QLOOKアクセス解析

未来に残したい洋楽&邦楽の名曲

70~80年代の洋楽&邦楽を中心に未来に残したい名曲&名盤を独自にチョイスするBlogです☆
未来に残したい洋楽&邦楽の名曲 TOP > 【 80年代 洋楽の名曲 】

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
[ --/--/-- --:-- ] スポンサー広告 | TB(-) | CM(-)

【Re-Edit/3rd】 いとしのシェリー - ムービング・ピクチャーズ 【80年代ポップス】

【Re-Edit/3rd】【80年代洋楽ポップスの名曲】


Sweet Cherie





I selected "What About Me"
from 1st album "Days of Innocence"
of Moving Pictures released in 1982.




Epi-23 

1983年8月7日(土) 中学3年の夏休み
 夕方の午後5時過ぎ、

 不思議と人の気配が薄れてしまった夕暮れどき。あらゆる物音は、かげろうのように揺らめきながら、そこらじゅう存在してはいるけれど、 降り注ぐ太陽熱に溶かされて住宅街の風景とすっかり融和しているみたいだ。 ――
 
 日暮れのビーチに残されたサンオイルのねっとり人工的でどこか不自然な甘み、草木の吐き出す真新しい息吹きや生き物たちが蠢(うごめ)く微かな余香。――それらが複雑に交じり合いつつ調合されて、一斉に大気へ放出されてるせいなのだろうか? この季節の風にだけは、唯一「夏色」とでも呼ぶべき青く滲んだ光の色味を感じ取ることができるような、――そんな気がする。

 小学校のときクラスメイトだった佐藤マキコとは、中学3年になってからふたたび同じ教室のなかで出会う。川澄マレンも顔立ちがすごくはっきりしてたけれど、佐藤マキコは小学生の頃から外国人のように透き通る色白の肌と大きな二重まぶたがものすごく印象的な女の子だった。

 それに「フワッ」と天然カールした金に近い茶色い髪を授業中、うしろに束ねている様は、まるでどこか英国あたりのテニス好きな令嬢のようでもある。
 
 去年の夏休み、中学に入ってからは一度も同じクラスになったことのない、……いや、ほとんどまともに会話すらしていなかったマキコから突然電話がかかってきて、

「どこかへ遊びに行こう」

 と誘われたことがある。――ボクが覚えている限り、それがマキコからもらったはじめての電話だったろうと思う。そのときはまだ川澄マレンとつき合ってたんで、結局どこにも行ってはいないが、そんな誘いの電話からちょうど一年が過ぎようとしていた今日の夕方、昼寝をしてると、ふたたび彼女から電話がかかってきた。

「盆踊りを見に行かない?」

 マキコはそう切り出すと、一年前に受話器の向こうでささやいた台詞を少し変化させながら最後に笑ってこういった。


「マレンと別れたんなら、もう遊びに行っても怒られないでしょ?」って。――

(そういえばクラスは違ったけど、マキコもマレンのことは小学校の頃から知ってるんだよな)

 寝ぼけながらボクは、つい、

「べつに行ってもいいんだけどね、……」

 って、答えてしまったもののあまり気乗りはしていなかった。

(っていうか、はたしてマレンとは、完全にもう別れてしまったのだろうか? ……)

 佐藤マキコのことが嫌いなわけではないけれど、ボクの心のなかはまだマレンの面影の欠片(かけら)ばかりで満ち溢れてしまってたんだ。しかも激烈な後悔の余情を伴いながら、……
 
 きっといまならば「はじめて誰かを失ってしまった」喪失感をボクに残して去っていったマレンに伝えられる言葉なんていくらでもあるんだろうな、とは思う。――――



 1983年9月2日(金) 中学3年の二学期
 5時間目の授業が終わる頃、

 オーストラリアのバンド、ムービング・ピクチャーズが去年リリースしたデビューアルバム『デイズ・オブ・イノセンス(Days Of Innocence)』の7曲目に収録された「いとしのシェリー(Sweet Cherie)」のエンディングフレーズがフェードアウトしていった。――

 ウォークマンの停止ボタンを押すとヘッドフォンを外し、ボクは南側の窓から晴れ渡る空を見つめた。
(しかし、昨日降った大雨はすごかったな。あの雨で、一瞬のうちに街の汚れがすべて洗い流されてしまったような気がする)

 このアルバム自体、まともに最後まで聴いたことなんてないけれど、中2のとき、ラジオから流れてきた「いとしのシェリー」を、はじめて聴いたマレンが、

「この曲ってさぁ、なんだか、すごくせつなくなる曲だねぇ」

 と、やけに気に入ってたんで、なんとなくLPを買ってみたんだ。たまたま今朝、カセットを選んでるとき、ふと、そんなマレンの言葉があたまをよぎった。そして、最近ほとんど聴くこともなくなってたこのアルバムのカセットを、ケースの奥のほうから探し出し、ウォークマンに挿し込んだんだ。――





【2013.05.10 記事原文】

オージー系ロックバンドであるムービング・ピクチャーズが
1982年にリリースしたUS1stアルバム『Days of Innocence』 ☆

ボクがこのアルバムを買った最大の理由は・・・
単にこの曲が聴きたかったからですねぇ☆

「Sweet Cherie」

まぁ今聴けば何てことない気もしますけど・・・
やはり当時の思い出のシーンと併せて記憶された曲って
どうしたって心に深く刻まれててしまうもんですわ♪


このアルバムジャケットって
当時 " ベストヒットUSA " で良く見た気がするんですけどね。

この曲自体は ビルボードチャートにランクインしてなかったんですね・・・

まぁ 確かにベストヒットって
「ラジオ&レコーズ」のチャートがベースだったんですけど

はて? 

