたカセットテープが入っていた。

――ちなみに、これまでボクが聴いてきたなかでメロディがものすごく印象に残っているバラードソングを挙げるならば、シンプルなピアノ演奏と儚いホルンの音色のみで壮絶なほどの悲壮感を漂わせながら愛を綴ったレオン・ラッセルの代表的ナンバー「ソング・フォー・ユー(A Song For You)」と、そして、――

「この曲をさぁ、はじめて聴いたのって、たぶん小学校の低学年くらいだったと思うんだけどね」

ボクはヘッドフォンの片側を耳に挿し、数曲早送りしながらそういった。やがて、探していたその曲が始まる手前で停止ボタンを押すと、マレンにウォークマンを差し出した。

「川澄はさぁ、サイモン&ガーファンクルって知ってる? 『サウンド・オブ・サイレンス(The Sound of Silence)』とか歌ってた……」

ボクがそう訊くと、

「えぇ? う~ん、ちょっと聴いてみないとわかんないなぁ。さすがにタイトルだけじゃあねぇ」

と、笑ってウォークマンを受け取った。

「そのサイモン&ガーファンクルが歌ってるんだけどね。オレがいままで聴いてきた曲のなかで一番メロディがキレイだなって思ったのが、『明日に架ける橋(Bridge Over Troubled Water)』って歌なんだよ」

ボクはそういって、ウィークマンのほうへ軽くアゴを向けると、マレンはヘッドフォンを両耳に挿し、泣き腫らした大きな瞳でボクのことを見つめた。
マレンが再生ボタンを押そうとする直前、ボクは彼女の右手を握り締め、そっとささやいた。
「この曲はね、『もし独りきりで絶望しそうになったとしても、ボクがキミのそばにいるから。キミにどんな困難があろうとも、その上に架かる橋にボクがなるよ』っていうような歌みたいだね。――オレもさぁ、……そうなりたいと思ってる」


「カミュちゃん……」

マレンは、ボクの左肩に思いきりしがみついてきた。ボクは、左手で彼女の背中を柔らかく抱き寄せる。そしてマレンの右掌に握られていたウィークマンの再生ボタンを押した。

見上げると樹々の隙間から、まるで「生命の輝き」のような、淡い眩光を煌かせた木漏れ日がこぼれ落ち、頭上の青葉を活き活きと色づかせていた。その穏やかなシルクのような光は、ボクの肩に寄り添ったまま、じっと動かず『明日に架ける橋』を聴いているマレンのまわりでも「ユラユラ」と優しく揺らめき続けている。――


「去年、ミツキたちと一緒にドリームランドに行ったじゃん。結局、あの日にオレたちって付き合ったんでしょ」

そういって、ボクはマレンに微笑みかける。
「あぁ、アタシが遊園地の帰りに、カミュちゃんに告白したんだからねぇ」
と、いって、ボクの左肩にもたれかかりながら、マレンは少し笑った。
「じゃぁさ。はじめてオレに『メモ』くれたのって覚えてる?」
と、ボクは、優しく問いかけた。

「メモ? アタシがカミュちゃんに書いたメモって事?」
と、マレンは少しだけ顔をボクのほうへ傾けながら訊いた。
「そう。川澄が最初にくれたメモをね。ちょうど1年くらい前にここで読んだんだ」
ボクは去年の夏のことを、ぼんやりと思い出していた。
「え? アタシなんて書いたんだっけ?」
マレンはボクの横顔に訊ねる。
「覚えてないの? 川澄がオレにした『はじめての質問』だよ?」
「なんだっけなぁ……えーっ! アタシなんて書いてたの?」

左肩に乗せているマレンの額に「コツン」と、ボクはあたまを軽くぶつけながらいった。
「川澄はオレのことを、こないだまでなんて呼んだでしょうねぇ?」
「えっと、……あ~っ! そういえばずっと、『パル』って呼んでたねぇ。そうだそうだ! 思い出したよ。『カミュはなんて呼ばれたい?』でしょ」
と、マレンは、ようやくいつもみたいに楽しそうに弾けながら笑った。そして、さらにボクへ問いかける。
「えっ、じゃぁさぁ、もうアタシたちって一年経っちゃったってこと?」
「いや、たしかドリームランド行ったのって7月の末だったからね。まだ丸一年は経ってないけどさ。まぁ、もうすぐ一年にはなるね」

そういってボクも笑った。
「あーっ! アタシ、そんなことすっかり忘れてたよ! でもさぁ、もうすぐ一年になるんでしょ? アタシたちが付き合ってからさぁ。だったら、ちゃんとお祝いしなきゃだね?

