【60年代洋楽ジャズの名曲】
Say It (Over And Over Again)首都高速2号線を行き交うヘッドライトとテールランプの揺らめき。
滞ることなく、なだらかに流れゆく光彩の帯を眼下に見つめながら、
コルトレーンの奏でる豊潤なサックスの色香に包まれてみる――
僕がその職種を選んだ理由――
「幼い頃に見た、羽田空港の『誘導ランプ』の淡い光があまりにもキレイだったから」
きっとそれだけのことだ。
美術系と建築系――
そのどちらを専攻すべきかでは随分と悩んだが、
結局、建築学部を選んだボクは卒業と同時に、
躊躇うことなくライティングデザイナーの道を選択していた。
ずっと考えていたんだ。
「あらゆる人々をいっぺんに感動させられるものってなんなのだろうか」と。
ようやく辿り着いたひとつの答え。
それが「星空」だ。
降り注ぐ星々は、宇宙という広大なる存在そのものを示す輝き。
自らを光輝かせる恒星たちと、その恒星の光を映し出す惑星たちとで織り成される
偶然という名の奇跡の色彩を見上げるとき、人々は個々の存在であることを暫し忘れ、
「地球」という共通概念の元に一元化される。
オランダの哲学者、バールーフ・デ・スピノザが、
その著書『エチカ』にて定義した共通概念の、
最も高い普遍性をベクトル方向に探求してみた場合、
3次元ユークリッド空間上にその共有性を突き詰めていけば、
結局、最後は「地球」へと辿りつき、やがてそこで止まる。
誰も自らを「地球人」などとは呼ばない。
けれど、無数にきらめく星空を見上げた瞬間、
僕らは確かに共通概念としての「地球人」であることに気づく。
僕がその職種を選んだ本当の理由――
それは、限りなく星空の輝きに近いであろう人工造形物「夜景」。
きっと、そんなものを作ってみたくなったからだ。
「あらゆる人々を感動させられる人工的共有物」
それはきっと、偶然という名の奇跡の灯火が、
寄り集まって地上にきらめくこの街の明かりたちなのだろう……
東側の小窓から、赤々とした輝きを纏う東京タワーを眺める。
コルトレーンの奏でる都会的な音色の余韻と、たしかにその風景は
撹拌(かくはん)するように交じり合っている。
アルクール・カットされたバカラのタンブラーに
18年もののマッカランを薄く注ぎ込むと、
そのずっしりとした重みにいくらか心地よさを覚えながら、
グラスをそっと東側の小窓のほうに透かす。
いにしえのフランス貴族たちが目にした、
いっさい不純物のないピュアクリアな風景が、
この透明なクリスタルグラスの向こう側には、
煌々(こうこう)として揺らぎ続けていた。
【2012.05.16 記事原文】
さて。本日も、まもなく黄昏時を迎えようとしてます☆
とりあえず、そんな時間帯に一人で聴きたいナンバー♪
サックスの巨匠!ジョン・コルトレーンが1962年リリースの超名盤『Ballads』から、
彼の代表的なナンバー「Say It(Over And Over Again)」をチョイス♪
個人的には、サックスよりもマッコイ・タイナーのピアノにグっとハマりますねぇ。。。
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Say It(Over And Over Again) - ジョン・コルトレーン アルバム『Ballads』 1962年 |