QLOOKアクセス解析

未来に残したい洋楽&邦楽の名曲

70~80年代の洋楽&邦楽を中心に未来に残したい名曲&名盤を独自にチョイスするBlogです☆
未来に残したい洋楽&邦楽の名曲 TOP > 恋する二人に捧ぐ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

【インスパイヤー】 魔法の鏡 / 荒井由実

【もしよろしければ、「魔法の鏡/荒井由実」をBGMにお読みくださいませ】


クレゾール石鹸液の匂いが、
力いっぱい張られたピアノ線みたいに、
透明な緊張感を絶えず感情の内側にもたらしている。

まだ嬉しそうに笑っていた頃のわたしと、
その隣で、わたしの左肩をはしゃいで抱いてる彼を見つめた。

彼との三年間の思い出を封じ込めた、なんてことのない、
けれど夢のように過ぎ去りし日々の記憶が、時間とともに切り取られ、
それはとても小さな平面空間のなかにあって、
こうして溢れんばかりの幸せな色彩をすぐ傍らに充たしていた。

三つ年下の妹からもらった木目のきれいなフォトフレームのずっと向こう、
淡いヴェールを編み込みながら白糸は、たゆたう波影の縁をそよめき、
ピュアブルーの海のみなもを、ダイヤモンドの粒たちが水平線まできらめいている。


ベッドに仰向けになったまま、
使い馴れた真鍮製の手鏡に映し出されるわたしを見つめた。
痩せたな……
そう思うほかには、外見上のさしたる変化を鏡のなかには探せなかった。


タクちゃん。
18年の人生に、わたしが残した二つの後悔を教えてあげるよ。

それは、「絶望」という足かせをはめられた、
こんなわたしが慰めるほど、いつだって動揺を隠せず、
病室で泣き伏す母の涙を全然消せないこと。

そして……あなたに嘘をついたまま、
あなたの前から突然姿を消してしまったことだよ。

でもね、わたしもすぐに治ると思ってたんだ。
タクちゃんの誕生日までには元気になってるつもりだったんだ。
だから「退院したら電話するね」って、あのとき笑っていったんだから。
タクちゃんに嘘をつくつもりなんてなかったんだよ。

今だってさぁ、全然信じられないし、まだ全然信じてないんだけど……
だけどね、なんだかわたし、もう退院できそうもないみたいなんだよ。

会いたいよ、タクちゃん……
ものすごく会いたいけど……

もし会えなくても、せめてタクちゃんの声だけでもいいからね、
聴きたいなっていつも思うんだけど……
どうしてもね、電話できないんだ。

だって、なに話していいのかなんて分かんないじゃん。

「春休みのディズニーランド、すごく楽しかったね」とか
「去年、伊豆の海で見た星空、ものすごいキレイだったね」
とかさぁ、なんだか全部が過去形になっちゃいそうで、
ものすごい嫌なんだよ。

だからね、おとといの夜、タクちゃんに手紙を書いたんだ。
そこにわたしの想いをね、全部書いといたから。

ホントは今日じゅうに、妹に渡してもらうはずだったんだ。
だけどあの子、部活で忙しいらしくってね。
たぶんタクちゃんのとこに届くのは、
早くてもあさってくらいになっちゃうのかな。

