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未来に残したい洋楽&邦楽の名曲

70~80年代の洋楽&邦楽を中心に未来に残したい名曲&名盤を独自にチョイスするBlogです☆
未来に残したい洋楽&邦楽の名曲 TOP > 哀しみと共に過ごす夜

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【2013 Rakiが選ぶクリスマスソング】【Re-Edit】 12月のエイプリル・フール - EPO 【バラードの名曲】

【Re-Edit】【邦楽バラードの名曲】


12月のエイプリル・フール





このEPOさんの「12月のエイプリル・フール」がリリースされたのって1985年。
もう28年も前だったんですねぇ(驚

まぁ、まだボクは高校生だったわけですがねぇ、
あの当時はじめてこの曲を聴いたときは、
さほど心に「ググッ」と響いたりなんぞしなかったように思います。


でも、・・・あれから30年近く経って改めてこの曲を聴いてみると、
メロディの美しさも、丁寧に作り込まれたアレンジの巧みさにも驚かされます。

高校時代の彼女と、いまからしてみればあまりにも幼いときめきを
互いの心に抱き合い過ごしたクリスマスの出来事が、なんだかふと思い出されますねぇ☆



【2013.02.27 記事原文】

ちょっと季節はズレますけどね・・・

EPOさんが1985年にリリースした
「12月のエイプリル・フール」をチョイス☆
この曲にも いろんな思い出がありますね。。。


彼女の楽曲って 相当な数がCMやTV番組でタイアップされてるんですけど
それは やはり彼女には 卓越したポップセンスがあった!
っつうことなんだと思いますね。

例えばこの「12月のエイプリル・フール」にしたって
こんなに上質なアレンジって 最近の楽曲には皆無な訳で・・・

こうした"生音の温もり"っていうのは
コンピューターじゃぁ絶対に再現できないんだろうなぁ~
と思うんですよね☆

アコギ弾き語りでも ピアノ弾き語りでも
もし この曲をすんごくシンプルなアレンジで聴いたら
超感動しちゃいそうな名曲です☆


ウソっぽくないナチュラル系ボイスも大変宜しい☆





12月のエイプリル・フール (Acoustic Version) - ゴールデン☆ベスト EPO (EMI YEARS)12月のエイプリル・フール - EPO 
ベスト盤『ゴールデン☆ベスト』




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【Re-Edit】 幸せになりたい - 内田有紀 【バラード】

【Re-Edit】【90年代バラード】


幸せになりたい



内田有紀 / 幸せになりたい


Epi-27

 誰かに聞いたような気がする。

「7秒のあいだに存在する過去と未来の中心が現在である」のだ。と、……

 いや、もしかしたら「7秒づつの過去と未来の接点が現在である」だったかもしれない。
 でもそれ以来「現在」ってのは、わずか7秒間の出来事をさすものなのだ、と勝手に覚えてしまったし、なんとなくその数字には納得できた。

「1秒先が未来である」とか「1秒前が過去である」とかって物理学的な時間の単位で「現在」は定義されるものだ。――とかっていわれても、あまりにありきたり過ぎてしまって、いまひとつピンとはこない。なんら根拠がなかろうと、「7秒」という単位には、なんとなく説得力みたいなものを感じたんだ。

 けれど、もしそれが正しいとしても、間違いだったとしても、すぐ目の前に見えている、たった1秒先の未来にボクらが追いつくことは決してない。それだけは確かだ。ボクらの意思とは無関係に、常に1秒づつの過去を永遠に積み重ねていきながらボクらの「いま」は、ただ一方向、未来へとだけ流れ続ける。わずか7秒のあいだに現実と理想を共有させ合いながら、ボクらはただ、ひたすら「いま」を生きている。……

 1983年6月15日(水) 中学3年の一学期
 夕方の午後3時半頃

 最初にその病名と聞いたときにはちょっとだけ安心したんだ。
 ボクの親戚にもその病気にかかってる人は何人かいるけど、普通に食事もしてるし平気で酒も飲んでたから。――
 川澄マレンもどことなくほっとした様子だったが、彼女のお母さんは結局、しばらく入院することになったみたいだ。彼女に父親がいないということは、去年、羽田空港で彼女がこぼした言葉からなんとなく察してはいた。けれど、その理由をボクからは一度もマレンに訊いたことはないし、彼女から話したこともない。

「お母さんが入院してるあいだってさぁ、川澄はひとりで家にいるの?」

 梅雨晴れの空、南からの生暖かい風が、ボクの言葉を彼女のほうへと運んでいった。

「あたしねぇ。ちょっとだけおばあちゃん家に住むんだよ」

 その風に長い黒髪をもて遊ばれながらマレンはそういう。

「ん? おばあちゃん家ってどこだっけ?」

 と、ボクは訊ねる。

「鎌倉なんだけどねぇ。まぁ、ちょっとのあいだだからさぁ、学校まで電車で通うんだよ」

 長い黒髪をピンク色のヘアゴムで結びなおして、マレンは電車通学ができることを少し自慢げに笑った。どうやら鎌倉からは大体1時間くらいで学校まで通えるのだという。

「あぁ! もうヤダぁ!」

 時折強く吹きつける潮風のせいで、なかなか上手くいかずに彼女は何度も横に垂れ下がる髪の束をヘアゴムで結びなおしている。

「あっ」と叫び、ボクの横顔を見つめてマレンは突然、話題を変えた。

「そういえば修学旅行ってさぁ、カミュちゃんとは違うグループなんだよ。あたしさぁ、カミュちゃんのグループのほうに行っちゃおうかな」

 そういって、マレンは「クククッ」と笑った。

「いいじゃん。どうせ夜のホテルは同じなんだからさぁ、昼は別々でも」

 秋に行く予定の修学旅行は、どういうわけだか偶数クラスと奇数クラスに日中の行動が分けられてしまっていた。ボクは偶数、彼女は奇数クラスだったんで、宿泊するホテルは一緒だけれど、昼間はそれぞれが別々の場所へ行くことになるらしい。彼女はなんだかそのことが納得できないようだった。