この曲ってソッチのチャートではランクインしてたんだろうか???


まぁ どうでも良いです。。。


いずれにしたって 「Sweet Cherie」のイントロが流れると
この曲のメロディの中に染み込まれた中2のときのセピアカラーな思い出が
心の中に蘇り 何だか鼻の奥をくすぐられるような 
そんな郷愁の想いに駆られてしまいます・・・




【2012.03.21 記事原文】

軽~い演奏なのに ちょいギャップのあるシャウトめなヴォーカル。
何となく印象に残ってたのでムービング・ピクチャーズの
「Sweet Cherie」をご紹介しておきます。

どことなくチェッカーズのナンバーっぽくも聴こえるケドねぇ。




Sweet Cherie - ムービング・ピクチャーズ
1stアルバム『Days of Innocence』 1982年

スポンサーサイト

【Re-Edit】 ブルースはお好き? - エルトン・ジョン 【80年代バラード】

【Re-Edit】【80年代洋楽バラードの名曲】


I Guess That's Why they Call it the Blues






I selected "I Guess That's Why they Call it the Blues"
from album "Too Low for Zero" of Elton John released in 1983.



1983年の洋楽ヒットチャートから


Epi-20

 1983年6月11日(土) 中学3年の一学期
 午後1時半過ぎ

この街に新緑の匂いがふたたび感じられるようになってくると、やがて風は変わる。晩春色した風景も少しだけ薄く青みがかった夏色へと揺らめきながら変化してゆく。蒸し暑さを帯びはじめた潮風を背中に受けて、放課後、ボクはマレンと松並木の通りを歩いていた。中学3年になってから毎週ではないけれど、土曜日の学校帰り、マレンはよくボクの家へ遊びにきている。「遊ぶ」といったって、FMラジオをずっと流しっ放しで、夕方まで他愛のないことを話したりしてぼんやり過ごす。ただそれだけのことだった。――

 マレンは、すっかり彼女の指定席となった南の窓際に座り込み、水無月(みなづき)の、ほのかな陽光を肩先に浴びながら相変わらずファッション雑誌かなんかを読んでいる。

 ボクはソファにもたれかかってFM番組を聴いていた。――やがてスピーカーからはエルトン・ジョンの「ブルースはお好き?(I Guess That's Why They Call It The Blues)」が流れてくる。

「エルトン・ジョン」 と、いわれても、爽やかなピアノのメロディが心に残る「僕の歌は君の歌(Your Song)」くらいしか彼の曲を知らない。でも、この「ブルースはお好き?」のPVを、こないだはじめてテレビで観たとき、なんだかやけに感動したんだ。

「川澄、――」

 ボクは窓際に座るマレンのほうを見つめた。

「えっ?」

 雑誌から目を離し、少しだけ顔をあげると、マレンはその大きな瞳をボクのほうへ向ける。

「オレさぁ、最近、この曲がすごく好きなんだよね」

「ん? この曲って 誰の曲なの?」

 と、マレンは少し微笑み、そう訊いてきた。

「エルトン・ジョン」

「ふ~ん」

 濃紺色した制服姿のマレンは雑誌を閉じると立ちあがり 、ソファに背中をもたれかからすボクの右隣へ、ひざを抱えて座り込んだ。

 レースのカーテンに遮られた初夏の白く柔らかな陽光が、ペーパーフィルターで「ろ過」されたよう南の窓から力なく射し込んでいる。時折吹き込む少し湿った潮風にカーテンがふわりと舞っていた。――

「プロモーション・ビデオでね、男女数人がチークダンス踊るシーンがあるんだけどさぁ。
なんかね。その感じがすんごくいいんだよ」

 そうボクがいうと、「ニヤニヤ」なにかを思いついき、マレンは少しだけ嬉しそうに微笑む。やがて彼女はゆっくり立ちあがると、ボクの左手の指先を引っ張った。

「……じゃぁさぁ、踊ってみようよ。 カミュちゃん」

「えぇっ! いいよ、別に」

「いいから。 ほらほら!」

 そういって、照れてるボクを強引に立ちあがらせたマレンの左腕が、そのまましなやかにボクのうなじのあたりを抱きしめる。――

「なんかさぁ、スイミングスクールで行った合宿のとき以来だね。カミュちゃんと踊るのって」

 そういって微笑む薄茶色の大きな瞳がすぐ目の前にある。

「あぁ、あの夜、フォークダンスだかを踊らされたんだっけか?」

 と、ボクは彼女の右耳の近くでささやいた。仕方ないんでなんとなく、ゆるやかにステップを踏みはじめると、胸のあたりにマレンはそっと左の頬を寄せてきた。――ボクも、その背中をほんの少しだけ自分のほうへと抱き寄せる。気づかれない程度に少しだけ、その指先に力を込めて、――

(なんだろう、この感じは? まぁいいか、……)

 番組がとっくにCMに入ったことなど気づかぬ振りで、ボクたちは柔らかな陽射しのなかをしばらくは、そんなふうにし、揺らぎ続けた。――

 ウチの親父も母親も、マレンのことは小学校の頃から知っている。かつてボクらが通ってたスイミングスクールの行き帰り、彼女をウチの車で送ってあげたことが何度もあったからだ。けれど中学に入ってからの彼女のことはまったく知らない。だから久しぶりに大人びた彼女を見たときには「マレンちゃん、すごく可愛くなったわねぇ!」と、母も相当、驚いたようだった。

 マレンは、たまにウチの親に勧められ一緒に夕食を食べていくこともあったが、特に遠慮も緊張もせず、いつもすごく喜びながら母のつくった手料理などをやたらと褒めたりしていた。