そういえば手紙なんて、
今までちゃんと書いたことなんてなかったよね。
だからきっと、それがさぁ、
最初で最後のわたしからの手紙になると思うよ。

わたしはね、本当はタクちゃんと、ずっと――――

と、突然、薄黄色のカーテンの向こうから声がした。

「お姉ちゃん、起きてる?」
小さな花束を抱えた妹が、ベッドの足元から顔を覗かせた。

「あぁ、キヨ、来てくれたんだ。もう遅いから今日はこないと思ったよ。そうそう、あの手紙さぁ」

「あっ、ちょっと待って」
妹のキヨミは、ニッコリと笑窪を浮かべると、小さな顔を引っ込めた。

まったくお見舞いに来るんだったら、
タクちゃんに手紙を渡しに行って欲しかったのに、
わたしはそういう風に思って少しだけムッとした。

そしてまた、ベッドの脇に置いてあった手鏡で、やつれた顔をぼんやり眺めた。

「読んだよ。手紙……」

「えっ」その声に思わず驚き見上げると、
制服姿のタクちゃんがそこに立っていた。

「だからさぁ、ちゃんと読んだから……手紙」

「どうして……」
わたしは一番想像していなかった現実に、
つい病気のことなど忘れていた。

「妹さんが学校の校門のとこにいてさぁ、そしたら『一緒に病院に来て』って」

タクちゃんは茶色い髪をかき上げて、窓際のほうへ歩いて来た。
近づくほどにタクちゃんの顔は滲んで見えなくなってゆく。

「タクちゃん……わたしね、もう……わたし」

タクちゃんはベッドの脇に座るなり、
わたしの右手から手鏡をそっと取り上げた。

「俺はね、後悔しないために……最後までお前と一緒にいたい。だからお前もさぁ」

タクちゃんは突然声を震わせ、
わたしの手のひらをギュウッと強く握りしめた。

「頼むから最後まで俺の彼女でいてくれよ。頼むから最後まで諦めないでくれよ……生きてる限り……」

そう呟くと、タクちゃんはわたしの右手を頬に押し当て号泣し始めた。
彼の泣き顔を見つめながら、わたしの胸元に詰まっていた様々な想いが……
タクちゃんと会わなくなってから、ずっと溜め込んできた哀しみの結晶が、
体から全部溶け出し瞳に溢れた。

あとどれだけ生きられるのかなんて分からない。

けれど、これまで一度も感じたことのない、愛しい涙の暖かさに、
わたしは生まれて初めて本当の恋を知ったのだ。

タクちゃん……ホントにいいんだよね。
じゃぁさぁ、甘えちゃうからね。

大変かもしれないけれど……
最後まで一緒にいてね。

わたしがこの世にいられる限り……
わたしが生きていられる限り……
スポンサーサイト

【2013 Rakiが選ぶクリスマスソング】 クリスマス - JUDY AND MARY 【ロックの名曲】

【2013 Rakiが選ぶクリスマスソング】【邦楽ロックの名曲】


クリスマス





個人的に。。。
ジュディマリのYUKIさんという御方、まぁ、ある意味「理想の女性像」としての
いくつかのファクターを見事クリアしておりまして、デビュー当時から
妙に惹かれておりましたわなぁ☆・・・あくまで個人的に。。。ですけども

さて!
そんな彼女率いるJUDY AND MARYが1994年にリリースした名盤アルバム
『ORANGE SUNSHINE』から、ロックテイストのキャッチーなクリスマスソング
「クリスマス」をチョイスっす♪ ん? 名詞がちっとかぶったか? まぁいいか。。。





クリスマス - JUDY AND MARY
2ndアルバム『ORANGE SUNSHINE』 1994年


【2013 Rakiが選ぶクリスマスソング】 今、伝えたいこと - CODE-V 【バラードの名曲】

【邦楽バラードの名曲】


今、伝えたいこと





つい最近。
たまたま、なにかの音楽ランキング番組を観るでもなく観ていたときに、
ふとテレビから聴こえてきたフレーズ。

どうやら韓国のCODE-Vという方々の歌だったみたいで。。。

メジャーコードの儚いピアノの調べに乗せ、恋人同士が織り成す冬の情景が
見事に美しく描き出された非常に秀逸なバラードでございます☆

う~。。。
やっぱ、ストリングスってシンセじゃなくって生音のほうが心に染みますね。

っつうか、

この歌声に折り重なるドラマティックで荘厳なオーケストレーションはハンパじゃない。。。

久々に聴くホンモノの音楽の重厚さに、ちと感動しました☆
きっとこんなの生演奏で聴いたら「ウルウル」しちゃいそうっす(笑




今、伝えたいこと - CODE-V
2ndアルバム『代々木』 2013年



【2013 Rakiが選ぶクリスマスソング】 Can't Wait 'Til Christmas - 宇多田ヒカル 【バラードの名曲】

【邦楽バラードの名曲】


Can't Wait 'Til Christmas





相変わらずご無沙汰しております☆

さてさて。いやがおうにも街はクリスマスへと向かって
夜の風情を変化させていくわけですね。
まぁ、ここ数年、大して盛り上がりもせずに
ぼんやりクリスマスを過ごしてきたボクですけど、
この季節の慎ましやかな喧騒は、決してキライじゃありません。