でも神様は、やっぱり悪いことばかりじゃなくってちゃんと、こういう嬉しい事も教えてくれるんだねぇ。アタシさぁ、お母さんのことばかり考えてて、そんな大切な日を忘れちゃうとこだった」
マレンはそういったあとで、「あっ」となにかを思い出す。そして微笑みながらボクにいった。
「そういえばカミュちゃんさぁ、『あの手紙』は、まだ読んでないでしょうね?」
「あの手紙?」
と、ボクは思わず聞き返す。
「そう! 『あの手紙』は、絶対に当日まで読んじゃダメだからね!」
マレンは笑ってそういったけれど、ボクには彼女がなんの手紙の話をしているのかがわからなかった。
(『あの手紙』? いったい、いつくれた手紙のことだろう)
でも、「それってなに?」なんていうと、また彼女がすごく哀しむような気がしたんでなにもいわずに黙っていた。するとマレンは、ボクの左肩から離れ、泣き腫らした瞳でボクを見つめながらいったんだ。
「あれはアタシ達の『予言の手紙』なんだからね」
「わかったよ。読まなきゃいいんだろ?」
「うん。絶対に……絶対に当日まで読んじゃダメだからね」
と、マレンは大きな瞳で見つめたままで、ボクにそういった。

ボクはずっと、記憶のなかでその手紙の行方を探し続けていた。ボクが彼女と出会ってからの1年間の思い出を振り返るとともに――



【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】

【2012.03.15 記事原文】

まさにアメリカを代表するバラードナンバー!
サイモン&ガーファンクルの「Bridge Over Troubled Water」をどうぞ♪

Wikiによれば・・・
アルバム『明日に架ける橋』と同時期にシングルとしてリリースされ、Billboard Hot 100で6週連続1位を獲得。年間チャートの1位に輝いた。イギリスでも3週連続で1位となる。グラミー賞では、最優秀レコード賞と最優秀楽曲賞を含む4部門を受賞。同名のアルバムも、最優秀アルバム賞と最優秀録音賞を受賞した。

とのことです☆
まさにアメリカにおける70年代の幕開けを飾った偉大なるバラードナンバー
っつうことでしょうかねぇ♪

確かに、まだ小さかったあの頃、初めて聴いたときには泣けた…
※それはウソですけどね・・・

たま~にカラオケで歌いたくなります♪






Bridge Over Troubled Water - Bridge Over Troubled Water (40th Anniversary Edition)
Bridge Over Troubled Water - サイモン&ガーファンクル
5thアルバム『Bridge over Troubled Water (明日に架ける橋)』 1970年
アルバムお薦め度「一度聴いてみたら?」


関連記事

時代遅れの恋心 - 大沢誉志幸 【バラードの名曲】

【邦楽バラードの名曲】


時代遅れの恋心





1983年7月17日(日)



夕方――
ボクらは七里ガ浜の駅のホームで別れる。
単線のこの駅のホームへ先に到着したのはボクが乗る電車のほうだった。ボクたちは、扉が閉じる直前まで、ずっとホームで手を握り合っていた。なんだかどうしてもマレンの指先を簡単には手放すことができなかった。ホントは彼女が帰る鎌倉方面の電車を「ボクが見送る」っていったんだけど、彼女は少しだけ首を横に振りながら、こういった。

「じゃぁ、先にきたほうがさぁ。その電車に乗ろうよ」って――
やがて扉は静かに閉ざされていく。
ガラスの向う側で小さく微笑みながらマレンが手を振る。霧雨を降らし続けていた雲間からようやくこぼれ落ちてきた7月の太陽は、彼女の髪を夕暮れ色に染めてゆく。そう――いつだってマレンの長い髪は海風にそよぎ、青空と踊り、暮れゆくオレンジ色の夕陽を浴びながら光輝いていたんだ。

江ノ電はゆっくりと動き出す。
ホームで手を振るマレンが最後になにかを呟いた。3つに区切られたその彼女の唇の動き――はっきりと聞こえやしなかったけれど、ボクにはなんとなくわかった。もしかしたら違うかもしれないけれど、きっと彼女はこういったんだと思う。

【アイ・ラブ・ユー】って……

ボクが同じように唇を動かそうとしたとき、ひとりホームに佇みながら右手を振っていた彼女の姿は、緩やかなカーブの向こう側へと消えていってしまった――

「もしね……アタシたちが同じ喜びを感じていけるんだとすれば、アタシはもう、ほかにはなにもいらないんだ。だからね。アタシと同じくらい、カミュちゃんが2人で一緒に暮らせることに喜びを感じてくれているのならね。アタシはどんなところで暮らしたってホントにいいんだよ。

