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未来に残したい洋楽&邦楽の名曲

70~80年代の洋楽&邦楽を中心に未来に残したい名曲&名盤を独自にチョイスするBlogです☆
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【Re-Edit】【ALOHA STAR MUSIC DIARY】 Phenomenon - UFO





イウがタイミングを計りながらボクのほうを見る。
ボクは一呼吸置いてから イウに目で合図を送る。

やがて イウのギブソン " エピフォン・カジノ "が
Eの開放弦を交えながら 5フレッドの4・5・6弦を駆使した
Eマイナーのペンタトニックを高速ピッキングし始めた。

ボクも中2のときにイウの家で散々練習しまくっていた
忘れもしないこのイントロのギター・リフ。

若き日のマイケル・シェンカーが在籍していたUFOが1974年にリリースした
3rdアルバム『Phenomenon』に収録されたギターロックの傑作ナンバー


「Rock Bottom」


この曲を完璧に演奏するためには 左手の薬指を
自在に操れるようにならなければ まず不可能だ。



【ALOHA STAR MUSIC DIARY】 Epi - 43  " A Memory in My Heart Ⅰ " より "





【2013.03.18 原文】


ボクは 食卓のテーブルを思いっきり上から叩いた。

親父の水割りと 妹の味噌汁がこぼれた。

ボクは そのまま2階へと上がって行った。



アンプからヘッドフォン・ジャックを引き抜き
思いっきりヴォリュームを上げてレコードを再生させた。

プレイヤーには UFOが1974年にリリースした3rdアルバム
『Phenomenon』が入ったままだった。

1曲目の「OH MY」をしばらく聴いてから 一旦 針を持ち上げ
5曲目「Rock Bottom」の溝に落とした。



歪んだギタリフが大音量で鳴り響いた。
4度目のリフを 地面から這い上がってくるような
強烈なキックが持ち上げていく。

アップテンポな8ビートに 若き日のマイケル・シェンカーが奏でる
5~7フレッド付近の低音弦をかき鳴らすようなヘヴィ&クールなリフが重なり
この部屋全体を突き上げ そして揺さぶる。


ボクは大声を張り上げて歌った。

さらにヴォリュームを上げる。

サビに差し掛かる手前で スピーカーが飛んだ。

それでも ボクは何かを大声で叫び続けていた。


きっと歌でも言葉でもない。
それは 単なる" 叫び "だった。



【ALOHA STAR MUSIC DIARY】 Epi - 43  " Rock Bottom より "




Phenomenon - UFO



リリース 1974年5月
レーベル クリサリス
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【ALOHA STAR MUSIC DIARY No.29】 Rocket to Russia - ラモーンズ

【ALOHA STAR MUSIC DIARY No.29】 Rocket to Russia - ラモーンズ







1983年11月


" L (エル)"

スウェットにサングラス姿の男はそう呼んでいた。



やがて電話が終わり カウンターの奥からGENが戻ってきた。


「今回は " ペーパー" と " チケット" しかねぇのか?」

「いやいやぁ 効果は大して" 錠剤(ドット) "と変わりませんよ」

「まぁ ヤってみりゃ判るがな。粗悪品なら要らねぇぞ」


GENは 紙の束から1枚だけ引き抜き それをヒラヒラと扇いだ。


「おめぇ 最近" S "なんて持ってねぇだろうな」

「さすがに最近は無理っす。" あいだ "の抜きが多くって 買い値も合わねぇ」

「いや そういう意味じゃねぇよ。
まさか" S "なんて扱ってねぇだろうな!って言ってんだよ」

「まぁ 高いくせに リスクがあり過ぎるんでね。
オレんとこじゃぁ 最近 仕入れてないっすねぇ。」



【 そういえば いつだったか隣の兄貴が言ってたな。
" S "とは 警察用語でいうところの" スピード " もしくは" シャブ "
つまりは覚せい剤のことだろう 】




やがてGENは さして可愛くもない4人の追っかけ少女に さっきから
つまらないギャグばかり飛ばしてるロックンローラーたちのボックス席へと向かった。


ボクはカウンターに座ってるサングラスの男にそれとなく聞いた。


「" L "って 覚せい剤なんですか?」

男は口元だけを少しほころばせながら言った。

「覚せい剤じゃぁねえな。 これは" 幻覚剤 "だ。
おめぇ その違いが分かるか?」

「違い・・・ですか」

「まぁ分かりやすくいえば" 快楽 "と" 幻想 "の違いだな」


ボクは その" 幻想 "という言葉の響きが妙に気になった。


「ソレって " マリファナ "とかと似たような感じですかね?」

「はぁ? マリファナ?  バカ言ってんじゃねぇよ。 
LSDと比較すりゃぁ あんなのデザートにもなりゃしねぇ」

「へぇ。 そんなに すごいんですねぇ」

「まぁ 人によっちゃぁ10倍も100倍もスゲェことになる」



GENはボックス席の連中に ちぎった小さな紙片を配っている。


「あのさぁ。とりあえず" テイスティング "の前に言っとくけどよぉ。

コイツをキめたら とりあえず完全に" ヌけ切る "までは絶対に店から出れねぇからな。
まぁ 大体 今から12時間くらいは帰れねぇからよぉ。
そのつもりでいてくれや。」


【 今から12時間後・・・つまりは明日の昼過ぎってことじゃん 】


「それからよぉ。 おめぇら 刃物預かっとくからよこせ。
" BAD "に堕ちた場合 何しでかすか分からねぇからな」


ローラー風のヤツらは ポケットからバタフライナイフを取り出し
それをGENに預けた。


ボクは見ていた。

さっき" バタフライアクション "を披露してた にきび面のダセェヤツは
ずっと隣の女の子とイチャついてて まだヤツだけはナイフを持ったままだ。

GENに そのことを言おうとしたけど まぁ別にいいやと思った。


「いいか。 絶対にキめたら外に出るんじゃねぇぞ。
むかし そこの階段から飛び降りたヤツがいるからな。
" 空を飛びたい "って抜かしながらよぉ」

GENは笑いながらそう言って 入り口の扉の鍵を掛けた。
さらに左右の扉の上のほうある穴の開いたL形金具に
大きな南京錠のフックを通して鍵を閉めた。


【 ん?じゃぁ もうボクも帰れないってことか・・・
じゃぁ 明日は学校に行けないってことだな 】



「ホントは 酒と混ぜると ちっとマズイんだけどな。
特に " 泣き上戸 "とかは " BAD "に堕ちやすいからよぉ。

酔うと 泣いたり喚いたりしやすいヤツはいねぇか?」


女の子たちは 渡された小さな紙切れを興味深そうに眺めながら
ローラーたちに 小声でいろいろと質問している。

多分 彼女たちも きっとまだ" L "を経験したことがないんだろう。
おそらくは " SEXドラッグ "かなにかと勘違いしてるようだ。


「おめぇもヤってみるか?」


" L "の紙片を 切り取り線に沿ってちぎりながら
カウンターに座ってるサングラスの男がボクにそう言った。

ボクは " 幻想 "という言葉に惹かれてたんで つい試してみたくなった。


「じゃぁ とりあえず・・・」

男はちぎった紙片を ボクの手のひらの上にそっと置いた・・・




「じゃぁ 諸君! Have a Nice Trip!」

GENはそう言うと 舌を出し 小さな" ペーパー・アシッド"をその上に乗せた。

ボックス席の連中もみな 同じようにして口に入れた。


「これって飲むんですか?」

「いや。飲み込んでもいいけど とりあえず舌の裏にでも挟んで
しばらく吸収させときな」

サングラスの男は続けた。


「" L "の場合 特に重要なのは" セット "と" セッティング "だ。

ソレをキめてるときは あらゆる要素に精神が影響を受け易くなるから
" 精神状態 "と" 場所 "次第じゃぁ 見える" 幻覚 "が全く違うものになっちまう。

たしかに・・・マリファナと違って 酔ってると 危険かも知れねぇな」


ボクはしばらく その小さい切手のような紙切れを眺め
やがて ゆっくり口に含んでみる。

何の味もしない。
ただ 口の中に 繊維質な紙の風味が広がっていっただけだった・・・


・・・別に何も変わらない・・・


ボックス席の連中も すっかりそんなことを忘れたかのようにして
また女の子にちょっかい出したりしながら騒いでいる。


ボクはレコード棚を眺めていた。
何となくラモーンズが聴きたくなったんで
彼らの3枚目のアルバム『Rocket to Russia』を引っ張り出した。

このアルバムは パンクというよりもかなりロック色が強い。

ラモーンズは ピストルズとかに比べればデビュー当時から
割とロックっぽかったんだけど この3rdアルバムは
R&Rっぽいテイストも多少は感じられるんで
テディとかロックンローラー連中も文句を言わないだろう。


軽快なオールディーズ風な5曲目「Sheena Is a Punk Rocker」
が流れてきた頃 ボクはちょっと眩暈のようなものを感じた。

何となく耳の奥のほうから 音楽とは別の なにか低く籠った
"ゴォー"っという" うねり "のような音がしてる気がする。


サングラスの男とGENは 奥のボックス席で2人で話し込んでいた。
ローラーたちの席のほうを見ると 明らかに女の子たちの雰囲気がおかしい。
" 動きがおかしい "というよりも " 動きそのもの "が止まっている。


ボクは徐々に カラダが重たくなっていくのが分かった。

きっと もうレコードを交換するのは難しくなるだろうから
プレーヤーの電源を切って チューナーに切り替えた。

そしてそのままカウンターの一番端の椅子に座り込んだ。

ラジオからはFENが流れている。
全く意味の分からない早口の英語を そのまましばらく聴いていた・・・


ちょうど よくアニメとかで" 催眠光線 "を食らってるときみたいに 
蜘蛛の巣のような 白くてキレイな放射状の" 円網(えんもう)"
が 揺れ動きながら ボクの視界を細かく分断し始めた。

ボクは慌てて目をこすったが その円網は
次々と目の前に小さな点のようにして生まれては
やがて大きく広がりながら ボクを包み込むようにして
あたまの後ろのほうへと流れていった。

真っ白な輝きを放ちつつ 円網の流れは急加速してゆく。
ボクの眼の焦点は もはや その動きを捉えることなど出来なくなった。



【 つまり・・・これが" Trip "か・・・】


ボクは 本当に超高速でワープしているような気分になり始め
やがて" 幻想の世界 "へと旅立っていった・・・

もはや時間の感覚を失ってきている。
数分のようで数時間にも思える。

カラダの外側がものすごく重たく
そのくせに その内側は やたらと軽くなっていくような感覚・・・



しばらくして そのワープの速度が だんだんと緩みはじめると
遠くに青い海のような色が見えてきた。

それは風景ではなく 単なる色だったけれど
ボクは その色にすごく淡い懐かしさを抱いていた。


ラジオから流れるDJの英語が 波の音に変わり
風の音に変わり そして街の音に変わってゆく。


【 この場所って" あの日 "の海なんだろうか・・・だとしたら・・・ 】



ボクは見つけた。

ターコイスブルーに揺らめく背景色のなかに
輝きを放ちながら 笑顔で微笑むマレンを見つけた。


「マレン・・・」

「カミュちゃん」

「ゴメン・・・何か変なこと言っちゃったまま あの後 会えなくなっちゃって 」

「ううん いいよ。 分かってる。 本心じゃなかったんでしょ。

カミュちゃんは優しいからさぁ。
きっと 一人で悩んでるんだろうなって思ってたよ」

マレンは眩しそうな顔で笑った。


「オレさぁ。

マレンがいなくなって はっきり分かったことがあるんだよ。
どうしても マレンにそのことを言いたくて・・・

でも ずっと会えないままだったから言えなかったんだけど・・・
オレはね・・・」

「あーっ  カミュちゃん それ以上言っちゃダメ!」

「えっ! 何で・・・」

「アタシの誕生日にその言葉をカミュちゃんの声で聞きたいから・・・

だから誕生日まで待って。それから・・・」


マレンは微笑んだままで続けた。


「あの手紙は 絶対に当日まで読んじゃダメだからね!」






1984年3月


言うことなんて ホントは何も考えてなかったんだけど
ボクは 目を閉じたままで マイクに向かって語りかけ始めた。



「最後に・・・

本当はね この曲を誰かの前で歌うことって
絶対にないだろうと思ってたんだけど・・・
この曲はね ある人のために去年の今頃 作った曲なんですよね。

この曲を作ったときは 歌詞を 何度も何度も書き直したんだけど
何度書き直しても やっぱり いざ読み返すとものすごく恥ずかしくって・・・

その人に初めて聴かせたときも なんだか すごい恥ずかしくってね。
" 作んなきゃ良かったかなぁ " とかって ちょっと後悔したんです。


みんな 好きな人の前で 本当に素直な気持ちになってるかといえば
きっとそうじゃないんだと思う。

家で独りでいるときは 好きな人のことばかり考えてるけど
本人の前では そんな素振りを全然見せなかったりしてるんだろうと思う。

何となく 誰かのことを好きになったり " 好き "って言葉で
ホントの気持ちを伝えたりするのって恥ずかしいですからね。

ボクだって たぶん  きっとそうなんだろうし・・・


だけど・・・

たかだか14、5歳のボクたちが 真剣に誰かを大切に想う気持ちが
すごく子供っぽい感情なのかといえば そうじゃないんだと思う。

" 愛してる "って言葉にするのが恥ずかしいだけで
ボクらが大人になってから誰かに対して抱く気持ちと
何も変わらないんじゃないかな・・・


ボクがこの曲の歌詞を書いてた頃って
まだ14歳になったばかりだったから・・・
正直 この内容が本心なのかは分からなかった。

当然 ウソの気持ちを書いたんじゃないんだけど
全部が本当の気持ちかと聞かれたら きっと全部じゃなかったと思うんです。

好きだとは思ってたけど そのときは
彼女のことを" ものすごく大切 "だとは別に思ってなかった・・・

それでも この曲を聴いたとき 彼女は ものすごく喜んでくれた・・・


そしてボクに「これって本心?」って聞いてきたんです。
ボクは「ウソじゃない」って答えた。


彼女は いつだって何度も・・・何度も・・・
ボクに" アタシのこと好き? "って 聞いてきてた。

いつも一緒にいるのに 何度もボクに聞いてきた・・・

別に何かに不安があったからじゃない。
きっと" 好き "って言葉を・・・
いつだって 何度でも聞いていたかっただけなんだろうと思います。


好きな人から" 好きだ "って言われることって
もしかしたら 一番幸せな気持ちになれることなのかもしれませんよね。


だけど・・・でも ものすごく大切だと思っているのに
" 大切だ "という気持ちを言葉に出来ずに もう二度と会えなくなったとしたら・・・


ホントはずっと一緒にいて欲しかったくせに・・・
その気持ちを一言も伝えられないまま もう会えなくなってしまったとしたら
ボクらは その言葉をずっと心に閉じ込めたままで 生きていかなきゃならなくなる。

その想いだけが 行き場を失ったままで 心のなかに置き去りにされてしまう。


吐き出す先を見失って いつも自分の心のなかに取り残された
その人の思い出の残像に対して ひたすら毎日語り続けてしまう・・・
何で そんなことさえ言えなかったのかを ずっと後悔し続けてしまう・・・


結局 ボクは彼女に聞かれたときだけにしか「好き」とは言わなかった。


一度も自分のほうから彼女に対して心から「好きだ」とは言えなかった。
1年も付き合ってたくせに 最後までそんなことすらも言えなかった・・・

だけど一度だけ" 愛してる "という言葉を使ったことがあるんです。
それは 彼女のために作った この曲の歌詞の中でなんだけど・・・


" 好き "と" 愛してる "って言葉くらいしか
誰かに想いを伝える" 響き "ってないんですよね。

でも" 愛してる "って言葉を 普通ではボクらは絶対に使わない。
何だかウソっぽく思えてしまうからね。


だけど・・・

今にしてみれば それがボク自身に対する せめてもの救いになってるかもしれない。
たった一度だけなんだけど 彼女に直接" 愛してる "と伝えられたということが・・・


" 愛しい想い "は 自分の心の中で飼い慣らしていくものじゃなくって
それを言葉にすることで 相手に喜びを与えられるものなんだから・・・

そのことで 大切な誰かが ちょっとでも幸せを感じてくれるんなら
絶対に その想いを言葉で伝えるべきなんだと思います。


どんなに恥ずかしいと思ってても・・・ちゃんと云うべきだと思うんです。

ボクのように後悔しないためにも・・・ね。



ちょっと 訳の分からない話を長々としちゃったんですけど・・・


この曲を作ったときには 100%本心じゃなかったけれど

今ならば・・・

今であれば この曲を 好きだったその子の前でも
恥ずかしがらずに歌えるような気がします。

この内容に やっと" 気持ち "が追いついたのかな・・・


その子にしか絶対に聴かせないと決めてたつもりだったんだけど・・・

最後に この曲を歌うことで
ボクの心のなかに閉じ込められていた 彼女への想いを解放させて欲しい。


ボクが大好きだった・・・

きっと愛していた・・・


川澄マレンに対してのボクの気持ちを・・・

今日 ようやくボクの心から解放したいと思います」






Rocket to Russia - ラモーンズ




 1 Cretin Hop
 2 Rockaway Beach
 3 Here Today, Gone Tomorrow
 4 Locket Love
 5 I Don't Care
 6 Sheena Is A Punk Rocker
 7 We're A Happy Family
 8 Teenage Lobotomy
9 Do You Wanna Dance?
10 I Wanna Be Well
11 I Can't Give You Anything
12 Ramona
13 Surfin' Bird
14 Why Is It Always This Way?

リリース 1977年11月4日 |レーベル サイアー

パンクといえばUKという概念を覆したアメリカン・パンクバンドであるラモーンズ☆パンク創設期のバンドが軒並み別方向の音楽へとシフトしてゆく中にあって ラモーンズだけはデビューから一貫してシンプルなロックを貫き続けるのですね♪そんな彼らが1977年にリリースした3rdアルバム『Rocket to Russia』は " 乱雑でノイジー "といったパンクテイストではなく 非常に丁寧なアレンジが施されたイカしたロックアルバムといえるでしょう☆






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1983年9月


その日の学校帰り
李メイは 倉田ユカリが座った車椅子を押しながら
ようやく艶やかなピンク色の薄い唇を ほんの少しだけ開いた。


「もし良ければ ちょっとだけでもウチに来れば?
シーナ君に何も予定がないんなら。。。だけど」

「うーん。 そうねぇ。 それじゃぁ ちょっとだけ・・・ね」


今さっき 初めて話したばかりのユカリに
" メイの家に今から一緒に来ない? "って いきなり誘われて
ボクもどうしようか少しだけ悩んでいた。

だけど メイがそう言うんならば
別に 暇だったし行ってもいいかな。と思った。


【 でも なんでユカリはボクをメイの家に誘ったんだろう 】


車椅子に座りながら ニコニコとボクの顔を 小さくて丸い
まるでリスのような" つぶらな "瞳で見上げているユカリの誘いを
それ以上 理由も無く断れるような雰囲気ではなかった。

だからって 別に行くのが嫌だったという訳でもない。

メイが纏(まと)う どこか" 涼しげな魅力 "が
最近 少しだけ気になっていたのは確かだった。


もしかしたら 左目の下にある" 泣きぼくろ "のせいで
彼女が余計に大人びて見えているのかもしれない。


【 " ほくろ "ってすごいな。ほんの チョコっとあるだけで 
表情をものすごく変える魔力を持ってる。
しかも " ほくろ "の場所によって その人の雰囲気が全く違って見えてしまう。

そういえば マレンにも唇の上に小さな" ほくろ "があったな。
だから何となく キレイで大人びた顔立ちに思えたんだ。 きっと・・・ 】





ボクが生まれたときから すでにそこにあったんだろう。

錆びたトタン作りの古い酒屋は 昔から何も変わっていない。
まだ昼間なのに 電気が点いてないせいで 光の当たらない店の奥のほうは真っ暗だ。

ボクらは その店でジュースを買ってからメイの家へと向かう。

「ボクが払うよ」と言ったんだけど
「誘ったのは私だから」とユカリがそれをまとめて買った。

ユカリは店を出てからも ずっと車椅子の上で嬉しそうにはしゃいでいる。

ボクは 車椅子を押すメイのちょっと後ろを 買ったジュースの袋を持って歩いた。
きっと他の生徒たちが見たら すごく意外な組み合わせに思うんだろうな。


ボクが通っている通学路の 途中の路地を左に曲がると
両脇に建つ家々の庭先から はみ出すようにして
大きな樹木が生い茂った狭い住宅街の通りへと出る。

木の陰に埋め尽くされ ほとんど太陽の西日が遮られたその通りを
少しだけ入った場所にメイの家はあった。


コリアン3世の彼女の家が どんな作りなのかな。とちょっと気になったが
それはごく普通の ありふれた木造2階建ての住宅だった。


考えてみれば 中学になってから
ボクが女の子の家に遊びに行ったという記憶なんて ほとんどない。
マレンの家にしたって せいぜい門の前にまでしか行ったことがなかった。