個人的には、仲間と大騒ぎっていうノリよりは、キャンドルの炎を眺めて
静かな音楽に浸る。。。みたいな過ごし方が好きですが(笑

では、来週あたりまでは、ちょっとクリスマスっぽい選曲をしてみようかと。

まずは、宇多田ヒカルさんが2010年にリリースしたベストアルバム
『Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.2』から、せつないピアノの旋律に
気取らずありのままの感情を綴った歌詞が妙に心をシンミリさせる
「Can't Wait 'Til Christmas」をチョイス♪

彼女の声ってナチュラルですごく良いですなぁ☆







Can't Wait 'Til Christmas - 宇多田ヒカル 
ベスト盤『Utada Hikaru SINGLE COLLECTION VOL.2』 2010年




【Re-Edit】 Yes - No - オフコース 【ポップスの名曲】

【Re-Edit】【ポップスの名曲】


Yes - No






Epi-14

 1981年10月7日(水) 中学1年の二学期
 3時限目が終わった休み時間

 晩秋にそよぐ風。――ただ、その余韻のなかにしか感じられないはずなのに、嗅覚で記憶されたそれまでのあらゆる匂いを、ときに激しく、絶えずほんのり甘やかなこの香りは一瞬のうちに上塗りし、すべて残らず消し去ってゆく。

 あらゆる風情に紛れ込み、毎年、記憶の深奥(しんおう)へ、その存在を印象づけていく金木犀(きんもくせい)の芳香(ほうこう)だけが、映像のなかに色とともに漂い続け、繰り返し、――繰り返し、積み重なっていきながら、ボクたちの記憶の端に付箋(ふせん)となって残されていく。

 だから、この香りが遠慮しがちにこの街を包み込む季節がくるたびに、ボクらは、その色めく薫香(くんこう)が浮かびあがらす淡い懐かしさの追憶にふけるのだ。

 中学1年になってから三度目の席替えで、春山サエが目の前の席に決まった瞬間、きっとボクは、この学校に入ってはじめてのときめきと沸き立つ喜びを同時に感じていたに違いない。八重歯が印象的な彼女の瞳は、眼鏡をはずすといつだって泣き止んだ直後の子供のように少し寂しげに潤んでいた。

 うららかな春の陽光がこぼれ落ちる4月、この教室ではじめてサエの可憐な笑顔を見たときから、ボクは彼女に惹かれていたんだ。

 校門を出ると、学校の敷地に沿って設けられたネットフェンス越しに軟式テニス部の練習風景が見える。放課後になると、ボクはいつも足早に家路へと向かいながら、先輩部員たちよりも少しだけ背の高いショートヘアのサエのうしろ姿を見つめていた。

 すっかり日没が早くなりはじめた秋の夕暮れ。――

 少し前まで、しなやかな素足を隠さなかった彼女も、いまでは濃紺色のジャージ姿で、細長く延びた影を引き連れながらコート上を懸命に駆けまわり続けている。――

「わたし、オフコースが好きなんだよねぇ」

 ある日の休み時間、春山サエはうしろに座るボクのほうへ、少し陽に焼けた小さな横顔を向けながら突然、そう話しかけてきた。それが中学に入ってから彼女とマトモに話した最初の会話だった。

 ボクがオフコースの「さよなら」をはじめて聴いたのは、小学校5年くらいのときだったろうか。おそらくは、どこかのスキー場のレストハウスで流れていたように思う。ちょうどこないだ、オフコースが二枚リリースしていたベスト盤『セレクション(SELECTION)』のカセットを買ったばかりだった。そのカセットを取り替えながら、毎日、気に入った曲ばかり繰り返し聴いていたんだ。――――