「え~っ、つまんないじゃん。それじゃぁ意味ないじゃん」

 と、マレンは少しふてくされる。

「ホテルで夜遊べばいいんじゃねぇの?」

 と、ボクは彼女の横顔にささやく。

「だって部屋が違うでしょ?」

 しばらくマレンは「ブツブツ」いっていたけれど、やがてなにかを思い出し、いつものように薄茶色の大きな瞳を輝かせる。

「でもさぁ。ディズニーランドには絶対に行こうね!」

 そういえば今年、ディズニーランドが千葉のほうにオープンしたらしい。ついこないだ夏休みにマレンと一緒に行こうって約束をしたばかりだった。

(でも、はたして夏休みに行ったところで、何時間も待たされるような乗り物なんて、ほとんどなにも乗れないんじゃないのかな)

「いま行っても、すげぇ混んでるんでしょ? まぁ、あと10年もすれば、だいぶ客とかも少なくなるだろうけどねぇ」

 ボクはちょっと意地悪くそういって笑う。マレンは予想通り、大きな瞳に哀しみを浮かべた。なんだか可哀想になったんで、しょんぼりした彼女の右肩を軽く叩いて、

「冗談だって! わかったよ。いいよ、夏休みに行こうよ」

 と、笑いかけた。マレンはすぐに笑顔へ戻り、ボクの左腕に「ニッコリ」微笑んだまま、顔ごとしがみついてきた。

 夕暮れの風には新緑の香りと微かな潮の匂いが混ざり合っている。それはきっと、この街にしかない独特の風味なんだろうなって思う。――――



【2012.05.14 記事原文】

内田有紀さんも宮沢りえさんもそうだが。。。
なんで歌うのかね???とは率直に思う。

でも、この「幸せになりたい」を初めて聴いたとき、
まぁ当時のボクを取り巻くシチュエーションもあったんだろうが、
静寂のなかに漂う哀しさ?みたいなものがダイレクトに伝わってきて、
ものすんごく胸を締め付けられたのである。


無論、広瀬香美さんの楽曲センスも無論良いんだろうけど、
冬の痛いくらいの寒さを思い出させる一曲です☆

まぁ内田さんの場合、デビュー曲がねぇ・・・あれですからねぇ・・・
でも最近、彼女はキレイになったなぁと感じます!



幸せになりたい - 内田有紀
4thアルバム『nakitakunalu』 1996年



【Re-Edit】 告白 - ガガガSP 【パンクの名曲】

【Re-Edit】【邦楽パンクの名曲】


告白






Epi-13

 1983年9月10日(土) 中学3年の二学期
 2時限目が終わった休み時間

 ボクには「愛」という感情が、自分をどう変えてしまうものなのかよくわからない。「恋」というものならば、まだ、なんとなくわかるような気もするけれど。――

「好き」であることとはまったく別の、近くて遠いような距離感。……明日も会えるはずなのに、いまだけは離れたくないと願う、抑えられないほどのわがままで孤独な焦燥感。――もし本当にそれを「恋」だというのであれば、それはあまりにも苦しいものだ。

 中学3年になる前の春休み、川澄マレンのために作った曲。――特にタイトルなどつけてなかったその曲を、「一生大事にするね」と、彼女はいった。去年のクリスマス、――あのとき彼女に対して抱いた、心が徐々に締めつけられてくようなほろ苦い感覚。――たぶん、それが「恋」なのであろう、せつなさにも似たその想い。あの素直な胸の苦しみを、わずか数行程度に吐き出してしまえば済むはずだったんだ。

 何度も自問し、それに自答してみたけれど、すでに彼女に曲を送ってしまったいまでさえ、あの歌詞の内容がボクの本心だったかどうかはわからないままだ。……でも、きっと80%くらいは本心だったんだろうと思う。彼女への想いが、一瞬メーターを振りきってしまうことも何度かあったけど、いつも100%彼女のことだけを考えているわけでもなかった。だからきっと平均すれば80%くらいなんだろうな。ってなんとなく思うんだ。――――

 中学3年になると、川澄マレンとはクラスが離れてしまった。
 互いのクラスのあいだには四つの教室が挟まれていた。階段をあがって一番手前にボクの教室、そしてもっとずっと奥のほうにマレンの教室があった。

 休み時間や体育の授業で彼女が廊下を通るとき、うしろの鉄製扉にはめられたガラスパネルの向こうから、いつだってマレンは小さく手を振ったり舌を出したりていた。そんなときはボクも、ちょっとだけ掌(てのひら)を彼女のほうへ向けるようにしながら笑って応えてた。――そして前方の扉を通り過ぎる際、彼女は決まってうしろを振り返り、ガラスの向こうから大きな薄茶色したいつもの瞳で、もう一度必ずボクのことを見つめてたんだ。――

 9月に入ってからは、きのうくらいまで、ずっとすっきりとしない天気が続いてた。けれど今日は久しぶりに湘南の空は清々と晴れ渡っている。

 揺れ動く白波は波間に無限の影を生み、白銀色の陽光が、蒼い水面(みなも)に「キラキラ」と煌(きら)めく。大きな窓ガラスの向こうに広がる静かな海を眺めて、ボクはずっと思い出してたんだ。振り返ったマレンが、笑顔で入り口のガラスパネルの向こうからボクのことを見つめてた、あの日々のことを。――

 たしかにボクらは、何気ない日常のなか、互いの存在の大きさに気づきはじめ、ときどき2人がずっと寄り添い生きてく未来を語り合ったりしながら、――そして、喜びや悲しみを同じ分量づつ分け合いながら、ボクらなりに精一杯、淡く、せつないほどに光輝く青春の日々を、ともに過ごしてきたんだろう。――――

 9月になっても、依然として真夏の暑さはずっと続く。
 それは彗星が引き連れる長く伸びた軌跡のよう、この街の上空に、もうしばらくは漂い続けることだろう。南側の窓からは、うっすらと潮の香りが風に紛れる。ボクはぼんやり教室のうしろの扉に目をやった。川澄マレンの嬉しそうな笑顔が、もう二度とガラスの向こう側に映し出されやしないことなどわかってるのに、……いや、この学校のどこを探してみたって、彼女の笑い声を見つけ出すことなんて、もう二度とできやしないんだ。