メイの家の玄関で ボクはユカリが車椅子から降りるのを手伝った。
勝手にカラダを触っていいものか一瞬悩んだけど
とにかく彼女を左側からゆっくりと抱え上げた。

ユカリのカラダは ボクが想像してたよりも ずっと軽かった。

おそらく片手でも持ち上げられそうなほどに軽く
そして ものすごく細かった。


「ありがとう。 ゴメンね」

ユカリはそう言って 玄関の上り框(あがりかまち)に一旦座ると 
車椅子の座席の後ろから杖を外して 一人で立ち上がった。

ボクが慌ててユカリを支えようと 手を差し出した瞬間
彼女の" か細い "両脚には 不釣合いなほどに重たそうな
メタルフレームの補助具が装着されていることに初めて気付いた。

さっきまでは ずっとひざ掛けをしていたせいで " ソレ "には気付かなかったのだ。


玄関にはメイの兄貴のものと思われる" ヨーロピアン "や" 餃子 "
タイプの大きなサイズの靴が何足か置いてあった。

もし" 悪評の絶えない "不良である彼女の兄貴に出会ったら
何て挨拶したらいいものか考えてたけど
とりあえずは まだ彼は帰って来ていないみたいだった。


玄関を上がってすぐ左手の応接間へと ユカリは先に入っていった。
ボクもその後を追うと そこには茶色いソファセットの奥に
1台の古いピアノが置かれていた。

たぶん彼女が小学校くらいから ずっと使ってるものなんだろう。


「ちょっと待てってね」

メイは応接間の入り口でボクらにそう言うと 2階へと上がっていった。





1983年11月


土曜日


時刻はすでに 深夜零時を過ぎている。

ヤンキー女子高生の彼女たちも さすがに数時間前までの勢いは
すっかり無くなってしまっているようだ。

おそらく まだグラスを持てる気力のある子は
せいぜい2、3人くらいなものだろう。

しばらく前に彼女たちの輪の中に戻っていった浅倉トモミは
目が据わってる先輩らしき女から ずっと同じような" 武勇伝 "みたいな話を
何度も聞かされているみたいだった。


でも・・・
隣のボックス席に すっかり倒れ込んでしまっている子たちを
どうやって彼女たちは 連れて帰るんだろう。


「GENさん ちょっと電話借りていい?」

" ケバい "化粧の先輩風の一人が そう言うと
かなりフラツキながら カウンターへと入ってきた。

シンクの前に立ってセブンスターを吸っているボクを見ると


「アンタさぁ。 あの子は ダメだよ。
西尾のお気に入りなんだからね」

「西尾? 西尾って誰すか?」

「Kf高校の西尾だよ。Ys中学七人集の" 裏番 "だったさぁ」


ボクもその名前は どこかで聞いたことがあるような気がした。
隣町にあるYs中で 確かボクらの2校上の人だったと思う。


【 夏に 一緒にシンナー吸ってたときに
隣町の中学の連中から聞いたんだっけな 】



この界隈の中学では そうした" 何人集 "と呼ばれ
一目置かれている不良集団が何グループかあった。


【 " Ys中 七人集 "で一番 喧嘩が強いとされてたのが
確か その西尾ってヤツじゃなかったかな 】




「まぁ " 西 "は 若い中学生が大好きだからねぇ。
トモミは ヤツの今のお気に入りの1人ってことよ。
" 西 "も 相当に飽きっぽい男なんだけどねぇ。

でもトモミもさぁ。 酔うと 結構 見境い無くなって
おかしくなっちゃうけどね。
まぁ とにかく アノ子には手を出さないほうがいいよ」


【 " お気に入りの一人 " ?・・・
西尾ってヤツの" 彼女 "って 訳じゃぁないんだ 】



" ケバい "先輩は 結構マジな顔をしたままボクにそう告げてから
カウンターの奥へと入って行き 誰かに電話を掛け始めた。

うっすらと聞こえてくる その内容からすれば
暴走族の後輩か誰かを G'Zまで迎えに来させようとしているような感じだった。


ボクは何となく カウンターからトモミのほうを見た。
彼女もさすがに 相当 酔っ払っているように思えた。


【 さっき トモミがボクに言ってた「絶対変なことされる」って
つまりは もし今日 その場所に行ったら 西尾ってヤツらに
" ヤらしい事 "でもされるってことなんだろうな。きっと 】



" ケバい "先輩が 電話からソファに戻って しばらくすると
トモミと先輩たちが ちょっとした口論をし始めた。


「アタシ・・・今日は行きたくない」

「何云ってんの? アンタが来ないと
ヤツがまたスゴク機嫌悪くなるんだからね」

「でも・・・何かカラダの具合が悪いから・・・」


トモミが一瞬 こっちのほうを見たような気がした。

さっきまでの三日月がトロけたような微笑みは すでにそこからは消えている。
彼女の瞳は 明らかに " 哀しみの色 "を漂わせていて どことなく虚ろだった。

なんとなく可哀想だと思ったけど
だからって ボクにはどうすることも出来ない。



30分くらいすると 見るからに" ゾク "っぽい連中が4人
店の中に入ってきた。

ソイツらは GENに挨拶をすると ソファに倒れ込んで
泥酔している女の子たちを 抱え上げて外へと運び出し始めた。

彼女たちには もはや全く意識がなかった。
ほとんど" 死体 "のようだったけど まだとりあえずは生きてるようだ。

数人が運び出された後 そのうちの一人の男が
カウンターでタバコを吸ってるボクのほうを睨んだ。

ボクも睨むという訳でもなく 何となくソイツのことを
別に目を逸らさずに見ていた。

ソイツは ボクのほうへと歩いてきて
目の前のカウンター席に" ドカッ "と音を立てて座り込んだ。
ボクは腕を組みながら ゆっくりとタバコの煙を横のほうへ吐き出した。


「オメェ Si中のシーナだろ! こないだDt中の連中とモメたんだってな」

「・・・モメたっていうよりも 一方的に" リンチ "されたんすけどね」

「そんで ナイフで どっか切られたのか?」

「うーん・・・ナイフかどうか分からないけど まぁヤられました」

「刃物使うなんて " 糞 "だな ソイツら」

「まぁ 手を出してたのは 数人だけなんですけどね」


彼は こないだボクが中学の前でDt中の連中に待ち伏せされて
散々殴られた挙句に 刃物で背中を切られたときの話をしていた。


「GENさんは そのこと知ってるのか?」

「いや・・・GENさんには 別に何も言ってないすね」


男はちょっと口元に笑みを浮かべた。

「だろうな。 もしGENさんがその事知ったら
ソイツきっとこの辺 歩けなくなるだろうから」


GENは酔っ払って さっきからソファの上で ずっと大笑いしている。


「知ってるだろ? GENさんって " 組の親分の息子 "だからな」


【 組? ヤクザ? 】



「あの人 最近じゃぁスゲエ大人しくなったんだけどな。
でも 同年代の人達からは 未だに怖がられてるからよぉ。
だからオメェも 絶対に怒らすなよ」

暴走族の幹部って聞いた気がするんだけど 
ヤクザの息子だったということは 初めて知った話だった・・・




帰り際 トモミがボクのほうへと寄って来た。

結局 今から男の先輩の家に連れて行かれることになった彼女の表情に
さっきまで楽しそうに笑ってた面影などは無かった。


「ゴメンね。 たぶん 今日は抜けられそうにないから」

仕事が終わってから彼女の家に 2人で行こうと誘われてたけれど
別にはっきりと そのことを了承した訳じゃぁない。

だけど 彼女との" 何か "を 少しは期待してたんだろうとは思う。


「また今度 店に来てもいいかな」

「あぁ。 いいと思うけど」

「じゃぁ。またそのうち必ず来るからね」


そう言って 慌しく扉を出て行った彼女の唇から 最初に見たとき
すごく気になった真っ赤なルージュの色は 殆ど拭い去られていた。

それさえなければ 彼女は髪の毛の茶色い
ただの中学3年の少女にしか見えなかった。




1983年9月 


「メイはねぇ・・・」

ユカリはオレンジジュースを一口飲んでから
何かを思い出したようにして" クス "っと微笑んだ。


「たぶん シーナ君のこと気に入ってるんですよ」

「えっ。オレを?」

「たぶん いや。絶対そうだと思います」


その言葉は あまりにも唐突だった。

ユカリとは ついさっき初めて話したばかりだというのに
気付いたら すっかり彼女のペースに" はまって "しまっている。


「メイとはね。 中学に入ってから 同じクラスになったことないんだけど
彼女って 小学校時代から あんまり男の子の話をしないんです。
なんか苦手みたいなんでね。

でもね。最近 シーナ君のことを よく私に話すんですよねぇ。
あっ! 私がこんな事言ったなんて内緒にしといて下さいね」


【 そんなの当たり前だ。メイに何て聞けばいいんだ 】


「メイも私も 小学校の頃は よくからかわれたりして
イジメられてたんですよ。

でもメイは すごく強い子だったし それにとっても優しいの。

私は すぐに泣いちゃうんですけど メイは全然平気みたくって
いつも私のことを慰めてくれてたんです。
ものすごくいい子なんですよ」

「そう。 イジメられてたんだ・・・」

「彼女って すごく人見知りというか 特に男の子には
自分から絶対に話し掛けたりしないんです。

他の男の子の話は 昔からほとんどしないのに
なぜかシーナ君の話だけは この頃 かなりするんですよね。

だけど きっと本人もそのことには気付いてないと思うんです。

だから私がね。 今日 ちょっとシーナ君を誘ってみたんです。
というよりも 機会があれば " いつかは誘ってみよう "
と ずっと思ってたんですけどね。

でも やっぱり シーナ君がメイの家に来るのを
彼女は全然 嫌がらなかったでしょ?
まぁ 絶対に嫌がらないとは 思ってたんですけどね」


ユカリはイタズラっぽく笑いながらそう言った。

ユカリが今日 突然 ボクをメイの家に誘ったのは
つまりは" メイのために誘ってあげた "ということなんだろうか。

メイがユカリに どんなことを話してるのか なんだかものすごく気になった。
それとなく探ろうとしたとき 階段を下りてくる小さな足音が聞こえた。

" シーッ " と ユカリは その小さな唇に左手の人差し指を少しだけ当てた。


【 何だかものすごく不思議な雰囲気を持ってる子だな 】


もしかしたら 単におせっかいなだけなのかもしれないけど
彼女のしぐさや話し方には 素朴な子供のような" 繊細な純粋さ "を感じる。

やがて 銀縁の眼鏡を掛けて 黒っぽいワンピース姿のメイが応接間に入ってきた。
普段 見慣れた制服姿ではなく 私服のメイには どこか" しとやかな気品 "が漂っていた・・・




「こないだ メイに映画館へ連れてってもらったんですよ。
私ね。どうしても『戦場のメリークリスマス』が観たくって 」

「" ワタシが連れていった "っておかしいでしょ。
ユカリンと一緒に観に行っただけなんだから。
それに ワタシも観たいと思ってたんだし」


李メイは倉田ユカリの横に座ってそう話しながら
内側にカールしたセミ・ロングの襟髪を
両手の人差し指で後ろのほうへとそっと流した。


【 メイって 家では 普段 眼鏡を掛けてるんだな 】



「あの坂本龍一の曲って すごくいい曲でしょ。
だから 私 あの後 メイにピアノで弾いて欲しいって すぐお願いしたんです」

「ワタシ 譜面がないと弾けないから・・・困ったんだけどね」

「メイ ちょっと弾いてみてよ」


メイはまるでユカリのお姉さんのようだった。
ワガママな妹のお願いを 何でも笑いながらきいてあげてるように思えた。


メイは 奥のピアノの前に座った。
ボクは彼女のうしろ姿を眺めた。

黒いワンピースが 彼女の緩やかで女の子らしい
両肩のシルエットにフィットしていて すごく似合っている。
というよりも 彼女自身 黒い服が とても似合うんだろうと思う。



戦場のメリークリスマス Piano Ver.






メイがイントロの旋律を弾き始めた。

右手の主旋律は 相当高いオクターブで奏でられているようだ。
ものすごく哀愁を秘めた 儚げなメロディだった。

そして あの有名な Aメロの旋律へと移行していく。
Aメロの主旋律が何小節目かで和音を奏で始めた。
するとピアノのシンプルな演奏に厚みが一気に増してゆく。

左手の伴奏はひたすらベースコードで 切ないメロディラインを下支えしている。

やがて 後半のCメロで おそらく両手で四和音づつ鍵盤を強く叩く感じの
メゾフォルテが絡むパートに差し掛かると 強弱記号に合わせるようにして
ペダルを踏み込むメイの肩や背中は前後に揺れた。


ボクは すごく感動していた。
久し振りに 誰かの生演奏を聴いて心が震えた。
ユカリもじっと 瞬きもせずに メイの後ろ姿を黙って眺めている。


演奏が終わると 思わずボクとユカリはメイに拍手を送っていた。


「いやぁ すごいねぇ 李さん」

「でしょ。メイはすごくピアノが昔から上手だったんですよ。
私も本当はピアノを弾きたかったんですけどね・・・」

ユカリはそういって 自分の右手の指先を一度眺めてから
ボクのほうへとかざした。


「子供の頃 車椅子のスポークに指を挟んじゃったみたいで
そのとき 右手の人差し指と中指を骨折しちゃったんです」

ボクはユカリの細い指先を見つめた。
確かに中指は 第2間接から 横にちょっと曲がっている気がした。


「なんか中指の爪の生え方がおかしくなっちゃったみたいで
あと間接もうまく曲げられなくなっちゃたんでね。
それで私 ピアノは諦めたんです」


あんなにも明るかったユカリの声が
その一瞬だけ " フッ "と どことなく沈み込んだように思えた。


「じゃぁ 次は シーナ君も なにか弾いて下さいね」

ユカリは ボクのほうを 二つの" つぶらな "眼差しで見つめながら
再び笑顔に戻って そう言った。


「じゃぁ・・・ホントに久し振りなんで 上手く弾けるか分からないけど」

「ピアノは ちょっと練習しなくなっただけでも
指先が鈍って すぐ弾けなくなっちゃうものね」


メイは 椅子から立ち上がって 静かに笑いながら そう呟いた。

ボクはメイと入れ替わるようにしてピアノの前に座る。
そこには まだ微かに残る メイの温もりが感じられた。


しばらく鍵盤を眺めてから 適当な和音コードを両手で押さえた。

徐々に 和音コードを組み合わせながら
ひとつの楽曲風に音を変化させていった。

でも 特定の曲を弾いてる訳じゃなくって
そのコードに合ったメロディラインを何となく指先で探していたのだ。


【 まだ少しは動くみたいだな。じゃぁ・・・何を弾こうかな 】


テンポを一旦スローに戻していきながら
Gコード上の鍵盤をしばらく" ポーン ポーン "と数回押さえ続ける。


【 このまま簡単にメロディへ移行できるのは「Let It Be」とか
ボズ・スキャッグスの「We're All Alone」あたりだろう 】



ボクはオリジナルよりも少しテンポを下げて
We're All Alone」のAメロの主旋律を
イントロを飛ばして右手で奏で始めた。

特に違和感もなく 普通に弾けていることに自分でも少しだけ驚きながら・・・



「すごーい!ホントにすごい上手ですね!
全然ピアノ弾けてるじゃないですか。
もしかして" 天才 "なんですか? シーナ君って」


曲を弾き終えると ユカリは驚きと喝采の声を しばらく上げ続けた。

彼女は 厭味っぽくならない ギリギリの褒め方がとても上手い。
しかし そこまで褒められると さすがにボクも少し照れる。

メイも 小さく何度か手を叩き
ボクのことを 薄っすらとした微笑みを湛えた瞳で見つめていた。


「じゃぁ 今度は シーナ君が作ったっていう曲を弾いてみてくださいよ」

「えっ! あれはちょっと難しいから たぶん弾けないと思うんだよねぇ」


「絶対に弾けますよ。 じゃぁ 弾けるとこまででいいんで聴かせてください」

ユカリは相変わらず 押しが強い。
彼女にそう頼まれると 不思議と何だかどうしても断れなくなってしまうのだ。



【 もしかしたら今でも弾けるのかも知れない。
でも この曲を軽々しく弾いていいんだろうか。

これは" マレンのため "だけに作ったメロディ。
この曲を彼女以外の人に 聴かせてしまってもいいんだろうか 】




ボクは瞳を閉じた。

今年の3月 この曲をマレンに初めて聴かせた日の情景が
自然と少しずつ瞼(まぶた)の裏にうっすらと浮かびあがってくる。


無意識のうちに 指先が鍵盤に添えられている感触を感じ取っていた。


【 この曲って イントロコードは" B "から始まるんだったな 】



ボクの両手は やがて鍵盤を一気に強く押し下げた。

一度 メロディを覚えた指先は もし そこに何ら意識がなかったとしても
自然と勝手に動き続けてゆく。


何度も繰り返し 繰り返し 耳で 指先で そして心で奏で続けられたこのメロディ。
どれだけの時間が経とうが 心に刻み込まれた この旋律を忘れるはずもなかった。


長くて複雑なマイナーコードのイントロが終わると
やがて静かにメジャー・コードのAメロが始まる。


ボクは瞳を閉じたまま この曲の主旋律上に 心で歌の歌詞をずっと書き綴っていく。

サビのパートに差し掛かる。

マレンが瞳を閉じて ウォークマンを聴いていたときの
あの穏かな表情がはっきりと思い出されていた。


あのときは恥ずかしくって 彼女に感想すらまともに聞けなかったけど
今ならば マレンの目の前でも ちゃんと恥ずかしがらずに
この曲を歌えるような気がする。


やがて カセットを聴き終わり マレンがそっと その瞳を開けた瞬間の
眩いくらいに輝いていた嬉しそうな笑顔が ボクの心を一気に締め付けた。


1番が終わって 間奏に差し掛かったところで 主旋律のメロディを間違えた。
ボクは ふと我に返る。 その瞬間 指先も" ピタリ "と動きを止める。


今度は さっきのような大きな驚嘆の声は 2人からは上がらなかった。
おそらく 変な終わり方をしちゃったせいだろう。

「やっぱ 途中で間違えちゃったなぁ」

ボクは そう笑って2人のほうを振り返る。


ボクを見つめているメイと目が合った。
彼女はさっきと同じような微笑みを瞳に浮かべていた。

だけど その瞳から頬にかけて 一滴の涙が伝っていくのが分かった。


「すごい・・・  ホントにすごいよ。シーナ君・・・
ものすごくいい曲。 ホントにいい曲。 ワタシはそう思う」


ユカリが何かを言おうとする前に
メイは 涙を拭わずにボクの目を見つめたままで
そっと 優しくこの曲を褒めくれた。


ボクも なぜだか少しだけ涙がこみ上げてきそうな気分になっていた。





Silk Degrees - ボズ・スキャッグス



 1 What Can I Say
 2 Georgia
 3 Jump Street
 4 What Do You Want The Girl To Do
 5 Harbor Lights
 6 Lowdown
 7 It's Over
 8 Love Me Tomorrow
9 Lido Shuffle
10 We're All Alone

リリース 1976年3月 |レーベル コロムビア

" ボズ・スキャッグス氏=AOR "という認識を大いに印象付けたAORの歴史的名盤☆ 後のTOTO結成に繋がる若手スタジオミュージシャンを集結させたことで ダンサンブルなディスコナンバーから 珠玉のバラーソソングまで 実に幅広いジャンルのサウンドが凝縮された1枚☆中でもTOTOで中心的役割を担っていくデヴィッド・ペイチ氏の存在が非常に大きいですね♪彼がいなければ このアルバムも生まれなかったんでしょうなぁ☆





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1983年11月


「あの手紙は 絶対に当日まで読んじゃダメだからね!」

「あぁ・・・分かったよ」


【 手紙・・・手紙 ? 】


微笑みながらマレンが言った" あの手紙 "って 一体何のことなんだろう。
ボクには それが何を指しているのかが全く分からない。


【 そんなことよりも マレン! 
ボクはキミに言わなきゃいけないことが・・・】



" グォーン "という まるで貝殻を耳に当てたときのような
籠ったノイズ音とともに後ろから追突されたような衝撃を受け
ボクは現実へと引き戻された。

一瞬 " ハッ "と我に返る。

気付くと そこは G'Zの店の中だった。


ソファでは 数名の女の子が半裸で泣き叫び続け
その隣では乱れたリーゼントヘアーを両手で抱え込んだ男がうずくまっている。

店の扉を開けようとしてるのか 何かを" ブツブツ "と呟きながら
ずっと押したり引いたりしてるヤツもいたし
何か宙を舞うものを捕まえようと必死になってるヤツもいた。