もしそこが、たとえ宇宙だって無人島だっていいの。

お金なんていらない。親友だっていらない……

カミュちゃんがいてくれるんなら、アタシはそれだけで全然いいんだから――」

さっきマレンがいっていた言葉が、ずっとあたまから離れずにいた。ボクはマレンと一緒に暮らせることに、果たして彼女と同じだけの喜びを感じられているのだろうか……

(彼女と2人で、ずっと一生暮らしていきたい)

ボクは本心からそう思えているんだろうか? でも、いまはそんなことなんてどうだっていい。とにかくマレンを、もうボクの前で泣かせたくないだけだ。お母さんの病気のことで悩み続ける彼女のことを、これ以上悲しませてはならない。もし、いまの彼女を喜ばせられるのならば、ボクはきっとなんだってできる。結婚だって……きっとできるさ――

ボクはウォークマンの再生ボタンを押した。こないだイトコの姉ちゃんから借りた中島みゆきの『予感』。このアルバムの2曲目に収録されている「夏土産」という曲のメロディが、いまだに心の奥のほうで、仄(ほの)かな余韻を残し続けている。カセットを早送りし「夏土産」のイントロを待つ。江ノ島駅を過ぎてしまうと、濃藍色に染まる湘南の海が江ノ電の車窓に映し出されることは、もうなかった――

「小学校時代に行ったスイミングスクールの夏休み合宿の帰りにね――」

穏やかな七里ガ浜の海に、数名のサーファーたちが浮かんでいる。マレンは彼らのずっと先にある水平線のほうを見ながらいった。

「あのときさぁ、帰りに電車が止まっちゃって、カミュちゃんのお父さんが夜、車で迎えにきてくれたでしょ。覚えてる? そのときカミュちゃんと、うしろの席でさぁ。アタシたち一緒のタオルケットで寝たんだよ」

マレンは、そういって笑った。

「そうだったっけ?」

「カミュちゃんのお父さんがね。そのとき1枚だけしかタオルケット持ってきてなかったから……結局、その1枚に一緒に包まって寝たんだよ」

「そういわれれば、なんとなくそんな気もするなぁ」

ボクはそういいながら、嬉しそうに潮風を浴びているマレンの横顔を見つめた。

「アタシね。そのときカミュちゃんと『いつか結婚したいな』って思ったんだぁ」

ボクのほうに大きな瞳を向けながらマレンはいった。

「え、あの合宿のとき? 2人で一緒に寝たからか?」

ボクは、少しだけ慌てながら訊ねた。

マレンは優しく微笑んだまま、首を横に一度だけ振った。

「ううん、違うよ――明け方ね、なんだかちょっと寒くって、アタシ、ふと目を覚ましちゃったんだ。きっとタオルケットが膝まで落ちちゃってたんだと思うんだけどさぁ。そのときカミュちゃんがね。アタシを起こさないようにしながらね。タオルケットをそっと肩までかけなおしてくれてたんだよ。そのときアタシ思ったんだ。『カミュちゃんは、きっとすごく優しいんだなぁ』って。こんな優しい人と、いつか結婚できたらいいなぁって……」

「だってさぁ、それってただ、タオルケットをかけなおしたってだけでしょ?」

と、ボクはマレンを見つめ返す。すると、マレンは乳白色の曇り空を見上げた。

「違うよぉ。アタシのことを起こさないようにしながらね、アタシに気づかれないように、そっと優しくかけなおしてくれたんだよ。そういう優しさっていうのはね。全然『だけ』なんかじゃないんだから……『カミュちゃんは誰にも気づかれないように、自然と優しさを出せる人なんだな』って……

だからカミュちゃんとね、『いつか結婚できたらいいなぁ』って、そのとき思ったんだ。その気持ちはね。いまも全然変わってないよ――ううん、これからだって、ずっと変わらないんだよ。絶対に……」

そういうと、マレンは大きな瞳を一瞬眩しそうに薄く閉ざし、そしてボクを静かに見つめて微笑んだ――





【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】



時代遅れの恋心 - 大沢誉志幸 
セルフカヴァーアルバム『Collage』 1994年





関連記事

【Re-Edit】 夏土産 - 中島みゆき 【バラードの名曲】

【邦楽バラードの名曲】

夏土産






「――こんな山のなかに、マレンの先祖のお墓ってあるんだね」
ボクは、しっとりと湿った苔を避けるようにし、長い石段を踏みしめてゆく。
「おばあちゃんの家系はね。ずっと鎌倉に住んでたみたいなんだよ。だから御先祖さまのお墓は、かなり昔からこの古いお寺にあるんだ。でも、この山のもっと上のほうにはね、すごく大きな霊園もあるみたいだけどさぁ」
と、艶やかな黒髪に、うっすらと霧状の水滴を纏(まと)わせている川澄マレンがいった。