 ボクらがつき合いはじめてから、ちょうど一年が過ぎようとしていたあの日、マレンはボクの前から本当にいなくなってしまったのだから。――

 彼女と過ごした一年足らずの時間のなかで、ボクらが交わした二回のキス。――あのクリスマスの夜、マレンに抱いた「恋」とでも呼ぶべきまったく不慣れな感情を、結局、面と向かって言葉では伝えることができないままにボクは彼女を失った。――いや、悪いのはボクのほうだ。――そんなことなどわかってる。

 けれど、たとえそれがカセットに吹き込まれたものだったとしても、ボクの想いを曲にして彼女へ渡せたことだけが、いまとなってはせめてもの救いだ。

――――ボクはいま、生まれてはじめて誰かに対する愛(いと)しさってものを感じ、その愛しい誰かの面影に、絶えず心を引き裂かれている。――――

 心の内側で湧き起こる欲望や衝動と、心の外側でそれを隠し平静を装う理性的な自分とがひたすら感情のせめぎ合いを繰り返す。――ほかのあらゆる現実を忘れさせてしまうほど、そのことだけに心が捕らわれてしまう。内と外、どちらが本当の自分なのかまったくわからなくなってしまうこと、……もしくは、この衝動と理性がせめぎ合っている状態こそが、きっと「恋しい」って気持ちなのだろう。

 いままで当たり前のようにして目の前にいた人が、ある日からいなくなってしまった風景のなか、やがて時間は、微かに漂うその人の移り香までもを現実と中和させながら、ゆるやかに、――ゆるやかに、――だんだん薄めつつ、あとかたもなく透明にしてゆく。

 その人の存在を日々の暮らしでまったく感じられなくなったとき、残された記憶のなかにボクたちは、その人の面影を見出そうとしはじめるのだ。記憶は音を増しながら鮮明な色彩とともに心のなかで繰り返し再生されてゆく。何度も再生され続ける映像に映し出されたその人は、なぜなんだろう、……いつだって、ずっと笑顔のままだ。

 なにもマレンと、もう二度と会えなくなったわけじゃない。でも、ボクらのあいだに生み出された現実的な距離感よりも、引き離された心の距離感のほうが遥(はる)かに、いまは強く感じられてしまう。

(なぜあんなことをいってしまったんだ、……)

 後悔ばかりが胸の内から湧きあがり、ため息となり吐き出されてく。こぼれ落ちてく憂愁(ゆうしゅう)が現実を溶かすかのよう、彼女のいない日常の風景にぽっかり穴を開けていく。心のなかに刻み込まれた彼女の笑顔は、ボクの意思とは無関係にひたすら再生され続ける。それを止めることなどはボクにはできない。いや、たぶん、……きっと誰にも止められやしないだろう。

 もし「愛する」ということが「恋する」ことより遥かに苦しいならば、誰かを愛した瞬間、いまのボクはこの世から存在しなくなってしまうに違いない。――きっとそこにいるのは、別の自分に支配された、いまのボクなのだ。…………





【2012.05.01 記事原文】

ボク自身、1990年代後半から2000年にかけて、
たまたま音楽系の仕事を片手間にやってた時期でもあり、
足繁く都内のライブハウスにも通っていた訳で・・・

まぁ、従って当時インディーズだったバンドに対する思い入れが
個人的には最も深いといえる。


そんな中からメジャーになったバンドをいくつかご紹介したい。
まずは、コサック前田率いる「ガガガSP」。

彼らは基本的にパンクバンドとされるが、実際歌っている内容の
ほほ90%以上はストレートなラブソングである。


では、彼らの2ndアルバム『卒業アルバム』から
切ない男心を綴ったナンバー「告白」をどうぞ♪




告白 - ガガガSP
2ndアルバム『卒業アルバム』 2002年



【Re-Edit】 魔法の鏡 - 荒井由実 【ポップスの名曲】

【Re-Edit】【ユーミンの名曲特集 2】


魔法の鏡





Epi-2

1982年7月24日(土)


 少しは大人になったはずのボクが、久々に再会した川澄マレンの大きな瞳を、あの頃みたいに淡々と見つめることができなくなってしまったその理由、――

 それは決して湿度によって曇らせたライトグリーンの水中ゴーグルをつけてないから、……ということだけではないのだろう。

 「スッ」と、しなやかに美しい富士型の曲線を描き出してるマレンの上唇、――そのすぐ左脇に幼い頃からずっとある、つつましやかで可憐なほくろが、どんなに艶(あで)やかな化粧をするより、彼女をいっそう大人びて見せてしまっているからなんだと思う。


 
 月曜日の休み時間、―― 

「みんなでさぁ。今週の日曜にドリームランド行こうぜ」

 いきなり小学校時代からの友人、斉藤ミツキに誘われる。たしかに、ボクは以前からシャトルループに一度は乗ってみたいと思ってたんた。けれど、それ以上に子供の頃からずっと乗ってみたかったドリームランド行きのモノレールは、すでに数年前から運行が止まったまま、いまだにその錆びついた軌道と無機質なコンクリート製の支柱だけが街のなか、儚げに、ただ取り残されている。

「みんなって誰よ?」

 ボクは顔色をうかがいながら、そうミツキに訊ねた。

「こないだ大野にさぁ『みんなで行こう』って誘われたんだよ」

 と、いって、ミツキは「ニヤッ」と笑う。大野スミカと川澄マレンは、このクラスで一番の親友同士である。

「川澄も?」

 当然、「そうに決まってるだろうな」って思いながらもボクは、わざとそんな質問をミツキにしてみたんだ。――――


 1982年7月24日(土)
 昼の1時過ぎ

 土曜日の放課後、――

 雨曇りの空の下、ボクたちは4人並んで市営球場のほうへと向かって歩いていた。もちろん川澄マレンや大野スミカたちと、こうして学校帰り、一緒の時間を過ごすなんてはじめてのことだった。――南西のほうから吹き抜ける、ぬるくて湿った浜風が、市営球場に隣接しているこの公園の木製ベンチ、自然と二組に分かれて座るボクたちに、さっきから明日の天気の行方を気にさせていた。

