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未来に残したい洋楽&邦楽の名曲

70~80年代の洋楽&邦楽を中心に未来に残したい名曲&名盤を独自にチョイスするBlogです☆
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【Re-Edit】 ブルースはお好き? - エルトン・ジョン 【80年代バラード】

【Re-Edit】【80年代洋楽バラードの名曲】


I Guess That's Why they Call it the Blues






I selected "I Guess That's Why they Call it the Blues"
from album "Too Low for Zero" of Elton John released in 1983.



1983年の洋楽ヒットチャートから


Epi-20

 1983年6月11日(土) 中学3年の一学期
 午後1時半過ぎ

この街に新緑の匂いがふたたび感じられるようになってくると、やがて風は変わる。晩春色した風景も少しだけ薄く青みがかった夏色へと揺らめきながら変化してゆく。蒸し暑さを帯びはじめた潮風を背中に受けて、放課後、ボクはマレンと松並木の通りを歩いていた。中学3年になってから毎週ではないけれど、土曜日の学校帰り、マレンはよくボクの家へ遊びにきている。「遊ぶ」といったって、FMラジオをずっと流しっ放しで、夕方まで他愛のないことを話したりしてぼんやり過ごす。ただそれだけのことだった。――

 マレンは、すっかり彼女の指定席となった南の窓際に座り込み、水無月(みなづき)の、ほのかな陽光を肩先に浴びながら相変わらずファッション雑誌かなんかを読んでいる。

 ボクはソファにもたれかかってFM番組を聴いていた。――やがてスピーカーからはエルトン・ジョンの「ブルースはお好き?(I Guess That's Why They Call It The Blues)」が流れてくる。

「エルトン・ジョン」 と、いわれても、爽やかなピアノのメロディが心に残る「僕の歌は君の歌(Your Song)」くらいしか彼の曲を知らない。でも、この「ブルースはお好き?」のPVを、こないだはじめてテレビで観たとき、なんだかやけに感動したんだ。

「川澄、――」

 ボクは窓際に座るマレンのほうを見つめた。

「えっ?」

 雑誌から目を離し、少しだけ顔をあげると、マレンはその大きな瞳をボクのほうへ向ける。

「オレさぁ、最近、この曲がすごく好きなんだよね」

「ん? この曲って 誰の曲なの?」

 と、マレンは少し微笑み、そう訊いてきた。

「エルトン・ジョン」

「ふ~ん」

 濃紺色した制服姿のマレンは雑誌を閉じると立ちあがり 、ソファに背中をもたれかからすボクの右隣へ、ひざを抱えて座り込んだ。

 レースのカーテンに遮られた初夏の白く柔らかな陽光が、ペーパーフィルターで「ろ過」されたよう南の窓から力なく射し込んでいる。時折吹き込む少し湿った潮風にカーテンがふわりと舞っていた。――

「プロモーション・ビデオでね、男女数人がチークダンス踊るシーンがあるんだけどさぁ。
なんかね。その感じがすんごくいいんだよ」

 そうボクがいうと、「ニヤニヤ」なにかを思いついき、マレンは少しだけ嬉しそうに微笑む。やがて彼女はゆっくり立ちあがると、ボクの左手の指先を引っ張った。

「……じゃぁさぁ、踊ってみようよ。 カミュちゃん」

「えぇっ! いいよ、別に」

「いいから。 ほらほら!」

 そういって、照れてるボクを強引に立ちあがらせたマレンの左腕が、そのまましなやかにボクのうなじのあたりを抱きしめる。――

「なんかさぁ、スイミングスクールで行った合宿のとき以来だね。カミュちゃんと踊るのって」

 そういって微笑む薄茶色の大きな瞳がすぐ目の前にある。

「あぁ、あの夜、フォークダンスだかを踊らされたんだっけか?」

 と、ボクは彼女の右耳の近くでささやいた。仕方ないんでなんとなく、ゆるやかにステップを踏みはじめると、胸のあたりにマレンはそっと左の頬を寄せてきた。――ボクも、その背中をほんの少しだけ自分のほうへと抱き寄せる。気づかれない程度に少しだけ、その指先に力を込めて、――

(なんだろう、この感じは? まぁいいか、……)

 番組がとっくにCMに入ったことなど気づかぬ振りで、ボクたちは柔らかな陽射しのなかをしばらくは、そんなふうにし、揺らぎ続けた。――

 ウチの親父も母親も、マレンのことは小学校の頃から知っている。かつてボクらが通ってたスイミングスクールの行き帰り、彼女をウチの車で送ってあげたことが何度もあったからだ。けれど中学に入ってからの彼女のことはまったく知らない。だから久しぶりに大人びた彼女を見たときには「マレンちゃん、すごく可愛くなったわねぇ!」と、母も相当、驚いたようだった。

 マレンは、たまにウチの親に勧められ一緒に夕食を食べていくこともあったが、特に遠慮も緊張もせず、いつもすごく喜びながら母のつくった手料理などをやたらと褒めたりしていた。

「マレンちゃんも、いつかカミウと結婚したら毎日食べられるようになるわよ」

 気分をよくした母親のそんな余計なひと言に、大きな瞳を瞬(しばた)かせ、マレンは「ニッコリ」何度も頷く。けれど、さすがにボクらはまだ中3だ。「結婚」という言葉に現実味を覚えることなどあるはずもなかった。

 このところ、両親と一緒に食事をしてるとき、ボクらはほとんど会話を交わしていない気がする。
 しばらく前からなにかのきっかけによって作り出された、どこかよそよそしい空気によって食卓が、なんだか急に居心地の悪い場所になっていたんだ。