「マレンちゃんも、いつかカミウと結婚したら毎日食べられるようになるわよ」

 気分をよくした母親のそんな余計なひと言に、大きな瞳を瞬(しばた)かせ、マレンは「ニッコリ」何度も頷く。けれど、さすがにボクらはまだ中3だ。「結婚」という言葉に現実味を覚えることなどあるはずもなかった。

 このところ、両親と一緒に食事をしてるとき、ボクらはほとんど会話を交わしていない気がする。
 しばらく前からなにかのきっかけによって作り出された、どこかよそよそしい空気によって食卓が、なんだか急に居心地の悪い場所になっていたんだ。

 だから、こうしてたまにきて、いつもは無言の食卓を大いに盛りあげてくれるマレンには、ものすごく助けられてるんだろうなって思う。 ボクも、……そしてボクの両親も。――

 日が暮れてしまえば初夏の蒸し暑さも幾分和らぎ、潮風がほんのり優しく感じられる。けれど、もうすぐ静かなこの街に、あの騒がしい夏が訪れるのだ。――





エルトン・ジョン氏 1983年のアルバム『Too Low for Zero』から
スティービー・ワンダー氏がハーモニカを吹き
ビルボードのシングルチャートで最高4位を記録した
オールディーズアレンジなロッカ・バラード
「I Guess That's Why they Call it the Blues」をチョイス♪






I Guess That's Why they Call it the Blues - エルトン・ジョン
アルバム『Too Low for Zero』 1983年


【Re-Edit】 マジック - レインボー 【80年代ロック】

【Re-Edit】 【80年代洋楽ロックの名曲】


Magic






Epi-17

 1983年4月18日(月) 中学3年の一学期
 夕方の3時少し過ぎ


「新しいクラスはどう? 面白い?」

 放課後、桜の花びらで埋め尽くされた正門までの道を楽しそうに歩きながら、川澄マレンはずっと微笑んでいる。

「あたしのクラスはねぇ、なんだか大人しい子ばっかりでイマイチなんだよねぇ」

「2年のときのヤツとかは? 誰か一緒のクラスになったんだっけ?」

 と、ボクは彼女の横顔に訊ねる。

「う~んと、まぁ、何人かいるけどさぁ。でも、あまりその子たちとは仲良くなかったからねぇ」

 と、いいながら、マレンは満開を少し過ぎたばかりの枝先に目を向ける。白々とおぼろな春光がマレンをほんのり照らし出す。優しく霞(かす)んだ霧状の光を浴びてる彼女がなんだかやけにキレイに思えた。

「ふぅーん。オレのクラスもそんなに面白くはないけどね。ウゼェ野郎連中が休み時間とかに騒いでて、なんだかスゲェうるせえしさぁ」

 吹き抜ける春風に桜の薄片が「フワッ」と一斉に舞いあがる。浮遊する淡い桜色の雨は、やがてボクらの上に「ヒラヒラ」と舞い降り、そのたびにマレンの艶やかな黒髪にはピンク色の花びらが数片づつ残されていく。

「あたしさぁ、パルのこと、これから『カミュちゃん』って呼ぼうかな」

 マレンは相変わらず微笑みながらそういって、「チラチラ」降り落ちてくる薄桃色の花びらに手をかざした。

「まぁ別にいいんじゃねぇの。……じゃぁオレは『マレンちん』って呼ぼうかな」

 と、ボクはなんとなく彼女のことをからかってみる。

「なんで『ちん』なのよ」

 と、マレンは予想通り、少しだけ「プクッ」と頬を膨らます。

「なんとなく、……」

「いやだ!」

「いいじゃん『マレンちん』で、別に」

「絶対にイ・ヤ・だ!」

 彼女は頬を膨らませたままでボクの左腕をつねってきた。ボクは彼女の左頬を指先で押しながら笑う。海にほど近い、この界隈に建ち並ぶ大きな屋敷の庭先には、パステルカラーの花々と新緑の若葉が眩しく咲き誇っている。ほんのり暖かな風のなか、ただようそれらの香りが、風景の彩りを淡色に変化させてゆく。新しい季節の到来を告げるその春風は、たゆたいながらマレンの長い黒髪をなびかせ続けていた。――――

 マレンを家のほうまで送ってから自宅へ帰ると、すぐ二階へあがりレコード棚をあさる。
 昼間、竹内カナエと話したせいかもしれないが、無性にレインボー5枚目のアルバム『アイ・サレンダー(Difficult to Cure)』が聴きたくなったんだ。このLPも、中1のときにはよく聴いていたけれど、最近ほとんど聴いてなかった。

 ようやく棚のなかから見つけ出すと、ジャケットを広げレコード盤を取り出した。新しい印刷物に似たようなレコード特有の濃密な異香(いこう)がほんのりただよう。――
 どことなく上品なこの匂いがボクはすごく好きだ。さすがにちょっと汚れてたけど、構わずプレーヤーにセットし針を落とした。

 1曲目のタイトルトラック「アイ・サレンダー(I Surrender)」のイントロがステレオの両脇に置かれてる大きなスピーカーから鳴り響いてくる。ボクはさらに少しだけボリュームをあげる。ジョー・リン・ターナーのボーカルは、この曲のメロディには合ってると思う。でも新たなドラマー、ボビー・ロンデイネリの音は、やはりコージー・パウエルとは明らかに質感が違う。もしコージーのキックをこのボリュームで聴いたとすれば、もっと「ズシン」との重低音が体に響き渡るはずだ。ボクは部屋の壁に立てかけてあったエレキギターを数ヶ月振りに手にした。弦は少しサビついてたが、適当にペグをまわしてチューニングし、埃を被ったアンプにプラグを差し込み電源を入れる。