 ボクが、ぼんやり重苦しい曇り空を見上げてると、ふいに、

「あのさぁ、最近って、ギター弾いてるんだって?」

 と、右隣に座っていたマレンが、横顔へ問いかけてくる。

「あ、……うん。だけどフォークギターしか持ってないんだけどね」

 彼女のほうへは目をやらず、曇った空へボクはつぶやく。

 それが中学2年で同じクラスになった川澄マレンとの、短い日常の挨拶以外で交わされたはじめての会話だろう。ボクは曇り空からゆっくりと、マレンのほうへと視線を移す。

 彼女は薄茶色した大きな瞳でボクを見つめて笑っている。かつて2人が通ってたスイミングスクール時代の甘酸っぱい気恥ずかしさが生み出していた距離感は、やがて次第に風に溶かされ薄れていった。

「いまってさぁ、どんな音楽聴いてるの?」

 と、ボクの横顔へマレンはさらに訊いてくる。

「日本人のじゃないから、たぶんわからないと思うよ」

 そう答えると、マレンは大きな瞳を微笑ませ、そっとささやく。

「じゃぁさぁ、明日、あたしに聴かせてよ」

 中学生になってから、躊躇(ちゅうちょ)してきたマレンとの、そんな他愛のない言葉のやりとり。――きっとボクは心のどこかで彼女と話すきっかけを、ずっと探し続けてたのかもしれない。そう、窓ガラスの向こうを桜花が春風に舞い散っていたあの日、川澄マレンをこの教室でふたたび見つけ出したときから、

――ボクはずっと、――――




【2012.04.14 記事原文】

荒井由実の「魔法の鏡」です。
この曲もものすごく好きですねぇ☆


変に狙わずに、こんなスゴいメロディ展開なんて作れないよなぁ。。。
この当時のユーミンは確かにものすごいモノ「持ってる」ね。


この曲が収録された1974年リリースの2ndアルバム『MISSLIM』も含めて、
初期のユーミンサウンドは、ベースで細野晴臣、コーラスで山下達郎等が参加してることでも有名!
まぁ、確かに・・・当時の日本で、あのクオリティは、音楽を知っている本物たちが支えなければ成立しない

カヴァーも何曲かあったケド・・・
やっぱオリジナルアレンジがダントツっす。

※著作絡みで削除されたらスンマセン。。。


魔法の鏡 - 荒井由実
2ndアルバム『MISSLIM』 1974年



【Re-Edit】 Moon Crying - 倖田來未 【バラードの名曲】

【Re-Edit】【2000年代邦楽バラードの名曲】


Moon Crying





小学校4年の夏休み、――

ボクらの街では、決して見られぬ三等星より遥かに小さい、まるで霧粒みたいな星々が、光の渦を描き出し、闇と溶け合う濃藍(こいあい)色の空の彼方、 ひときわ輝く恒星たちのまわりを「チラチラ」と揺らめいている。

「流れ星さぁ、見れるといいね」
マレンは、足元で「パチパチ」弾ける花火の色など気にもせず、煌(きら)めく星の海のなか、未知なる光跡が紺青(こんじょう)の夜空に描き出されるのを待ち焦がれてた。――


さっき、ボクが樹林のなかへマレンを捜しに行っているあいだ、広場ではキャンプファイアがすでに始められており、ボクらが着いた頃にはもう、みんなして焚き火を囲んで歌かなんかを歌っている最中だった。スイミングスクールのなかで一番おっかないコーチが、遅れてきたボクたちを見つけ、ものすごい剣幕(けんまく)で怒鳴り始めると、ボクはさっきマレンと示し合わせていたとおり、「急にお腹が痛くなって、マレンがボクに付き添ってくれた」っていい訳したんだけれど、どうやら先に広場へきていた女の子のうちの誰かが、「マレンがひとりで部屋へ戻っていった」ってことを告げ口してたらしくって、「お前、嘘いってんじゃない!」って、ボクは怒鳴られ、その後、コーチはずっとマレンのことだけを叱り続けた。

怯えながら大きな瞳を潤(うる)ませている彼女がなんだかすごく可哀想に思えてしまい、「彼女にお菓子を取ってきて欲しいとボクがお願いした」って、また嘘をついた。コーチはボクのあたまを、おもいきり平手で叩き、とりあえず彼の気は、なんとなくその一発でおさまったようだった。

正直いって、あのときボクがマレンのことを探しに行く必要なんてなかったんだ。そんなのコーチにやらせればよかったことなのかもしれない。――けれど、なぜかボクは彼女のことをなんだか放っておけなかったんだ。別に好きでもないのに、――どうしてなんだろう?

――歌の時間が終わると、今度は「フォークダンスを踊る」ってコーチたちがいい始める。
まぁ、小学校の運動会で踊らされた気もしたけれど、あまりよく踊りなんて覚えていなかった。

「じゃぁ、男女交互に並んで大きな輪を作れ!」

そう、おっかないコーチがいうと、「キャーキャー」いいながら、「誰の隣がいい」とか「誰々ちゃん、こっちきなよ」とかっていいながら、みんな一斉に騒ぎはじめた。すると、ボクが少し気になっていた女の子が走りながらボクとマレンがいるほうへ近づいてきて「ニッコリ」笑うと、ボクの腕を掴み、なにもいわずに友達たちのいる側へと引っ張りはじめた。

ボクは肩越しに、その場に佇むマレンを振り返ろうとしたけれど、――振り返らずにそのまま、その女の子に連れられていったんだ。

広場のある草原を囲う、さほど標高を感じさせない峰々は、そのいびつな輪郭を空との境界に違和感なく馴染ませている。山肌を覆った木立の幹はすっかり漆黒(しっこく)の闇のなかへと身を潜め、それらを包み込むよう生い茂った無数の深緑のうわべには、まるでカラスの羽みたく「ぼう」っと艶(あで)やかな月明かりが映し出されていた。

さっきこの広場へ入った瞬間、夜空一面を覆い尽くしていた星々の煌(きら)めきを、ふと思い出す。ボクは山影の向こう側に広がる空を見上げた。

立ちのぼるキャンプファイアの炎と煙に燻(いぶ)されて、ほとんど星の輝きなんて隠れてしまってる。ただ白々と浮かんでる月の輝きだけは、灰色がかった煙炎(えんえん)の向こうで、光りの輪を放ちながらこの草原の草花を滑らかに彩っていた。

結局、ボクは当初の念願通り、むかしから少し気になっていた女の子とフォークダンスで手を繋ぐことができたんだ。それにさっきは、彼女のほうからボクのことを誘いにきててくれていた。――けれど、思っていたほどには嬉しくなかった。――みんなで広場へくる前、ひとり、部屋へと戻っていったマレンに対して、「マレンのことなんて放っておけばいい」って、彼女が笑っていったとき、それまで抱き続けてた、その子への憧れにも似た想いが一気に変化してしまったのだ。

なんていうんだろうな、――とにかく、「好きだ」とかって感情は、その瞬間ほとんど消えてしまったんだ。それに、さっきボクの手を引っ張っていったのだって、なんとなくマレンに対するイジワルのようにも思えた。そのことに薄々気付いてはいたけれど、ボクは、マレンを置き去りにしてしまった。

(なんでこんなに罪悪感を感じてしまうんだろう?)