「オレも、たまに聴いてるけどね」

「えっ! シーナ君は、どの曲が好きなの?」

 と、サエは右肩越しに微笑みながら訊ねてきた。

「うぅ~ん、……イエス・ノー(Yes-No)かな」

 この曲が一番好きだというわけでもなかった。けれど、オープニングで奏でられるシンセサイザーのイントロがすごく印象的だったんで、たまたまそう答えてみた。

「あの曲ってさぁ。すっごくイントロがいいよね!」

 と、サエも微笑みながら小さく頷く。結果的に2人の会話はうまくかみ合いながら、よい方向へと繋がっていったんだ。

 授業中、彼女のうしろ姿しか見たことのなかったボクのほうへ、その瞬間、サエは嬉しそうに微笑みながら、おもいっきり体ごとイスの向きを変える。そして眼鏡をしたままの潤んだ瞳でボクのことを見つめた。

 おそらくこんなにも間近で彼女の顔をちゃんと見たことなんてなかったろう。放課後、格子状のフェンスの外側から、遠目にコート上を走りまわっている彼女の姿を追っていただけのボクに、そんなことなんてできるはずもなかったのだから。――

 おもわずサエから目をそらし、教室の窓のほうを眺めた。微笑んだときの彼女の八重歯が、やけに可愛く思えたので、なんだか少しだけ照れくさくなったのだ。

 彼女は、そっとささやいた。

「こないださぁ、シーナ君、『時に愛は』を、はなうたで歌ってたでしょ? だから、もしかしたら『オフコースを聴いてるのかな』って思ってね」

 もう冬も近いせいだろうか。

 弱い西陽に照らし出された窓の外側の世界は、いつも以上に静かに、そしてゆっくりと時間が流れているように思えた。結局、サエにはいわなかったけれど、ボクがホントに好きな曲は「ワインの匂い」なんだけどね。でもそれは、彼女と交わす次の会話のきっかけとしてとっておいたんだ。……

 ほかの人からすれば他愛もないことなのかもしれない。けれどボクにとっては、とても大切なオレンジ色に染まる夕暮れのひととき。

 やがて、深かった新緑の木々たちもいっせいに枯葉色へと変わってゆくのだろう。いまではすっかり色白になってしまった彼女の頬を、北風がピンク色に染めてゆく季節が、もう間もなくこの街に訪れるのだ。――――



【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】



Yes - No - オフコース
ベスト盤『SELECTION 1978-81』 1981年


Myself~風になりたい - 徳永英明 【バラードの名曲】

【邦楽バラードの名曲】


Myself~風になりたい






1983年9月13日(火)

「――しばらくして、学校でメチャクチャにされた彼女の自転車が見つかった。でも、結局、犯人は見つからなかったんだ。それどころか『小山さんが自分で自転車を壊した』ってことにされてしまっていた。――クラスのみんなは、犯人が誰かなんてこと、とっくにわかってたけど、誰もそのことを先生にいわなかった。そしたら、それから数日後、――ボクの机の下に、自転車のサドルが置かれてたんだ」

うつむく田代の大きな顔を、ボクは黙って見つめていた。

「ほら、ちょっと早く! 2人とも! もう置いてくよ!」

遠くからショウカの甲高い声が聞こえてくる。――けれど、まるっきりそんな彼女の声が聞こえなかったかのようにして田代は、おそらく小学校の頃からずっと心に押し留め続けてきた後悔の言葉を、ただ、ひたすら吐き出していった。

「――ボクは、慌ててそのサドルを学生カバンに押し込んで、廊下のロッカーのなかへ隠した。『ボクが犯人にされる』と思って、怖くなって、ついそれを隠してしまった。――そのとき何度も先生にいおうとしたんだ。本当の犯人の名前を、――でも、どうしてもいえなかった。その日の学校帰り、彼女のサドルをどこかに捨てようとも思ったけれど、誰かにその現場を見られるのが怖くって、それを家に持って帰って、庭にあった物置の奥のほうへ隠してしまった」