 だから、こうしてたまにきて、いつもは無言の食卓を大いに盛りあげてくれるマレンには、ものすごく助けられてるんだろうなって思う。 ボクも、……そしてボクの両親も。――

 日が暮れてしまえば初夏の蒸し暑さも幾分和らぎ、潮風がほんのり優しく感じられる。けれど、もうすぐ静かなこの街に、あの騒がしい夏が訪れるのだ。――





エルトン・ジョン氏 1983年のアルバム『Too Low for Zero』から
スティービー・ワンダー氏がハーモニカを吹き
ビルボードのシングルチャートで最高4位を記録した
オールディーズアレンジなロッカ・バラード
「I Guess That's Why they Call it the Blues」をチョイス♪






I Guess That's Why they Call it the Blues - エルトン・ジョン
アルバム『Too Low for Zero』 1983年


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【Re-Edit】 Didn't We Almost Have It All - Whitney Houston 【80年代バラード】

【Re-Edit】【80年代洋楽バラードの名曲】


Didn't We Almost Have It All






1984年2月4日(土)

「ワタシね、本当はもう諦めかけてたの。『シーナ君にはアロハのメンバーがいるんだから、ワタシなんていなくても、――』ってね。そしたらユカリが、金曜日の夜、電話口でワタシに泣きながら2時間以上もね、ずっと訴え続けていたのよ。――絶対に後悔だけはもうしないで。――本当に欲しいものがあるんなら、大きな声で『それが欲しい』って相手に伝えなきゃ、なにも手になんて入らないんだよ。ってね」

メイは優しげにユカリの寝顔にそういった。――そして、ボクのほうを横目で見つめた。

「――だから、今日の夕方、シーナ君に本当の気持ちを伝えることができた。きっとユカのおかげなんだろうな。……本当の気持ちをいえたからね、ワタシにはもう、なにも後悔することなんてないの。来月、卒業ライブが終わったとき、どんな結果が待っていたとしても構わない。一番いいたかったことを一番訊いて欲しかった人に、ちゃんと伝えられたのだから。――」

夕方、音楽準備室でメイは、はじめて彼女の本当の気持ちをボクに告白してくれたんだ。マレンに対する後悔を心のなかに閉じ込めたまま、どうすることもできなかったボクに、メイは、かつてボクがマレンへ贈った曲を「卒業ライブのとき、みんなの前で歌って欲しい」って、そういっていた。――

【歌ったあとに、シーナ君がなにをどう感じるのかはわからない。でも、シーナ君は絶対に歌うべきだと思う。――もしワタシがそれを聴き終わったとき『絶対に川澄さんには叶わないな』と感じたのならば、ワタシはシーナ君を好きでいることをやめる。でも、歌ったことで、その後悔が少しでも晴れて、『彼女のことを完全に忘れられなかったとしても、シーナ君が先に進められそう』だとワタシ自身そう感じたならば。……

もしワタシがそう感じたのならね、――ワタシはシーナ君を、いまよりもっと好きになる。――もしワタシがそう感じられたのなら、いままでいろんなものを得る前に自分のほうから諦め続けてきたワタシ自身、ちゃんと生まれ変わりたい。……生まれ変わって一番好きなその人に、『一緒にいて欲しい』って、もう一度ちゃんと伝えたいって思ってるの。――】

ボクが、家の玄関を出ようとすると、白いスウェットに薄紫色のカーディガンを羽織ったメイが微笑みながら閑(のど)やかにささやいた。

「そう、さっきユカがいってたこと、――『いつか3人だけで暮らせたら』って話ね、……もしそうなれたらすごい幸せなんだろうなって、ワタシも本当に思ったの。それにね、『シーナ君とワタシがいなければ修学旅行に行く意味なんてなかった』って、ユカがいってたでしょう。――

それもね、本当だったのよ。……たぶんマキコも同じことを感じてたんでしょうけど、……ワタシ、クラスのみんなと旅行に行ってるあいだじゅう、ずっと『シーナ君がいないのなら、旅行になんてきたって仕方なかったな』って、思ってた。どこに行ってもね、ずっとそうだった。たとえほかに何人いようとも、誰と一緒にいようとも、そこにシーナ君がいなければね、ワタシも旅行になんてくる意味なかったんだって、ずっと思ってた。――」

ボクは一瞬、ものすごくメイのことを抱きしめたくなったんだ。それはきっと、今夜のボクらにしてみれば、さほど難しいことではなかったはずだろう。けれど、なぜだか妙に格好つけて最後にはいつだってスマートさを気取ってしまう。――まったくホントにイヤになっちまう。――結局、ボクは彼女に抱いた衝動を「グッ」と堪(こら)え、

「じゃぁ、明日、昼くらいにまたくるからね」

と、メイに別れを告げてから玄関を静かに開け、星明りが灯る氷点下の路地裏へと出ていった。――漆黒の街に点々と浮かびあがった街灯の淡い光はまるで、きめ細やかなヴェールのように向こう側の景色を白く霞(かす)ませている。――ボクは、そんなサンドブラストされたような水銀灯の白光色に包まれながら、ふと立ち止まり、そしてメイの家のほうを振り返った。

マレンへの後悔の想いが決して小さくなったわけじゃあないのだろう。けれど今日、メイがボクにくれたいくつもの素直な想いが、――はじめて解き放たれた正直な言葉が、彼女の穏やかな口調そのままに、後悔だけしかなかった闇色の心の奥から、何度も繰り返し聴こえてきていた。いや、――そうやって彼女の声を繰り返し再生せているのは、なんてことない、……ボク自身の意思なんだ。ボクが彼女の声を、いつまでも繰り返しずっと「聴いていたい」と願っていたからなんだ。――