 そして、いったんレコードの針を持ちあげ、ふたたび「アイ・サレンダー」をあたまから聴いた。

(この曲は、去年、よく練習したんだよな)

 イントロのリフをギターで同時に弾きはじめる。しばらくはリッチーのリフに合わせて弾くことができた。でもサビの前でコードを数箇所間違えると、もはやそのあとの音を追えなくなってしまった。やはりブランクのせいで指先が全然動かない。――アルバムは2曲目の「スポットライト・キッド(spotlight kid)」に変わった。久しぶりに聴いたんだけど、この曲の間奏部分のリードとシンセのソロパートは、やはりすごい。

 ギターを床に置き、なんとなく竹内カナエのことをぼんやりと思いはじめる。別に「好き」とかそういうんじゃないんだろうけど、「一度彼女の演奏を生で聴いてみたいな」って思ったんだ。

 展開が激しい3曲目の「ノー・リリース(No Release)」が終わると、ドラマティックな「マジック(Magic)」のイントロフレーズが流れてくる。

(この曲もむかしは、すごく好きだったな)

 ボクは寝転がって天井を見上げる。なんだか中学1年の頃が、ものすごく懐かしく感じられた。あのときって、どんな気持ちでこのアルバムを聴いてたんだろう。たかだか2年しか経ってないが、なんだか、なにもかも変わってしまったような気がする。ボクは窓際に寝転がり、射し込む太陽の残光を浴びて、金色っぽく変色した長い前髪を一束摘みあげると、しばらくは鼻先でその色を眺め続けていた。――――




【2012.03.12 記事原文】

リッチー・ブラックモア率いるレインボー1981年のアルバム
『Difficult to Cure』から、
イントロが爽やかなロックナンバー「Magic」をどうぞ♪







Magic - レインボー
5thアルバム『Difficult to Cure(アイ・サレンダー)』 1981年



【Re-Edit】 Looking for love - Michael Schenker Group 【80年代ロック】

【Re-Edit】【80年代洋楽ロックの名曲】


Looking for love





Epi-6

 1982年5月13日(木)
 四時限目の終わり頃

 最初はクラスの誰かが「むかしの漫画の主人公」に似ている担任の髪型をからかったことがきっかけだった。教室内には的を射た、その誰かの言葉に小さな同調の笑いが起こる。

 忘れもしないけど、担任教師はそのとき確かに笑ってた。――口元に笑みを浮かべたまま、ゆっくりとその生徒に近寄っていき、ただひと言「お前なぁ」と、だけいった。……いや、それをいい終わる前に、なんの前触れもなくおもいきり彼の顔面を素手で殴り飛ばした。――――

 そもそもボクらは教師に平手で叩かれたり、あたまをゲンコツで殴られたことはあっても「拳で顔面をぶん殴られる」なんて、それまでの人生では、ほとんど経験したことがない。その担任はずっと口元に微笑を浮かべ続けながら、唇を押さえ、顔をそむけたその生徒の左頬をさらに激しく右フックの軌道で殴りつけた。

「ゴツッ」と頬骨が放つ鈍い衝撃音とともに彼はイスから真横へ転がり落ちる。――教室内は一瞬にして静まり返った。――誰かが殴られている光景を日常のなかで間近に見ること自体、きっとそれまでの人生で一度も経験がなかったからだろう。

「いま笑ったヤツは全員立て」

 担任はゆっくり教壇に戻ると、「ギョロッ」と飛び出した眼球を小刻みに震わせながら教室を見渡し、あまりにも普通の口調でそういった。当然、誰もすぐに席から立ちあがることなんてできるはずもない。すると担任は窓際のほうの席へと歩きはじめ、一番前に座っていた男子生徒の脇に立つなり、無表情のまま彼のあたまをおもいっきり上から殴りつけた。

「お前、さっき笑ってただろ。俺は『立て』といったんだぞ」

 ゆっくり立ちあがったその生徒は、すっかり顔面蒼白になっていた。きっと一瞬で血の気が引いてしまったんだろうから、視界のなかは「チラチラ」と灰色がかった暗がりに包まれ、耳もまともには聴こえていないはずだ。――教室内は、痛いくらいに重々しい戦慄の空気によって支配されていく。

「ほかにはいないのか?」

 ボクにはこの殺伐とした空間がものすごく息苦しくなってきた。同時に、なんだかすごくバカらしく思えてきた。不思議なんだけど、誰かほかの生徒が殴られている姿を見ると自分も殴られなきゃいけないような気になってくる。別にソイツのことをかばうわけじゃないが、ソイツだけ殴られてるのが、なんとなく可哀想に思えてしまうからだ。

 少し笑いながらボクは椅子から立ちあがった。こうした極度の緊張感に支配された場所にいると、おかしくもないのに、むかしからなぜだかいつも笑ってしまう。我慢しようとすればするほど、余計吹き出しそうになっていく。だからお坊さんが延々とお経を唱える法事やらがものすごく苦手だ。とてもじゃないけど沈痛な顔をして、じっと座ってなんかいられやしない。

 ボクのあとを追うように、5人くらいの男子が重そうにイスを「ズズズッ」と引きずって渋々立ちあがる。担任はさらに窓際の列をうしろへ移動していきながら、

「お前も笑ってただろう。『立て』といってるんだよ」

 そういうなり、ひとりの女子生徒のあたまをおもいっきり「ゴォンッ」と、力いっぱい殴りつけたのだ。ボクはその光景におもわず目を疑ってしまう。いきなり殴られたその女子生徒はショックのあまり、震えながら泣き出した。