「仕方ねぇよ。お前がそうした気持ちは、オレにもなんとなくわかる」

ボクは、静かにそうつぶやく。――ふと見ると、田代は大きな肩を微(かす)かに震わせていた。

「ボクならば、あのとき小山さんを助けられたはずだったんだ。……もし、犯人の名前を、勇気を出して先生にいってたとすれば、――そのサドルを持って、ちゃんと先生に話をしたのであれば、少なくとも小山さんが『自分で壊した』なんて犯人扱いされることもなかった。――けれど怖かった。サドルを隠してしまったことで、ボクも犯人のひとりになってしまったかもしれないという事実が、ものすごく怖かったんだ。――そしてなにより、……小山さんの悲しみを一番わかってたはずなのに、彼女のことを見放してしまった自分自身のことが、ものすごく嫌になった。どうしようもないヤツだって思ったんだよ」

ボクは、田代の大きな背中を軽く叩くと、横顔に小声でささやいた。
「はぁ? 『どうしようもないヤツ』? どこがだよ! いいヤツなんだな。――お前って、――」

――建長寺の半僧坊まで戻ってくると、そこにはまだ、それほど観光客の姿はなかった。なぜか田代がレジャーシートを持ってきてたので、ボクたちは、長い石階段を挟んでベンチが置かれた休憩所とは逆の平場にそれを広げ、お弁当を食べることにしたんだ。

「お坊さんとかに怒られないかな?」

ミチコが、小さな声でそういうと、

「まぁ、そんときはみんなで謝ればいいんじゃない?」

と、ショウカが笑った。メイは、半僧坊の本殿のほうを見つめ、

「そういえば、ワタシたち、まだちゃんとお参りしてないね」

と、つぶやく。

「それじゃぁ、食べる前にお参りしとこう」

と、いって、すぐさまショウカは立ち上がる。ボクたちも彼女の背中に続いた。――

おのおの小銭を投げ込むと、5人並んで賽銭箱の前に立ち、そして静かに手を合わせる。目を閉じてみれば、この場所の静けさをさらに実感することができた。――鳥のさえずり、虫の鳴き声、無限の枝葉をざわめかす風の音、――そうしたなんら雑味のない自然界の音色がもたらす静寂だけが、ただこの場所には響き渡っている。

ボクが目を開けたときには、すでにショウカはレジャーシートに向かって歩き出していた。まだ願い事をし続けている田代とメイ、そしてミチコのうしろ姿を見つめながら、ボクは心のなかでつぶやいた。

(どうか、みんなの願いを叶えてやってください)

って、――

どうやら、奥のほうに「富士見台」と、いう小さな見晴らし台があったので、時折、そこを訪れる参拝客やハイカーたちが「チラチラ」視線を送ってきたけれど、特にボクらは気にもせず、その場でお弁当を広げ続けていた。ショウカは手書きの予定表を眺めながら、爪楊枝でミチコの弁当箱のなかからウインナーを一本拾いあげる。

「どうしようか? この予定通りだとさぁ、建長寺を出たあとは鶴岡八幡宮に行って、それから江ノ電乗って、極楽寺を見て終わりなんだけどね。まぁ、さっき2つお寺に行きそびれちゃったんだけどねぇ」

そういってウインナーをかじるショウカに、メイは静かに笑いかける。

「浄智寺くらいなら少し北鎌倉のほうへ戻れば行けるんでしょ? いずれにしてもこのお寺に、だいぶ長居し過ぎてるような気もするけどね。……でもワタシ、このお寺、好きだな」