【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】


【2012.03.17 記事原文】



↑ Live. Ver


誠にタイムリーなことに。。。
ボクのipotに収められた「洋楽バラード集」の1曲目が、
ホイットニー・ヒューストンのセカンドアルバムに収録された
この「Didn't We Almost Have It All」なのである。


ホイットニーは、ライブでバラードを
原曲とは全く違ったテンポアレンジにして歌いあげる。


YouTubeでは、いくつかのLIVE ver.がアップされているのだが、
特に、このライブは、彼女のヴォーカリストとしての
才能と艶やかさが一番現れていると感じる。


ちなみにボクが行ったコンサートでは、この曲はメドレーで
全編歌わなかったよぉ~な?定かではありませんが。。。



しかし。。。
マライアでもなく、ビヨンセでもなく、
率直に歌の上手い人なんだなぁとつくづく思うのである。







Didn't We Almost Have It All - ホイットニー・ヒューストン
2ndアルバム『Whitney』 1987年



【Re-Edit】 Somewhere Out There - Linda Ronstadt and James Ingram 【80年代バラード】

【Re-Edit】【80年代洋楽バラードの名曲】


Somewhere Out There





1984年2月4日(土)

土曜日の夜、すでに9時半近かったろうか。――
ピザ屋を出た瞬間、すぐに凍った北風が纏(まつ)わりついて、まるで砕けたガラスの破片みたいに冷々とした痛みを指先の爪のあたりに思い出させた。小さな掌で口元を覆(おお)い、そのなかに「ハーッ」と、白い息をほんわり浮かばす倉田ユカリの車椅子を押しながら、ボクは駅へと向かう。大気を漂う微(わず)かな湿り気さえも、すべて夜風に凍らされ、そのシャーベット状の微粒子が街明かりに「キラキラ」輝く真冬のこの街の気配そのものがなんだかやけに眩しかった。

ユカリはその胸のなかに、ボクの学生カバンと、さっきユカリとメイからもらった誕生日プレゼントの入った紙袋を抱きかかえながらうしろを振り返る。

「なんだか、すごく空気が澄んでますね」

ユカリにそういわれ、ボクは光瞬く夜空を見上げた。

(もう15歳になっちまったんだな)

なんとなく、さっきまでボクらがいた、――ちょうど1年前の今日、川澄マレンとともに過ごしたピザ屋のウィンドウからこぼれる暖かな明かりを見つめた。すこし感傷的にもなったけど、「ガヤガヤ」と、ざわめく酔っ払いたちの喧騒が賑やか過ぎて、そんな気持ちなどずぐにどこかへ消え去ってしまった。――


「これ、メイと私からなんですけど、シーナ君へのお誕生日プレゼントです」

ソファに隠してあった白い紙袋を差し出すと、ユカリは「ニッコリ」笑ってそういった。

「えぇっ! マジで」

ペーパーナプキンで口を拭きながらボクは驚き、ユカリと、その隣で微笑むメイを交互に見つめる。

「なんかさぁ、アタシたちが手ぶらっていうのが目立つんだけど」

ボクの隣で竹内カナエがそういうと、細野も少し笑いながら、

「じゃあ僕たちは、この店の分をいくらか多く払おうか」

と、カナエを見つめた。

やがてメイが、その淡いピンク色の唇を静かに開く。
「なにがいいか、ユカと結構悩んだんだけど、――シーナ君がね、普段しているのが少しだけ切れてたみたいだから」

ボクは、紙袋からプレゼントの中身を取り出してみる。包装紙をひざの上で広げると、そこには「レヴィース(LEVY'S)」というブランドの黒い革製ギターストラップが入っていた。

「うわぁ、スゲエかっこいい!」

おもわずボクは目を輝かせ、歓喜の声をあげた。丸め込まれた、その丁寧かつ重厚な仕上がりの黒いストラップをひざの上でまっすぐに伸ばしていく。そして笑いながらいった。

「たしかにいま使ってるのはさぁ、去年、音楽部の棚で拾ったヤツだしね」

レモンティーを一口飲んでから、メイがつぶやく。

「お店の人に訊いたらね、なんか有名なギタリストが愛用してるっていうからね」

オレンジジュースが半分入ったグラスのなかでストローを「くるくる」まわし、ユカリが言葉を繋いだ。

「それに、なんかシンプルでカッコよかったからね。シーナ君に似合うかな、と思って」

ボクの隣で竹内カナエが目を細めた。

「あぁ、レヴィースね」

「レヴィース?」

ストローを止めて、ユカリはそう繰り返す。

「あぁ、レザー製のギターストラップではすごい有名なブランドなんだよ。コレ、かなり高かったでしょ?」

そういうとボクはまた、手にした黒いストラップを眺めた。そのとき、長さ調節用のホール部分に、赤っぽいお守りみたいなものが紐で巻きつけられ、ぶら下がっていることに気づく。ボクがそれをつまみあげると、メイが、「フフッ」と笑ってユカリを見つめた。

「それは、ユカが冬休みから一生懸命手編みでね、作っていたものなのよ」

赤い布地には楕円形の黄色い波型のフレームが縫い込まれ、その上には、サーフボードに乗ってるようなローマ字のフォントが刺繍されていた。

(ALOHA STAR、――)

ユカリが少し恥ずかしそうに口を開く。

「ホントはね、クリスマスのライブまでに間に合わせたかったんですけど、――あっ、でも今回は、ちゃんとカナエさんの分とかも作りましたからね。アロハのみんなに、卒業ライブでつけてもらえるように」