「立てよ早く」

 この狂った担任教師は泣いてる女の子を無表情のままそういって脅し、無理やり立ちあがらせる。すると連鎖反応的に数名の女子生徒らも顔色を失い、うつむきながら立ちあがる。なかには怯えて「ガクガク」と、足が震え出す子もいた。……そのなかにマレンの姿はなかった。彼女は自分の席に座ったままで、その大きな瞳に恐怖の色を浮かべている。

(大丈夫だよマレン。もしコイツがキミに手を出そうとしたら、ボクが絶対許しはしない。半殺しにすらしない。――その場で始末してやるからさ)

「お前ら、こっちにこい」

 すごく冷静な口調で、そうヤツは指示した。ボクたちは教室のうしろの壁に沿って横一列に並ばされた。一番窓側に立っていたのは伊浦ナオト(イウ)だ。担任教師は黙ったまま窓際のほうへと移動し、「ギョロ」ついた眼球でイウを見つめる。……と、同時に「メリッ」と木製ボードの軋む音がし、イウがうしろの壁におもいきり後頭部を打ちつけた。――――



【2012.03.17 記事原文】

マイケル・シェンカー・グループ2nd「MSG」より。
アルバムとしては、3枚目よりもカッコイイ!

「Looking for love」は、哀愁を帯びたメロと
後半の鳴きまくるギターソロがCOOL♪







Looking for love - マイケル・シェンカー・グループ
2ndアルバム『MSG』 1981年
アルバムお薦め度 「持っていても良いでしょう」

【Re-Edit】 Didn't We Almost Have It All - Whitney Houston 【80年代バラード】

【Re-Edit】【80年代洋楽バラードの名曲】


Didn't We Almost Have It All






1984年2月4日(土)

「ワタシね、本当はもう諦めかけてたの。『シーナ君にはアロハのメンバーがいるんだから、ワタシなんていなくても、――』ってね。そしたらユカリが、金曜日の夜、電話口でワタシに泣きながら2時間以上もね、ずっと訴え続けていたのよ。――絶対に後悔だけはもうしないで。――本当に欲しいものがあるんなら、大きな声で『それが欲しい』って相手に伝えなきゃ、なにも手になんて入らないんだよ。ってね」

メイは優しげにユカリの寝顔にそういった。――そして、ボクのほうを横目で見つめた。

「――だから、今日の夕方、シーナ君に本当の気持ちを伝えることができた。きっとユカのおかげなんだろうな。……本当の気持ちをいえたからね、ワタシにはもう、なにも後悔することなんてないの。来月、卒業ライブが終わったとき、どんな結果が待っていたとしても構わない。一番いいたかったことを一番訊いて欲しかった人に、ちゃんと伝えられたのだから。――」

夕方、音楽準備室でメイは、はじめて彼女の本当の気持ちをボクに告白してくれたんだ。マレンに対する後悔を心のなかに閉じ込めたまま、どうすることもできなかったボクに、メイは、かつてボクがマレンへ贈った曲を「卒業ライブのとき、みんなの前で歌って欲しい」って、そういっていた。――

【歌ったあとに、シーナ君がなにをどう感じるのかはわからない。でも、シーナ君は絶対に歌うべきだと思う。――もしワタシがそれを聴き終わったとき『絶対に川澄さんには叶わないな』と感じたのならば、ワタシはシーナ君を好きでいることをやめる。でも、歌ったことで、その後悔が少しでも晴れて、『彼女のことを完全に忘れられなかったとしても、シーナ君が先に進められそう』だとワタシ自身そう感じたならば。……

もしワタシがそう感じたのならね、――ワタシはシーナ君を、いまよりもっと好きになる。――もしワタシがそう感じられたのなら、いままでいろんなものを得る前に自分のほうから諦め続けてきたワタシ自身、ちゃんと生まれ変わりたい。……生まれ変わって一番好きなその人に、『一緒にいて欲しい』って、もう一度ちゃんと伝えたいって思ってるの。――】

ボクが、家の玄関を出ようとすると、白いスウェットに薄紫色のカーディガンを羽織ったメイが微笑みながら閑(のど)やかにささやいた。

「そう、さっきユカがいってたこと、――『いつか3人だけで暮らせたら』って話ね、……もしそうなれたらすごい幸せなんだろうなって、ワタシも本当に思ったの。それにね、『シーナ君とワタシがいなければ修学旅行に行く意味なんてなかった』って、ユカがいってたでしょう。――

それもね、本当だったのよ。……たぶんマキコも同じことを感じてたんでしょうけど、……ワタシ、クラスのみんなと旅行に行ってるあいだじゅう、ずっと『シーナ君がいないのなら、旅行になんてきたって仕方なかったな』って、思ってた。どこに行ってもね、ずっとそうだった。たとえほかに何人いようとも、誰と一緒にいようとも、そこにシーナ君がいなければね、ワタシも旅行になんてくる意味なかったんだって、ずっと思ってた。――」

ボクは一瞬、ものすごくメイのことを抱きしめたくなったんだ。それはきっと、今夜のボクらにしてみれば、さほど難しいことではなかったはずだろう。けれど、なぜだか妙に格好つけて最後にはいつだってスマートさを気取ってしまう。――まったくホントにイヤになっちまう。――結局、ボクは彼女に抱いた衝動を「グッ」と堪(こら)え、

「じゃぁ、明日、昼くらいにまたくるからね」

と、メイに別れを告げてから玄関を静かに開け、星明りが灯る氷点下の路地裏へと出ていった。――漆黒の街に点々と浮かびあがった街灯の淡い光はまるで、きめ細やかなヴェールのように向こう側の景色を白く霞(かす)ませている。――ボクは、そんなサンドブラストされたような水銀灯の白光色に包まれながら、ふと立ち止まり、そしてメイの家のほうを振り返った。