前から気になってた女の子と手を繋ぎながら、なぜだか急に思い出したんだ。さっきマレンと2人して、遅れてこの広場へ辿りついたとき、ボクのうしろで夜空を見上げたマレンの大きな瞳のなかに映し出された星々の輝きのことを、――

(あのとき、本当に彼女は艶々(つやつや)とキレイな目をしていたな)

焚き火を挟んで、ほぼ反対側の輪のなかに小さな体のマレンはいる。さっきコーチに怒られたせいだろうけど、どことなくまだ彼女の表情は冴えないままだった。もしかしたらボクと離れてしまったせいなのかもしれないけれど、――

「マイムマイム」がラジカセから大音量で流れてくると、ボクたちは左右の子らと手を繋ぎ、みんなで作ったその大きな輪をまわすようにしながら踊りはじめる。真ん中でコーチたちが見本で踊る姿を真似してボクもステップを踏んでいく。そのコーチらの向こう側、ションボリしながらマレンも同じよう、見よう見まねで踊ってる。

「川澄はカミュのことが好きだ」

「カミュはマレンのことが好きなんじゃない?」

いろんなヤツから散々冷やかされたそんな言葉が、あたまのなかにぼんやり浮かびあがる。

(ボクはマレンのことなんて、別になんとも思ってない)


――やがて曲は「ジェンカ」へと変わる。この哀愁漂うメロディとは、やや不釣合いにも思えるほどの軽快なリズムが逆になんだかすごく心地よかった。ボクは、少し気になってた女の子の両肩に手を置いて、焚き火のまわりを前へ、うしろへ跳ねるようステップしながらまわりはじめる。向こうのほうでは、マレンも小さい体で「ピョンピョン」飛び跳ねていた。

――最後に「オクラホマミキサー」が流れはじめる。この曲の場合、先の二つのダンスと違って、唯一、ダンスパートナーが1小節ごとに変わっていく。おもえば、去年の運動会でこれを踊らされたときが一番恥ずかしかったような気がする。何度目かのパートナーチェンジで、当時好きだった子とはじめて手を繋いだんだけど、きっと、その瞬間は、あからさまに、ボクのしぐさや表情に不自然なほどの恥らいが現れてしまっていたに違いない。――



【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】



【2012.10.04 記事原文】

さて。今週も納期が迫ったプレゼンに追われております故、
週明けまではブログ更新もままならないものと思われます・・・


こないだユーミンが荒井由美時代も含めた
初のベストアルバムをリリースするとかって
何かで読みました。。。40曲くらいだったか???

なんかついこないだボクが特集したユーミンネタとモロに被ってますが、
決してそういうニュースを知ってたうえでのものじゃぁ御座いません。
あくまで偶然です☆☆☆

まぁどんだけボクのチョイスと同じ曲が収録されるのか?
ちょいと気になるところでしたが・・・まぁそこそこ被ってましたかね(笑)


では!!
そんなこんなで多少足早かつ唐突に。。。
2000年代の邦楽でボクが良いと思ったバラードを数曲ご紹介☆

ボクは決して90年代以降の邦楽を聴いてない訳ではありませんが、
アルバムを買ったのはホントに記憶に無いくらいの枚数だけですね。

90年代以降の邦楽を一言でいえば「聴き飽きる」・・・コレに尽きます。
無論、カラオケ印税を意識した楽曲が主流となってますので、
「覚えやすく歌いやすい作品」というものがレコード会社からの指示として
出されているんだろうとは思いますが、半年後もカラオケで歌われるような曲って
ほんの数パーセントしかないだろうな。。。と個人的に感じます。


そんな中でボクがメロディと歌詞が非常に優れたバラードをチョイスするとしたら・・・
まずは倖田來未さんが2008年にリリースした40枚目(そんな出してるんか?)の
4曲入りシングル「MOON」のオープニングトラック「Moon Crying」をご紹介♪


以前も書いた気がしますが・・・
倖田さんの声域って今日の若手男性ヴォーカルに比べても非常に狭く、
通常の女性シンガーであれば絶対に成功しないように思えますが、
独特の艶やかなアジを持っております。。。

この曲がスゴイのはサビ小節が2回繰り返されてるところでしょうね。
そうすることでドラマティックさが非常に増幅されてるように感じます☆

PVの彼女のスッピン顔はなかなか素朴で好きですね☆
でも・・・もし街で会っても「倖田來未に似てませんか?」とは言われないかも???






Moon Crying - MOONMoon Crying - 倖田來未 
7thアルバム『TRICK』 2009年

【Re-Edit】 最後の言い訳 - 徳永英明 【バラードの名曲】

【Re-Edit】【邦楽バラードの名曲】


最後の言い訳





1983年9月13日(火)

「また、さっきの中学のヤツらと会ったらどうする?」

本宮での参拝を終えたあと、大石段を降りながら、そびえ立つ大銀杏(おおいちょう)の木を眺め、ショウカは、ふとそんな心配を口にする。

けれど、もしDt中学の連中に会ったとしたって、きっと今日はもう、ヤツらはなにもしてこないだろう。メイの兄貴、「リケン」の名には、聞くものすべてを震撼(しんかん)させ、容易く畏敬の念を抱かすほどの厳威(げんい)が漂っている。

鶴岡八幡宮の境内には、同じ中学の生徒たちも数多くきているようだった。途中で2グループくらい同じクラスのヤツらともすれ違ったけれど、ボクたちと一緒にミチコがいるってことに驚き、彼らはみな一様に首を傾げ、不思議そうな顔をしてこっちを見ていた。