横からカナエはボクのストラップについているそのお守りを見つめ、嬉しそうに笑った。

「えぇっ、本当に! じゃぁ、アタシもストラトにぶら下げようかな」

「いいよ! すごくイカしてるじゃん。これってさぁ、倉田さんがデザインしたの?」

正直、ユカリにこれほどのデザインセンスがあるなんて思ってなかったんで、ボクは本気で感心しながらそういった。照れるユカリはつぶやく。

「私ね、将来、パッケージとかのデザイナーになりたいなって、最近思うんです。それならば、別に車椅子でも毎日、仕事できるじゃないですか」

ユカリを優しく横目で見つめてメイがささやく。

「むかしからユカは手先が器用だったし、絵を書くことも好きだったものね、――すごく素敵な職業だとワタシは思う。――」


【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】



【2012.03.21 記事原文】

1986年、ジェームス・イングラム&リンダ・ロンシュタットという
実に意外なカップがデュエットし大ヒットとなった
「somewhere out there」をチョイス♪

映画『アメリカ物語』の主題歌です。
※この映画、日本でやってない気がするが。。。



Somewhere Out There - ジェームス・イングラム&リンダ・ロンシュタット
オリジナルサウンドトラック『アメリカ物語』 1986年





【Re-Edit】 Lost In Your Eyes - Debbie Gibson 【80年代バラード】

【Re-Edit】【80年代洋楽バラードの名曲】


Lost In Your Eyes





1983年9月13日(火)

涼風彷徨(さまよ)える初秋の宵闇は、過ぎゆく晩夏の燐光(りんこう)を、ひっそりと藍染めするよう、深紫(ふかむらさき)の黄昏色に包んでいった。輝きはじめた星たちが、月光を湛(たた)えた濃い碧色(へきしょく)の波の彼方でキラキラ踊る。

七里ガ浜の駅へと向かう道すがら、隣を歩く李メイがボクに、そっと訊ねた。

「シーナ君、彼女とは、――川澄さんとは、もう別れてしまったの?」

薄暗い駅前通りを歩きながら、ついボクはそんな夜空を見上げた。――そしてつぶやく。

「そうだね、正しくいうなら離れてしまったのかな。きっと距離も、……心も」

枯れた落葉の湿り気が仄(ほの)かに香る坂道を、「ポツリポツリ」と照らしてる水銀灯の淡白く冷たい灯(あか)り、――映し出される林ショウカや小山ミチコの華奢(きゃしゃ)な影、――路面たゆたうそんな二つのシルエットを避けるよう、ボクたちは、ゆったり歩調を合わせていく。

「心も、――」

メイがボクの言葉を繰り返す。

「まぁ、オレが悪いんだけどね。――実は彼女のお母さん、ずっと鎌倉の病院に入院してたんだ。……そしたら、なんだか昏睡状態になっちゃったみたいで、意識が戻らなくなってね。そんなお母さんのこと、毎日看病して、辛く悲しい気持ちをひとりで抱え込んでた彼女の気持ちを一番知ってたはずなのに、……

『彼女をどうにかしてあげたい』って本気で思ってたはずなのに、――オレはね、全然いいたくもない言葉ばかりを彼女に吐き出してしまったんだよ。本当にいいたかった言葉はすべて心に残したままで、……いわなくてもいいような、……絶対、彼女にいっちゃいけないような言葉ばかりを、ね」

こんなこと、メイにいう必要もない話なんだろうだとは思ってたんだ。けれど、彼女はどんな苦しみも哀しみも、すべて受け入れられるほどに深い闇色の翳(かげ)りを、絶えず心に秘めている。――だから、きっとメイになら話してもいいような気がしたんだ。なにも慰めて欲しいだなんて思っちゃいない。気休めの言葉なんて、――いまはいらない。

「ワタシのお父さん、――」

メイが、キレイに整った薄い唇を静かに開く。

「ワタシが生まれる前から、いろんな仕事をしてたみたいなんだけど、なにをしてたのかは、お母さんも教えてくれなかったし、ずっとワタシにもわからなかった。ワタシが小学校に入った頃からね、ウチは生活が苦しかったの。……だから、誕生日にどれだけ欲しいものがあったとしても、『別に欲しいものなんてない』って、気づいたときには、毎年そうやって答えるようになっていた」

ショウカとミチコ、それに、うしろからボクらを追い越していった田代が、ホームの先のほうへと歩いていく。ボクたちは駅員のいないホームの手前で立ち止まる。

「けれど本当は、小学校に入ったときからワタシはピアノが欲しかった。でも、そんなもの買ってもらえるはずがないことなんてわかってたの。――小学校2年のとき、学校で七夕の短冊に願い事を書かされたことがあったんだけど、……そのときワタシは、生まれてはじめて自分の本当の気持ちを、――ずっと抱え続けてきた夢をね、その短冊に込めることができたの」

「ポツポツ」と、高校生らしき数名の学生が佇むだけの、七里ガ浜駅のホームを照らす蛍光灯が、向こうのほうでこちらを振り返ったショウカとメイの小さな顔を映し出す。ボクたちはゆっくり歩きはじめた。

「――その七夕の願い事がね、文集になって参観日のとき配られた。ワタシ、本当はお母さんにそんなもの見られたくなかったんだけど、けっきょく見られてしまったの。その夜、――お父さんが帰ってきてからワタシのことを呼んでね、『お前にピアノを買ってあげる』って、いきなりそういったの。ワタシ、本当に信じられないくらい嬉しくって、その日は全然眠れなかった」

メイは一瞬、黙り込む。ボクは彼女の横顔を見つめた。

「――2週間くらいしてから、ウチの応接間にピアノが届いた。ワタシ、本当に嬉しくって何度もお父さんに抱きつきながらお礼をいったの。お父さんは笑って『お前には、いままでなにも買ってやれなかったから』ってね、ずっとあたまを撫でてくれていた。――