どうやら ボクは あのままずっとカウンターに座っていたようだ。


【 一体 いつからここにいるんだっけ? 】


しばらくすると また 頭の奥のほうへと
" グイーン "とカラダが引きずり込まれていくような感覚に襲われる。

天井一杯にまで 青みがかった半透明の水が溜まった
まるで大きな水槽の中にでもいるような気分だ。

いや。すでにボクは水の中にいた。
ボクのカラダの周りから浮かび上がる気泡までが鮮明に見えていた。


【 これが" L " の幻覚作用か。 たしかに強烈だなぁ】



再び" 幻覚 "の中にダイブしようとしていた そのとき 
背中を刃物で下からなぞられたときのような" ゾク "っとした感覚が走った。

いつもの何十倍も カラダは刺激に敏感に反応する。
そのくせになかなか思うようには動かない。

顔だけを後ろに反らすと そこには にきび面のダサいロックンローラーが
口を半分開いたままで ヨダレを垂らしながら立っている。

ボクはマトモに目を開けていられなかった。
この店は こんなにも暗いのに 何だかものすごく眩しい。


「オメェよぉ。 何さっきからずっとコッチ見て笑ってんだぁ。ガキがぁ」

男の視線は左右バラバラに宙をさ迷い 何だか意味不明なことを言っている。
でも その男はきっと 口を一切動かしてはいない。

だけどボクには そう言ってるように聞こえた。


「あぁ?」

カウンターの椅子をどうにか回し ソイツのほうを振り向いたとたん 
男は手にしていたバタフライナイフを ボクの胸に" ドスッ "と突き刺した。

ボクは一瞬 息が詰まった。
だけど痛みは全く感じなかった。
刺された場所からは だんだんと優しい暖かさが広がってゆく。

傷口を見ると 真っ赤な鮮血が
バラの花びらのような形のままで
胸元から" ヒラヒラ "と舞い散っている。

その花びらは ボクの膝の上に積もっていった。

衝動的に立ち上がろうとしたけれど カラダは全く言う事を聞かず
まるで鋼鉄か何かで出来ているかのように ものすごく重たかった。


【 これは夢なんだろうか・・・それともボクは このまま死ぬのかな 】


死ぬこと自体 そのときは別に怖いと思わなかった。

それよりも もう一度 " さっきのマレンに会いたい "
という思いのほうが大きかった。

彼女にどうしても伝えなきゃいけない言葉があるんだ。

もしそれが" 夢 "とか" 幻覚 "でも構わないから・・・

その言葉を心に抱え込んだままで ボクはまだ死ぬ訳にはいかない・・・




1983年7月


ボクは マレンの背中を 左手でそっと包み込むようにして抱いている。
大きな声で泣き続ける彼女が いつか泣き止むのを そうしてただ黙って待っている。


ボクらは 古いケヤキの老樹に囲まれた小さな神社の
真新しい賽銭箱の脇に2人並んで座っていた。


街の風に 僅かばかり含まれた磯の香りは
ボクらが生まれたときから何も変わっていない。

この海を 身近に感じながら成長してきた彼女を癒せるのも
きっとこの潮風だけなんだろう。

しばらくすると " スー "っと波が引いていくように
彼女の気持ちも少しだけ落ち着いてきたようだった。


「ごめんね。 カミュちゃん。 さっきは恥ずかしかったでしょ?」

「何で? 別に恥ずかしくなかったけどね」

「アタシ なんだか毎日泣いてる気がする。 もう泣くのヤなんだけど・・・
夜になるとね。 考えちゃうんだ。 嫌なことばかり」



真夏の陽射しが ボクらの足元の石畳にまで迫ってきている。
まるで太陽が「ここから向う側は自分のもの」だと言っているみたいだった。

この場所は相変わらず 緩やかで優しい " 特別な風 "に包まれている。
ケヤキの緑がザワめくたびに 彼女の心が穏やかになっていくのが分かる。

木々の隙間から無数の光がこぼれ落ちていた。

この神社に祭られているのが何なのかは知らないけれど
その光が描き出す 神々しいオーロラのような線状の帯には
たしかに " 神の力 "が宿されているような気がした。


この街の潮風は 彼女の心を癒してくれるかもしれない。
そして この木々の隙間から 静かにこぼれ落ちる光は
彼女の心を穏やかにさせてくれるかもしれない。

でも 今の彼女が唯一 " すがれる "もの。

それは 彼女を支えようと決意した このボクだけなんだろうと思う。


「この場所って 一緒に来たことあったっけ?」

その白いオーロラのような木漏れ日を見つめ
ボクの左肩に 長い黒髪をそよがせながら
あたまを預けているマレンに聞いた。


「ううん。来たことないよ」

「ここにはさぁ。去年 良く一人で来てたんだよね。
今年 来るのは もしかしたら初めてかもしれないけどね」

「誰もいないし すごく静かなとこだね」


" シャーッ "と重く低く地面をさらってゆく風の音は やがて上空へと舞い上がり
ボクらの頭上の木々の緑をゆっくりと揺らし続けている。


「去年 ミツキたちと一緒にドリームランドに行ったじゃん。
結局 あの日にオレたちって付き合ったんでしょ」

「アタシが帰りにカミュちゃんに 告白したんだからねぇ」


ボクの左肩で マレンは少し笑って言った。


「じゃぁさ。 初めて オレに" メモ "くれたのって覚えてる?」

「メモ? アタシがカミュちゃんに書いたメモって事?」

「そう。川澄が一番最初にくれたメモをね。 ちょうど1年前にここで読んだんだ」

「え? アタシ何て書いたんだっけ?」

「覚えてないの? 川澄がオレにした" 初めての質問 "だよ」

「何だっけなぁ・・・えーっ! アタシ何て書いてたの?」


左肩に乗せているマレンの額に " コツン "と ボクのあたまを軽くぶつけた。


「川澄はオレのことを 何て呼んでたでしょう?」

「えっと・・・ あーっ! パルって呼んでるねぇ。
そうだ 思い出したよ。
" カミュは何て呼ばれたい? " でしょ」


マレンはようやく いつもみたいに楽しそうに弾けて笑った。


「えっ。 じゃぁさぁ。 もしかしたら今日って ちょうど1年目なの? 」

「まぁ確か ドリームランド行ったのって 去年の7月11日だったからね。
偶然にも今日でピッタリ 付き合ってから丸1年目ってことだね」


「あーっ!すっかり忘れてた! そんな大事な日だったなんて・・・
そうかぁ。 もう1年経つんだね。 なんか すごく早いねぇ。

でも・・・神様は やっぱり悪いことばかりじゃなくって
ちゃんと こういう いい事もしてくれるんだねぇ。
ちゃんと この日にカミュちゃんと一緒にいさせてくれるんだからさぁ」


マレンはそういうと ふと何かを思い出したようだった。


「そういえば " あの手紙 " ってまだ読んでないでしょうね?」

「" あの手紙 "?」

「そう! " あの手紙 "は 絶対 当日まで読んじゃダメだからね!」


ボクには彼女が どの手紙の話をしているのか分からなかった。


【 いつくれた手紙のことだろう 】


でも 「それを知らない」なんて言うと
また彼女がすごく哀しむような気がしたんで
それ以上 聞けなかった。


「あれは アタシ達の" 予言の手紙 "なんだからね」

「分かったよ。読まなきゃいいんだろ?」

「うん。絶対に! 絶対に読んじゃダメだからね」


ボクは記憶の中で その手紙のことを探し続けていた。
彼女とボクが出会ってからの1年間の思い出を振り返るついでに・・・




1983年11月


数時間前。
正確には覚えていない。

とりあえず 何時間か前に ロックンロール系バンドっぽい4人のメンバーと
見るからにガラの悪い スウェットに薄いサングラス姿の男がこの店にやったきた。

彼らは 4人の若そうな女の子を一緒に連れてきていた。
彼女たちは せいぜい高1くらいだろうか。
だけど特に可愛くもなかった。


彼らはソファ席に座ると バーボンのロック・セットを注文した。
ボクは未開封の" ワイルド・ターキー "を2本取り出し
製氷機からアイス・ペール2つ分の氷を山盛りにすくって テーブルへと運んだ。


「おう!元気そうじゃん」

マスターのGENは 嬉しそうに彼らに声を掛けていた。


「" GEN兄ィ "も元気そうっすね! ん?新人雇ったんすか?」

サングラスの男は ボクのほうを見ながらGENに言った。


「おぉ。コイツまだ中坊なんだけど 結構いいセンスしてんからよぉ。
こないだからバイトで使ってるんだわ」

「へぇ。兄いに気に入られたっつうことは オメェもかなり悪りぃことしてんな」


サングラスの奥の目は 薄暗い店内の明かりを
反射しているせいで ほとんど見えなかった。


「いや。 ちょっと音楽演ってるんで・・・」

「おぉ バンドやってんのけ? 何? ギター?」

「まぁ ちょっとだけ ギターっすかね」


すると ローラーの一人が突然大声をあげた。


「ヘイ! BOY とりあえず何か掛けてくれや。イカしたのをよぉ」

「・・・何がいいっすか?」

「そりゃオメェのチョイスに任せるからよぉ。" ぶっトべる "ヤツ探してくれや」


若い女の子たちからは" テディさん "と呼ばれているその彼が
ダブルの革ジャンを脱ぐと その両腕は
素肌が見えないほどのタトゥで埋め尽くされていた。


とりあえずレコード棚を眺めたけれど
ボクは ほとんど80年代以降の洋楽しか知らない。

だからロックンロール全盛期である50'sのアルバムを探せといわれても
正直 何が" ぶっトべる "作品なのか分からなかった。


たまたま棚の一番手前にあったのが リトル・リチャードの
『Here's Little Richard』というアルバムだった。

何となく その名前は聞いたことがあるような気がした。

きっと GENが最近このLPを掛けていたんだろうなぁと思いながら
ジャケットからレコード盤を取り出してプレーヤーに乗せた。

1曲目の「Tutti Frutti」が流れてくると
ボクもちょっとだけ" ホっ "とした。
とりあえずボクも聴いたことのあるR&Rナンバーだったからだ。

テディはソファに座りながら
音楽に合わせて上半身だけでツイストを踊り出した。


「ヘイ BOY! グッドチョイス!」

彼は踊りながら右手の親指をボクに向かって つき立てた。

ボクはリトル・リチャードのアルバムジャケットの裏面を眺めた。
3曲目に「Ready Teddy」という曲が入っている。

もしかしたら" テディ "と名乗る彼のニックネームって
この曲から取ったものなんだろうか?


やがて サングラスの男が茶色い紙袋をバッグから取り出して立ち上がり
カウンターにいるGENと何やらヒソヒソと話しながら
袋の中身をカウンターの上へと並べていくのが見えた。

透明なビニールに入ってるほうは ボクにもすぐに中身が判った。
黒茶色いお茶っ葉のように見えるのは 間違いなく" ハッパ "だ。

さらに数本の小瓶は " RUSH "と呼ばれるドラッグだろう。
コレはボクも隣の兄貴に貰ったんだけど タバコのフィルターに浸して吸うと
一瞬あたまがズキズキっとするだけのことで 他にはあまり効き目はない。

そして最後に取り出されたのは 厚紙で出来た切手みたいな束だった。
切り取り線みたいな点線が入ってるんだけど
それが何なのかだけは全く判らなかった。


ソファ席では バンドのメンバーが女の子にちょっかいを出している。


【 彼女たちって このバンドのファンの子たちなんだろうか?
でも一番人気がありそうなのは やっぱりテディなんだろうな 】



後のメンバーは テディと同じようにリーゼントに革ジャンスタイルだったけど
何となく根っからの" ローラー "って感じじゃない。

すると にきび面の男が いきなり革パンツのポケットから
バタフライナイフを取り出し" バタフライアクション "を披露した。


ボクは それを見て素直に感動した。
なんだか ものすごくカッコイイと思った。


GENは店の奥で誰かに電話をしている。

ボクがカウンターに並べられたドラッグを眺めていると
サングラスの男が その切手みたいなのをボクに見せながらニヤリと笑った。


「マジ ブッ飛べるぜ! " L "はよぉ」


【 " L " ? この紙も ドラッグなのかな? 】


ボクは 男が手にした" そのサイケデリック "な模様の厚紙をぼんやり眺めていた。




1983年7月


「覚えてる?」

マレンは 口元に微笑みを浮かべた。

「スイミングスクールで 夏休みに行った合宿のこと」

「あぁ。確か 群馬だかあの辺に行ったんだよね」

「アタシね。 夏になるといつも あの合宿を思い出すんだよ」


ボクらが小学校4年くらいのときだっただろうか。

当時2人が通っていた同じスイミングスクールの催しで
夏休み どこかの山奥へ泊まりに行ったことがあった。

その合宿で ボクが思い出すのは2つの出来事だけだ。

ひとつは朝のラジオ体操をしているとき
一番山側にいたボクは ふと脇で何かを引きずるような物音を感じた。

その音がするほうへ目をやると 低い樹木と樹木のあいだを
ボクの上腕よりもはるかに太い蛇の胴体が移動していたのだ。

蛇の尻尾が完全に消え去るまで 相当に時間が掛かっていた。
ボクは絶対に" 大蛇 "だったと その後 みんなに言ったんだけど
「そんなの日本にいる訳ない」と笑われたのだ。

もし" アオダイショウ "ならば ボクの地元にも生息してたから判る。
ボクが子供だったにせよ ボクの上腕よりも太い蛇なんて
確かに日本には絶対にいるはずがないことは分かっていた。

だから"大蛇"だと言ったのに 誰も信じてくれなかった。


そして もうひとつの出来事。

原因は忘れたけど その合宿の帰りに
夜 電車がどこかの駅で停まってしまい
親父が車で その駅まで迎えに来てくれたこと。

どこの駅だか はっきりとは覚えていないが
確か まだ群馬県に程近いくらいの場所だった・・・


ボクは ふと思い出したのだ。

あのとき ウチの車に 一緒に乗せて帰ったのがマレンだったんだ。
ボクは そのことを なぜか今まですっかり忘れてしまっていた。

当時の彼女は まるで" モンチッチ "のようなショートヘアだった。
ボクは短い髪の女の子が好きじゃなかったんで
彼女に対する印象って あの頃は ほとんど無かったように思う。

でも確かに あの日 ボクらは親父が運転する車の後部座席で
朝まで一緒に眠ってたんだ。


「カミュちゃんと朝まで一緒にいた日だからねぇ」

「そういえば・・・オレたちって 考えてみればさぁ。
そんなに前から知り合いだったんだね」

「アタシはねぇ」


マレンは 目を閉じながら 緩やかな風に向かって呟いた。


「アタシは そのときから ずっとカミュちゃんのことが大好きだったんだ」

ふと気付くと ボクらは すっかり太陽が決めた陣地の 境界線の中にいた。
さっきから真夏の陽射しに照らされているのに 寄り添いあうボクらには
その暑さがほとんど感じられなかった。

そう。いつだって この場所だけには 冷たくて緩やかな風がずっと流れ続けているのだ。




Here's Little Richard - リトル・リチャード



 1 Tutti Frutti
 2 True Fine Mama
 3 Can't Believe You Wanna Leave
 4 Ready Teddy
 5 Baby
 6 Slippin' And Slidin'
 7 Long Tall Sally
 8 Miss Ann
9 Oh Why?
10 Rip It Up
11 Jenny Jenny
12 She's Got It

リリース 1957年3月 |レーベル スペシャルティ

50年代のR&Rを語るうえでは欠かすことの出来ないパイオニアのひとりであるリトル・リチャード氏のデビューアルバムHere's Little Richard『』☆この曲に収められた永久不滅のR&Rナンバーの数々は 50年以上のも歳月を経てもなお 決して色褪せることなく 未だにその輝きを放ち続けております♪彼が1962年に音楽界に復帰した際のコンサートで 前座を務めたのが無名時代のビートルズであり また 当時のサポート・ギタリストの一人に ジミ・ヘンドリックスがいたようですので 彼のロック歌手としての偉大さが改めて分かりますね☆





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"誰か"に対して募る想いは 加速度を増しながら積み重なり
やがて"もう一人の誰か"が ボクらの心に生み出されてゆく。

ボクらは現実世界に実在する"誰か"に恋をしているのではない。
恋とは自らが創り出した"もう一人の誰か"のイマージュに対して抱く
エゴイスティックな妄想に過ぎない。


現実世界に寄り添うようにして 
ボクらの内側に形成された無限の世界 " パラレルワールド "

そこには 時間と空間の概念などは 最初から存在していない。

その無限の時間軸を自由自在に往来しながら
ボクらと"誰かの幻影"とで織り成される" 恋愛シミュレーション "が
絶えず現実世界の内側では繰り返されていく。

いずれにしたって その世界における2人の恋の結末は
大抵" ハッピーエンド "にしかならない。


その"内なる世界 "は やがて現実世界と交錯しはじめ
無意識のうちに ボクらの日常のストーリーに
様々な" フィクション "が書き加えられてゆく。


ボクらはそれを"恋 "と呼ぶ。





1983年7月


「カミュ・・・ちゃん」

6時間目がようやく終わり ボクが急いで廊下に飛び出した瞬間
すでに そこにマレンは立っていた。

午前中 数学の教師である" 白ブタ "野郎の髪の毛を引きちぎったことで
昼休みは 担任教師に会議室へ呼び出されていた。

本当は5時間目の休み時間に マレンの教室へ行こうとしたんだけど
佐藤マキコたちに 学校側の処分のことで呼び止められた。

だから マレンとこうして4日振りにちゃんと向き合えたのは
結局 その日の放課後になってしまった。


「カミュ・・・ちゃん」

マレンはボクを見て 最初はいつものように少しだけ微笑んだ。

けれど 大きな瞳が瞬くたびに 彼女のその長いまつ毛の先は
まぶたの下に湛えられた涙のせいで 重たく滲んでいった。

ボクは無意識のうちに 彼女のほうへ両手を差し出していた。

彼女は ボクの手のひらを ゆっくりと その白い指で握り返した・・・
もう7月だというのに 彼女の指先は ほんの少しだけ冷たかった。



ボクらは手をつなぎ 松の大木が立ち並ぶ通りの木陰を歩いた。
後ろから 2人の背中を押すようにして 湘南の潮風が通り抜けてゆく。


「お母さんね。 ちょっと前までは普通だったのに
ホントにいきなり意識が無くなっちゃったんで すごくビックリしたんだよ」


吹き抜ける南風に かき消されてゆくマレンの言葉には
その場に止まるほどの力強さはない。

風のなかにすぐに溶けいってしまう 彼女の淡い音色の先を ボクは目で追った。


「病院の先生たちがね。 " 人工呼吸器 "みたいなの取り出してきたり
お母さんの腕とかにチューブ刺したりしたときは
アタシもう ホントにどうしていいか分からなくなっちゃったんだよ」


「で。 お母さんは 今 大丈夫なの?」

「一応・・・大丈夫って先生は言ってるし アタシが" お母さん!"って呼びかけると
手を握り返してくれるから・・・」


マレンはボクを見つめた。


「それにね 何かモニターみたいなのも ちゃんと反応するんだよ。
アタシが" お母さん"って呼びかけると " 波 "みたいな模様が
" ビュン "って上がるんだよ」

ボクは つないでいるマレンの右手を強く握り締めた。

肯定的にそう言う彼女の言葉の響きのなかに
何となく" 儚げな脆さ "を感じたからだ。


「もし・・・」


マレンは続けた。


「でも もし お母さんが死んじゃったら アタシどうしたらいいか分からない・・・」


【" オレがいるから大丈夫!"って言えよ 】



ボクは自分に対して そう心のなかで命令していた。


「それにね。・・・アタシ 転校しなきゃいけないかもしれないんだ」

「えっ! 何で? お母さんが入院してるからか?」

「うん。 でもね もし退院しても たぶん おばあちゃんの家で暮らすんだと思う」


ボクは気が動転して上手く言葉が選べなくなった。


「いつ・・・から転校するの? でもさぁ 鎌倉からでも今の学校 通えるんでしょ?」

「通えるんだけど・・・どうなるか まだホントに良くわかんないんだよ。
おばあちゃんはね 近い中学に行ったほうがいいって思ってるみたい。
やっぱり 毎日だと交通費も掛かっちゃうから・・・