長い石階段の、かなり上のほうまでくると、頭上を覆っていた樹々の濃密な影はだんだんと和らぎ、乳白色のアクリルプレートを敷きつめたような空の色が次第に鮮明になり始める。
その不透明な曇り空から力なく舞い落ちる霧雨の存在を、僅かに頬で感じながらボクたちは山門へと向かって歩き続けた――

南側の山肌に大きく視界が開けた斜面には、下のほうまでぎっしりと墓石が建ち並んでいる。その遥か彼方に見える木々の枝葉のすき間からは、この曇り空の色を水面(みなも)に満たした鎌倉の海が、真夏の風に吹かれ、やんわり揺らいでいた。

マレンはずっと手を合わせながら墓前の前で祈り続けていた。ボクはマレンのうしろに立ったまま、供えられた線香の煙が遠くに消えゆく音のない7月の空を見上げた。

「カミュちゃん……」
やがて彼女がうしろを振り返り、立ち上がると、ボクは入れ替わるようにして墓前の前にかがみ込んだ。そして目を閉じ手を合わせる。
(ボクには――
ボクには、まだ彼女を守る力が全然足りません。だから彼女のお母さんを絶対に助けてあげてください。とにかく、いまはまだ、マレンからお母さんをすぐには奪わないでください。 
あと数年だけでいいんです……せめてボクがマレンと一緒になれるときまで――)

帰り道――
なんとなくボクたちは七里ガ浜の駅で江ノ電を降りる。
潮風も海の色も、ボクらの街より幾分澄んでいる気がした。けれど、西側に江ノ島が浮かぶこの海岸からの景色には、やはりどうしても馴染めむことができない。

「川澄は、いまから病院に行くの?」
と、ボクはマレンに訊いた。
「うん。おばあちゃんが夜まで病室にいるみたいだからね」
と、マレンは海を見つめたままでいった。
「オレも一緒に行こうか?」
「う~ん。アタシはねぇ、カミュちゃんには一緒にきて欲しいんだけど……でも、お母さんは、まだ『見られたくない』って思うかもしれないからさぁ。だから、もう少しお母さんが元気になったら、そのときは一緒にきてね」
といって、マレンはボクの横顔を見つめた。

「わかった。そうだね……お母さんと、なにか話せたの?」
「まだちゃんと話せてないんだけどね。『意識は戻った』って昨日も先生はいってたんだよ。でも……また、なにかの検査をやるみたい。今度はね。脳の状態を見るとかって――」
マレンはそういうと、曇り空を切り取って水面に貼り付けたような鎌倉の海を見つめる。

――ボクはもうマレンの涙を見たくなかった。少なくとも今日だけは、彼女をもう泣かせたくなかった。ふたたび彼女の涙が流れ落ちる前に、ボクはなにかを伝えなきゃならない。

「もし――」
なにも考えてなかったけど、言葉は自然と繋がっていった。
「もしさぁ、川澄のお母さんが元気になったらね。2人でさぁ。一緒に暮らそうか……」
「えっ!」
澄んだ海風に揺れる前髪を抑えながら、マレンは大きな瞳でボクのほうを振り向く。
「まぁ、きっと最初は安いアパートとかになっちゃうんだろうけどね、いつかはさぁ……」
「カミュちゃん――」
と、ボクの言葉をマレンは遮る。
「アタシにはねぇ……たったひとつだけしか望みなんてないんだよ」
「ひとつだけ?」
「そう。もしひとつだけ願い事が叶えられたらね。アタシはそれでいいの」
マレンはようやく前髪から右手を離す。その瞬間、彼女の黒髪は舞い上がり風にそよぐ。
「それって、どんなこと?」
ボクは、その長い黒髪の毛先が空へと流れる様(さま)を眺めながら訊いた。
澄んだ海風のなかでマレンはゆっくりと微笑む。