でも、それからしばらくして、ある朝早く、ウチに男の人たちが3人きてね、そのままお父さんは連れて行かれてしまった。ワタシがビックリして玄関のほうへ出ていこうとすると、お母さんがね、『大丈夫、すぐ戻ってくるから』って、ワタシの腕を掴みながら笑った。――だけど、何ヶ月経ってもお父さんは戻ってこなかった。『お父さんはいま、海外で働いてるから』って、お母さんはいったけど、ワタシには、なんとなく嘘なんだろうってことはわかってた。たぶん警察に連れてかれたんだろうなって、とっくにわかってたの」

ボクは、なにもいわずに彼女の横顔を見つめ続けていた。

「あのとき、『ピアノが欲しい』だなんて七夕の短冊に書いてしまったから、お父さんは捕まってしまったんだって、ずっと後悔してきたの。……それが理由だったんだって、思い込んでしまったの。――ワタシはね、本心じゃない気持ちをいってしまったことで後悔し続けているシーナ君とはまったく逆でね、本当の気持ちを言葉にしてしまったことを死ぬほど後悔し続けてきた。――ワタシはもう、なにも望んじゃいけないんだって、そのとき思ったの」

そういって、メイは口元に、哀しくなるほど儚(はかな)い笑みを浮かびあがらせた。

そう、――彼女のほうがボクなんかよりも遥(はる)かに深い哀しみを抱え続けて生きてきた。――そんなこと、中3になってメイの瞳をはじめて教室のなかで見たときから、とっくにわかってたんだ。

【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】



【2012.03.21 記事原文】

デビー・ギブソンちゃん1989年の全米NO.1アルバム『Electoric Youth』
からシングルでもNO.1を獲得したやさしいナンバー「Lost In Your Eyes」を選曲♪
しかし…可愛かったなぁ。。。


何かの映画のエンディングにでも使えそうな曲ですよね。





Lost In Your Eyes - Electric YouthLost In Your Eyes - デビー・ギブソン
2ndアルバム『Electoric Youth』 1989年



【Re-Edit】 Wind Beneath My Wings - Bette Midler 【80年代バラード】

【Re-Edit】【80年代洋楽バラードの名曲】


Wind Beneath My Wings





1983年9月13日(火)


ボクの隣のベンチでは、ミチコが破れた田代の制服を一生懸命縫い合わせている。田代は、ミチコの細い指先を、ただぼんやり見つめていた。

ふと、ショウカが訊ねる。

「あっ、そういえば、メイがいつも一緒に帰ってる車椅子の子って、今日って鎌倉にきてるの?」

メイは一瞬、間をあけて、やがて静かな口調でささやいた。

「ユカはねぇ、結局こなかったの。『同じグループの人に迷惑がかかるから』って、遠慮して」

「ふぅ~ん、そうなんだ。でもさぁ、もしアタシたちと同じルートを、その子が一緒にきてたんなら、ほとんどの場所に行くことができなかったかもね。だって、そもそも鎌倉なんて石段と坂道ばっかだし、それに建長寺の山の上になんて、車椅子じゃ絶対に行けなかったでしょ?」

と、ショウカはさらりといった。メイはなにもいわず、口元に小さな笑みを浮かべた。

(そういえば今年の夏、マキコと盆踊り大会に行った日、寂しそうにメイを待ってたその車椅子の女の子を見かけたな。たしかにショウカのいうとおり、今日、ボクらと同じルートをその子が辿ったとすれば、彼女はほとんどの場所を見てまわることなんてできなかったろう。

もし彼女と一緒なら、きっと段差のないようなお寺ばかりを選ばなきゃいけなくなるんだろうな。――けど、そんな場所なんてあるのか? 京都に修学旅行へ行ったって、たぶん同じことになるんじゃないかな、――彼女は、ちゃんとみんなと一緒に行動できるのだろうか?)

「これでいい?」

ミチコは縫い終えた制服を田代に手渡す。

「あっ、ありがとう」

それを受け取ると、田代が恥ずかしそうにお礼をいった。

ボクは、ふと思い出す。

「あのさぁ、そういえばね、結局、お前がDt中のヤツらに取られた金って、取り返せないままで終わっちゃったじゃん。そう考えると、なんとなくオレって殴られ損な気がするんだけど気のせい?」

相変わらず目つきの悪い視線をボクのほうに向け、田代は、

「あぁ、なんだか悪かったね。意味のない喧嘩をさせてしまって」

と、申し訳なさそうにつぶやく。

するとメイが穏やかな口調で、そんな田代の声をやんわり否定した。

「暴力がいいことだとは思わない。――けどね、ワタシは今日、2人が喧嘩したことに意味がなかったなんて、ぜんぜん思わないの。――ショウカのことを助けるために、そしてミチコの尊厳を守るために、シーナ君も田代君も、たった2人であれだけの人数を相手に戦ってた。『勝てやしないかもしれない』っていう、怯えた素振りなんていっさい見せず、誰かのことを、……その誰かが持ってるものを守るため、必死になって戦っていたことに意味がないわけなんてない。お金を失ってしまうことよりも、遥(はる)かに大切なものをね、きっと2人は守ろうとしたんだと思う」

ボクは、メイの横顔に目を向ける。

田代はしばらくうつむいていたが、やがて顔をあげ、ミチコを見つめた。

「小山さん、――いままでなにもしてあげられなくて本当にゴメンね。……小学校のときから小山さんがイジメられてるのを毎日ずっと見てきたくせに、ボクにはキミを助けてあげることができなかった。……自分を守ることばかりで精一杯だったんだ。だけどね、自分では絶対にできないだろうなって決めつけていたことを、やってみたら今日、ボクにはできたんだよ。――なんで、いままでそれをしなかったんだろうって、思うけど」