だけどアタシはね カミュちゃん。

アタシは・・・本当にカミュちゃんといたいのに・・・
アタシは カミュちゃんとずっと一緒にいたいのに・・・」


うつむく彼女の足元には こぼれ落ちた一粒の涙の跡が はっきりと残された。


下校する生徒たちが楽しそうにボクらの脇を通り過ぎてゆく松並木の帰り道。
マレンは立ち止まり まるで子供のように" ウェーン "と大きな声を上げて泣き始めた。

前を行く生徒たちが ボクらのほうを振り返っている。


【 ・・・オレだって 】

【 オレだって・・・ 】



「オレだって川澄と一緒にいたいよ!」

うつむく彼女の背中が 一瞬 " ビクッ "とするほどに
ボクは大きな声を出してしまっていたようだ。

潮風が ボクの背中を少しだけ強く押したせいだろうか。
いつもは彼女に問いかけられたときにしか そんなことは言わない。


でも そのときボクは初めて 彼女に対する想いを自分のほうからはっきりと口にした。


マレンは何も言わずに ボクの左手をただ" ギュッ "と強く握り締めた。

そのとき ボクを見つめた彼女の大きな瞳のなかに
少しだけ いつもの" 白い星粒 "の輝きが浮かび上がったような気がしたんだ。



1983年11月


「ふぅーん。 あなたが" サウスのカミュ "なんだぁ」


その子は トロけた三日月のような眼差しで微笑みながら
カウンターのほうへと 少しだけよろめいた足取りで歩み寄ってきた。

ボクはシンクに溜まったグラスを洗いながら
視線だけを彼女のほうへチラっと向けた。

薄暗い赤褐色のライティングのせいかもしれないけど
その色白の幼い顔立ちのなかに 真っ赤な口紅だけがやけに目立っていた気がする・・・




ボクが毎週 水曜から土曜日までの4日間
この店でアルバイトをし始めたのは今月に入ってからのことだ。

マスターのGENに気に入られたのかどうかは分からないけど
まだ先月 初めてこの店に来たばかりだというのに
気付いたら 何となく すでにそういうことになっていた。

最近いろんなロックバンドのLPの他にも
ギターのエフェクターやギターケースとか 欲しい物が多かった。
だからバイト代を貰えるんならば全然問題なかった。

中3になってからは ほとんど楽器の演奏自体に興味を無くしてたんだけど
こないだ 隣の兄貴に黒い" フェンダー・テレキャスター "を貰ってからは
再びエレキ・ギターを手にするようになっていた。


「おぅ カミュよぉ。おめぇもRockやってんなら 気合で" 墨 "くらい入れろや」

GENはどういう訳だかボクに やたらとタトゥを薦めてくる。
でもボクも 最近タトゥには ものすごく興味があった。

だから いつかは" ワン・ポイント "くらいならば 入れてみたいと思っているんだ・・・




土曜日の夜。


この界隈でも名の知れたヤンキー女子高の生徒たちに
" G'Z "は完全に乗っ取られていた。

相当な音量で流れている店内のBGMをかき消すほどのヴォリュームで
甲高い金切り声をあげて笑ったり喚いたりしている彼女たち。

大笑いするたびに何度も大きく手を叩き
オーバーに身をよじりながらソファーの上で仰け反ったりしていた。
肌蹴て 柄物の派手な下着が丸出しになっているのに 全くお構いなしって感じだった。


何よりも さっきからボクを唖然とさせているのが
彼女たちの凄まじいほどの酒の飲み方だ。


罰ゲームか何かで負けた子から それぞれ順番に
ひたすら安い焼酎やウイスキーを ほとんど割りもせず
ストレートで一気飲みし続けている。

すでに数人の女子が早々に脱落したらしく 太腿を晒したダラしない格好で
隣のボックス席のソファーに倒れ込んでいるようだった。


そういえば 彼女たちが夕方 この店に入ってきたとき
一人だけ 顔立ちが" まだ中学生かな "と思えるような子が混じっていた。

その子も さっきから何度か名前を呼ばれては
コップに注がれた安酒を その都度一気に飲み干している。

ボクはカウンターの中から その子のことを時々眺めていた。

やはり遠目で見ても 10数人の女生徒集団のなかでは
彼女だけが 妙にどことなく浮いて見える。


さっき GENは 知り合いらしき" ケバ "い化粧をした女の子に呼ばれ
その輪の中に混じって 一緒に大騒ぎして飲み始めていた。


ボクは そろそろBGMのレコードを換えようと思った。
GENの店には どっちかというとR&R系のレコードが多い。

ハードロック系のLPもあるけれど それらのほとんどは
常連のバンドメンバーたちが店に置いていったものらしい。

ボクはレコード棚からニューヨーク・ドールズの1stアルバム『New York Dolls』
を引っ張り出してカウンター脇のプレーヤーに乗せてから針を落とした。

そして さっきよりも アンプのボリュームをわざと上げた。
にも関わらず 酔っ払った女子高生ヤンキーたちは
全然マイクの要らないような音量で ずっと騒ぎっぱなしだった。


ボクは 耳障りな奇声に ちょっとウンザリしながら舌を打ち
カウンター下のシンクに積み上げられたグラスを洗い始めた。


JBLのスピーカーから1曲目「Personality Crisis」のご機嫌なR&Rコードが流れてくる。
ニューヨーク・ドールズってジャンルはR&Rなんだろうけど
歌い方がパンクっぽくて面白い。

というかシングルカットされたB面の「Bad Girl」なんかは
ベースとなってるのはR&Rなんだろうけど アレンジは かなりパンクっぽい。


このアルバムは 隣の兄貴の影響ではなくって 3年になってから仲良くしている
違うクラスの鈴本タツヤというパンク好きから借りたものだった。

最近 タツヤとは たまに竹内カナエがいる「軽音楽部」の部室 
" 音楽準備室 "で放課後に いろんな楽器をイジってたりしている。



ボクはセブンスターに火を点けた。

そして最初の煙を天井に吐き出した瞬間 " 彼女 "が ボクのほうへと
少しよろめきながら歩み寄って来たのだ。


「ふぅーん。 あなたが" サウスのカミュ "なんだぁ」

ボクは一度目の問い掛けは無視をした。


「アナタぁさぁ。 Si中のカミュなんでしょ?」


酔っているせいか あまり呂律が回っていない その見知らぬ彼女は
まったりとした口調で 再びボクを呼び捨てにした。


「あぁ。 オレのこと知ってるんだ。 キミって もしかしたら中学生?」

タバコを咥えながらコップを洗い そう素っ気なく彼女の顔を見ずに聞き返した。
やがて その子はボクの正面のカウンター席に ゆっくりよじ登るようにして座った。


「そうそう! アタシねぇ Hs中なんだぁ」

「へぇ。 でも大丈夫? ちょっと飲み過ぎてねぇ?」

「そうねぇ ちょっと酔ったかな?って感じねぇ。でもワタシまだ全然飲めるよぉ」


ボクの正面のカウンターテーブルに両手を重ね合わせ
手の甲にあごを乗せながら寝そべって話している彼女と至近距離で目が合った。

トロけた三日月のような瞳の奥には まだ どことなく幼い少女の面影が宿っている。
ボクはタバコの火を 水道から流れる水に軽く当て
シンクの脇のゴミポケットに捨てた。


「あぁ。 アタシ 浅倉トモミ。ヨロシクぅ! 」

ものすごくゆったりとした口調でそう言った彼女の
微笑んだ口元から垣間見える上下の歯は
黄色く黒ずんでいるのに どことなく透けているように思えた。


【 たぶんシンナーのせいだろうな 】


「今日ってさぁ。 この店で中学生なのって アタシらだけなんだねぇ」

「まぁ 中学生は滅多に飲みには来ないけどね」

「アナタは飲まないの?」

「オレは・・・あまり飲めないからね。ウイスキーとか・・・」

「はぁ? それじゃぁさぁ つまんないじゃん!
せっかくなんだからさぁ 一緒に飲もうよ」


トモミに何度かそう促されると ボクは仕方なく
棚から" サントリー RED "を抜き取って
カウンターに並べた2つのロック・グラスに少しづつ注いだ。


「水割り? それとも氷だけ入れる?」

「うーん。 なんか面倒だからこのままでもいいかもなぁ」


ボクは ウイスキーをストレートで飲める女性がいたことに驚いた。
トモミは目の前に差し出されたグラスを寝そべったままで持ち上げて笑った。


「じゃぁ。 ワタシたちの出会いを祝して" 乾杯 "」

彼女は ボクのグラスに 手にしたグラスの縁を" カチ "っと小さく当てた。


「おーい! そこの若けぇの さっきから2人でコソコソしてんじゃねぇよ」

後ろのテーブル席から ガラの悪い先輩女生徒の甲高い怒鳴り声が響いた。


「まぁまぁ いいじゃん。 若いの同士仲良くさせてやろぉぜ」

なぜかGENは変な気を利かせている。



「・・・ねぇ。」

トモミは どことなく幼く くぐもった声で小さく言葉を続けた。


「後で 2人でどっか行かない?」

ボクはウイスキーを一口飲んで 気を落ち着かせてから
ゆっくりとカウンターにグラスを置いた。

トモミが手にしているグラスの縁には
べっとりと赤いルージュの" 唇 "模様が残されている。


「・・・行きたいんだけどねぇ。 今日 金持ってねぇからなぁ」

カッコつけて そう微笑んでみたけど
内心はすごくドギマギしていた。


「じゃぁさぁ アタシの家に来ればいいじゃん!」

「キミん家? でも親とかいるんでしょ?」

「大丈夫だよぉ。 庭からアタシの部屋に入れるしさぁ
いつも夜中まで騒いでるけど 別に文句言われないしねぇ。

先輩とかは たぶんこの後 地元のヤツらんとこに行くから・・・
アタシ あんまし行きたくないんだよねぇ。絶対変なことされるから。
だから 今日は一緒に飲もうよ」


ボクは最初は断るつもりだったのに だんだんと選択肢を狭められいき
そして その理由すらも失っていった。


「やったぁ! じゃぁ もう決まりだぁ。
今日は一緒に朝まで飲もうねぇ! " サウスのカミュ "」

霞んだ三日月のような眼差しで" フッ "と微笑みながら
トモエはボクのことをカウンターに寝そべったままで下から見つめ上げた。

別に はっきりと了承した訳じゃなかった。
だけどその誘いを断ることなど
ボクには何だかもう出来なくなっていった。





1983年9月


ボクらの学年には一人 車椅子で登校している少女がいた。
その子とは途中まで帰り道が同じなんだけど 3年になってからは
李メイが その子に付き添うようにして一緒に帰っている姿をよく見かけた。


今日もボクのちょっと先を 李メイが車椅子を押しながら歩いている。
あまりにも その速度がゆっくりだったので すぐに追いついてしまった。

さすがに そのまま素通りする訳にもいかないんで ボクは後ろから声を掛けた。


「李さん!」

メイは後ろを振り返った。


「あぁ シーナ君。 今日は一人なの?」

「ん? 最近はね。結構一人が多いかな」


ボクは車椅子の彼女に軽く会釈した。
長い黒髪を右肩の後ろでひとつに束ねた 小柄ですごく真面目そうなその子は
ボクを見るとビックリした様子で 少しだけ頷くように" コク "っと あたまを下げた。

李メイは " 倉田ユカリ "という名の その車椅子の女の子とは
小学校時代に一緒のクラスだったという。

ボクがいると緊張するだろうから 2人を追い越して帰ろうとしたんだけど
意外なことに ユカリのほうからボクに声を掛けてきた。


「あの・・・シーナ君って バンドとかやってるんですか?」

「えっ? いや バンドはねぇ 今はやってないよ。
昔はギターとかちょっと弾いてたけどね」

「あぁ。そうなんですか。 なんかメイから" バンドやってる "って聞いたから」

「あれ?シーナ君って バンドやってなかったんだっけ?」


メイは少し照れくさそうにして微笑んだ。

彼女は 何だかとても大人びている。
うまく言えないけど 同学年の子たちと比べても
とても涼やかで いつでも落ち着いているように見える。

まるで彼女独りだけが" 氷の世界 "にでも住んでいるかのようだった。

それにしても メイがユカリに ボクの話をしていたというのはちょっと意外だ。
また ユカリも最初は 初対面だから緊張してるんだろうと思ってたんだけど
話し始めると 思いのほか明るく そして ものすごく言葉遣いがハキハキしている。


「メイも小学校のときは すごくピアノが上手だったの。
だから楽器とか弾ける人って 私 すごく羨ましいんです」

「えっ 李さんってピアノ弾けたんだ?」


ボクはメイに訊ねた。

「小学校のときは ほとんど毎日レッスンしてたけど・・・
今では たまに家で弾く程度かな」

「へぇ。オレも昔はちょっとだけピアノ弾いてたんだけどね。
でも まぁ独学だったんで譜面とかは全然読めないけど」

「シーナ君って ピアノ弾けるんだ?」

「いや・・・そんな大して上手くないし。
指で覚えた曲くらいしか弾けないからさぁ。
まぁ以前ちょっと作曲したときに弾いてただけなんだけどね」

「えぇっ! すごいですねぇ。作曲もしてたんですか?」


ユカリは ものすごく嬉しそうに笑いながらボクにそう言った。


「いや まぁ。 軽く遊び程度に・・・ですけどね」

「すごいなぁ。聴いてみたいです!」

「えっ! オレのピアノ? いやぁ・・・そりゃぁちょっと無理だと思うよ。
もう半年以上弾いてないから きっと指先も昔みたいには動かないだろうし」

「あの。 今からメイの家に行くんで もし時間があればシーナ君もどうですか?」

「今日? 今日はねぇ・・・まぁ別に予定はないんだけどさぁ」


ボクは そう言いながら ちょっと困ってメイのほうを振り返った。
彼女は さっきからずっと微笑んだままだ。

考えてみたら メイが教室で" 笑っている "姿って ほとんど記憶にない。
マキコたちと話しているときに 少しだけ微笑むことはあっても
こんなにも長い時間 彼女が優しげな表情を見せてたことはないだろう。

だからボクは 今日初めて知ったのだ。
メイが優しげに微笑む表情が ものすごく" キレイ "なことを・・・





New York Dolls - ニューヨーク・ドールズ



 1 Personality Crisis
 2 Looking For A Kiss
 3 Vietnamese Baby
 4 Lonely Planet Boy
 5 Frankenstein (Orig.)
 6 Trash
 7 Bad Girl
 8 Subway Train
9 Pills
10 Private World
11 Jet Boy

リリース 1973年7月27日 |レーベル マーキュリー

のちにUKを中心として巻き起こる" パンク・ムーヴメント " の先駆的役割を果たすことになる ドラッグ系R&Rサウンドが詰まったニューヨーク・ドールズのデビューアルバム『New York Dolls』☆マルチな音楽プロデューサー  トッド・ラングレン氏によってプロデュースされたバイオレンスカラーの強いノイジーなR&Rは 従来のウエストコースト系でも サザン系でもない センセーショナルなベクトルへとロックサウンドを向かわせていくことになりました。





ALOHA STAR MUSIC DIARY

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【ALOHA STAR MUSIC DIARY No.25】 Heartbreaker - フリー

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1983年11月


まるで常緑色の松林のなかに ひっそりと隠れるようにして佇むこの街には
樹々の深い緑色と その針葉の先に広がる遠い空の青さ
そして松の防風林の向う側で 白銀の煌めきを" みなも "に湛え続ける
湘南の海だけしか存在していない。

南口の駅前から海岸のほうへと向かう道は
バスが行き交う二車線の駅前通りと
ボクが小さい頃から何ら風景の変わらない
薄汚いスナックの看板が左右の壁面を埋め尽くす
狭い一方通行の繁華街通り。

昔から僅かにその2本だけしかない。


その繁華街の中央付近に建つ さびれた雑居ビルの3階。
それが 隣の兄貴たちの溜まり場となっている" G'Z "というライブ・バーだ。


「GEN(ゲン)」と名乗るこの店のマスターが 何歳なのかは分からない。
だけど高3の兄貴のちょっと上だと言ってたから
せいぜい19か20歳くらいなんだろう。

彼の両腕には " ドクロ "や" ハートマーク "をモチーフにした大小のタトゥが
まるで落書きのようにして不規則に彫られている。

普段は隠れて見えないけれど 胸や背中にも
様々なデザインのアメリカン・タトゥが入ってるのだという。

彼の髪型は 大量のポマードでガッチリと固められたリーゼントスタイル。
だからこの店は ポマード特有のやたらと甘ったるい匂いがいつだって充満している。


下面に褐色系のフィルターカバーを装着し 薄暗く調光された
ダウンライトが淫靡に照らし出すコンクリート剥きだしの店内は思いのほか広い。

カウンターとテーブル席を合わせれば きっと30人程度は座れるはずだろう。

ボックス席のソファに挟まれるようにして置かれた
JBLの大型スピーカーがやけに目立つこの店の一番のウリは
カラオケ用の小さな舞台を GENが勝手に改造したという
自慢の" 特設ライブステージ "があることだった。

" マーシャル "の巨大な中古アンプが4台積まれ ミニマムユニットのドラムセットが
中央に置かれてるだけでも 半分以上のスペースを取っているのだが
ステージに高さを合わせたハンドメイドの木製ボックスを何個か並べて 
舞台を前面にせり出しさせているので どうにか5人くらいまでなら
演奏が可能な広さが確保されている。


この周辺の街には ライブの練習スタジオなんてほとんど無いらしい。


G'Z では(GENはこの店を" MY ハウス "と呼んでいるが・・・)
夕方から店がオープンする夜7時00分くらいまで
音楽の練習用に店内を解放しているので
平日でもバンドを演ってるような連中が結構集まって来ていた。

たぶん他のスタジオよりも 使用料も安いんだろう。
だから週末には 一日中予約が殺到しているみたいだった。


「ウチはよぉ 建物古りぃくせに 防音が結構効いてるんだわ。
だから そこそこでけぇ音出しても文句言われねぇんだよ」

GENはハイライトを吹かしながら自慢げに続けた。


「さすがにフルで深夜にドラム叩かれちゃマズイけどな。
まぁ。でもよぉ 下の店が1時過ぎにゃぁ終わるから
その後は 別に朝まで騒いでたって誰にも文句言われねぇわさ」


GENというマスターが どういう人物なのかは分からないけれど
" このエリアでも有名な暴走族の幹部だった男 "
というような話を 隣の兄貴がしていたような気がする。

だから地元界隈の いくつかの不良高校のヤンキー連中からも
「GEN兄ぃ」とかって言われて かなり慕われているようだ。


G'Z には 夕方の早い時間帯や休日になるとバンド系が集まって来て
夜の9時過ぎくらいから 入れ替わるようにして不良系の連中が姿を見せ始める。

たまにバンド系と不良系がブッキングする日もあるのだが
今のところは さほど大きなトラブルにならずに済んでいるらしい。


この店でライブが開催される日には テーブルをほとんど取り払い
スタンディングで50人以上もの観客が入っているみたいだ。

「最高で80人以上がこの店に入ったことがある」とGENは胸を張っていたけど
さすがにちょっとそれは無理じゃないかな。とは思う。




1983年2月

先月の" サウス事件 "のせいだろうけど
ボクら 自称" チーム・サウス "のメンバーは
それなりに学校の内外から注目されていた。

" チーム "といってもその実態は 理系や文学系の秀才などが入り混じった
単に帰る方向が同じというだけの" 帰宅部 "に過ぎない。

でも ボクと" イウ "こと伊浦ナオトの2人だけは
そのチームの中心人物として勝手に様々な噂話が広められていったのだ。

それ以降 ボクの家には 知らない学校の野郎連中から 脅迫めいた電話が一気に増えた。
それと同様に 見知らぬ中学の女の子からの告白のような電話も増えていった。


中1のときと中2の今年とで
明らかな" 質量 "としての差異があるとするならば。

それは間違いなく バレンタインに渡されたチョコレートの数だろう。
きっとこれも 数少ないメリット面での" サウス効果 "なんだろうとは思う。

去年は 母親と妹からの" 連盟チョコ "を加えても
片手くらいに収まっていたのに 今年は正直 数え切れないほどだ。

同じ学年の女子からは " 義理チョコ "程度しか貰ってないのだが
それでもなんだかんだで20枚近くになった。


まぁ クラスは違うけど 佐藤マキコには
小学校4年のときからずっと毎年チョコレートを貰っていた。
そういう意味では 彼女もすごく義理堅い子なんだろうなぁと思う。


それにしても 今年は まだ小学生のような
1学年下の女の子達からの人気が急激に跳ね上がったようだ。
休み時間のたびに 数人連れの1年生の女子生徒たちがボクの教室に尋ねてきた。

でも「シーナ先輩に・・・私の友達から頼まれて」
という代理人経由での手渡しが結構多かった。

当然 本人も一緒に来てるのに なんだか恥ずかしがっていて
ボクの顔すらロクに見ないままで ずっと友人の影に隠れていた。


だから誰から貰ったものなのか良く分からなかったけど・・・


" シーナ先輩 "


考えてみれば ボクは この学校で 初めて" 先輩 "という呼称付きで
そのとき呼ばれたような気がする。



先週末にも 知らない中学校の女性徒から 夕方
「ちょっと チョコレートを渡したいんで 駅まで来てもらえませんか」
というような感じの電話が何件もあった。

もし「付き合って欲しい」というような内容の電話ならば その場でも断れるけれど
「そんなの要りません」とかって すげなく断る訳にも何だかいかないような気がしたので
大抵の場合 ボクのほうから駅まで出掛けて行った。



いずれにしたって こんなにチョコレートを貰えることなど
全く想像もしていなかったので さすがに全部は持って帰れなかった。

カバンや制服に入る分だけを無理やり詰め込んで
残りは明日 紙袋でも持ってくればいいかなと思っていたけれど
当然ながらマレンは そんなボクを見て かなりムっとしているようだ。