ミチコに手渡されたおにぎりを一口かじり、

「まぁ、予定なんてもんはさぁ、もう別に気にしなくてもいいんじゃん。たぶん、オレの記憶だと、建長寺より面白いと思った場所なんて、ほとんどない気がするしね」

と、いってボクは笑った。そして、ひざのうえに置かれた色身の薄いおかずが乗った弁当のほうばかりを見ている田代に向かって、笑ったままでつぶやく。

「お前もさぁ、もらえばいいじゃん。 小山さんのお弁当。美味しいよ」

田代は顔をあげ、ミチコのほうへ目を向けた。

「もしよければ田代君も、いっぱい食べてね」

色とりどりの惣菜が詰め込まれた大きなランチボックスを差し出し微笑むミチコにそういわれ、

「あぁ、……ありがとう」

小さくつぶやくと田代はランチボックスから、から揚げをつまみあげた。ふいに、ショウカが言葉を滑らす。

「でもさぁ、ミチコのお母さんも、ずいぶんとおかずを作ったわよねぇ。もしアタシたちと会わなかったら、ミチコひとりじゃ、こんなに食べきれっこないのにねぇ」

なんらかの悪意があったわけでもないだろうが、誰も、そんなショウカの話題を広げることなどできなかった。ミチコは微笑み、小さな声でショウカへささやく。

「そうね。食べきれるわけなんてないのにね」

すると、大きな瞳を曇らせながらショウカは慌てて弁解しはじめた。

「あっ、違うよ! 別に変な意味でいったんじゃないんだからね」

「わかってる。でも、それは本当のことだから。もし、今日、建長寺でみんなと会わなかったとしたら、ワタシ、ひとりでお弁当を全部食べることなんてできなかったんだし。――だからね、本当によかったって思ってるの」

ミチコは、静かな微笑みをショウカへ向ける。

「……ワタシ、さっきは本当に嬉しかったんだ」

そういって田代のほうへと視線を移し、口元に喜びを湛(たた)えたままで、彼女は嬉しそうにささやいた。

「山門でね、田代君がワタシの名前を呼んでくれたから。――」

田代は割り箸を持ったまま、ずっとミチコの小さな顔を見つめ続けていた。




【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】






Myself~風になりたい - 徳永英明 
5thアルバム『REALIZE』 1989年

Endless Blue Sky - Kevin Kern 【インストルメンタルな名曲】

【インストルメンタルな名曲】


Endless Blue Sky






1982年8月21日(土)

マレンは、その星空へ向かって言葉を解き放つ。
「こないださぁ、羽田空港でアタシ、『いつか無人島で暮らしたい』って、いったでしょ?もしいつか、無人島でパルと一緒に暮らしたんならさぁ。いつもこんな景色を、こうして見ながら2人で眠れるのかな?」

いつものボクだったら、きっと笑って答えをはぐらかすんだろう。けれど、ボクの口からは、不思議なくらい滑らかに、自然と素直な感情が言葉となって生み出されていったんだ。

「見れるんじゃねぇの、きっと、――でも、見れたらいいね。……いつか本当に」

マレンは一瞬黙り込み、そしてつぶやく。

「いまのってさぁ、もしかしてプロポーズ?」

ボクは、ちょっと照れ笑いを浮かべた。

「絶対にプロポーズだ! そうに違いない!」

マレンは、しつこく、そういってくる。

「いや、もしかしたら、いつかさぁ、海で遭難して無人島とかに漂着することだってあるだろうからね、そんときは、きっとそういう暮らしをするんだろうな、って」

ボクは、いつものようにはぐらかし、笑ってそういった。

砂浜に寝そべったまま、やがてマレンは、ボクの右腕の上で顔の向きを変える。ボクも少しだけ顔を傾けて、彼女のほうを見つめる。微笑む彼女のセーブルカラーの瞳には、夜空に輝く星たちの光が映し出されていた。――漂う沈黙を、ただ星明りだけが照らしている。

すると、マレンは、「あぁ!」と、大声を出し、

「パル、もしかしたらさぁ、いまキスしようとしたでしょ?」

と、いってボクの顔を見つめた。

「はぁ? 別にしてないけど」

ボクは、また空を見上げてつぶやく。

「嘘だぁ、絶対にキスしようとしてたよ。いま」

そういうと、マレンも空を見上げて笑った。

(っていうか、そういわれてからキスなんてできないよ。ボクらにとって、はじめての、――いや、ボクにとって、はじめてのキスなんだからさ)