そういうと田代はボクのほうへと目を向け、さらに語り続けた。

「ボク、ようやくわかったんだよ。――『ずっとひとりだったから、なにもできなかったんだ』ってことを。……でも、さっきシーナがたったひとり一緒にいてくれただけで、ものすごい勇気を得ることができたんだ。不思議なくらい安心できたんだ。――

ボクはもう、来月にはこの学校から転校してしまうけど、でも、ここにいるみんなは、これからもキミと一緒にいてくれるんだって、なんだかボクは信じられるんだ。今日、みんなと一緒にいて、なんとなくそう思えたんだよ。だからキミにもね、勇気を持って欲しい。難しいことかもしれないけれど、……いままでの自分を大きく変えていこうとするための勇気を、小山さんにも持って欲しいんだよ」

ミチコは黙ったまま、つぶらな瞳で田代が吐き落としてゆく言葉を見つめ続けていた。

静かに暮れる秋空を覆った葉々の透き間からこぼれ落ちてく、まばらな陽射しを浴びながら、メイは瞳をうっすら細め、静かに唇を動かした。

「大丈夫、きっとミチコは変わっていける。――アナタの心の優しさが、やがていろんな人の優しさを引き寄せていくんだと思う。さっきミチコも感じたでしょ? ずっと感じることさえも許されなかった希望を、ふたたび抱かせてくれる優しさが、すぐそばにあったんだってことを、――田代君たちがね、さっき守ってくれたんだよ。――きっとアナタが失くしかけていた、幸せを願おうとする心、そのものをね」

ミチコは、天然カールの黒髪に西陽をほんのり浮かびあがらせ、小さく頷き、そっと指先で涙を押さえた。――
ボクは、田代の肩を指で突っつき、笑いながらいった。

「やっぱ、いいヤツなんじゃん。お前って。――でもさぁ、ちゃんと返せよな。オレが貸した2000円は! オレはお前や林さんとは違って、金持ちのボンボンなんかじゃねぇんだからな」

口元を微笑ませ、田代は小さく頷いた。そしてつぶやく。

「さっき半増坊でアイツらと喧嘩し終えたあと、李さんのいってたことが、なんとなくボクにもわかるような気がする。シーナ、――お前はさぁ、たぶん、誰かが心に隠し持つ、本当の顔に気づいてやることができる人なんだと思う。そして、その誰かが本当に苦しんでるときは、絶対その人のために、なにかをしようとするヤツなんだろうってね」



【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】



【2012.03.21 記事原文】

女優としても高い評価を受けているベット・ミドラー。
彼女が出演した映画『フォーエバー・フレンズ』のエンディング曲
「Wind Beneath My Wings」です。


映画の一番ラストで、親友と出会った頃に2人で撮った写真が映るのだが…
いやいや。。。泣けました。。。






Wind Beneath My Wings - The Best BetteWind Beneath My Wings - ベット・ミドラー
サウンドトラック『Beaches: Original Soundtrack』 1988年

【Re-Edit】 Glory Of Love - Peter Cetera 【80年代バラード】

【Re-Edit】【80年代洋楽バラードの名曲】


Glory Of Love





1983年9月13日(火)

「彼女とは一度も話したことはないけど、――でも、ボクはずっと見てきた。いままで彼女がどんなことをみんなからされてきたのか、を。――でも、変わると思ったんだ。中学校に入れば、きっと、そんな生活も終わるんだろうって思ってた。けど、――もっとヒドくなった。それに彼女は、もうすぐ本当にひとりぼっちにさせられてしまうんだ」

ボクには、そのとき田代がなにをいおうとしているのか、まだよくわからなかった。

「まぁ、なんとなくは聞いてるよ。小山さんが小学校のときから、中3になるまで、ずっといろんなヤツにイジメられてきたってことはね」

小声でボクはそういって、前を歩く小山ミチコの細い背中を見つめた。しばらく風の音を聴きいていた田代が、「ポツリ」とつぶやく。

「――ボクね、来月、東京に転校するんだよ」

「えっ! マジで?」

と、ボクは驚きながら問いかける。

「お父さんが、小学校のとき交通事故で死んでから、ずっとお母さんと暮らしてきたけど、来月、お母さんの実家に帰るんだ。――ボク、来年、都内の高校を受験するからね」

田代は、そびえる老樹たちの太い幹のすき間から、遠くの山並みを見つめた。

「――ウチのお父さんさぁ、結構大きな病院を開業してたから、そのときの預金とかもあったし、生命保険で相当な金額入ってたみたいで、変な話、お父さんが死んでも、生活はさほど困らなかった。まぁ、お母さんがいまでも病院のオーナーやってるし」

「へぇ~、じゃあ、お前んとこも相当に金持ちなんだな」

ボクは、「フッ」と笑って田代に目を向ける。

「今朝、円覚寺で不良にお金を取られたとき、林さんは、そのことを怒ってくれてたけど、ボクにとっては、別にいつものことだったし、本当はなんとも思ってなかった。

それに、――林さんは小学校のとき、上級生にお金を渡して、その人たちから守ってもらってたみたいだけどボクは違う。――ボクは、みんなから暴力を振るわれないために、ずっとお金を払い続けてきたんだ。暴力が振るわれるのが本当にイヤだったから、お金を払って、どうにかそれを避け続けてきたんだ」