「良かったねー。パル! チョコいっぱい貰っちゃってさぁ」

「いやぁ。 どうやって持って帰ろうか悩むね」

「なんならアタシが持って帰るの手伝ってあげてもいいけどね」


たまに通りを吹き抜ける北風がやたらと肌寒い学校帰り
すごくトゲトゲしくそう言ったマレンからは
そういえば まだチョコレートを貰っていない。


「なんかさぁ 昨日とかも 知らない中学の子からも貰っちゃってね」

どうやらボクは余計な自慢話をした。


「はぁ? なんでーっ! 信じらんないよぉ」

「だって 会ったこともないのに断るのってマズくねぇ?」

「どうしてよ? 会ったことないから断るのが普通なんじゃん!
あーぁ パル。 ホワイトデーのお返しが大変そうだねぇ」


マレンはボクに赤いハートのシールが貼られた
リボン付きのチョコレートの包みを突きつけながら言った。


「・・・パルのバカ! バカパル!」




1983年10月

ボクはここ数日 兄貴のライブ演奏用のナンバーを覚えるために
歌詞カードのコピーを見ながらカセットを繰り返し流し続けている。

別に単なる練習用の仮ボーカルなんだから
こんなに真剣に覚える必要もないんだけど
何となく ずっと この演奏予定曲が録音された
カセットばかりを学校の行き帰りにも聴いている。


1曲目 演奏予定のヴァン・ヘイレン「You Really Got Me」

エディの弾くヘヴィなリフは 去年 結構練習したんで さほど難しくない。
でも さすがに間奏パートの" ライトハンド "までは無理だ。
ギターをこんなにも縦横無尽に早弾きするほどのテクなんて ボクにはまだ無い。

デイヴの音域も決して高くないんだけど 彼特有のノドに引っ掛けるようにして発せられる
奇妙な" 裏シャウト "はどうしても出せない。
まぁ 彼の特技といえるんだろう。


エリック・クラプトンの「Cocaine」や フリーの「Wishing Well」は
ボクにもギターで弾けるようなレベルだし 歌ってても逆にキーが低いくらいだ。

だけど クラプトンの『Slowhand』とフリーの『Heartbreaker』。
どちらのアルバムも 隣の兄貴からカセットを貰った当時は良く聴いていた。


特に クラプトンのバラードナンバー「Wonderful Tonight」がすごく好きだったな。


この美しいバラードは 去年の夏
マレンとの初デートで横浜ドリームランドに出掛けたとき
一番最初に彼女に聴かせた曲だった。

だから ボクらにとって 忘れられない思い出の1曲なのである。


でも『Slowhand』の他の収録曲は 当時 もっとハード系な音を好んでたせいか
イマイチ馴染み切れなかったように思う。

フリーの『Heartbreaker』のほうは アルバムとして全くハードじゃないけれど
ブルース系のスローなロックをしんみりと夜に聴き流す分には
丁度いい感じの曲が多かったような気がする。


いずれにしても 「Cocaine」と 「Wishing Well」を もしライブで演っても
聴いてるほうも全然面白くないんじゃないかな。


ハノイ・ロックスの「Tragedy」は一転してハードなリフが際立つ
アッパー系のロック・チューンだ。

マイケル・モンローの歌声も この手のロックナンバーにしてみたら
特別高くはないんだけれど 今回 ライブ予定の選曲中では
ステージで歌ったら一番気持ち良さそうだ。

彼らの1stアルバム「Bangkok Shocks Saigon Shakes」は
ボクが洋楽ロックを聴き始めた最初の頃に自分で買ったアルバムだ。
でも「Tragedy」の歌詞までを真剣に聴いたことは一度もなかった。


問題は やはりイーグルスの「Hotel California」・・・
ボクも割りと高音域は出せるほうだから オリジナルのキーでも歌える。
だけど歌声が何だかすごい" 子供っぽく "思えてしまう。

ボクの声には ドン・ヘンリーのような大人の" 艶っぽさ "が足りていない。

それにこの曲の場合 リードヴォーカルよりも
サビでのコーラスのほうが重要な気がする。
そこのハモリがダラけると全然締まらなくなる。

兄貴のバンド・メンバーがどんな連中かは知らないが
こんなにキレイなコーラスが出来るとはどうしても思えない。


歌詞カードを読みながら ボクは繰り返しカセットを再生させる。
結局 英語の曲を歌うには 丸ごと歌詞を覚えるのが一番手っ取り早いのだ。



数日後 ボクは学校が終わると 制服のまま駅へと向かい
南口の駅前ロータリーのガードレールに腰掛けながら兄貴を待っていた。

少し涼やかな秋の夕風が" とうとう "と流れ過ぎていく。

羽毛がゆっくりと舞い降りるかのようにして訪れ来る秋の気配が
まるでサングラスをしているときのように この街の空気をセピア色に染める。
いつもは混雑している時間帯なのに 今日はほとんどロータリーには車も停まっていない。


今年の誕生日 ボクはマレンとこの場所で待ち合わせをしていた。


あの冬の夕暮れ時 プレゼントの大きな紙袋を抱えた彼女が
駅前通りを微笑みながら自転車でやって来たんだ。




隣の兄貴がバンドメンバーらしき学生たちと一緒に南口の階段を下りてきた。
みんな髪を長く伸ばしていたけれど 見た目にそれとなく" ロッカー "っぽいのは
スラっと背の高い兄貴だけだった。


「これ 俺の従弟」

「おーっ いいねぇ! 何かすげぇロックっぽくて」


【 は? " ロックっぽい " って 一体どういうヤツを指すんだ? 】



兄貴がメンバーにボクのことを紹介すると
茶髪ロン毛で なんだか冴えない小太りの男がボクにそう言った。
きっとドラムかなんかだろう。


「どうも・・・従弟です」

「彼ってまだ中学生?」

「ん? そういえばおめぇ いま何年だっけ?」


兄貴が聞いてきた。


「中3・・・」

「わぉ! まだ中3かぁ。うわぁ ヤッベェ 若けぇなぁ」


【おめぇも たかだか高3だろうが】


茶髪ロン毛がイチイチ過剰に騒ぐんで
何だか だんだんうっとうしくなってきた。
こういうタイプは 大抵すごく馴れ馴れしいヤツが多いものだ。


「とりあえず行くべ」

兄貴は繁華街のほうへ向かって歩き出した。
この繁華街通りには " いかがわしい " 小さな飲み屋が
大小のビルの中に 無数に封じ込められている。


【 こんなにも同じようなスナックやキャバレーばっかり同居してて
果たして 全部の店が儲かってんだろうか? 】



しばらく歩くと 繁華街の左手に建つ雑居ビルの外階段を兄貴は登りはじめた。
そして3階に辿りつくと 「チワーッス」と挨拶をしながら
分厚そうな木製扉のなかへと足早に消えて行った。

扉が開けられた瞬間 異様に生暖かくて甘ったるい匂いが
"ブワ"っと一斉に店の外へと放出された。

ボクは店の扉に打ち付けられた鉄製の店名プレートを眺めた。
白いアクリルプレートを切り取った「G'Z」という文字が貼り付けられている。
その下に それよりもずっと小さなサイズで「Music Bar」と白く焼付けられていた。


店の中に入るなり

「モーニング!エブリバディ」

いきなり大声で そう笑いかけてきたのが 黒のタンクトップ姿で
両腕のタトゥを露にした この店のマスターGENだった。





Heartbreaker - フリー



 1  Wishing Well
 2  Come Together In The Morning
 3  Travellin' in Style
 4  Heartbreaker
 5  Muddy Water
 6 Common Mortal Man
 7 Easy on My Soul
 8 Seven Angels

リリース 1973年1月|レーベル アイランド

後に"バッドカンパニー"を結成するポール・ロジャース氏を中心にUKで結成されたブルース系ロックバンドのフリー☆当時20歳そこそこのメンバーたちが織り成すストイックなまでにシェイブされたシンプルにして究極のブルース・ロックサウンドに衝撃を受けたアーティストも多いようですね☆そんな彼らが1973年にラストリリースした6thアルバム『Heartbreaker』も 彼らならではのスローなブルースロックが展開されたツウ好みな1枚です☆まぁ子供が聴く音楽じゃないでしょう。これがいわゆる大人の為のロックですなぁ☆





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そういえば まだボクの本名を明かしていない気がする。


苗字は" 椎那(シイナ) "

椎那 可未宇(シイナ カミウ)だ。


「シーナ」と「カミウ」
どちらも響きが外国人のような名前だから
小学校の頃はよく そのことをからかわれた。


子供というのは大抵の場合 " 蔑視 "と" 好奇 "が
善悪の判断を上回っている心理状態にあるのもだ。

なのに大人たちは いつだってそのことを
やれ " 天真爛漫 " だのと笑顔で褒め讃える。

やがて小学生の頃になると そこに自己中心的な観点が加味されて
他者に対する" 差別的思想 "が顕著に露呈し始める。


身体的特徴、名前、国籍、そして家の裕福さ・・・
様々な独自の" 分類項目 "で優劣関係を形成し
自分たち側に属さないものを容赦なく攻撃する。

そして自分たちよりも弱者がいることに対して
奇妙な安心感を覚えてしまう。

同時に 自分たちよりも弱者がいないことに対して
いい知れぬ不安感を抱いていくのである。

弱者から得られる その " 安心感 "と" 不安感 "は
おそらく大人になってからも ずっと感じ続けていくものなのだろう。




1983年7月


重々しさに包まれた やたらと蒸し暑い昼休みの会議室。

滲んだ汗が解禁シャツの襟元をさっきから湿らせているけれど
全ての窓ガラスはピタリと閉じられたままで
この部屋の埃っぽい空気はピクリとも動かない。

ボクは両腕を組んで 背もたれに仰け反るような格好で座りながら
無駄に広いこの部屋の 窓際の一番前のテーブルで
さっきから担任教師と向き合い続けている。


きっと中学2年のときに起こした暴力事件のせいだろうか。

担任はボクとは ほとんど目を合わさずに さっきから何度も口籠もりながら
時々浮かび上がる額の汗を 白いハンカチでせわしなく拭っている。

あの時とは違って 今回ここには校長や生活指導の教師などは誰も同席していない。
だから この担任教師も 一人でさぞや心細いんだろうなぁとは思う。


南側のガラス窓から直線状に差し込む真夏の光が強烈過ぎて
この部屋の中央付近から廊下側をビッシリと覆う
薄暗い陰影の密度を ひときわ色濃くしているように思えた。

その光と影のちょうど狭間を まるでプランクトンのようにゆっくりと浮遊する
大量の白い繊維状の埃の雨を 横目でボクはずっと追っていた。


外からは 遠くで女子生徒たちの大きな笑い声が時折聞こえてくる。
もうすぐ昼休みも終わろうとしていた。


「だから さっきも言ったけど・・・言いましたよね?
あの数学教師が先に手を出してきたんですよ」

ボクは金色の前髪を 左手の人差し指の爪の辺りに巻きつけながら答えた。


「まぁ しかし。 だっ・だからといってシイナも暴力で返したらいけないだろ?」

「別に。オレは暴力振るってませんけどね。
っていうか アイツがオレに殴られたとでも言ってるんですか?」

「いっ・いや。先生は" 殴られた "とは言ってないんだ。
でも シイナは先生の髪の毛を掴んだりしたんだろ?」


ボクは思わず笑い出だした。


「髪を掴まれたとかって アイツはみんなに言ってるんですか?
バカなんじゃねぇの」

そして少しだけ担任のほうへ顔を近づけながら 鋭く言葉を続けた。


「ボクは昔からあたまを殴られるのがすんごく苦手なんでね。
だから もし次にボクを殴るとしたら あたまじゃなくって
顔面を殴るように他の先生にも伝えといて貰えますかねぇ? 先生」

今回の件もそれなりに問題になるのかな。と少しは覚悟してたけど
どうやら前回みたく自宅謹慎のような処分は
学校側からは特に下されないようだった。


本当は昼休み すぐにでもマレンのとこに行きたかったのに
すごくクダらないことに時間を潰されてしまった。

もうすでに5時間目の授業が始まっている。
教室の後ろの扉を開けると みんなが一斉に振り返った。

教壇に立っていた英語の教師は
何だか「言わなくても分かってる」みたいな
どこかぎこちない笑顔をボクに向けていた。


「どうだったの?カミウ君」

席に着くと 隣の竹内カナエが聞いてきた。


「まだ分かんないけど・・・たぶん大丈夫なんじゃねぇの?」

「まぁ とりあえず良かったねぇ」

「いや どうなるかホントにまだ分かんないけどね」


右側の席から川上ナオが小声で顔を近づけてきた。


「昼休み 佐藤さんとかも いろいろ話してたみたいだよ。
もしかしたら自分達も謹慎とかになるんじゃないかって」

「謹慎? だって佐藤は別に何もしてねぇじゃん」


そう言いながらボクの左斜め前のほうに座っている
佐藤マキコのことをチラっと見た。

マキコもこっちを見ていたので とりあえず頷くと
彼女も小さく笑顔を返してきた。


「それから・・・」

ナオは小声で続けた。


「カミウ君の彼女も さっき探しに来てたみたいだよ」




このクラスの目立つ女子メンバーには 2人 外国系の苗字の子がいる。
一人は確か台湾だったと思うけど林(リン)キョウエ。
そして もう一人は 李(リ)メイというコリアン3世の子だ。

林キョウエのほうは 小柄で可愛い『ハクション大魔王』の
あくびちゃんのようなアニメ顔をしており
李メイは色白で 切れ長の奥二重が大人びたキレイな顔立ちの子だった。


メイとは帰る方向が一緒だったので 昔から
何度か彼女の姿を学校の行き帰りに見かけることがあった。

一番印象に残っているのは 中2の頃
髪の毛を数箇所ザク切りにされた彼女が
ボクの後ろを歩いていたときの光景だ。

ホントかどうかは分からないけど その当時 目をつけられた2年の女子が
不良っぽい先輩に呼び出されてトイレで髪の毛を切られる。
というような事件は何度かあったようだ。

でも メイはその時 まるで何事も無かったかのように
すごく" 普段通りの表情 "をしていたのを今でも覚えている。

2人とも小学校時代や中学1年当時には その名前のせいで
それなりに陰湿なイジメも受けていた。というような噂は聞いたことがある。
でも3年生になった今 彼女たちをからかうような奴は もう誰もいないだろう。

特にメイの高校生の兄貴は この辺りでも相当に有名なワルみたいなので
以前 彼女をイジメてきた連中は 最近
彼女の兄貴に復讐されるのが怖くて怯えているようだ。


5時間目の授業が終わると 佐藤マキコと林キョウエ
そして李メイの3人がボクの席へと集まってきた。


「カミュ どうだったの?」

マキコが尋ねてきた。
彼女は最近 色白の顔に 少しだけそばかすが目立つようになってきた気がする。
しかし 久しぶりに近くで見ると 本当に外国人の女の子みたいな顔立ちだ。

そういえば マキコは小学校のときから ずっとボクのことを呼び捨てにしている。
考えてみれば この学校の女子で 下の名前を呼び捨てにしてるのは彼女だけだろう。
上の苗字を呼び捨てにしてるのは他にも何人かいたけれど。


「ごめんね 何だかシーナ君だけ悪いみたいな感じになっちゃって・・・」

李メイは その大人びた表情をほとんど変えずにそう言った。
口調もどことなく憂いを帯びた ドキっとするほどに艶やかなトーンだった。


「あぁ でも別に佐藤たちはヤツには手を出してないんだし 何も問題ないと思う」

「で。 担任には何て言われたの?」


マキコはさらに尋ねてきた。


「いやぁ 最後は" もう絶対に暴力を振るうな "って言ってたけどね」

「だってさぁ 悪いのは絶対に" 白ブタ "のほうじゃんねぇ」


マキコたちは笑いながら声を揃えた。
そのときの彼女たちは 当たり前のことなんだけど
すごく普通の中学生の女の子たちに見えた。




1983年10月


隣の兄貴の 薄暗い部屋のガラス窓の向うは雨の気配に満ちていた。
こないだ地元の中学のヤツに切られた背中の傷が なんとなく" ジンジン "と疼く。
結局 縫わずに治したんだけど まだ何となく" 引っ張られる "ような感じの
突っ張った違和感が右側に残っている。

ボクが連中にヤられたことは 今や学校中で噂になっている。
だから最近は 切られた制服の背中の縫い目を 何だか全然知らない生徒たちからも
興味深そうに見られているような感じがするのだ。


「おぉ。 そういえばよぉ おめぇ今度ライブの練習に付き合えよ」

兄貴はキャメルを吹かしながらそう言った。


「12月にライブ演るんだけど 今度の練習にボーカルが来れねぇんだわ」

「えっ まさかオレが歌うの?」

「まぁ適当にソレっぽくやってくれればいいからよぉ。
それに今度のライブは オリジナルじゃなくって昔のヤツのカヴァーだから
おめぇも知ってるのばっかだし」

「オレ あんま歌ったことねぇよ。兄貴が歌えばいいじゃん」

「俺はメインで歌はやらねぇ。ギタリストが歌っちゃなんねぇ」

「練習だったら別にいいじゃん。ってか ライブって何演んの?」

「ほれ!」


兄貴は汚い文字で書かれたセットリストみたいな紙を手渡してきた。


・You Really Got Me - Van Halen
・Cocaine - Eric Clapton
・Wishing Well - Free
・Tragedy - Hanoi Rocks
・Hotel California - Eagles



「まぁ。何となく知ってるけど・・・でも なんで最後にイーグルスが出てくんのよ?」

「おめぇ 『Hotel California』は最高だぞ」

「いや まぁそれは知ってるけどさぁ・・・」

「アルバム 聴いたことあっか?」

「アルバムはねぇかなぁ」

「何? ねぇ? 音楽演ってるヤツがこれ聴かなきゃイカンだろうがよぉ。
まぁ「Hotel California」はウチらのバンドだけじゃ演奏できねぇから
よそのメンバーとジョイントで演るんだけどよぉ。
といっても 誰も12弦は持ってねぇんだけどな。ハハハ
でも俺は どうしてもジョー・ウォルシュの" 歪み泣き "のギターソロが弾きたいんだわ」


兄貴はそう言いながらレコード棚からLPを取り出し 盤をプレイヤーに乗せた。

ボクにはさっぱり何のことだか意味不明だった。
正直 イーグルスのメンバーが何人いるのかすら分からない。

当然「Hotel California」は 何度か聴いたことはある。
でもハード系を好むボクにしたら どこまでもひたすらに続く
哀しげなマイナー・キーがすごく憂鬱になるんで好きじゃなかった。


「コレって高かったんだぞ」

兄貴は自慢気に" ギブソン・レスポール "をカバーから取り出した。


「やっぱジョー・ウォルシュ演るなら レスポールで弾かにゃいかんべな」

スピーカーから「Hotel California」のイントロが流れ始めた。
ボクはセブンスターに火をつけて 景色の見えない雨の夜のほうに目を向ける。

吐き出された煙が ガラス窓に映し出されたおぼろげなボクの姿をさらにボヤケさせてゆく。


【 この曲ってアコギだったんだっけ? 】



ボクがこの曲のことを" 暗い "と思っていたのは
イントロのアコースティック・ギターのアルペジオの音色のせいだったようだ。
しかもアコギが3重奏で奏でられているように聴こえる。

やがてAメロ直前にドラムがインしてボーカルが乗っかると
レゲエ調のブラッシングっぽいサイドリフが聴こえてくる。

Aメロの2ターン目でようやくリードのフレーズが重なってきた。
このギターフレーズもツインでの重奏だ。


【 一体この曲って 何人でギター弾いてるんだろう?
それに全然エレキの音が目立ってねぇじゃん! 】



その後 サビ・パートでのコーラス直後に
リードの切ないディストーション気味のフィルインが加わる。

でも 2ターン目のサビ・コーラス後にフィルインする音は
さっきのエレキとは また別のギターのようにも思えた。

確かに このサビのパート・アレンジはすんごくクオリティが高い。
中途半端なミュージシャンでは絶対に再現できないだろうなぁと思う。


ボクはガラス窓に映る自分の姿をぼんやり眺めながら
この曲の構成音をあたまの中でずっと探っていた。

2番に入ると リードフレーズの2重奏がバックトラックのメインとなる。
たしかに片方は歪んだ音だ。
これが さっき兄貴の言ってた" ジョー・ウォルシュ "のギターなんだろうか?