「アタシに、なにか『ものすごく嬉しい』ことがあったときにね。カミュちゃんもアタシと一緒になってその喜びを感じてくれること……」
そういうとマレンは、その長いまつ毛で包み込むようにして瞳を閉じた。そして口元だけはずっと微笑ませたままで言葉を続けた。
「どんなに『嬉しい』って思うことがあってもね、もしひとりきりじゃさぁ、その嬉しさって絶対に感じられないんだよ。本当に『嬉しいな』って感じるときってね。一番喜ばせたいと思っている誰かがね、一緒になって心から喜んでくれたとき……
喜ばせたいと思う誰かが、嬉しそうに笑ってくれる顔を見れたときに、きっとはじめて感じられるものなんだよ……だから、どちらかひとりだけが嬉しいだけじゃきっとダメなんだ」

マレンは大きな薄茶色の瞳を開け、そっとボクを見つめた。
「アタシにさぁ、なにか嬉しいことがあったときはね。カミュちゃんも同じくらいそのことを嬉しいと思ってくれなきゃきっとダメなんだよ」

「川澄――」
ボクには、彼女の言葉の意味が、なんとなくわかった。
マレンは、曇り空を見上げて嬉しそうに笑っている。そして、その空へ向かって、風にささやくように言葉を解き放つ。

「もしね。アタシたちが同じ喜びを感じていけるんだとすれば、アタシはもう、ほかにはなにもいらないんだ。だからね。アタシと同じくらい、カミュちゃんが2人で一緒に暮らせるってことに喜びを感じてくれているのならね。アタシはどんなところで暮らしたっていいんだよ。ホントだよ!
もしそこが、たとえ宇宙だって無人島だっていいの。
お金なんていらない。親友だっていらない……
カミュちゃんがいてくれるんなら、アタシはそれだけで全然いいんだから――」


【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】




【2012.04.24 記事原文】

ボク個人的には、中島みゆきを好んで聴いてこなかった。
ただ、いとこの姉ちゃんを含め、何人かボクの近くに中島みゆきファンはいた。

そういう環境だったせいで、中学くらいから聴くでもなく聴かされるようになっていった。
※ハードロックに走っていた時期に・・・である。


そんな中で、10thアルバム『予感』に収録されていた「夏土産」は、
かな~りインパクトのある曲だったと思う。
※金八先生の挿入歌「世情」は別として・・・


このアルバム収録曲では、「ファイト」のほうが有名だが、
作品としては「夏土産」のほうがクオリティは高い。


ものすごく爽やかなメロディで、実に恐ろしい内容を歌っている。


まぁ、中島女史の作品も、無論Yの規制に掛かってますんで、
いずれ削除されるものと思われます。
とりあえずご参考までに!!





夏土産 - 予感夏土産 - 中島みゆき
10thアルバム『予感』 1983年

関連記事

夕凪 - さだまさし 【バラードの名曲】

【邦楽バラードの名曲】


夕凪
リンク切れになった場合、iTunesにてご視聴ください☆







1983年7月17日(日) 午後1時すぎ


腰越駅を過ぎると江ノ電は、右側の車窓一面に雄大な湘南の海を映し出してゆく。このあたりの海岸はやけに砂浜が狭く感じられる。きっとそのせいだろうけど、ボクらが住む街よりも水平線がかなり遠くのほうにあるように思えた。

けれど、やっぱりボクは地元の海のほうが好きだな。深くて冷たい濃藍色を水面(みなも)に湛え続ける鎌倉の海を見ていると、やけにもの哀しくなってきてしまうんだ……
この景色を見るのは本当に久しぶりのことだ。最後にこの電車に乗ったのがいつだったかなんて、すぐには思い出せないくらいに――

ボクはふと、ジーンズのポケットからウォークマンを取り出す。
「姉ちゃん」――いまだにボクはそう呼んでいるが、イトコの兄貴の妹である彼女とは小学校の頃、ホントによく遊んでいたものだ。

学年でいえばボクの一校上である姉ちゃんは、当時ニューミュージック系の邦楽を好み、さだまさしや中島みゆきのレコードをいつも聴いていた。中学に入ってからは、ほとんど彼女の部屋へいく機会も減ってしまったのだが、こないだ、兄貴のところへ行こうとしたけれど、彼はまだ高校から帰ってきておらず、たまたま帰宅していた彼女の部屋をボクは久しぶりに訪れた。

――かつて、この部屋で一度だけ聴いたことのある、さだまさしのアルバム収録曲が、なんだか無性に聴きたくなったからだ。けれど、どのアルバムに入ってる、なんていう曲なのか、まったくわからなかったので、仕方なくアルバムを数枚引っ張り出して一枚づつ聴きながら探していくしかなかった。ボク自身、さだまさしの歌はあまり好きではなかったけれど、「道化師のソネット」と「驛舎(えき)」だけは、なんとなく好きかな――