弱々しく吐きこぼされてゆく田代の言葉が、「チクチク」と、やけに心へ突き刺さる。ボクは足元の小石を蹴飛ばした。――淡々(あわあわ)しい声色のままで田代は続ける。

「――けど、ある日、いつものようにタンスにしまってあったお母さんの財布から、新札のお金を盗ろうとしたとき、お札の手前に手紙が入ってたんだ。――たぶん、それはお父さんの字だった。――

『お前がどんな理由で、このお金を持っていくのかについてはなにも聞かない。けれど、そのお金がお前に役立つことに使われているものだと、私たちは信じている』ってね、そう書いてあった。

ボクはそれを読んで、はじめて両親を裏切っていた自分の罪の重さを知ったんだ。それにね、そのときはじめて見たんだ。お父さんの書いた字を、いや、――それが、最後に読んだお父さんの字だった」

ボクは、横目で田代を見つめると、一番先を歩くショウカの小さな背中のほうへと視線を移していった。

「だからお前、林さんにいってたのか? 『そのお金は林さんが自分で稼いだものじゃない。林さんのお父さんが稼いだお金だ』って、――まぁ、お前と林さんとじゃ、そもそも理由が違ってたんだな。誰かに金を払うことの理由が、さ」

田代は、相変わらずの鋭い視線をボクのほうへ向けてきた。細くてよくわからなかったけど、その瞳の奥には、李メイと同じ儚(はかな)さが、なんとなく漂っているように思えた。

「それ以来、ボクはクラスのヤツらや上級生たちに、お金をいっさい渡さなくなった。だから、毎日、暴力を受けるようにもなったんだ。でもね、――殴られてても、なぜだか少し安心できてたんだ。

だって、小山さんも、毎日、ボク以上に、もっとひどいイジメを受けていたからね。『ボクだけじゃないんだ』って、――そんな彼女を見て安心できてたんだ。おかしいと思うだろ? でも本当に『ひとりじゃないんだ』って、安心できてたんだよ」

――やがてボクらは、苔むした岩肌が荒々しく隆起するその場所へと辿りつく。
「十王岩」と呼ばれるその奇岩の脇からは、波打つ山の深緑と、霞(かす)みのなかを、煌(きら)めく水面(みなも)に囲われた鎌倉の街並みを、ほぼ真正面に一望することができた。

「うわぁ! やっぱさぁ、さすがにガイドブックに載ってるだけのことあるわよね」

と、ショウカは体を浮かすようにし、思わずそう叫ぶ。
木立の影に遮られないこの場所を、白い陽射しが柔らかく包み込む。ショウカに続いて岩の上をあがっていく、メイとミチコのうしろ姿を見つめながら、さっき田代がいった言葉をボクは思い出していた。

【――もし、ボクが東京へ転校してしまったら、小山さんはクラスのなかで安心できるものが、なにもなくなってしまう。ボクが谷川たちにイジメられてたことで、彼女が安心できてたかどうかはわからないけど、……来月からは、イジメの対象が彼女ひとりきりになってしまう。――

でも、こないだシーナが谷川のことを殴ったんで、もしかしたら、ヤツらのイジメも少しはおさまるのかもしれない。けれど、彼女はボクと違って、ほかのクラスのヤツらからもイジメられてるだろ? ――

だからシーナ、ボクがこんなこというのはおかしいし、お前が迷惑なのもわかるけど、少なくとも、谷川たちからだけでも守ってやって欲しいんだ。彼女のことを、――だって、お前にしかできないだろ? アイツらから彼女を守ってあげれるのはもう、ウチの学校で、……お前だけしかいないんだよ】


【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】



【2012.03.21 記事原文】

シカゴを脱退し、ソロとなったピーター・セテラ。
デヴィッド・フォスターをプロデュースに迎えた
2ndアルバム『Solitude/Solitaire』から
彼の代表的ヒットナンバーとなった「Glory Of Love」をチョイス♪

映画『ベスト・キッド2』主題歌です。






Glory Of Love - ピーター・セテラ
2ndアルバム『Solitude/Solitaire』 1986年

【Re-Edit】 Hard To Say I'm Sorry - Chicago 【80年代バラード】

【Re-Edit】【80年代洋楽バラードの名曲】


Hard To Say I'm Sorry




1983年9月13日(火)

ボクたちは結局、円覚寺には戻らずに、坊主あたまたち5人の不良学生と決闘を繰り広げた駐車場を出ると、そのまま横須賀線の線路を右手に見ながら鎌倉駅のほうへと向かう。このまま行けば、やがてその細いわき道は、交通量の多い「鎌倉街道(県道21号線)」と丁字(ていじ)状にぶつかるはずだ。

子供の頃、七五三で鶴岡八幡宮へ行った帰りなど、何度かこの道を車で通った覚えはあるが、海沿いの国道134号線から鶴岡八幡宮の参堂に沿って北上し、北鎌倉駅前で横須賀線と並走するように大船駅方面へと通じる鎌倉エリア随一の主要道路ということもあって、当時からこの鎌倉街道は週末などには大渋滞することで有名な道だった。

左右に歩道を配した、さして広くもない二車線道路に突き当たると、ボクたちは鶴岡八幡宮の裏手のほうまでなだらかに続いてゆく、そんな鎌倉街道の坂道をのぼりはじめた。いまはまだ平日の午前中ということもあり、この坂道にそれほど多くの観光客の姿は見受けられない。

林ショウカと李メイは、ボクの少し前を並んで歩き、ボクの数歩うしろを田代ミツオがついてきていた。山向こうの海から鎌倉街道を這うようにして穏やかな南風が絶えず吹き流れてくる。