マレンへの後悔の想いが決して小さくなったわけじゃあないのだろう。けれど今日、メイがボクにくれたいくつもの素直な想いが、――はじめて解き放たれた正直な言葉が、彼女の穏やかな口調そのままに、後悔だけしかなかった闇色の心の奥から、何度も繰り返し聴こえてきていた。いや、――そうやって彼女の声を繰り返し再生せているのは、なんてことない、……ボク自身の意思なんだ。ボクが彼女の声を、いつまでも繰り返しずっと「聴いていたい」と願っていたからなんだ。――



【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】


【2012.03.17 記事原文】



↑ Live. Ver


誠にタイムリーなことに。。。
ボクのipotに収められた「洋楽バラード集」の1曲目が、
ホイットニー・ヒューストンのセカンドアルバムに収録された
この「Didn't We Almost Have It All」なのである。


ホイットニーは、ライブでバラードを
原曲とは全く違ったテンポアレンジにして歌いあげる。


YouTubeでは、いくつかのLIVE ver.がアップされているのだが、
特に、このライブは、彼女のヴォーカリストとしての
才能と艶やかさが一番現れていると感じる。


ちなみにボクが行ったコンサートでは、この曲はメドレーで
全編歌わなかったよぉ~な?定かではありませんが。。。



しかし。。。
マライアでもなく、ビヨンセでもなく、
率直に歌の上手い人なんだなぁとつくづく思うのである。







Didn't We Almost Have It All - ホイットニー・ヒューストン
2ndアルバム『Whitney』 1987年



【Re-Edit】 Somewhere Out There - Linda Ronstadt and James Ingram 【80年代バラード】

【Re-Edit】【80年代洋楽バラードの名曲】


Somewhere Out There





1984年2月4日(土)

土曜日の夜、すでに9時半近かったろうか。――
ピザ屋を出た瞬間、すぐに凍った北風が纏(まつ)わりついて、まるで砕けたガラスの破片みたいに冷々とした痛みを指先の爪のあたりに思い出させた。小さな掌で口元を覆(おお)い、そのなかに「ハーッ」と、白い息をほんわり浮かばす倉田ユカリの車椅子を押しながら、ボクは駅へと向かう。大気を漂う微(わず)かな湿り気さえも、すべて夜風に凍らされ、そのシャーベット状の微粒子が街明かりに「キラキラ」輝く真冬のこの街の気配そのものがなんだかやけに眩しかった。

ユカリはその胸のなかに、ボクの学生カバンと、さっきユカリとメイからもらった誕生日プレゼントの入った紙袋を抱きかかえながらうしろを振り返る。

「なんだか、すごく空気が澄んでますね」

ユカリにそういわれ、ボクは光瞬く夜空を見上げた。

(もう15歳になっちまったんだな)

なんとなく、さっきまでボクらがいた、――ちょうど1年前の今日、川澄マレンとともに過ごしたピザ屋のウィンドウからこぼれる暖かな明かりを見つめた。すこし感傷的にもなったけど、「ガヤガヤ」と、ざわめく酔っ払いたちの喧騒が賑やか過ぎて、そんな気持ちなどずぐにどこかへ消え去ってしまった。――


「これ、メイと私からなんですけど、シーナ君へのお誕生日プレゼントです」

ソファに隠してあった白い紙袋を差し出すと、ユカリは「ニッコリ」笑ってそういった。

「えぇっ! マジで」

ペーパーナプキンで口を拭きながらボクは驚き、ユカリと、その隣で微笑むメイを交互に見つめる。

「なんかさぁ、アタシたちが手ぶらっていうのが目立つんだけど」

ボクの隣で竹内カナエがそういうと、細野も少し笑いながら、

「じゃあ僕たちは、この店の分をいくらか多く払おうか」

と、カナエを見つめた。

やがてメイが、その淡いピンク色の唇を静かに開く。
「なにがいいか、ユカと結構悩んだんだけど、――シーナ君がね、普段しているのが少しだけ切れてたみたいだから」

ボクは、紙袋からプレゼントの中身を取り出してみる。包装紙をひざの上で広げると、そこには「レヴィース(LEVY'S)」というブランドの黒い革製ギターストラップが入っていた。

「うわぁ、スゲエかっこいい!」

おもわずボクは目を輝かせ、歓喜の声をあげた。丸め込まれた、その丁寧かつ重厚な仕上がりの黒いストラップをひざの上でまっすぐに伸ばしていく。そして笑いながらいった。

「たしかにいま使ってるのはさぁ、去年、音楽部の棚で拾ったヤツだしね」

レモンティーを一口飲んでから、メイがつぶやく。

「お店の人に訊いたらね、なんか有名なギタリストが愛用してるっていうからね」

オレンジジュースが半分入ったグラスのなかでストローを「くるくる」まわし、ユカリが言葉を繋いだ。

「それに、なんかシンプルでカッコよかったからね。シーナ君に似合うかな、と思って」

ボクの隣で竹内カナエが目を細めた。

「あぁ、レヴィースね」

「レヴィース?」

ストローを止めて、ユカリはそう繰り返す。

「あぁ、レザー製のギターストラップではすごい有名なブランドなんだよ。コレ、かなり高かったでしょ?」

そういうとボクはまた、手にした黒いストラップを眺めた。そのとき、長さ調節用のホール部分に、赤っぽいお守りみたいなものが紐で巻きつけられ、ぶら下がっていることに気づく。ボクがそれをつまみあげると、メイが、「フフッ」と笑ってユカリを見つめた。