やがて、デビューアルバム『帰去来』を聴いているとき、ようやくボクが探していたその曲が流れてきた。それはA面の最後に収録されている「夕凪」という曲だった。どうやら作曲は、さだまさし本人ではないようだけど、メロディがすごくきれいで、子供の頃、たった一度聴いただけなのに、その旋律がずっと心に残っていた。

「夕暮れどきにひとりで海を眺めている――」
そんな情景が、子供ながらにものすごく伝わってきたんだ。姉ちゃんからそのアルバムを借りて帰ろうとすると、彼女はボクを呼び止め、
「これ、結構いいよ」
そういって、もう一枚、別のアルバムを差し出してきた。それは今年の春にリリースされた中島みゆきの『予感』というアルバムだった――

鎌倉への観光客で混雑する電車は、いま七里ガ浜の駅に止まっている。川澄マレンは、薄曇りの空色を映し出す鎌倉の海を見つめていた。
「――カミュちゃんも一緒にきてくれない?」
こないだ数日振りに学校でマレンと会い、ボクのお気に入りの神社に立ち寄ってから彼女を駅まで送った。その別れ際にマレンから、「週末、お墓参りに一緒にきて欲しい」といわれた。彼女がいま住んでいる鎌倉のおばあちゃんの家から程近い場所に、母方のご先祖のお墓があるのだという――

ボクは、おもむろにヘッドフォンの一方をマレンへと差し出し、そして静かにささやく。
「この曲ってさぁ、オレが小学校のとき一回しか聴いてないのに、なんかすんごく心に残ったんだよね」
マレンは大きな瞳でボクのほうを振り返り、黒髪を柔らかく指先で掻き上げるとヘッドフォンを右耳へと挿した。ボクは自分の左耳にもう片方を挿すと再生ボタンを押す――すでに早送りされていたカセットは、やがてゆっくりと回転し、穏やかなピアノの旋律に優しいストリングスが折り重なる「夕凪」のイントロが流れ始めた。

江ノ電は稲村ガ崎の駅を過ぎると、湘南の海を背にし、狭い住宅街を縫うように走ってゆく。そこから先に映し出される車窓の風景にはあまり目立った見所はなかった。でもボクは、そのなんでもないような住宅街の景色がすごく気に入った。電車は由比ガ浜の手前でふたたび海岸のほうへと近づいたけれど、さっきのように海を間近に見ることはもうできなかった。ただ、ボクとマレンのあいだを繋ぐ「夕凪」の美しい旋律は、江ノ電のゆったりとした走行音とあいまって、どこまでも違和感なく鎌倉の街並みと調和していた。

ここへきたのは小学校の遠足以来だろうか――
日曜日の鎌倉駅前は、とにかくものすごい人だかりだった。ボクらは、その人の波をすり抜けるようにして停留所へと向かい、停車していた鎌倉の山のほうを目指すバスへと乗り込む。さすがに観光名所のないこっちのほうまでくるような乗客はほとんどいないようだ。バスのなかは、お年寄りが何人か乗ってる程度だった。

――ボクたちの住む街は、なんとなく松林のなかを歩いているような気がする。けれど鎌倉は、駅からほんの少し離れるだけで、まるで奥深い緑の杜のなかに迷い込んでしまったような錯覚を起こす。この街がこんなにも山深い場所だったとは正直思ってもいなかった。

深い樹々の影に覆われた、山の中腹あたりの停留所でボクらはバスを降りる。バス停の近くに一軒しか見当たらない寂れた商店の店先に並んだ花束をマレンはしばらく見比べていた。やがて美しく開花した白桔梗をメインにアレンジされている花束を選ぶと、奥のほうから出てきた店の主(あるじ)らしき老婆に、マレンはその場で代金を支払った。

――少しばかりバス通りに沿って歩いていくと、やがて山の頂上へと向かって細長く延びる石階段が見えてきた。ボクらは無言のまま、ゆっくりとその山道を登り始める。
太陽の光を求めるようにし、身勝手な方向に伸びた無数の枝葉が果てしなく階段の先のほうまで生い茂っている。無限の葉裏が作り出す濃緑色の巨大な傘のような影が、ボクらの頭上を覆っているせいで、少し前から降り始めた小雨の感触はほとんど感じられない。

凛とした草花の匂いを漂わせ、真夏の清風が空へと駆け上がってゆく。
神聖なる領域を取り囲む深緑の古木たちがもたらす厳(おごそ)かな空気のなかには、物音を一切感じさせない涼やかな静けさがたゆたう。