ミチコはそのことをなんだか恥ずかしがってたようだけど、メイに、「別に気にする必要なんてない」っていわれると、小さな顔に少しだけ安堵の表情を浮かべた。

八幡宮の参道入口に造営されている三の鳥居を抜ける頃、時刻はちょうど午後3時になろうとしていた。――由比ガ浜の海へと延びる若宮大路を中央で分離するよう築かれた「段葛(だんかずら)」と呼ばれる土の参道を歩きながら、ボクたちは鎌倉駅へと向かう。この参道と、八幡宮の太鼓橋だけは、七五三のとき、ボクがこの地を訪れたすべての年代の記憶に、その風景が残されている。

石積みされた段葛の両側を、植樹された桜の樹々が海のほうまで立ち並ぶ。きっと春には、見事な桜のトンネルがこの参道を包み込むよう、人々が、心で感じる新たな季節の暦(こよみ)を変遷(へんせん)させてくことだろう。

あまりもう時間もなかったので、最後に鎌倉駅から江ノ電に乗り、極楽寺を参拝し、そこでボクたちの、この小さな旅を終えることにしたんだ。――「小さな旅」と、いったって、かなり濃密な一日だったことは間違いないだろう。
さまざまなアクシデントに見舞われながら、みながそれぞれ心に隠し持っていた、そのあまりに深い愁傷(しょうしゅう)の想いをありのままにさらけ出したとき、ボクははじめて知ったんだ。彼らがずっと抱えてきた、心の闇の深遠を。――

けれどメイだけは、いっさいみずからの過去を悲嘆することもなく、ずっとみんなを励まし続けていた。あまりにも彼女の言葉が超然とし過ぎてて、ボクには到底理解できないところもあったけど、なんとなく、普段ずっと閉ざされている彼女の心のなかを、僅(わず)かながらに垣間見ることができたような気がする。

――江ノ電の車内は、帰宅する観光客で混雑しはじめていた。そんな人の波にボクとメイは、ほかのみんなとは分断され、体を寄せ合うようにして、目の前の横座りシートに腰掛けた中年女性たちのひざとひざの間に、みずからの足の置き場所を探していた。ゆっくり走し出すその車中、ボクらにはひと言の会話すらなかった。

肩が触れ合うこの距離で、メイの涼やかな瞳を見つめることなんて、ボクには絶対、不可能なことだ。―― 一瞬、彼女が横目でボクを見つめる、――ボクは、そのくすぐったいような視線のせいで、さらに言葉を失ってゆく。

今回、鎌倉に行こうと思った一番の理由は、この機会に一度、メイとゆっくり話してみたかったからだ。けれど、もしその成果を誰かに問われたならば、お世辞にも目的が果たされたとはいい難い。――

メイにせよ、ミチコにせよ、まぁ田代にしたってそうだけど、いままで彼らの声を、日常のなかではっきり聞いた覚えなど、正直なところほとんどなかった。そう考えれば、中3になってからの半年間で、時折、教室内で耳にしてきた、その何倍もの彼らの言葉を、たった一日で聞くことはできた。――

だからって、ちゃんとみんなと会話が成立したってわけでもない。メイがどう思ってるかわからないけど、たとえばボク自身、いきなり「明日から教室でミチコと仲良く話せるか」っていわれても、まだなんともいえない。いままでみたく、「いっさい話さない」ってわけではないだろうけど、そこまで打ち解けたってわけでもない。

それにきっとメイとも教室内でときどき、ひと言ふた言、ありきたりな挨拶を交わす程度の、いままで通りの感じのままなんだろうな。――田代に関しては、「なんとなく少しは仲良くなったかな」って思うけど、コイツも来月には転校してしまう。だから、きっと今日一日、みんなと一緒にいたからって、明日からのボクらの関係は、ほとんどなにも変わらないんだろうなって思うんだ。――



【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】



【2012.11.30 記事原文】

別にそういうシチュエーションになったからという訳ではないんですが。。。

何故か昨日あたりから妙に聴きたくなった徳永英明氏の「最後の言い訳」。
当時、この曲が聴きたくて5thアルバム『REALIZE』を買いました・・・

この頃の徳永氏の歌声はスゴイですね☆
もともと高音域を活かした楽曲が多い彼ですが、
特にこのセンチメンタルなメロディに切ない想いを込めた「最後の言い訳」。

抑え目なAメロからサビで解き放たれたときの彼には
なにやら情念のようなプラスアルファのパワーを感じます。。。
※特にエンディングのサビのリピートは圧巻☆

・・・しかし・・・あまりにも心が痛くなる曲です・・・





最後の言い訳(Los Angels Mix) - REALIZE最後の言い訳 - 徳永英明 
5thアルバム『REALIZE』 1989年

【Re-Edit】 片想い - 浜田省吾 【バラードの名曲】

【Re-Edit】【浜田省吾バラード特集】


片想い






1984年1月25日(水)

ベッドで仰向けになったまま、ボクはおもむろに枕の下に敷かれていたクッションを、あたまの後ろから引っ張り出した。去年の誕生日、ピザ屋で川澄マレンから貰った、ボクの顔らしきイラストがパッチワークされた水色の枕。――彼女と会わなくなってからも、それはずっとベッドに残されたままだった。だけどそれだけじゃちょっと低いので、その上に別の枕を置いていたんだ。

窓の向うには、ちょうどキレイに半分だけを光輝かせている下弦の弦月(はんげつ)が浮かんでいる。
ボクはその淡い月明かりを眺めながら、さっきまでずっと卒業ライブで歌うための新曲の歌詞を考えていた。けれど、どれだけ関係のない言葉をあたまのなかで無意味につむぎ合わせてみても、最後には、結局マレンの面影のほうへとその言葉たちは向かっていってしまう。

ふと、ボクがはじめて『L』でトリップしたとき、幻影のなかでマレンがいっていた、「絶対に当日まで読んじゃいけない手紙」のことを急に思い出し、彼女から、今年の誕生日に貰った枕を調べてみたんだ。けれど、この枕のなかにも、そんな手紙などは縫い込まれていなかった。
(ここにもないとすれば、もうほかには思い浮かばない。やはり、ただの幻覚だったのかもしれないな)
最後の可能性を失ってしまうと、なんとなくそう考えるようにもなり始めていた。

(枕以外で、ボクがマレンから誕生日に貰ったものって、――)
ボクは「ハッ」となり、慌ててベッドから飛び起きる。そして押入れの奥にしまい込んだまま、ずっと捨てずにとっておいた紙袋の束を取り出した。ひとつの紙袋からは、薄っすらと、なにかの匂いが放たれていた。それはたしかに、ボクの記憶のどこかに鮮明に刻み込まれている匂いだった。
(この匂いを、いったいボクはどこで感じたんだろう?)