さっきの駐車場を出てからしばらく経つが、4人のあいだで会話らしい会話などは、その後、ほとんど交わされていない。ただ、ときどきショウカがうしろを振り返っては、ボクのほうへ何度か微笑みかけたりしている。そのたびに、メイもボクのことを涼やかな眼差しで見つめた。ボクは、ショウカの長い黒髪と、メイの肩先で揺れる少し茶色いうしろ髪がふんわり風にそよぐさまをぼんやりと見つめながらウォークマンを聴いていた。湿度が低いせいもあり、木陰に入るとそんな柔らかな南風さえも、なんとなくひんやり感じられる。

基本的には左右ともに一般住宅が建ち並ぶこの通り沿いにも、小さな店舗が「ポツポツ」と点在してはいたけれど、北鎌倉の駅のほうから鎌倉方面へ向かう観光客で連日賑わう目抜き通りのわりに、飲食店や土産物を売ってるようなお店の数があまりにも少ないように思える。

そういえば、さっきは、不良連中に走って逃げられてしまったので、結局、田代が取られたお金を取り返すことができなかった。ボクがサシでやり合った坊主あたまの野郎には、負けこそしなかったものの、最初に蹴られたわき腹がまだなんとなく痛むし、それ以上に田代の大きな顔面を殴ったときの右手首が「ジンジン」と疼(うず)いている。なんだかものすごく無駄なことをしたような気分だった。ショウカはときどきうしろを振り返り、ボクに微笑みかけていた。そのたびに、メイもボクのことを涼やかな眼差しで見つめた。

ヘッドフォンからは、去年、アメリカのロックバンドのシカゴがリリースし、大ヒットした「素直になれなくて(Hard To Say I'm Sorry)」が流れている。――心の奥底をくすぐられるような、この淡くノスタルジックなピアノの旋律を、中2の夏休みに入る少し前まで、ボクは学校から帰ると、よく応接間で弾いていた。そして、この曲をなんとなく弾きこなせるようになった頃、ボクは川澄マレンと付き合いはじめたんだ。

いつだったかな。――学校帰りにマレンがボクの家へ遊びにくるようになった、とある土曜日の午後。両親が留守のあいだに、ボクはこの「素直になれなくて」を彼女の前で一度だけ弾いたことがあるんだ。そのときマレンは大きな瞳を輝かせ、大喜びでその演奏を褒めてくれてたな。たかだか一年ちょっと前の出来事なのに、なぜだろう、――なんだかあの日の情景が、青い靄(もや)が揺らめくような時間の流れの、ずっとずっと遠くのほうで、映し出されているように思えてしまう。

マレンと過ごした日々の記憶は、日常のほんの些細な光景さえも、ほとんどすべてが薄いフィルム状に記録され、一枚一枚積み重りながらボクの心のどこかにしまわれている。

きっといままで生きてきた14年間の人生で、心に焼き付けられたありとあらゆる彼女以外の想い出なんかより、マレンの面影が映し出されるたった一年分の記録映像のほうがはるかに膨大で、ときどき心のなかで勝手に再生されはじめてしまうそれらの映像は、いつだって、なんだかやけに青みがかって見えるんだ。

その青さは、そのときボクが彼女に抱いた感情をあらわしている色なのだろうか? 
青、――はたしてボクはあの頃、心でなにを思いながら彼女と過ごしていたのだろう?

(そういえば、すっかり蝉の声がしなくなったな)
ほんの数週間まで街の空気を振動させ続けていた「夏の風物詩」が、潔く鳴りやんだ深緑の影をボクは見上げた。――



【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】




【2012.03.21 記事原文】

さて。ピーター・セテラといえば、やっぱしシカゴの歴史的バラード
「Hard To Say I'm Sorry(素直になれなくて)」ですよね♪

ボクが中学生の頃の風景が鮮やかに蘇る名曲。


でも…シカゴは、さほど売れていなかった頃のほうが好きだな。






Hard to Say I'm Sorry / Get Away - Chicago XXVIHard To Say I'm Sorry(素直になれなくて) - シカゴ
アルバム『Chicago 16』 1982年



Masterpiece of the Western music of the 70s/70年代洋楽の名曲
If you want to cry/泣きたいとき
If you want to be healed/癒されたいとき
Drinking alcohol/お酒を飲みつつ
While driving/ドライブしながら
If you want to Fever/血が騒ぐ
Masterpiece of the Western music of the 80s/80年代洋楽の名曲
80's Ballard masterpieces/80年代バラードの名曲
80's Rock masterpieces/80年代ロックの名曲
80's Pops & AOR masterpieces/80年代ポップスの名曲
70's Dance masterpieces/70年代ダンス系の名曲
Masterpiece of the Western music of less than 70s/70年代未満洋楽の名曲
Less than the 70's classic Ballad/70年代未満バラードの名曲
Less than the 70's classic Rock/70代未満ロックの名曲
Less than the 70's classic Pops & AOR/70代未満ポップスの名曲
Masterpiece of the Western music of more than 90s/90年代以上洋楽の名曲
Ballade more than of the 90s/90年代以上バラードの名曲
Rock more than of the 90s/90年代以上ロックの名曲
Pops & AOR more than of the 90s/90年代以上ポップスの名曲
90's Dance masterpieces/90年代ダンス系の名曲
Masterpiece of the Japanese music/未来に残したい日本の名曲
Dedicated to sweethearts/恋する二人に捧ぐ
Spend the night with sadness/悲しみと共に過ごす夜
Nostalgic feelings/ノスタルジックな想い
In the room which shines with the morning sun/朝日が差し込む部屋で
While looking at the setting sun in a hotel/夕陽が見えるホテルで
Memories of youth/若かりし日々の思い出
If you want to fuss/タテノリしたい気分なとき
If you want to feel the Rock/かなりRockな気分
Masterpieces of Instrumental/インストルメンタルな名曲
 
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