そよぐ風の音、揺れる木々のざわめき、そっと枝葉を叩く雨の響き、虫や鳥たちの鳴き声――
雑音とは違い、まるで音楽とも違う、決して淘汰されることのない、そんな自然界の必然的な響きに包まれながら、ボクらは次第に癒されてゆく。
この静けさは、聴覚で感じられるものではなく、きっと心の静寂なのだろう――


【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】





夕凪 - 帰去来夕凪 - さだまさし
1stアルバム『帰去来』 1976年

関連記事

The Love You Save - The Jackson 5  【70年代ダンス】

【70年代洋楽ダンスの名曲】


The Love You Save





まぁ、マイケル・ジャクソン氏が天才だったってことは、
いまさら否定するつもりもないです(笑

彼がソロになってから確立されたオリジナルの歌唱法ってのは、
まぁ唯一無二だとして、ジャクソン5でフロントを勤めていた当時は、
とにかくひたすらパワフルなハイトーン・シャウトを聴かせておったわけですね。

そんなマイケル12歳のとき歌声の凄まじさを、まざまざと見せつけてくれるのが、
ジャクソン5、1970年リリースの2ndアルバム『ABC』からのシングルにして、
ビルボードのシングルチャートでNO.1をGetした「The Love You Save」☆
ソウルテイストでファンキーなダンスチューンっす♪
カッティングギターと、あたまを引っ張るベースのリフがお洒落っす♪

特にCメロでのマイケルのシャウトは圧巻の一言っすわね!
とても43年前の曲だとは思えないくらいポップですわね☆




The Love You Save - AbcThe Love You Save - ジャクソン5
2ndアルバム『ABC』 1970年


関連記事

It's Raining Men - The Weather Girls 【80年代ダンス】

【80年代洋楽ダンスの名曲】


It's Raining Men





ご無沙汰です。
気付けば、東京もすっかり梅雨明けだとか・・・

梅雨明けといえば?
やはりウェザーガールズが1982年にリリースし、
全米ダンスチャートでNo.1ヒットとなった「It's Raining Men」でしょう(笑
なぜに邦題が「ハレルヤ・ハリケーン」なのかは相変わらず分かりません。。。

ちなみに・・・この曲も、別に雨のことを歌っておりません!
「It's Raining Rain」ではなくって「Men」が降ってくるってアホな歌ですんでね☆
アホですけど、まさに80’sのテイスト感満載で、すんごくカッコいいナンバーっすね♪

最近では、「ウェザーガールズ」って検索すると
台湾だかのアイドルグループのほうばかり引っかかりますけどね。
やはりご本家は、恰幅(かっぷく)のよいアフロ系ガールズデュオのお二人なわけっす☆

そのうちのひとり、マーサ ウォッシュさんは、90年代初頭、
C+C ミュージックファクトリーの「Gonna Make You Sweat (Everybody Dance Now)
でFeatされ、ふたたび注目されることになります☆

まぁ、このハードソウルな歌声は、衰え知らずだった。
ってことなんでしょうねぇ。。。




It's Raining Men - Get the FeelingIt's Raining Men - ウェザーガールズ
アルバム『Success』 1983年



関連記事

【ALOHA STAR MUSIC DIARY】 " Scene : Toa "

 

 白い指先が、ボクの右手の人差し指と、緑色の生徒手帳の上で重なり合おうとした瞬間、 突然、背中を激しい衝撃が貫く。後ろから打ち込まれたその灼熱のクサビは胸の内側に留まりながら、肺のあたりを焦がすようにして、ずっと不快な熱を放出し続けている。

 ボクは「 ガクッ」と床に両膝をつきながら、右手で胸を押さえうずくまる。一気に鼓動が高鳴り、呼吸をするのも辛くなった。白い指先の持ち主は、ボクの左脇にしゃがみ込みながら不安げに横顔を見つめ、やがて小さく声を発した。

「どうしたの? シーナ君、大丈夫なの?」
 その、霧島ヒロミの細長い指先が、ボクの左肩に触れようとしたとき、「グォーン」っと激しい衝撃が音を立て、背中のさっきと同じ場所へとふたたび突き刺さった。

 あまりの激痛に呼吸が早まり意識を失いそうになりながらも、ボクは霞んだ視界の先に、ヒロミの大きく艶やかな瞳の奥にある暗闇の色を見つめた。一滴の雫が、気の遠くなるほど長い歳月をかけて無限に落下し続けることでしか生み出されない鍾乳石――