「それは、ユカが冬休みから一生懸命手編みでね、作っていたものなのよ」

赤い布地には楕円形の黄色い波型のフレームが縫い込まれ、その上には、サーフボードに乗ってるようなローマ字のフォントが刺繍されていた。

(ALOHA STAR、――)

ユカリが少し恥ずかしそうに口を開く。

「ホントはね、クリスマスのライブまでに間に合わせたかったんですけど、――あっ、でも今回は、ちゃんとカナエさんの分とかも作りましたからね。アロハのみんなに、卒業ライブでつけてもらえるように」

横からカナエはボクのストラップについているそのお守りを見つめ、嬉しそうに笑った。

「えぇっ、本当に! じゃぁ、アタシもストラトにぶら下げようかな」

「いいよ! すごくイカしてるじゃん。これってさぁ、倉田さんがデザインしたの?」

正直、ユカリにこれほどのデザインセンスがあるなんて思ってなかったんで、ボクは本気で感心しながらそういった。照れるユカリはつぶやく。

「私ね、将来、パッケージとかのデザイナーになりたいなって、最近思うんです。それならば、別に車椅子でも毎日、仕事できるじゃないですか」

ユカリを優しく横目で見つめてメイがささやく。

「むかしからユカは手先が器用だったし、絵を書くことも好きだったものね、――すごく素敵な職業だとワタシは思う。――」


【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】



【2012.03.21 記事原文】

1986年、ジェームス・イングラム&リンダ・ロンシュタットという
実に意外なカップがデュエットし大ヒットとなった
「somewhere out there」をチョイス♪

映画『アメリカ物語』の主題歌です。
※この映画、日本でやってない気がするが。。。



Somewhere Out There - ジェームス・イングラム&リンダ・ロンシュタット
オリジナルサウンドトラック『アメリカ物語』 1986年





【Re-Edit】 Lost In Your Eyes - Debbie Gibson 【80年代バラード】

【Re-Edit】【80年代洋楽バラードの名曲】


Lost In Your Eyes





1983年9月13日(火)

涼風彷徨(さまよ)える初秋の宵闇は、過ぎゆく晩夏の燐光(りんこう)を、ひっそりと藍染めするよう、深紫(ふかむらさき)の黄昏色に包んでいった。輝きはじめた星たちが、月光を湛(たた)えた濃い碧色(へきしょく)の波の彼方でキラキラ踊る。

七里ガ浜の駅へと向かう道すがら、隣を歩く李メイがボクに、そっと訊ねた。

「シーナ君、彼女とは、――川澄さんとは、もう別れてしまったの?」

薄暗い駅前通りを歩きながら、ついボクはそんな夜空を見上げた。――そしてつぶやく。

「そうだね、正しくいうなら離れてしまったのかな。きっと距離も、……心も」

枯れた落葉の湿り気が仄(ほの)かに香る坂道を、「ポツリポツリ」と照らしてる水銀灯の淡白く冷たい灯(あか)り、――映し出される林ショウカや小山ミチコの華奢(きゃしゃ)な影、――路面たゆたうそんな二つのシルエットを避けるよう、ボクたちは、ゆったり歩調を合わせていく。

「心も、――」

メイがボクの言葉を繰り返す。

「まぁ、オレが悪いんだけどね。――実は彼女のお母さん、ずっと鎌倉の病院に入院してたんだ。……そしたら、なんだか昏睡状態になっちゃったみたいで、意識が戻らなくなってね。そんなお母さんのこと、毎日看病して、辛く悲しい気持ちをひとりで抱え込んでた彼女の気持ちを一番知ってたはずなのに、……

『彼女をどうにかしてあげたい』って本気で思ってたはずなのに、――オレはね、全然いいたくもない言葉ばかりを彼女に吐き出してしまったんだよ。本当にいいたかった言葉はすべて心に残したままで、……いわなくてもいいような、……絶対、彼女にいっちゃいけないような言葉ばかりを、ね」

こんなこと、メイにいう必要もない話なんだろうだとは思ってたんだ。けれど、彼女はどんな苦しみも哀しみも、すべて受け入れられるほどに深い闇色の翳(かげ)りを、絶えず心に秘めている。――だから、きっとメイになら話してもいいような気がしたんだ。なにも慰めて欲しいだなんて思っちゃいない。気休めの言葉なんて、――いまはいらない。

「ワタシのお父さん、――」

メイが、キレイに整った薄い唇を静かに開く。

「ワタシが生まれる前から、いろんな仕事をしてたみたいなんだけど、なにをしてたのかは、お母さんも教えてくれなかったし、ずっとワタシにもわからなかった。ワタシが小学校に入った頃からね、ウチは生活が苦しかったの。……だから、誕生日にどれだけ欲しいものがあったとしても、『別に欲しいものなんてない』って、気づいたときには、毎年そうやって答えるようになっていた」

ショウカとミチコ、それに、うしろからボクらを追い越していった田代が、ホームの先のほうへと歩いていく。ボクたちは駅員のいないホームの手前で立ち止まる。

「けれど本当は、小学校に入ったときからワタシはピアノが欲しかった。でも、そんなもの買ってもらえるはずがないことなんてわかってたの。――小学校2年のとき、学校で七夕の短冊に願い事を書かされたことがあったんだけど、……そのときワタシは、生まれてはじめて自分の本当の気持ちを、――ずっと抱え続けてきた夢をね、その短冊に込めることができたの」

「ポツポツ」と、高校生らしき数名の学生が佇むだけの、七里ガ浜駅のホームを照らす蛍光灯が、向こうのほうでこちらを振り返ったショウカとメイの小さな顔を映し出す。ボクたちはゆっくり歩きはじめた。