誕生日にマレンから貰った枕が入っていた赤くて大きな紙袋。――折りたたまれていたその袋を広げると、長いあいだ閉じ込められていた甘い香りが一斉に湧き上がる。
その香りの底に、ボクはようやく見つけ出したんだ。あのとき彼女がいっていた『予言の手紙』らしき封筒を。――

「1983年8月24日、当日の夜まで絶対に読んじゃダメだよ」
その封筒の表紙に綴られた動物の絵のような丸文字。
それは間違いなくマレンの字だった。――


1983年7月23日(土)

ボクは、薄曇りの空を見上げる。その日、マレンは白いワンピースを着ていた。
ちょうど1年前、ボクらがはじめて一緒に横浜の遊園地へ行ったときも、彼女は小さな花柄模様の入った白いワンピース姿だった。
彼女のお母さんが入院している病院を出ると、ボクらは鎌倉の海岸のほうへと向かって歩き出す。時折、風のなかに、なにか香水のような甘い香りが漂っているような気がした。
松の防風林がずっと続く小径(こみち)の先に、くすんだ夏色の雲影を映し出す水面(みなも)が揺らいでいる。――

午前中にマレンから、
「今日のデートを中止にして欲しい」
って電話があって、いまさっき、ボクは彼女のお母さんが入院しているこの病院に着いたばかりだ。マレンのお母さんは依然として昏睡状態が続いており、さらに脳にもなにかの異常が見つかったみたいだった。
夏休みに入って最初の土曜日の今日、本当は2人で横浜へ出掛ける予定だったんだけれど、お母さんの検査結果を聞かされたマレンはひどく落ち込み、とてもデートになんて出掛けられるような状況ではなかった。不安げなマレンをそのままにはしておけず、とりあえずボクは、彼女がお母さんに付き添っている鎌倉の病院へと向かった。

けれど、そんなボク自身も、決して心が晴れ晴れしていたわけじゃない。数日前、両親から突きつけられた現実に打ちのめされ、ずっとその言葉に心が縛り付けられたままだった。
だけどボクは、こないだマレンに約束してしまったんだ。
「もし川澄のお母さんが元気になったら2人で一緒に暮らそう」
って、――

ボクらは手をつないでいたけど、さっきからほとんどなにも話していない。彼女はきっとお母さんのことを心配しているんだと思う。そしてボクは、ずっと両親から浴びせかけられた辛辣な言葉ばかりを思い返していた。――


1984年1月25日(水)

――マレンからの手紙を持つボクの右手が、微かに震えている。
それが少しだけおさまってくると、ギターケースの上に置かれていたバタフライナイフを手にし、封筒の上辺に刃先を差込み、ゆっくりと真横に切り裂いていった。なかには水色の便箋が3枚折り重なるようにして入っていた。あの香りは、どうやらこの便箋に染み込んでいたようだ。
3つに折りたたまれた手紙を広げると、一枚目の手紙の一番上に、

「カミュとマレンの未来について」

と、いう見出しが書かれていた。
ボクは床の上にうつ伏せになりながら、肌寒い蛍光灯の青白い灯りの下でその手紙を読み始めたんだ。そう、一字一句まで決して見逃さないようにしながら、――


1983年7月23日(土)

(マレンと暮らしたい)
ただ漠然とそう思っていたボクに、両親から突きつけられた現実はあまりにも当たり前な正論でしかなかった。けれどその正論は、それまで根拠のない自信によって希望的観測を抱いていたボクの心を粉々に打ち砕いたのだ。

(いまのボクには、なにもできない、――いまのボクには、なにもなかったんだ)
自分自身に対しての圧倒的な無力感を一瞬にして痛感させられたのである。
たかだか、まだ14歳のガキでしかないボクに、ひとりで明日を普通に暮らしていけるだけの力なんてものは、なにもなかったんだ。と、――
ましてや、いっさい親に頼ることなくマレンと一緒に暮らしていくことなど、到底、いまのボクにできるはずもなかった。

(マレンは、お母さんのことで相当に落ち込んでいる。だから、少なくとも今日、この話をするのはやめるべきだ)
そんなことはわかっていた。――わかっていたはずなのに、ボクの口から勝手に滑り落ちていった言葉は、そんな彼女の心をまるっきり無視していた。
「あのさぁ、……こないだ会ったとき、いったんだけどさぁ、『一緒に暮らそう』って。だけど、やっぱりすぐには無理だと思う」
「カミュちゃんのご両親に反対されたんでしょ? それは仕方ないよ。だって普通は反対するんだろうからねぇ」
海岸に積み上げられた防砂ブロックの上に座りながら、そうささやいたマレンの首のあたりから、柔らかく立ち上がる甘い香水の香りが、鎌倉の潮風と溶け合う。
「香水、つけてるの?」
と、ボクは訊ねた。
「あぁ、これね。むかしからずっとお母さんがつけてた香水なんだ。この匂いを感じたらさぁ、もしかしたらお母さんが起きてくれるかもしれないでしょ。だからね、――」
そういって、マレンの言葉は止まる。
ボクがどんな顔をしてたのかはわからないけれど、きっと彼女の言葉を断ち切ってしまうような表情をしていたのだろう。希望を語った笑顔とともに、――

濃厚で尖った甘さを含む、その香水の匂いが少しだけボクにはキツ過ぎた。それに、まだ若いマレンには、あまり似合ってない匂いのような気がしたのもたしかだ。けれど彼女にとって、それは昏睡状態のお母さんを目覚めさせるための希望の香りだったのだ。そんなことはわかってたんだ。

「匂い、……気になる?」
マレンの口調が、だんだんと弱まってゆく。
「いや、別に気にはならないけど、なんかまだ、川澄には似合ってないかもね」
そういって、ボクは微笑みもせず、彼女を見つめてしまった。
「ゴメンね。こんなの、――やっぱりつけてこなければよかったね」
と、小さくつぶやいたマレンの瞳の色が、あまりにも寂しげに思えた。いつだって彼女の艶やかな瞳のなかに浮かび上がっていたはずの、星空のように光り輝くあの色は、そこに浮かんでいなかった。