特に2番のサビ・コーラス直後のフィルインでは
めちゃくちゃ歪みまくっている。

この曲をこんなに真剣に聴くのは初めてだった。

3番が終わると見せ場のギター競演が始まる。
最初はリードのソロが交互に演奏され 徐々に絡み合いながら
ツインギターが見事なハーモニーを奏でつつフェードアウトしていく。


確かにいい曲だな。と素直に思った。
でも ボクは兄貴のほうに向かって言った。

「あのさぁ。 こんなのオレに歌える訳ねぇじゃん!」




1983年6月


マレンはこないだ 初めて" 結婚 "という言葉を口にした。
それがどの程度ホンキだったのかまでは分からない。

別にそのことを深く考えたりはしないんだけど
何となくその言葉の" 重み "みたいなものが
残響として未だにボクの心のどこかでこだまし続けているのは確かだ。

たぶん初めての感覚だったろう。

あのとき その言葉によってボクは自分の未来を一瞬 ものすごく間近に感じた。
中学を卒業してからの自分のことなんて 何も考えてなかった。
ましてや将来 何をするかなんて もっとずっと先に考えるものだと勝手に思ってた。

だからこそ リアルな未来に触れたとき ある種の拒絶反応が起きたのだろう。
それはマレンとの結婚に対する拒絶ではなく きっと" 未知なる未来からの逃避 "
厳密に言えば" 自らの人生を自らで決断することからの逃避 "なんだろう。

マレンと一緒に暮らすことは別に構わないと思いながらも
永遠に一緒に暮らすことに対しては どうしても即答することが出来ない。
即答してもいいと思える瞬間は何度かあるけど 大抵の場合
その答えを 意味もなく先延ばしにしようとしている。


けれど もしマレンがホンキで結婚したいと言っているのならば
それを断る理由など 今のボクにはない。
きっとそれが" ボクの運命 "なんだろう。


ボクらの運命というものは 積み重なってゆくものではなくて
きっと 最初からすでに出来上がっているものだ。

ボクらがどれだけ もがこうが悩もうが その" もがき悩む "ことすらも
すでに あらかじめ運命に織り込まれているものなのだとずっと思っていた。


だから もしボクがマレンと一緒になるのであれば 別にそれでも構わない。
彼女が もう一度ホンキで「結婚して欲しい」と言うのならば
きっとそうなるんだろう。

だけど すごくズルイことだと分かってるんだけれど
ボクからは その言葉を彼女に伝えることは出来ない。
今は・・・まだ・・・




「そういえば お母さんの検査結果はどうだった?」

小雨が止んだ学校帰り マレンに尋ねた。

太陽を遮る薄曇りの空のせいだったのかもしれない。
でも いつもとは違う どこかぼんやりとした彼女のよそよそしさが
何となく ボクからそう聞いて欲しいと云ってるように思えたのだ。


「うーん。 まだ はっきりとは言ってくれないんだけどね・・・」

もうすっかり雨は上がっていたけれど
そう答えたマレンはまだ水色の傘をさしたままだ。

その傘で顔は隠れていたけれど
何となく彼女がうつむいていることだけは分かった。


「でも やっぱりちょっと入院するみたいなんだ」

「えっ ・・・そうなんだ・・・
でもさぁ ウチの親父もこの前 入院してたしねぇ」


ボクには さほど慰めにならない言葉しか すぐには思い浮かばなかった。


【 こんなこと言わなきゃ良かったな 】



「だから 家帰ったらお母さんの入院の準備とか
いろいろ手伝わなきゃいけないのよねぇ」

「どのくらい入院するとかって分かってんの?」

「うーん・・・でも長くて10日間くらいだと思うんだけど」


マレンは左の手のひらを空にかざしながら答えた。
そしてちょっとだけ雲を見上げてから水色の傘を畳み
ようやく今日初めて ボクのことを見つめた。

彼女の大きな瞳は 明らかに何かに怯えていた。
ボクは" きっと大丈夫だよ "と云うべきだろうと一瞬思った。

でも きっとそんな言葉じゃぁ 今 彼女が抱えている不安を
全て消し去ることなんて出来ないだろうとも思っていた。


「あ!そうだ パル。 今年の夏休みにディズニーランドに連れてって!」

マレンは少しだけ笑顔でそう言った。


「あぁ・・・別にいいよ」

「何か ここんとこお母さんのことが ちょっと心配だったんで
もしお母さんが退院したら すんごく楽しいことやりたいんだよねぇ。
もう とにかくハジけたいんだよぉ。

だから とりあえず まずはディズニーランドには絶対行くってもう決めたんだ。
分かった?パル。 行かなきゃダメだよ?」


ボクは黙って頷いた。

最近 すっかり間違わなくなっていたんだけど
マレンは今日に限って 3年になってから呼び始めた「カミュちゃん」
じゃなくって ボクのことを昔のように「パル」って ずっと呼んでいる。


ボクのほうから何か違う話題を探さなきゃと思ってたんだけど
マレンが無理して" いつもの通りの彼女 "を装っていることが
痛いくらいに感じられて 何だかものすごく切なくなった。


なんだかボクは彼女のことを とにかく無性に" 抱きしめたい "と感じていた。
それはクリスマスの夜のときとは 明らかに違う感覚だった。


哀しみを抱え込んだ彼女を救えるのは きっと" 言葉 "なんかじゃないような気がしたからだ。


やがて雨粒がポツリとひと粒 ボクの頬に当たる。

結局 彼女を抱きめることも慰めることも出来ないままで
足元の路面が だんだんと黒い粒状の染みで重たく覆われていくのを
眺めながらボクらは再び傘をさして歩き続けた。


「絶対だよ!ディズニーランドだからね」

「いいよ。分かった。 ディズニーでもデニーズでも どこでも行こう」

「もう・・・ディズニーランド行くんだからね。
ちゃんと 絶対一緒に来てね。 パル・・・」


当然 マレンのお母さんの状態とディズニーランドが同じ" 重み "な訳などない。
でも 今の彼女にとっては ディズニーランドに行くことだけが
唯一の心の拠りどころなんだろうな。

「その年齢はもう大人」だとボクが勝手に思ってるだけで
彼女はまだ たかだか15歳の少女に過ぎないのだ。




Hotel California - イーグルス



 1 Hotel California  
 2 New Kid In Town  
 3 Life In The Fast Lane  
 4 Wasted Time  
 5 Wasted Time (Reprise)  
 6 Victim Of Love  
 7 Pretty Maids All In A Row  
 8 Try And Love Again  
 9 The Last Resort  

リリース 1976年12月8日|レーベル アサイラム

一言でいえば" 70年代中期のアメリカ音楽そのもの "ともいえるであろうイーグルス。彼らの人気は1976年にリリースされた5thアルバム『Hotel California』で 頂点を迎えることになります。70年代においては数少ない2000万枚超えのセールスを記録し ロックのみならず全世界の音楽ファンから愛聴されることになったアルバムですね☆ちなみに・・・ジャケットのホテルは同じLAでも『ビバリーヒルズ・ホテル』。。。『ホテル・カリフォルニア』というホテルは存在しておりません。



This is a collaboration with the page "ヘビロテ日記 第27回 『Eagles』" of foxxtale.



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誰かが" 核心 "に近づいてくる度に ハグらかしては答えを逸らす。
そうやってボクらは いつも本当の気持ちを隠そうとしている。

未来まで決して変わることのない気持ちなんて
どこか嘘くさく思えてしまう。

でも本当に大切な何かを失ったときにだけは
その気持ちが" ホンモノ "だったことに気付く。

そうやってボクらは これからもずっと大切な何かを失い続けていくのだろうか・・・




1983年7月


「カミュ・・・ちゃん・・・」

マレンは電話口で声を震わせていた。


「どうしよう・・・お母さんが まだ起きないんだよ・・・
お母さんが起きてくれない・・・どうしよう」

ボクは受話器を持ちながら あたまの中が真っ白になっていく。


「えっ 今ってどこにいるの?
オレ とりあえず すぐ行くから」

「昨日から病院・・・お母さんの病室にずっといる。
カミュちゃん どうしよう・・・アタシ」

「病院ってどこだよ? すぐに行くから!」

「カミュちゃん・・・」


何かを伝えようとする彼女の涙声を
公衆電話は無情にもプツっと途絶えさせた。


" お母さんが起きない "

ボクはその言葉の意味を 一生懸命" いいほう "に考えていた。
しかし いくら考えてみても 良い結果を思い浮かべることなどは出来なかった。


「マレンちゃん 何かあったの?」

知らずに大声になっていたボクの様子を
台所で見ていた母が心配そうに聞いてきた。


「マレンのお母さんが病院で" 起きない "って・・・」

「起きない? それって昏睡状態ってことかしら」

「良くわかんないけど・・・" あの病気 "って死ぬことあんの?」

「そうねぇ。急性の場合とか他の合併症を起こしたら 結構重症になることもあるんじゃない?」

「そんで 結局助かるの? 死ぬの?」

「そんなの分からないわよ! でも 昏睡ってことは かなり重症なのかしらねぇ」


鳴らない電話機を ただ見つめ続けることしか今は出来ない。


【 マレン! 何でもいいから・・・頼むからもう一回電話してきてくれよ 】


ボクは ずっと電話機の前で待ってたんだけど
3日振りに マレンの哀しげな涙声を聞いたその夜に
彼女から再び電話が掛かってくることはなかった。




1983年2月


その答えを出すことによって どんな未来が待っているのかなんて分かるはずもない。
でも大抵の場合 いつだって大切なのは" 今の自分 " の気持ちなのだ。



澄んだ蒼色の夜と白褐色の残光が滲みあう夕闇の冬空がやけに遠くに感じられる。
遮るものが何もないバス乗り場の周りをぐるぐると旋回しながら
真冬の北風が何度も通り過ぎていく。

マレンは一度自宅に戻ってから 待ち合わせ場所に来るという。
ボクは彼女のことを 帰宅するサラリーマンの姿が急に目立ちはじめた
駅前のロータリーでさっきから待っていた。

ボクは約束した時間には絶対に遅れない。
それだけは昔からの自慢だった。

しばらくすると ワインレッドのフード付きコートに
去年のクリスマスにも被っていた 白い毛糸の帽子姿で
大きな紙袋を片手に抱えた彼女が自転車で姿を現した。


「どうも お待たせー!」

吐き出された白い息の奥から笑顔でそう言う彼女の両頬は
すっかりピンク色に染まっている。


「じゃぁ どこ行こうかぁ? パルの誕生日なんだから
なにかパルの好きなもの食べに行こうよ。今日はアタシがオゴるからねぇ」

「マジで? でも オレの好きなものねぇ・・・なんだろう? じゃぁピザとか?」

「分かった。じゃぁ駅の向うの店でピザ食べようよ!でもねぇ
アタシ あの店のポテトも好きなんだなぁ」

「だったら別にポテトも頼めばいいじゃん!
どうせ今日は川澄のオゴリなんだからねぇ」


いつもなら もっとどこに行くかで悩むんだろうけど
この寒さでボクの思考回路が麻痺したせいか 意外にすんなりと決まった。
とにかく どこでもいいから早く暖かな部屋の中に入りたかった。

マレンの自転車を2人乗りして駅の北口のピザ屋へと向かう。
東海道線の線路をまたぐ陸橋の坂道を立ち漕ぎしながら登ってゆく。
後ろに彼女の重みを抱えつつ ボクは吹き抜ける北風を正面から浴び続けた。

はだけた胸元の隙間から冷やされた冬の夜風が一斉に潜り込んでくる。


「うゎーっ やっぱり自転車って寒いねぇ」

「いや 自転車というよりも 冬だから寒いんだよ。
つうかオレを風除けにしてんじゃん!だからオレのほうが川澄よりも絶対に寒い」

「もっといっぱい着てくれば良かったのに・・・何でそんなに薄着してんのよ」

「何かダセェじゃん。」

「あっ ほらパル! 富士山がすごくキレイだよ」


陸橋の上からは 左右の稜線を赤らめた富士山のシルエットがはっきり見えた。
マレンは自転車に横向きに座りながら ボクの腰を抱きしめるようにして
ずっと背中にしがみついていた。



「パル! はーい お誕生日おめでとぉ」

食べかけのシーフードピザを皿に置いてから
マレンは思い出したかのようにしてボクに大きな紙袋を手渡した。


「あぁ・・・サンキューね」

「でもあまり時間なかったからさぁ ちょっと失敗しちゃったんだけど・・・」

「失敗? 見てもいい?」


ボクは紙袋のなかを覗き込んだ。
そこには水色の長細いクッションのようなものが入っていた。
ボクはそれを膝の上に取り出す。


「パル こないだ " 枕 "が欲しいって言ってたでしょ?」

「枕? ん? そんなこと言ったけ? いわれてみれば言ったような 言わないような・・・」

「えぇーっ うそだぁ。絶対言ってたでしょ! お店とかいろいろ探してみたけど
何かいいのなかったから。。。 だからアタシが作ったんだよ」

【 はぁー。 これって枕だったのか・・・】

「ほらぁ ちゃんとよく見て! こっちがパルで・・・」

彼女は席を立ち上がって テーブル越しに上からボクのソファのほうを覗き込んだ。

彼女が枕だというクッションの中央には
それがボクだという 細長いニンジンみたいな顔が刺繍されていた。


「でね。 これがア・タ・シ」

ボクの顔の右端の上のほうに全くスケール感の合わない
小さな" ひまわり "みたいな彼女の顔が刺繍されていた。


「なんかすんごく川澄が遠くにいるような錯覚を起こすんだけど・・・」

「いいの。遠くからパルのことを いつもアタシが見てるんだから!
それで いつもアタシと一緒に寝てるんだから きっといい夢見られるんだよ」

マレンはピンク色の頬に小さなえくぼを浮かべて自慢げに微笑んでいた。

隣の席で高校生のカップルらしい2人がこっちを見ている。
ボクはちょっと恥ずかしくなって枕を紙袋に戻した。



「あ!そういえばパル。 ちゃんとアタシに曲作ってくれてるの?」

「あぁ。作ってるけど・・・まだ完成してない」

ボクはプラスティックのコップに注がれたジンジャーエールを
クラッシュアイスの粒と一緒に口にしながら答えた。


「約束したんだからね! ちゃんとアタシのためだけの曲だからね。
もし変な曲だったらイヤだからね!」

「えぇっマジで! 今すんげぇ変なの作ってるんだけど・・・
ドロドロした感じのゾンビみたいなヤツ」

「やだー ダメだよぉ! 作り直して」


メロディは何となく数曲出来上がっていた。
ロックっぽいのもバラードっぽいのもあったんだけど
それに合わせる歌詞が恥ずかしくて どうしてもボクには書けなかった。

今 目の前で嬉しそうにピザを食べている彼女に対する正直な想いが
一体どんな気持ちなのかボクにはよく分かっていない。
彼女のことを「どのくらい好き」なのかは ボクにはまだ分からない。

ただ" 好き "なだけだ。



1983年7月


先月 ウチの学校にいきなり赴任してきた数学の教師がいる。

銀縁の眼鏡を掛けた" にきび顔 "で
脂ぎった黒髪を真ん中分けにした中肉中背の色白男。
生徒たちのあいだで「白ブタ」と呼ばれているすごく陰気なヤツだ。

些細なことで やたらとうるさく咆えるヤツだったけど
ボクはコイツの授業中はほとんど寝ている。
今のところ まだボクに対しては絡んで来ていない。


マレンからの昨夜の電話がずっと気になっていた。
さっき休み時間に彼女の教室まで行ったんだけど
やはり今日も学校には来ていなかった。


ボクがいつものように左側の竹内カナエのほうに顔を向けて寝ていると
右隣で川上ナオが何かを小声で言った気がする。
ボクはうつ伏せのまま ぼんやりとナオのほうへ顔を向けた。


「ねぇねぇ! 彼女が学校に来たよ。今ちょうど前の入り口のとこ通ったよ。」

ボクは思わず飛び起きた。
そして教室の後ろの扉に張りつけられたガラス窓のほうを振り返った。

マレンが担任の教師と一緒にガラス窓の向うを通り過ぎて行った。
通り過ぎる瞬間 彼女はチラっとこっちのほうを振り向き
ボクのことを探していたが ボクとは目が合わなかった。


【 マレン! 】

ボクは席を立ち上がり 急いで廊下へと飛び出した。
後ろで" 白ブタ "が何かを叫んでたけどボクには届かない。


「川澄!」

ボクは教室へ入ろうとするマレンの背中を急いで追いかけた。
マレンは一瞬 ハッとして立ち止まり 静かにボクのほうを見た。

彼女の顔は どこなく青白く 明らかに憔悴の色が滲んでいる。
大きな瞳にも いつものような明るい輝きはなかった。


「パル・・・」

でも 彼女は少しだけボクに優しく微笑んだ。


「おい 早く教室に戻れ!」

マレンの担任がボクに向かって大声で言った。
やがてマレンは小さく手を振りながら教室の中へと入っていった。


彼女が扉を閉めるのを見送ってから ゆっくりと廊下を戻る。
ボクの教室の後ろの入り口に白ブタがこっちを見ながら立っていた。
無視して教室に入ろうとすると


「何やってんだ お前は!」

白ブタは怒鳴りながら 思いっきり後ろからボクのあたまを叩いてきた。

あたまの中で何かが音を立てて弾けた。


【 確か こんな感覚は2度目だな。テメエみたいにモテなさそうな気味の悪い野郎に
オレの気持ちなんか分かる訳ねぇだろうが! 】



ボクはソイツの前髪を掴み上げて一気に前方へと引きちぎった。
右手の指先に 毛根がはっきりと残されたままの脂ぎった髪の束が絡みつく。
それを床に振るい捨て 趣味の悪いネクタイを締め上げた。

ボクの後ろで何人かのイスを引く音が聞こえた。
気付くと 佐藤マキコたちの女子集団がボクの周りを取り囲んでいた。


「アンタさぁ マジで気味悪いんだよ」

「あんまり調子に乗ってんなよ」


やがて女子たちはボクの援護射撃を始めた。
眼鏡がずれた白ブタは ちぎられて薄くなった前髪あたりから
冷や汗を垂らしてブツブツと小さく何かを言っていた。


「頭がいいんだか知らねぇけど オメェも人間としちゃぁクズだな。
それにケンカ売んなら最後まで掛かって来いよ。
なんなら今から校長室行って殴り合いでもすんか? このブタ野郎」

ボクはネクタイを離し その醜い顔の教師に向かって言葉を吐き捨てた。



1983年2月


ボクは大学ノートに歌詞を一行書いては行き止まっていた。
何通りものマレンへの想いを様々な活字にしてみるが
読み返すその内容にはどうしても違和感を覚えてしまう。

ボクはレコード棚からビリー・ジョエルの『ニューヨーク52番街』と
『ストレンジャー』2枚のアルバムを探し出した。

一番最初に買ったビリー・ジョエルのLPは『ニューヨーク52番街』だ。
小学校の頃 TVのCMで流れていた「Honesty(オネスティ)」の
サビ・フレーズにすごく惹かれて思わず買ったんだけど
アルバムの楽曲的には『ストレンジャー』のほうが全然好きだ。

やはり「Just the Way You Are(素顔のままで )」もすんごく名曲だと思う。
ボクは この2曲のバラードを組み合わせたような曲が何となく作りたかった。

「Just the Way You Are」をピアノで弾くことは さほど難しくなかったけど
「Honesty」はピアノ・アレンジのディミニッシュコードの箇所が少し複雑で
なかなか上手く音を拾い出せなかった。


まずは『ニューヨーク52番街』をプレイヤーに乗せて「Honesty」を掛ける。


そして あたまのなかで" 音 "を探る。
この曲で特に難しいのがイントロ・パートのピアノアレンジだ。
この部分は 何度 鍵盤を叩いても2箇所のコードを未だに見つけられないままだ。

Aメロはどうにか弾ける。
でもBメロからサビに掛かる繋がり部分で またコードを見失う。


【 この曲のメロディって どうしてこんなにもセンチメタルなんだろうな 】

何度も聴いて すっかり覚えてしまった歌詞に合わせてボクは小さく歌った。

オブラートに包み込まれたようなマイナー・コードの伴奏の内側を
透けるようにして希望的な陽音階のメロディが奏でられていく。

このメロディは 上から覆われたオブラートのマイナー・コードを決して突き破らない
哀しみの内側に秘められた切なる希望の旋律なんだと思う。


曲が終わると LPを『ストレンジャー』に換える。
このアルバムはA面の3曲がすごく完璧に繋がっている。
特にロックテイストな「The Stranger」から静かなエレクトーンの
「Just the Way You Are」へと続く流れは 何だかすんごく心地よくて落ち着く。

「Just the Way You Are」は 多分もう さほど間違えずにピアノでも弾けると思う。
でも 久しぶりに聴くとAメロの3小節目からインしてくるアコースティックギターの
優しくてナチュラルなストローク&ブラッシングがすごく際立ってることに気付く。

こんなにアコギの音が目立ってたっけ?