空を見ながら無言になったボクたちは、互いの表情を確かめるように、また、しばらく見つめ合い、そしてふたたび夜空を見上げた。

帰り道、――

ボクらは大船駅で東海道線に乗り換えた。気づけばすでに夜の10時をまわっている。

「お母さんとかに怒られないかな?」

ボクは、ボックス席の隣に座るマレンの横顔に問いかける。

「う~ん、どうかなぁ、まぁ別に怒られてもいいけどね」

マレンは、そういって笑った。

夏休みも、残りあと一週間となった土曜日の車内には、この時間になっても、まだ多くの家族連れの姿が見られる。

マレンは少し眠たそうに大きな瞳を細めていた。

「起こしてあげるから、ちょっと寝れば?」

ボクがそういうと、マレンは首を小さく横に振った。そして、

「大丈夫だよ。さっき流れ星見てね、興奮し過ぎちゃったんで、少し疲れただけだからさ」

と、いって、マレンはボクのほうを振り向く。昨日までの彼女と、なんら変わらないように思えても、いまこうして目の前にいる彼女はすでに、もう15歳の少女になったんだ。

(マレンさぁ、さっき海で、『もし不良に絡まれたら守ってくれるでしょ?』って、聞いてたけどさぁ。そんなの守るに決まってるじゃん。よくわかんないけど、それができなきゃ彼氏じゃねぇだろ? どんなことがあったって、どんな理由があったってさぁ、好きな人を守れないヤツなんて、そんなの彼氏なわけねぇじゃんか。守るに決まってるじゃん。ボクはキミの彼氏なんだから――)

ボクはスウェットのポケットから、財布を取り出すと、小銭入れにしまっておいた小さな紙袋をそっと引き抜く。そして、マレンの膝の上に置いた。

マレンが、それに目を向けると、ボクは耳元でささやいた。

「ハッピーバースデー」

って。――

(――それに『アタシのこと好きでしょ?』とかって、訊いてたけどさぁ、『好き』って言葉はね、本当にいわなきゃいけないときにだけ、ちゃんと相手に伝えられればいいんだよ。ほかのヤツらは知らないけど、容易く挨拶代わりに『ポンポン』と、使うようなもんじゃないよ。もし、その言葉をいい慣れてしまったらね、いざというとき、その言葉のなかにホントの気持ちを込められなくなっちゃうだろ?)

マレンは、一瞬ボクのことを見つめてから、その小さな紙袋を手にした。

「開けてもいい?」

彼女の言葉に、ボクは黙って頷く。

いまのボクに、そんな大したものなんて買えるわけなどなかった。せいぜいLPが一枚買えるくらいの金額で、ずっとマレンの誕生日プレゼントを探してたんだ。こないだ、たまたま駅向こうのデパートを覗いたとき、ボクは偶然、『ソレ』を見つけた。金額的にも手頃だったんだけど、なによりボクがマレンに抱いている彼女のイメージに、『ソレ』が、ぴったりと当てはまったんだ

マレンは、紙袋を逆さにして、左の掌の上に中身を軽く振るって落とす。

やがて彼女の掌には、あめ色のアンバー(琥珀)のなかに、金色に輝く小さい星粒のような気泡が無数に閉じ込められているイアリングが滑り落ちてきた。

「うわぁ、可愛い!」

マレンは、おもわず大声を出し、早速、そのイヤリングを両方の耳たぶにはめた。

そして、ボクを見つめながら、

「ありがとう! パル、すごく可愛いよ。どう? 似合ってるでしょ?」

そういって、両耳にかかる髪の毛を、指先で持ち上げながら、それをボクのほうへ自慢げに見せた。

(――だから『好き』って言葉はね、別にもったいぶってるわけじゃないけど、ボクのすべての想いを、いつか絶対、キミにいわなきゃならないときまで取って置きたいと思ってるんだ。マレンのことは好きだよ。『そんなの好きに決まってるじゃん』なんてさぁ、すぐいえるよ。だけど、『どれくらい好きか?』ってことは、まだボクにもよくわかんないんだ)

「いやぁホントはね、川澄も、もう15歳になるんだから、もうちょっと大人っぽい、指輪とかペンダントとかってのも考えたんだけどさぁ、まぁ、あんまり安物買っても仕方ないしね、そのイヤリングも、そんなに高くないんだけど、……オレね、川澄と付き合うようになってから、ずっと感じてたことがあるんだ。そのイヤリングを見たとき、すごく、その川澄のイメージに、ぴったりマッチしたんだよ」