いつものボクならば、きっとこんな事なんて絶対にいわなかったろう。だけど今日のボクは、彼女が傷つくとわかっているのに、傷つけたり、悲しませたりするような言葉を平気で口にしてしまうんだ。
絶対にマレンを傷つけたくないのに、なぜなんだろう、――
ボクは、彼女になにをいいたいんだろう、――


1983年12月24日(土)

ボクは、ステージ上から観客席に笑いかける。
そして、メジャーコードをストロークしながらぼんやり考えていたんだ。――

ボクらが生きてる理由なんて、考えるまでもなく単純なことさ。
「生まれてきたから、ただ生きているだけ」
もし、それ以上の理由を求めるとすれば、きっとそれは真理ではなく、単なる恩寵(おんちょう)への希求だ。
「やりたい仕事」だの「将来の夢」だのってものは、別にボクらが生きていくためにどうしても必要なものってわけじゃない。そんなものは「生きている理由」なんかじゃなくって、暇つぶしのための、単なる手段に過ぎない。
生き甲斐を見つけられないからって、別に死ぬわけでもない。
「つまらない人生を生きている」
ただそれだけのことだ。

【なんで生まれてきたと思う?】
たぶん奇跡によって、……かな

【あなたは、なにをしたいの?】
もし、しなくてもいいなら、なにもしたくない。
しなきゃいけないことがあるのなら、なんとなくそれをするだけ。

【なんのために生きてると思う?】
まぁ、自分の人生を見届けるため? なのかな。

【じゃぁ、誰のために生きてると思う?】
きっと、幸せにしたい誰かのためだろ?

【あなたにとって、幸せとは?】
ボクの幸せ? ボクの幸せ、――
それは、……きっと心から「幸せになって欲しい」と願う誰かが幸せになってくれること。つまりは、幸せにしたいと想う、たったひとりのその誰かと、何十億もの人々が暮らすこの広い世界のなかで巡り会えること。なのかもしれないね。

そう、大切なその誰かのことを絶対に「幸せにしよう」とする自らの覚悟。――
もしそれだけあれば、それ以外なにもなくたって、きっと楽しく生きていけるんだとボクは信じている。
ボクらはいつだって、自分が生きていることの理由ばかりを求めがちだ。だからいつも見失う。けれど、もし大切にしたい誰かと、ともに生きていくのであれば、決してその理由を見失ったりなどはしない。

あの日、川澄マレンはいっていた。
「どんなに『嬉しい』って思うことがあってもね、もしひとりきりじゃさぁ、その嬉しさって絶対に感じられないんだよ。本当に『嬉しいな』って感じるときってね。一番喜ばせたいと思っている誰かがね、一緒になって心から喜んでくれたとき、……喜ばせたいと思う誰かが、嬉しそうに笑ってくれる顔を見れたときに、きっとはじめて感じられるものなんだよ。……だから、どちらかひとりだけが嬉しいだけじゃきっとダメなんだよ」

たしかに、そうなんだろう。
「その誰かが、心から嬉しそうに笑ったときの笑顔」――
それさえあれば、きっとボクらは生きていける。その誰かのことを、ずっと笑わせ続けていくためだけに、きっとボクらは生きているんだ。

たとえ、そこが眩い陽射しを水面(みなも)に湛えながら、エメラルド・ブルーに光輝く海の色に囲まれた楽園でも、荒涼とした大地に雷鳴轟く極寒の地獄だったとしても、もし2人でならば、「きっと笑って生きていける」――そう信じられる誰かと出会えたならば、それ以上、ほかになにが必要だというのだろうか。

いまのボクが、いったい誰のためにこの曲を歌おうとしているのかはまだわからない。 その答えが曖昧なまま、ずっとギターの弦を奏で続けていた。――



【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】




【2012.04.10 記事原文】


浜田省吾の代表曲のひとつ「片想い」。
ちょいブルーが入ってる人ならば誰でも泣ける。
紛れもなく別れの名曲?…ですね。


しかし...何でこんな曲が書けるんだ???


しかし。。。
今まで全く気にしてなかったんだが、
果たしてどっち目線の歌なんだろう???
女性目線だったのかな?





片想い(1978) - Illumination片想い - 浜田省吾
3rdアルバム『Illumination』 1978年

Masterpiece of the Western music of the 70s/70年代洋楽の名曲
If you want to cry/泣きたいとき
If you want to be healed/癒されたいとき
Drinking alcohol/お酒を飲みつつ
While driving/ドライブしながら
If you want to Fever/血が騒ぐ
Masterpiece of the Western music of the 80s/80年代洋楽の名曲
80's Ballard masterpieces/80年代バラードの名曲
80's Rock masterpieces/80年代ロックの名曲
80's Pops & AOR masterpieces/80年代ポップスの名曲
70's Dance masterpieces/70年代ダンス系の名曲
Masterpiece of the Western music of less than 70s/70年代未満洋楽の名曲
Less than the 70's classic Ballad/70年代未満バラードの名曲
Less than the 70's classic Rock/70代未満ロックの名曲
Less than the 70's classic Pops & AOR/70代未満ポップスの名曲
Masterpiece of the Western music of more than 90s/90年代以上洋楽の名曲
Ballade more than of the 90s/90年代以上バラードの名曲
Rock more than of the 90s/90年代以上ロックの名曲
Pops & AOR more than of the 90s/90年代以上ポップスの名曲
90's Dance masterpieces/90年代ダンス系の名曲
Masterpiece of the Japanese music/未来に残したい日本の名曲
Dedicated to sweethearts/恋する二人に捧ぐ
Spend the night with sadness/悲しみと共に過ごす夜
Nostalgic feelings/ノスタルジックな想い
In the room which shines with the morning sun/朝日が差し込む部屋で
While looking at the setting sun in a hotel/夕陽が見えるホテルで
Memories of youth/若かりし日々の思い出
If you want to fuss/タテノリしたい気分なとき
If you want to feel the Rock/かなりRockな気分
Masterpieces of Instrumental/インストルメンタルな名曲
 
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