このLPを買った頃 ボクもまだギターを弾いてなかったんで
全く気付かなかったんだろうけど。


幸い 母はまだ夕方の買い物から戻ってきていない。
ボクは下へと降りて 応接間に置かれたピアノの前に座った。

" イントロとサビのパートは 陽音階にオブラート状のマイナー・コードを被せる "

このあたりのフィーリングは何となく「Honesty」からインスパイアされた
サウンドイメージを大切にしてみた。


まずは両手で伴奏コードを2小節押さえ
3小節目から右手で旋律パートを奏でる。

このままだと出来上がりのイントロはかなり長くなるんだろうけど
構わず 思いつくままを演奏していった。


やがて2階の部屋に戻り アコースティックギターを取り出す。
そして さっきピアノで完成させた Aメロ部分の伴奏コードを弾き始めた。

そのコード上に ボクは彼女への言葉を探す。

去年のクリスマスの出来事が やけに鮮明に思い出された。

もし あのときの気持ちを言葉に出来なければ
ボクから彼女に「好きだ」という想いを
伝えることなど2度とないような気がした。


ボクは大学ノートに あの日の素直な想いだけを綴っていく。
あの日の夜 彼女に言えなかったあのときの想いだけを・・・




The Stranger - ビリー・ジョエル




 1 Movin'Out(Anthony's Song)  
 2 The Stranger  
 3 Just the Way You Are  
 4 Scenes from an Italian Restaurant  
 5 Vienna  
 6 Only the Good Die Young  
 7 She's Always a Woman  
 8 Get It Right the First Time  
 9 Everybody Has a Dream  

リリース 1977年9月29日|レーベル コロムビア

いまひとつ自らの音楽的方向性を確立出来ないままだったビリー・ジョエル氏が 1977年にリリースし 1000万枚のメガヒットセールスを記録した まさに彼にとっての大出世5thアルバムが『The Stranger』です☆それまでのピアノ・ポップ中心の楽曲構成から一新され 実にバラエティに富んだ内容となった このアルバムからのシングルバラード「Just the Way You Are (素顔のままで)」は 1978年のグラミー賞で「最優秀レコード賞」と「最優秀楽曲賞」の2部門を受賞します☆






ALOHA STAR MUSIC DIARY

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1983年5月


「カミュちゃんはさぁ バンドとかってやらないの?」

マレンは海岸沿いに建つファーストフード店の2階席から
ウインドウ全面に映し出された 眩い5月の海を横目で眺めながらそう言った。

土曜日の午後、いつもならば学校が終わるとすぐにボクの家へ行くんだけど
この日は 何となく二人で海のほうへと向かった。

きっと授業中 教室の窓から見た海の色が あまりにも蒼く澄んでいたからだろうか。

ビーチ沿いのサイクリングロードを散策しながら
ついほんの10分前に この場所に辿り着いたばかりだ。

この店ができたのは いつくらいだったろうか。

地元の駅からは 最も遠いこのファーストフード店が
海水浴のシーズン以外で賑わうことなど ほとんどない。

ただ 湘南海岸を走る国道134号線沿いで 雄大なオーシャン・ビューを味わえる
海辺の絶好なロケーションに位置していることだけは間違いないだろう。
本来ならば高級イタリアン レストランでも建っていそうな場所だ。


「まぁ そこまでのテクはないからねぇ」

ボクはフライドポテトの先にケチャップをつけながら答えた。
去年くらいまでは それなりにギターを弾いてたんだけど
ここ数ヶ月くらい ほとんどそれを手にする事も無くなっていた。

マレンはさっきから指先で ストローのジャバラの部分を
何度も折り曲げたり戻したりながら
時々 その大きな瞳を海のほうへ向けたりしている。

そしてストローに薄ピンク色の小さな唇をつける直前にだけ
なぜかボクのことを見つめる。


「でも ピアノとかも上手いじゃん!ギターだって すごく弾けてるし」

「あのレベルじゃぁ バンドなんて無理だよ。出来てせいぜいヴォーカルくらいだろ?」

「絶対バンドやったほうがいいよぉ。アタシ絶対に" あの曲 "売れると思うよ」

「恥ずかしくて あんなの歌えないじゃん」

「あんなのって何なのよ!" アタシの歌 "なのに・・・」

「いや・・・だからねぇ アナタのためだけに作った曲だから
他の人には歌えないんですよ。分かる?」

「えーっ 勿体無いよぉ。せっかくいい曲なのに・・・
じゃぁ 今度アタシの前で歌ってよ」

「いやぁ・・・それも恥ずかしいねぇ」

「なんで" アタシの歌 "をアタシの前で歌えないの? もぉ意味不明だよ・・・」


マレンはそう言うと また海のほうを見た。
穏やかに晴れ渡った春の木漏れ日が 薄暗いこの店内の
窓際に座っているマレンのほうへ斜めから差し込んできている。

この夏 彼女は15歳になるのだ。

ウインドウから差し込む光と それに引き連られる影が
うつむくマレンの表情に 有名な大理石の彫刻像を連想させる
緩やかな抑揚を描き出している。


去年までの少女が 大人の女性へと変化してゆくプロセスを
薄い陰影によって強調されたシルエットの起伏が何となく教えている。

13歳はまだ子供で 14歳は子供と大人のちょうど分岐点。

そして15歳っていうのは もはや完全な大人なのだ。

特に女の子のほうが 圧倒的に早いスピードで
ボクらを置き去りにしながら大人になっていくように思える。


「ねぇ。あとで また海に行こうよ」

ビーチのほうを見つめたままでマレンがボクを誘った。


考えてみれば 中学に入ってから この街の海で泳いだ記憶はない。

むかしは 東京や千葉などに住むイトコ達から
「カミュは海が近くていいねぇ」と よく羨ましがられていたものだ。

" 湘南 "というイメージからは なんとなくキレイなビーチを連想されがちだけど
ボクらが子供の頃の海は 深緑色に淀んで濁り 砂浜もゴミだらけだった。

それでも最近は市民ボランティアや地元のローカルサーファー達が
定期的にゴミ拾いなどをしているお陰でだいぶキレイになってきているようだ。


「海・・・ねぇ」

ボクらの中学校からは 歩けば1分程度で行ける距離なのに
そういえば彼女と学校帰りに海のほうへ来たのは今日が初めてだ。



ボクらはファーストフード店の駐車場から海岸の砂浜へと降りた。
ビーチには かつてのように空き瓶や空き缶などは散乱しておらず
粒の粗いグレーの砂浜が 遠く江ノ島のほうまで延びている。

この街の5月は 上着を脱いでも 着ていてもどちらでもいいような気候だ。

歩くたびにローファーは砂浜に深く埋もれて 隙間から砂が入ってくる。
ボクらは靴も靴下も脱ぎ捨てて裸足になった。
そして その靴の上に脱いだ制服を重ねて置いた。

南から吹く風は 海面に漂う大量の水蒸気を
ゆっくりと吸収しながらミネラルの潮味を増していく。
その風がさらってくる潮の飛沫に打たれるたびにボクらのシャツは細かく濡れる。
そして その部分だけ白いYシャツは色味を失い マレンの肌が小さく透けていく。


「そういえば川澄とは プールにも海にも行ったことなかったねぇ」

「だってさぁ それはカミュちゃんが行くの嫌だって言ったからじゃん」

「まぁ 水着姿は小学校時代にお互い散々見慣れてるからさぁ」

「何言ってんの? もう イヤらしいーなぁ」


まだ5月だからだろうか。
遠くの浅瀬に数名のサーファーが浮かんではいるけど
湘南の砂浜には 見渡す限りボクたちの姿しかない。


「もし・・・」

マレンは水平線のほうへと言葉を続けた。


「もしカミュちゃんがさぁ バンドやるとしたら 何て名前にしたい?」

「え?バンド名って事?」

「そうそう!バンド名は何にしたいの?」

「そうねぇ・・・もしバンドを組むならねぇ・・・」


ボクは そんなことを今まで一度も考えたことはなかったけど
この水平線の遥か彼方にある まだ見ぬ憧れの場所のイメージが
単語として一瞬 何となくあたまの中に浮かび上がった。


「" ALOHA STAR (アロハスター) " とか・・・」

ボクは思いつくままを口にした。


「" ALOHA STAR "? どういう意味?」

「意味を聞かれると 意味を考えなきゃいけなくなるけどねぇ」

「でもいいんじゃない? なんかハワイアンっぽくて。
じゃぁ アタシもウクレレ習って弾こうかな?」


マレンは嬉しそうに笑いながらそう言った。


「ウクレレ?それじゃぁ ちょっとサウンドが牧伸二っぽくなっちゃうじゃん・・・
やっぱし もっとロックバンドっぽい名前のほうがいいかもな?」

「牧伸二? 誰? えーっ でも いいじゃん" ALOHA STAR "で!
なんか可愛くていいと思うよ」

「カワイイって言われると・・・微妙な気がする」

「もう!じゃぁ 何て言われたいのよ!」


でもボクは その響きが何だかすごく気に入っていた。




1983年9月


ボクの3学年上にあたる隣の兄貴は 高校に入ってから
「なんとか" ウィザード "」って名前のバンドを組んでいる。

素人バンドながらも それなりにいろんなライブハウスで演奏しているらしい。
こないだも わざわざ新宿までライブをしに行ってきたようだ。


兄貴とは同じ中学なのだが ボクが入学すると同時に
入れ替わる格好で高校生になったので
一緒の時期に同じ中学校へ通ったことはない。

彼は中学時代から" 長髪 "を貫き通していた。
無論 校則では禁止されているけど 兄貴の年代は相当にウチの中学も荒れてたんで
何となく許されていたんだろう。


久しぶりに覗いた兄貴の部屋は ギターと雑誌とレコードだらけになっていた。
相変わらず暖色系の小さなランプが天井に吊られただけのこの部屋は
たぶん蛍光灯照明の保安灯よりもずっと暗い気がする。

兄貴は自慢の長い髪を団子状に後ろで結わいてまとめていた。

【 一体 今どのくらいの長さなんだろうか 】


「カミュ おめぇ最近ギター演ってるのけ?」

「いや 最近はほとんど弾いてない」


ボクはセブンスターの火を 山盛りになった灰皿の
奥のほうに突っ込んで揉み消した。

兄貴は昔から数種類の洋煙をいつも好んでいる。
まぁロックギター演ってるヤツが国産タバコじゃぁ
やっぱり格好付かないだろうなぁとは思う。
最近は どうやらキャメルとセーラムを吸っているみたいだった。

彼の昔からのこだわりは 使い古されて変色した
ゴールドのジッポでしかタバコに火をつけないということだ。
それ以外で火をつけると味がマズくなるらしい。
でもボクはジッポで火をつけたほうがオイルの匂いがしてマズい気がする。


「もうギター演らねぇのか? もし弾くんならコレやるぞ」

兄貴は いくつも立掛けてあるギターケースのひとつを手渡してきた。
カバーをあけると" フェンダー・テレキャスター "が入っていた。
60年代の大物ギタリストの多くが愛用したギターである。

ボクはずっと" ストラトキャスター "が欲しかったんだけど
どちらも 今のボクに買えるような代物ではなかった。


「くれるの?マジで?」

「あ?もしオメェが弾くんならやるけど」

「じゃぁ弾く!」


ボクは膝の上にテレキャスターを取り出した。
今まで弾いていた無名の安物ギターとは
手にした感触も重量感も やはりなにか違った。


「オメェってレゲエは聴くか?」

「いやぁ レゲエはつまんないから聴かねぇなぁ」

「クラプトンだってレゲエでボブ・マーリーをカヴァーしてんだぞ」

「・・・そうなの?」


兄貴は立ち上がり レコード棚からLPを引っ張り出す。
そして無造作に床にジャケットを投げ捨てながらプレイヤーに盤を落とした。

やがてステレオの脇にある机の引き出しから何かを手にして戻ってきた。
しばらくするとスピーカーから 緩くギターを刻む音が聞こえてきた。


「オメェ まだコレやったことねぇべ」

それは手で巻かれた いびつにねじれた太いタバコのようだった。

1本をボクに渡してから まずは咥えた自分のほうにジッポで火をつけた。
そこから漂う煙は明らかにタバコの匂いではない。

兄貴は深くその煙を吸い込み そしてゆっくり吐き出す。
煙の濃さも 何となくタバコとは違って見えた。


「これってマリファナ?」

「まぁ" 大麻 "とも言うがね」

「こんなの普通に買えるんだぁ」

「都内に行けば どこのライブハウスでも売ってんよ。
でも" 混ぜ物 "も結構多いんだけど コイツはホンモノ!」


ボクは特に躊躇もせず それに火をつけた。

「大物アーティストは みんなマリファナを吸っている」

と聞かされてたせいか 罪の意識よりも「それがどんなものなのか」という
憧れや好奇心のほうが強かった。

ゆっくりと吸い込んでみる。
タバコよりも重たい 燻されていない樹木成分の青苦さが感じられた。
でも 別にムセるようなほどのキツさではない。

「すぐに吐き出さずに 吐き出した煙もまた吸うんだよ」

兄貴はそう言うと 口に含んだ煙を握り締めた左手の中に吐き出し
そこから浮かび上がってくる煙を再び吸い込んだ。

ボクもそれを真似てみる。

さっきから流れているレコードは どうやらボブ・マーリーらしかった。
同じテンポと同じようなリズムギターのリフが何曲も続いていく。
ボブ・マーリーのサウンドが マリファナの煙とともにカラダの中に吸い込まれていく。
やがてだんだんと心地よい浮遊感がボクに訪れ始めた。


ボクは床からボブ・マーリーのLPジャケットを拾い上げる。

『Uprising』というアルバムらしいけど
イラストが何となく" グリコの絵 "に似ていた。

ボクはそのことを兄貴を言おうとした。

「このジャケットってさぁ グ・・・」

そこまで言った瞬間 思わず吹き出してしまった。
笑いが止まらなくなった。


「ジャケット? 何だよ?」

そう聞く兄貴も ボクがあまりにも笑い続けてるんでつられて笑い出した。
兄貴のくっきりとした二重瞼は よく見るとトロけて一重になっている。

「兄貴!なんか顔が変だよ」と言いたくても もはやそれすら言えない。
強制的に笑いが次々と内側からこみ上げる。

でもしばらくするとようやく それも少し落ち着いてきた。
笑いが止まらなくなる。という効果以外には
特に身体的変化はないように思えた。


兄貴がLPをB面に変えた。


「" コレ " 決めるときはボブ・マーリーが一番トベるんだよ」

ボクはジャケットの裏に書かれたトラックリストを眺めた。

A面よりは 何となく落ち着いたサウンドアレンジの曲が続く。
マイナー調で暗い感じの1曲目「Zion Train」が終わる。
続く2曲目の「Pimper's Paradise」はレゲエ調バラードっぽい
アダルトコンテンポラリーなナンバーだった。

ボクはしばらくトラックリストを眺めながらマリファナを飲み込んでいた。

やがて3曲目の「Could You Be Loved」が流れてくると
" ハイ "になっているボクと そのリズムが完全にシンクロした。
カラダが勝手に動き出した。

ボクは目力が全く入っていない 幸せそうな顔をした兄貴に向かって

「兄貴!この曲はすんごくいいねぇ」

ボクは兄貴を見ながら確かにそう言ったのだ。



・・・誰かに呼ばれている気がした。
ハっと我に返ると 兄貴がトロけた眼差しでボクのことを呼んでいた。

「おーい 大丈夫かぁ?」

ボクはやっと 今まで見ていた光景が幻覚だったことに気付いた。
どこからが幻だったのかは全く分からない。
それがあまりにもリアルに現実と一体化していたからだ。

でも さっき兄貴に対して「この曲はすんごくいいねぇ」
と言った気がしてたのは明らかに幻覚の中での出来事だった。


「まぁ 大麻はすぐに抜けるから大丈夫よぉ。”麻酔い”は酒より全然楽なんだよぉ。
それにタバコよりも体に害はねぇからな。まぁ所詮 " ハッパ " だから」

兄貴はへらへらと笑いながらそう言った。




1983年12月


「で? バンド名は何だって?」

竹内カナエは いつも通りシャープに釣りあがったクールな視線でボクを見た。


「だから " ALOHA STAR (アロハスター) "にしたいなぁと思うんだけどね」

「まぁ アタシは別にいいんだけど。でも あんまり" ロック "っぽくないよねぇ」


彼女は明らかに違和感を感じているようだ。
でもボクは どうしてもALOHA STARでなきゃいけないような気がする。

川澄マレンが ボクらのライブを観ることはないだろう。
もしそうだとしても ボクがこのライブを演るのは きっと彼女のためなのだ。

彼女に褒めてもらいたいから
きっとボクは歌おうとしているのだ。





Uprising - ボブ・マーリー



 1 Coming in from the Cold    
 2 Real Situation    
 3 Bad Card    
 4 We and Dem    
 5 Work    
 6 Zion Train    
 7 Pimper's Paradise    
 8 Could You Be Loved    
 9 Forever Loving Jah    
10 Redemption Song    

リリース 1980年6月10日|レーベル アイランド

ボブ・マーレー氏にとって生前最後のアルバムとなったのが1980年にリリースされた『Uprising』です。ボクが彼のスタジオアルバムで初めて聴いたのも この作品でした。無論、ボブ・マーレー氏が作り出す音楽の基本となるのは 極めてシンプルなギターコードの組み合わせによる4分の4拍子のミドルスロー系レゲエナンバーなんですけど このアルバムに収録された楽曲は実にバラエティに富んでおり レゲエ・ミュージックの奥深さを改めて印象付けてくれました☆






ALOHA STAR MUSIC DIARY

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ボクらが生まれる僅か20数年前まで
この国が戦争をしていたことなんて全く信じられない。

でもウチの親父が生まれたときは まだ戦争の最中だったのである。


「ウチのお爺ちゃんは 戦争のとき外国で死んだ」

子供の頃 終戦記念日になると地元の海岸に親戚たちと出掛け
そして一度も会ったことのないお爺ちゃんの話を良く聞かされていた。

どこの国で死んだのかは 何回聞いても覚えられなかった。
でも 海に捧げられた花束は なかなか沖へとは向かわずに
何度もボクらの足元に戻ってきてたことだけは ぼんやりと覚えている。

ボクらが何気なく過ごしている日常のなかのどこを切り取ってみても
その戦争の痕跡をリアルに見出すことなどは出来ない。

もし教えられなければ きっとこの国に戦争があったことなんて
ボクらはずっと知らないままだったのだろう。

でも間違いなく20数年前までは 平和に見えるこの国でも
命の奪い合いが行われていたのだ。


アブラハム・マズローって人が『自己実現理論』のなかで
誰もが遺伝的に持っている5つの基本的欲求を定義した。


それは 生理的欲求、安全の欲求、所属と愛、承認(尊重)の欲求、
そして自己実現の欲求。なのだという。

でも本当にそれだけなんだろうか。

ボクらが幼い頃に プロレスやボクシングをテレビで観ながら感じていた
あの" 興奮 "っていったい何なのだろう。

残酷な刺激に飢えた暴力的欲求というものは
本当にボクらに存在しないのだろうか。

いや。きっと確かに存在している。
誰にも教わる前に すでにボクらの血の中には・・・




「1年の男子生徒が 転落して大怪我を負ったらしい」

「おそらく彼は自殺しようとしたんじゃないか?」

そんな噂話を休み時間にクラスの誰かがしていた。

" 同級生からのイジメを苦に生徒が自殺する "

こうした事件が起きるたびにニュースなどで
よく耳にする学校関係者の言葉は大抵2つだけ。


「彼らは悪ふざけしているように見えた」

「イジメと自殺との因果関係は認められなかった」


そりゃそうだろう。なぜならばイジメられてるヤツは大抵の場合
いつだって何となく笑っているように見えるからだ。
イジメてる側も大抵は笑いながらその行為を行うものだ。

特に理由などは無い。相手が困ったり傷ついていく姿が
単純に面白いと感じるからイジメているのである。


「悪ふざけ」や「プロレスごっこ」がまるで「イジメ」ではないと
教師たちは言いたいかように聞こえる。

でも「悪ふざけ」というのが「イジメ」行為そのものなのであり
もし ふざけた感情や笑顔が そこに一切皆無だとするならば
それは単なる「集団暴行」だ。


イジメとリンチの違い。
というのが最も分かりやすい気がする。

当然ながら イジメられてるヤツの笑顔は本当の笑顔ではない。
あくまで「これは遊びの延長なんだ」と自らに言い聞かせ
相手との決定的な優劣を作り出さないための意地
もしくは自尊心を守るための最後の抵抗なんだろう。


でも彼らが自ら死を選ぶ最大の原因がイジメだとは思わない。
たぶんそれはきっかけに過ぎない。

未来への不確定な希望よりも 現実における確信的絶望のほうが
圧倒的に上回ったとき 彼らは完全なる現実逃避への道を自ら選択し履行する。

教師たちが何も気付かないことに対して。
もしくは気付いているのに助けてくれないものなのだと悟ったとき
彼らは最後の僅かな希望を失い 絶望感だけがそこには残されるのだろう。


でも教師なんて そういうものなんだと思う。
ボクらが その職種に対して抱くようなほどの 崇高な社会的モラルや
情熱などは最初から持ち合わせてなどはいない。

少なくとも生徒ひとりひとりの命に対する責任までは
はなから請け負っていない。

彼らは単に地方のお役所務めと同じ感覚で安定した
" 公務員もどき "の道を選んだに過ぎない くだらない連中なのだ。



去年 ボクは職員室で担任教師に拳で20発くらい殴られ続けていた。
でも周りにいた教師連中は ほとんど誰もそれを見ていなかった。
きっと目には入っていたんだろう。
でも 鮮血が飛び散ったYシャツ姿のボクのことなど見えていなかった。