ボクがそういうと、マレンはじっとボクを見つめて、

「アタシのイメージ? えっ? パルは、アタシのこと、どんなふうに思ってたの?」

と、ボクの左肩に顔を寄せるようにして訊いてきた。

「川澄ってさぁ、いつだって、ふと気づくと夕焼けの色に照らされてて、それからね、――」

そういって、隣に座るマレンの大きな瞳を見つめると、ボクは少しだけ彼女のほうへ顔を寄せ、イヤリングをつけている右耳の近くで、そっとささやいた。

「いつだって、その瞳のなかに、輝く星の色を映(うつ)してるんだよ」

(――もしボクが、ちゃんとそのことに気づいたときにはね、――そう、たとえば夕暮れに染まる無人島の砂浜に2人寄り添い合ってね、星空を見上げて暮らしていきながら、もしボクが、マレンに対して『好き』って言葉を口にしてたんならさぁ。キミは笑って、その言葉をずっと信じ続けてくれればいいんだよ。―― ボクはきっと、キミの瞳のなかに映るその星空の色を見つめながら、繰り返しその言葉をいい続けていくはずだから。そう、――ずっと、一生ね。……)


【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】






Endless Blue Sky - ケヴィン・カーン
アルバム『Endless Blue Sky』 2009年

Masterpiece of the Western music of the 70s/70年代洋楽の名曲
If you want to cry/泣きたいとき
If you want to be healed/癒されたいとき
Drinking alcohol/お酒を飲みつつ
While driving/ドライブしながら
If you want to Fever/血が騒ぐ
Masterpiece of the Western music of the 80s/80年代洋楽の名曲
80's Ballard masterpieces/80年代バラードの名曲
80's Rock masterpieces/80年代ロックの名曲
80's Pops & AOR masterpieces/80年代ポップスの名曲
70's Dance masterpieces/70年代ダンス系の名曲
Masterpiece of the Western music of less than 70s/70年代未満洋楽の名曲
Less than the 70's classic Ballad/70年代未満バラードの名曲
Less than the 70's classic Rock/70代未満ロックの名曲
Less than the 70's classic Pops & AOR/70代未満ポップスの名曲
Masterpiece of the Western music of more than 90s/90年代以上洋楽の名曲
Ballade more than of the 90s/90年代以上バラードの名曲
Rock more than of the 90s/90年代以上ロックの名曲
Pops & AOR more than of the 90s/90年代以上ポップスの名曲
90's Dance masterpieces/90年代ダンス系の名曲
Masterpiece of the Japanese music/未来に残したい日本の名曲
Dedicated to sweethearts/恋する二人に捧ぐ
Spend the night with sadness/悲しみと共に過ごす夜
Nostalgic feelings/ノスタルジックな想い
In the room which shines with the morning sun/朝日が差し込む部屋で
While looking at the setting sun in a hotel/夕陽が見えるホテルで
Memories of youth/若かりし日々の思い出
If you want to fuss/タテノリしたい気分なとき
If you want to feel the Rock/かなりRockな気分
Masterpieces of Instrumental/インストルメンタルな名曲
 
Profile

rakiworld21

Author:rakiworld21
Hai ☆I m Raki  (*^・ェ・)ノ ☆


Group / Duet 【 A ・ B ・ C 】
Group / Duet 【 D ・ E ・ F 】
Group / Duet 【 G ・ H ・ I 】
Group / Duet 【 J ・ K ・ L 】
Group / Duet 【 M ・ N ・ O 】
Group / Duet 【 P ・ Q ・ R 】
Group / Duet 【 S ・ T ・ U 】
Group / Duet 【 V ・ W ・ X 】
【 Artist V 】
Van Halen
Vapour Trails
The Velvet Underground
The Ventures
Virus

【 Artist W 】
The Wailers
Wang Chung
Was (Not Was)
Wishbone Ash
The Who

【 Artist X 】

Group / Duet 【 Y ・ Z 】
【 Artist Y 】
Y & T
Yazoo
Yes

【 Artist Z 】
ZZ Top



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。