 そんな無常色の儚(はかな)さにも似た絶望的な憂いが、そこには朦々(もうもう)として漂っている。

 あの戦場で『声の男』がボクにいっていた。
【もしお前が、いつかロミイの生まれ変わりに出会ったとすれば、きっとお前自身になんらかの『防御本能』が働く。お前自身が持っている感覚の、どこかの部分がきっと彼女の存在に気付くはずだ。いずれにせよ、この世界のロミイは16歳の誕生日を迎える直前に死んだ。従ってお前の世界でも彼女は同じ日に命を絶とうとするだろう。それまでに、その子自身、『自分がロミイだった』ということを、みずから思い出さなければならない……】

【カミュ――カミュ――】
 朝倉トモミが後ろからボクの背中を抱きかかえるようにして名前を何度も叫んでいる。それとは別に、隣のクラスの誰かが、その大きな瞳の少女の名前をずっと呼び続けていた。

【ロミイ――ロミイ――】
 やがてその声は、鮮明な音となって廊下に響き渡る。
「ヒロミィ! 大丈夫? ヒロミ!」

 激しい胸の痛みにどうにか耐えながら彼女を見つめ続けるボクの両目からは、どういうわけか止め処なく涙が溢れていたんだ。――あのとき、ボクの目の前で崖から飛び降りてしまったロミイと、時空を超えて、こうしてふたたび出会えたことに対する素直な喜びが、きっと心の奥のほうから「フツフツ」湧き上がってきているのかもしれない。

 その涙とともに零(こぼ)れ落ちていったのだろうか? 
 ずっと胸のあたりに留まり続けていた激痛は、やがて不思議なほどに和らいでいき、そしてウソのように消滅した。ボクはトモミに支えられ、どうにか起き上がると、茫然(ぼうぜん)としたままで立ち尽くす霧島ヒロミを見上げるようにしながら微笑みかけた。
(久しぶりだね――ロミイ……)


【ALOHA STAR MUSIC DIARY】 Epi - 101  " Scene : Toa " より "
関連記事
[ 2013/07/06 23:24 ] コラム | TB(0) | CM(0)
Masterpiece of the Western music of the 70s/70年代洋楽の名曲
If you want to cry/泣きたいとき
If you want to be healed/癒されたいとき
Drinking alcohol/お酒を飲みつつ
While driving/ドライブしながら
If you want to Fever/血が騒ぐ
Masterpiece of the Western music of the 80s/80年代洋楽の名曲
80's Ballard masterpieces/80年代バラードの名曲
80's Rock masterpieces/80年代ロックの名曲
80's Pops & AOR masterpieces/80年代ポップスの名曲
70's Dance masterpieces/70年代ダンス系の名曲
Masterpiece of the Western music of less than 70s/70年代未満洋楽の名曲
Less than the 70's classic Ballad/70年代未満バラードの名曲
Less than the 70's classic Rock/70代未満ロックの名曲
Less than the 70's classic Pops & AOR/70代未満ポップスの名曲
Masterpiece of the Western music of more than 90s/90年代以上洋楽の名曲
Ballade more than of the 90s/90年代以上バラードの名曲
Rock more than of the 90s/90年代以上ロックの名曲
Pops & AOR more than of the 90s/90年代以上ポップスの名曲
90's Dance masterpieces/90年代ダンス系の名曲
Masterpiece of the Japanese music/未来に残したい日本の名曲
Dedicated to sweethearts/恋する二人に捧ぐ
Spend the night with sadness/悲しみと共に過ごす夜
Nostalgic feelings/ノスタルジックな想い
In the room which shines with the morning sun/朝日が差し込む部屋で
While looking at the setting sun in a hotel/夕陽が見えるホテルで
Memories of youth/若かりし日々の思い出
If you want to fuss/タテノリしたい気分なとき
If you want to feel the Rock/かなりRockな気分
Masterpieces of Instrumental/インストルメンタルな名曲
 
Profile

rakiworld21

Author:rakiworld21
Hai ☆I m Raki  (*^・ェ・)ノ ☆


Group / Duet 【 A ・ B ・ C 】
Group / Duet 【 D ・ E ・ F 】
Group / Duet 【 G ・ H ・ I 】
Group / Duet 【 J ・ K ・ L 】
Group / Duet 【 M ・ N ・ O 】
Group / Duet 【 P ・ Q ・ R 】
Group / Duet 【 S ・ T ・ U 】
Group / Duet 【 V ・ W ・ X 】
【 Artist V 】
Van Halen
Vapour Trails
The Velvet Underground
The Ventures
Virus

【 Artist W 】
The Wailers
Wang Chung
Was (Not Was)
Wishbone Ash
The Who

【 Artist X 】

Group / Duet 【 Y ・ Z 】
【 Artist Y 】
Y & T
Yazoo
Yes

【 Artist Z 】
ZZ Top



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。