彼らは普通に談笑したり 自分の机に向かって事務作業をしていただけだ。

ひとりだけ止めようとしたのか ボクに土下座するように言ってきた。
でも担任から「立ってるほうが殴りやすいですから」と言われたら
黙ってその場を立ち去っていった。
ボクに背を向けたその教師は 2年の学年主任だったのである。


学校の中であれば 当然許されるものだと勝手に思い込んでいる
故意による傷害行為のことをコイツらは罪ではなく" (体)罰 "と呼んでいる。


いまだに他の生徒たちを殴ってる教師は何人もいる。

奴らは生徒を殴ることに快楽を覚えてしまったサディスティックな変質者か
殴ることで自分は「指導してるんだ」という自己満足な妄想に取り憑かれたサイコパスだ。

どんな理由があろうとも 人を拳で平然と殴れるヤツは
暴力に快楽を覚え 自らの理性を制御できない異常者だ。

そんな暴力を日常の風景のなかにすっかり同化させてしまっている
他の教員連中もまた同じくらい異常者たちなのだ。


そんな異常者たちが何人も平然と存在している学校という場所は
復讐心を持てない弱者にとっては一番危険な場所なのである。

当然 ボクが教師たちに対して抱く敵意は日増しに高まってゆく。
少なくとも2年の担任だけは ボクは絶対に許すことはないだろう。



そういえばこの担任教師は ボクらが中学2年になると同時に
他校から転任して来たんだったな。

ギョロっと飛び出した魚のように大きな目、額に何本も刻まれた深いシワ、
色白の肌に青々とした髭剃り跡、そして短く刈上げられた髪の毛。

新しいクラスの担任として初めて教室に入ってきたときから
何だかものすごく薄気味悪かった。

最初はバカ真面目で大人しいヤツかとばかり思っていた。
でも ある日を境に この担任は突然豹変したのだ。



1982年5月

最初はクラスの誰かが 昔の漫画の主人公に似ている担任の
刈上げられた髪型をからかったことがきっかけだった。

教室内には 的を射たその誰かの言葉に
小さな同調の微笑が起こる。

そのときだった。
忘れもしないけど担任は口元に笑みを浮かべたままで
ゆっくりとそいつに近寄っていき ただ一言「お前なぁ」とだけ言った。
いや それを言い終わる前に 何の前触れもなく思い切り彼の顔面を殴り飛ばした。

そもそも ボクらは教師に平手で叩かれたり頭を殴られたことはあっても
素手で顔面を殴られるという経験などはほとんど無い。

担任はずっと口元に笑みを浮かべ続けながら からかった生徒をさらに殴る。
" ゴツッ "と骨が放つ鈍い音と共に 彼はイスから真横に転げ落ちた。

教室内は一瞬にして静まり返った。
誰かが殴られている光景を日常のなかで間近に見ること自体
きっとそれまで一度も経験が無かったからだろう。


「今 笑ったヤツは全員立て」

担任はゆっくり教壇に戻り こちらを振り返るとそう言った。
当然 誰も席から立ち上がることなどは出来ない。

すると窓際のほうの席へと歩き始め一番前に座っていた
男子生徒の脇に立つなり無表情で彼の頭を殴った。


「お前 笑ってただろ。俺は『立て』と言ったんだぞ」

その生徒は青ざめた表情でゆっくりと立ち上がった。
教室内は 痛いくらいに重々しい戦慄の空気で包まれていく。


「本当に他にはいないのか?」

ボクには この殺伐とした空間がものすごく息苦しくなってきた。
同時に何だかすごくバカらしくなってきた。

不思議なんだけど 誰か他の生徒が殴られている姿を見ると
自分も殴られなきゃいけないように思えてしまう。

別にソイツのことを庇う訳じゃないが
ソイツだけ殴られてるのが何となく可哀想に思えるからだ。

ボクは笑いながら立ち上がった。
こうした極度の緊張感に支配された場所にいると
昔からなぜだかいつも笑ってしまうのだ。

その後 5人くらいの男子が重たそうにイスを
ズズズっと後ろに引くような音をさせながら渋々立ち上がった。

担任は さらに窓際のほうの席を後ろへと移動しながら


「お前も笑っただろう。『立て』と言ってるんだよ」

そう言うなり ひとりの女子生徒の頭を思いっきり殴りつけたのだ。
ボクはその光景に思わず目を疑った。
いきなり殴られた女子生徒は震えながら泣き出した。


「立てよ 早く」

この狂った担任は 泣いているその女子生徒を そう脅して無理やり立たせた。
すると数名の女子生徒も 顔色を失いながらも恐怖のあまりうつむき立ち上がる。
ガクガクと足が震えている子もいた。



1983年3月

四方の壁の上には 歴代校長らしき人物の写真が
額縁に収められて規則的に並んでいる。

【 この中で一番古いのは誰なんだろう 】

正門あたりで大きく鳴り始めた救急車のサイレンは
やがて すぐに遠くのほうへと消えていった。

ボクは校長室のソファに座りながら部屋の中を見回していた。

気付くと 生活指導や学年主任の教師連中も
安そうな机を挟んで ボクの前に座っている校長の後ろ側に何人も立っていた。

ひとりの教師が慌てながら部屋の中に入ってきて 校長になにか耳打ちをした。
校長は神妙な顔で何度か頷くと やがてゆっくりとボクのほうを向いた。

ボクも彼の顔を この学校に入ってから初めてちゃんと見ていた。
学校行事で挨拶をしている姿を遠めで見ていたときとはずいぶん印象が違う。
校長の顔は大小のシミや 細かいほくろで埋め尽くされていた。

【 やはりこの人も相当な年齢なんだろうな 】

「とりあえず先生は 今 病院へ向かいました」

校長は穏やかに語り始めた。


「君のしたことは暴力行為です。そのことは判りますね」

ボクは小さく頷いた。

「先生はもしかしたら 大変な怪我をされているかもしれません。
君はそのことを反省していますか?」

ボクは黙っていた。


「でもなぜ 君は先生を殴ったりしたんですか?」

「・・・それは先生が生徒を殴るから・・・です」

「先生が殴る?いつ先生が生徒を殴ったのですか?」


その言葉にボクは少しだけ嘲笑した。


「" いつ " というよりも "いつも" なんですけど」

校長は顔をしかめながら 後ろに並んでる教師たちのほうを振り返った。
教師連中は 校長と目を合わさず 互いに首を傾げるような仕草をしていた。


【 ふざけんな。お前ら職員室でボクが殴られてるのを見てただろうが 】


「いずれにしても 暴力はいけないことです。君は先生に対して謝らなければならない」

「じゃぁ 先生だったら生徒に暴力を振るっても良いんですかね?」

「いえ 暴力を振るってはいけません」

「おかしいでしょ 校長の言ってることは。だったら まずは担任に謝らせろよ!」

「お前 校長先生に対して何ていう口の利き方してるんだ!」

校長の後ろにいた生活指導が怒鳴った。
よくある学園ドラマの台詞のように 本当にそう言った。
ボクは だんだんと湧き上がる感情が抑えきれなくなってきた。

「おかしいだろうが! オレはヤツに50発以上は殴られてんのに
10発くらいしか仕返し出来てないんだからさぁ」


「本当に君はそんなに殴られているのですか?」

校長は深刻な表情でそう言った。

「だったら後ろにいる先生たちに聞いてみてくださいよ。みんな知ってますから」

ボクは学年主任の顔を見ながらそう言った。



この翌日から自宅待機を言い渡され 数日後 正式にボクは" 出席停止処分 "となった。
この中学校でこの処置が取られたのは初めてのことだったようだ。

最近 ほとんどまともに話したことがない親父が相当怒るんだろうと思ってたけど
妙に機嫌よく自分の子供時代の武勇伝を話していたのがちょっと意外だった。



1982年5月

「お前らこっちに来い」

すごく冷静な口調でヤツは指示した。
ボクらは教室の後ろの壁に沿って横一列に並ばされた。

一番右端にいたのは伊浦ナオトだった。
やがて担任は列の右側から順番に生徒の顔面を殴り始める。
ナオトは殴られた衝撃で 後ろの壁に思い切り後頭部をぶつけた。
" メリ "っと木製ボードの壁が軋む音が聞こえた。

担任は何のためらいもなく 続けざまに生徒を殴り続けていく。
そのたびに彼らは後ろの壁にぶつかったり床に崩れたりしていった。

ボクはヤツのことをずっと見ていた。
感傷と歓喜を同時に漂わせたような歪んだ恍惚感が
ギョロっとした魚のように大きな目には宿っていた。

やがてボクの順番になる。
女子生徒たちは ボクの隣でずっと泣き続けている。

ボクは担任の顔を見ながら笑っていた。
こみ上げた怒りみたいな複雑な感情が
なぜだか分からないけどボクをずっと笑顔にさせていた。


「なに笑ってんだ」

「別に・・・」

「なに笑ってるんだよ!お前は」


担任がボクの右頬を拳で殴りつける。
コイツが人を殴り慣れているということは瞬時にして判った。
ボクシングの殴り方ではない。
多分 空手でもやってたんだろう。

同時に" 痛み "とは違う 何か別のもっと冷たい感覚。
一切のためらいもなく その対象物を破壊しようとする
残虐な意志の力のようなものを そのときはっきりと感じた。

でも ボクはまだ笑っていた。
そしてヤツの拳を握りしめたままの
太い前腕に何本も浮き出た血管を見ていた。

その全ての血管を刃で切り裂いてやりたい気分だ。

2発 3発と 間髪を容れず殴り続けてくる。
まるで当たり前のように容赦なく
そしてそれはものすごく機械的な行為だった。
さすがに もう笑えなくなった。

ヤツは ボクの隣にいた女子生徒の前へと移動していく。
静まり返った教室内に響き渡る " バシン "というその高い炸裂音が
きっと頬を平手で叩いているんだということを
後ろを振り返れないクラスの全員に教えていた。

ただ ヤツが女子を拳で殴らなかったことだけがせめてもの救いだ。



暴力的な脅威によって支配された場合
人は大抵2つに分かれるんだと思う。


恐怖のあまり服従する者たち。

そしてもうひとつは

暴力に対して反逆心を生み出す者たち。


全ての人間を暴力で100%支配することなどは到底不可能だ。
腐った大人たちがどれだけボクらを力で服従させようとしても無理だ。
誰にもボクらを支配することなどは出来やしない。

世の中に対して常に持ち続けている理由なき反逆心がバリアとなって
ありとあらゆる外圧から14歳のボクら自身を守り続けている。




1983年5月

ボクの右隣に座っている川上ナオは
3年のこのクラスのなかでは一番背が低いかもしれない。

彼女が会話のなかで時折発する「ほぉほぉ」とか「ほよよ」という
まるでDr.スランプのアラレちゃんのような独特の言い回しが
このクラスの男子生徒にウケている。
というより 割と彼女のことを好きなヤツらも多いようだ。


「あのさぁ カミウ君さぁ " 38スペシャル " って聴いたことある?」

休み時間にナオがボクに話しかけてきた。


「あぁ 去年あたり『Caught Up In You』歌ってたバンドでしょ」

「そうそう!アタシ なんか最近ハマっちゃってるんだよねぇ」

「何で今さら」


ボクはちょっと笑った。


「たまたま こないだお姉ちゃんから借りたのよ。 アタシあまりロック聴かないんだけどね 」

やがて席に戻ってきた竹内カナエも


「え。 何が?」

と会話に顔を出した。


「いやぁ 川上が最近 " 38スペシャル " を気に入ってるんだってさ」

「あぁ いいんじゃない。結構シブいけどね」

「竹内はアルバム聴いたことあるの?」


ボクは尋ねた。


「部活の子から借りたよ。最近は聴いてないけど」

「へぇ そんなにシブいんだ。 でも川上はそんなのにハマってるのか?」

「ほんだからね。アタシは『Caught Up In You』しかいつも聴かないのよ。ほほほ」

「そりゃ別にハマってるとは言わないね。普通は」

「ほら ほんなら聴いてみる? ほい」


ナオはカバンからカセットを取り出し ボクに渡した。


「・・・それにしても読みづらい字だねぇ。」

ボクにはカセットカバーの裏に小さな文字で書かれた
トラックリストが全く読めなかった。


「ほほぉ。でもあんまタイトルはアタシにゃ関係ないからねぇ。」


昼休み ボクはナオに借りた38スペシャルのカセットをウォークマンで聴いてみた。

1曲目のミディアムスローでキャッチーなメロディのソフトロック「Caught Up In You」は
去年ヒットしたナンバーでボクも何度か聴いたことはある。

でも2曲目以降は かなりサザンロックなアレンジの楽曲が並んでいた。
ボクはずっと「Caught Up In You」のイメージしかなかったので少し意外だった。
どちらかといえば この曲のほうが このアルバムの中で浮いてるような気がする。

ボクは全て聴き終えるとヘッドホンを外し
右側の席で雑誌を読んでいたナオに向かって言った。


「すんごくいいと思うよ。でもきっと川上には向いてないんじゃねぇ?」

「ほぇ? 」

「まぁ 確かにシブいロックだわ。 オレも今度借りようかな」

「ほんじゃぁ そのカセットあげるよ」

「マジで? いいの?」

「いいよ。 アタシまた家で録音すればいいから」


川上ナオは 愛嬌のある笑顔でボクにそう言った。
見慣れてくると いつも頬を赤くした彼女のシンプルな顔立ちも
何となく可愛く見えてくる。

それは別にカセットを貰ったからという訳ではないだろう。


「あぁ そういえば・・・」

ナオは 雑誌をパシンと閉じ 何かを思い出したかのようにして
笑いながらボクに尋ねてきた。


「噂で聞いたんだけどね。カミウ君って どうして先生を殴ったの?」

「うーん。 まぁ いろいろ理由はあるんだけどね」


3年になってから この話題に触れてきたのはナオが初めてだった。
でも 彼女の憎めないキャラのせいか ボクも何となく素直に答えていた。



1983年3月

マレンの叫び声が聞こえた気ようながする。
声のほうを振り返ると 真剣な眼差しに涙を湛えている彼女の姿が見えた。

さっきまで ボクの周りには何も音などしなかった。
風景がぼやけて見える まるで真空のガラスの中のような世界にボクはいた。

気付くと伊浦ナオトが左側に立っていた。
そしてマジメそうな男子生徒数名とともに
ボクのことを後ろから羽交い絞めにしていた。

ボクのカラダからは 一気に力が抜けていき
かなり強くボクのことを押さえつけていたナオトたちも
ようやくその手を緩めた。

足元には右耳当たりから血を流した担任が床に倒れている。

【 そういえば コイツのことを殴ったんだっけ 】

ぼやけた記憶には 数分前の断片的な出来事しか残されていなかった・・・



もうすぐ春休みを迎えようとしていた。
間もなく中学2年も終わりを迎える。

「終業式の前に 何かクラスで記念になるようなことをしたい」と
担任が言い出しだことになど 誰も真剣に取り組もうとはしていなかった。

コイツはあれだけ散々 ボクらに暴力を振るっておきながら
最後には" いい担任 "としての余韻に浸りたいだけなんだろう。
そんなのが見え見えだった。

【 記念になるような行事などしなくたって お前のことは一生覚えといてやるよ 】

コイツの気味の悪い顔を忘れることなんてきっと出来やしない。
もし今度 法事とかで緊張し過ぎて笑いそうになったらコイツの顔を思い出せばいい。
きっと笑いを堪えることが出来るような気がする・・・



担任は黒板の前で 明らかにさっきから苛立っていた。
クラスの記念行事に何をするかを生徒に考えてくるよう言ってたのだが
ほとんど誰も具体的な提案を出さないままで かれこれ10分くらいが経過している。


「お前は 何か無いのか?」

そうして指された生徒たちは 一様に「別に」とか「特に無いです」と
同じような発言を繰り返し続けていた。

やがて いつものように担任のリミッターが解除される。


「お前ら ちゃんと考えて来いって言っただろ!」


足早に一番前の男子生徒の席へと向かい


「本当に何もやらなくていいのか?」


と その彼のことを怒鳴り上げた。

担任はいつも必ず見せしめとして誰かを選ぶ。
そいつのことを責めることで 教室内全体を威圧しようとするのだ。


「お前 立て!」

見せしめにされた男子生徒は 仕方なく立ち上がり
殴られることを覚悟した様子だった。


ボクのなかで" 何か "が生まれた。

衝動的にボクが立ち上がろうとしかけた そのとき


「もういい加減にしてください!」

前列で立たされている男子生徒の隣に座っていた女の子が
いきなり机を叩き絶叫したのだ。

普段マジメですごく大人しいこの子とは
ほとんど会話した覚えがなかった。
だからボクは余計に驚いた。


「なんだ?」

担任はその女子生徒を睨みつけた。


「もう こういうことするのやめてください!」

女子生徒は 立ち上がりながら担任にはっきりと強い口調で言い放った。

その直後 担任は彼女の顔を思い切り叩いた。
いつものように ヤツの口元には笑みが少しだけ浮かんでいた気がする。


さっきボクのなかで生まれた" 何か "がそのとき弾けた。
心の中で破裂音が確かに聞こえたような気がする。


机を蹴り倒し ヤツのほうへ向かって駆け出す。
彼女に気をとられていた担任が こっちを振り返ろうとした瞬間
刈上げられて丸出しになっていたヤツの右耳あたりをボクは殴り飛ばしていた。

ちょうどカウンターのようにして入ったパンチに
ヤツはグラつき そして教壇にもたれ掛かりながら倒れた。
ボクの右手首にも そのときの衝撃で鈍い痛みが走った。

そのままヤツの後頭部あたりを上から何度も強く蹴りつけた。
その度に額を教壇に" ゴツゴツ "と打ち付けている。

誰かが ボクを背後から止めに入ってきたが その制止を振りほどき
両手であたまを抱え込み うずくまっている担任を繰り返し蹴り続けていた。


「パル!」

何となく遠くでそう言われたような気がした。

「パル!」

マレンの叫び声をすごく近くで感じた瞬間 ボクは動けなくなった。
他のヤツの声などは全く聞こえなかったけど
マレンの声だけは そのときはっきりと聞こえたのだ。



1983年3月

ボクが学校に行っていない間に さまざまな出来事があったようだ。
PTAの保護者会の席で今回の事件が議題に取り上げられたらしい。

でも どうやらウチのクラスの生徒の母親が
担任教師の日常的な暴力行為を非難したことで
ボクの暴力事件はうやむやにされ
恒常化された教師側の暴力行為のほうが問題視された。

後で知ったのだが ボクがキレるきっかけとなった 最後に担任に叩かれた
ウチのクラスの女子生徒の母親が どうやらPTAの御偉いさんだったみたいだ。

ボクのクラス内ではアンケートが実施され
担任の暴力行為が確実に存在していた事実が明らかとなった。
みんなボクのことを相当に擁護してくれたみたいだった。

反省文を書くことを条件に ボクは数日間の自宅謹慎を終えた。

久しぶりに教室に入ると
クラスのヤツらが笑顔でボクのことを出迎えてくれた。

マレンは普段 学校ではしないのに
このときだけは みんなの前でボクに抱きついてきた。
ボクも彼女の背中を少しだけ抱きしめた。

みんな 暴力から解放されたことを本当に心から喜んでいた。
担任の具合のことなど 誰ひとりとして気にもしていなかった。

結局 どの程度の怪我だったのかは最後までわからないままだ。
でもすでに退院しているというような話は 何となく代理の教師から聞いた。

結局 担任は 表向き" 治療中 " ということで
とうとう終業式まで学校に来ることはなかったからだ。

そして 新学期からヤツがこの学校で学級担任を任されることもなかった。



Special Forces - 38スペシャル




 1 Caught Up in You  
 2 Back Door Stranger  
 3 Back on the Track  
 4 Chain Lightnin'  
 5 Rough-Housin'  
 6 You Keep Runnin' Away  
 7 Breakin' Loose  
 8 Take 'Em Out  
 9 Firestarter  

リリース 1982年6月|レーベル A&M

70年代を代表するアメリカンサザン・ロックバンドのひとつ レーナード・スキナードのロニー・ヴァン・ザント氏の弟であるドニー・ヴァン・ザント氏を中心に結成された38スペシャル☆彼らの最大の特徴はツイン・ドラム&ツイン・ギターという大所帯のバンド編成だったことですね☆基本的にはサザン・ロックのテイスト感を重視しつつもキャッチーでメロディアスな音楽的方向性も持ち合わせていたことがロックファン以外からも支持され 80年代のロックシーンにおいて絶大な人気を誇るバンドとなりました。特に80年代に入ってからリリースされた3枚のアルバムは全てプラチナセールスとなり 中でも1982年の5thアルバム『Special Forces』はファンのあいだでも名盤とされております☆








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