「――その七夕の願い事がね、文集になって参観日のとき配られた。ワタシ、本当はお母さんにそんなもの見られたくなかったんだけど、けっきょく見られてしまったの。その夜、――お父さんが帰ってきてからワタシのことを呼んでね、『お前にピアノを買ってあげる』って、いきなりそういったの。ワタシ、本当に信じられないくらい嬉しくって、その日は全然眠れなかった」

メイは一瞬、黙り込む。ボクは彼女の横顔を見つめた。

「――2週間くらいしてから、ウチの応接間にピアノが届いた。ワタシ、本当に嬉しくって何度もお父さんに抱きつきながらお礼をいったの。お父さんは笑って『お前には、いままでなにも買ってやれなかったから』ってね、ずっとあたまを撫でてくれていた。――

でも、それからしばらくして、ある朝早く、ウチに男の人たちが3人きてね、そのままお父さんは連れて行かれてしまった。ワタシがビックリして玄関のほうへ出ていこうとすると、お母さんがね、『大丈夫、すぐ戻ってくるから』って、ワタシの腕を掴みながら笑った。――だけど、何ヶ月経ってもお父さんは戻ってこなかった。『お父さんはいま、海外で働いてるから』って、お母さんはいったけど、ワタシには、なんとなく嘘なんだろうってことはわかってた。たぶん警察に連れてかれたんだろうなって、とっくにわかってたの」

ボクは、なにもいわずに彼女の横顔を見つめ続けていた。

「あのとき、『ピアノが欲しい』だなんて七夕の短冊に書いてしまったから、お父さんは捕まってしまったんだって、ずっと後悔してきたの。……それが理由だったんだって、思い込んでしまったの。――ワタシはね、本心じゃない気持ちをいってしまったことで後悔し続けているシーナ君とはまったく逆でね、本当の気持ちを言葉にしてしまったことを死ぬほど後悔し続けてきた。――ワタシはもう、なにも望んじゃいけないんだって、そのとき思ったの」

そういって、メイは口元に、哀しくなるほど儚(はかな)い笑みを浮かびあがらせた。

そう、――彼女のほうがボクなんかよりも遥(はる)かに深い哀しみを抱え続けて生きてきた。――そんなこと、中3になってメイの瞳をはじめて教室のなかで見たときから、とっくにわかってたんだ。

【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】



【2012.03.21 記事原文】

デビー・ギブソンちゃん1989年の全米NO.1アルバム『Electoric Youth』
からシングルでもNO.1を獲得したやさしいナンバー「Lost In Your Eyes」を選曲♪
しかし…可愛かったなぁ。。。


何かの映画のエンディングにでも使えそうな曲ですよね。





Lost In Your Eyes - Electric YouthLost In Your Eyes - デビー・ギブソン
2ndアルバム『Electoric Youth』 1989年



Masterpiece of the Western music of the 70s/70年代洋楽の名曲
If you want to cry/泣きたいとき
If you want to be healed/癒されたいとき
Drinking alcohol/お酒を飲みつつ
While driving/ドライブしながら
If you want to Fever/血が騒ぐ
Masterpiece of the Western music of the 80s/80年代洋楽の名曲
80's Ballard masterpieces/80年代バラードの名曲
80's Rock masterpieces/80年代ロックの名曲
80's Pops & AOR masterpieces/80年代ポップスの名曲
70's Dance masterpieces/70年代ダンス系の名曲
Masterpiece of the Western music of less than 70s/70年代未満洋楽の名曲
Less than the 70's classic Ballad/70年代未満バラードの名曲
Less than the 70's classic Rock/70代未満ロックの名曲
Less than the 70's classic Pops & AOR/70代未満ポップスの名曲
Masterpiece of the Western music of more than 90s/90年代以上洋楽の名曲
Ballade more than of the 90s/90年代以上バラードの名曲
Rock more than of the 90s/90年代以上ロックの名曲
Pops & AOR more than of the 90s/90年代以上ポップスの名曲
90's Dance masterpieces/90年代ダンス系の名曲
Masterpiece of the Japanese music/未来に残したい日本の名曲
Dedicated to sweethearts/恋する二人に捧ぐ
Spend the night with sadness/悲しみと共に過ごす夜
Nostalgic feelings/ノスタルジックな想い
In the room which shines with the morning sun/朝日が差し込む部屋で
While looking at the setting sun in a hotel/夕陽が見えるホテルで
Memories of youth/若かりし日々の思い出
If you want to fuss/タテノリしたい気分なとき
If you want to feel the Rock/かなりRockな気分
Masterpieces of Instrumental/インストルメンタルな名曲
 
Profile

rakiworld21

Author:rakiworld21
Hai ☆I m Raki  (*^・ェ・)ノ ☆


Group / Duet 【 A ・ B ・ C 】
Group / Duet 【 D ・ E ・ F 】
Group / Duet 【 G ・ H ・ I 】
Group / Duet 【 J ・ K ・ L 】
Group / Duet 【 M ・ N ・ O 】
Group / Duet 【 P ・ Q ・ R 】
Group / Duet 【 S ・ T ・ U 】
Group / Duet 【 V ・ W ・ X 】
【 Artist V 】
Van Halen
Vapour Trails
The Velvet Underground
The Ventures
Virus

【 Artist W 】
The Wailers
Wang Chung
Was (Not Was)
Wishbone Ash
The Who

【 Artist X 】

Group / Duet 【 Y ・ Z 】
【 Artist Y 】
Y & T
Yazoo
Yes

【 Artist Z 】
ZZ Top



上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。