【Re-Edit】【90年代以上洋楽バラードの名曲】
God Will Make A Way
I chose "God Will Make a Way" of the title song from the album
"God Will Make a Way" which Don Moen released in 2003. 1983年9月13日(火)
稲村ガ崎の駅を過ぎると、江ノ電は緩やかに右のほうへとカーブしながら海岸線へと向かう。そんな江ノ電のうしろ姿を、ボクたちは線路沿いの住宅街の路地から見送った。しばらくは線路に沿って進んでから交差点を左に折れ、国道134号線へ出る。すぐ目の前には、藤色に染まりゆく波紋を岸辺へ寄せる鎌倉の海原が広がっていた。
「うわぁ! すごいキレイだね」
と、ショウカが思わず感嘆の声を海へと投げかける。――
「オレ、ちょっと次の稲村ガ崎で降りるから、みんなは帰っていいよ」
暮れゆく山影に抱かれた極楽寺駅のホームで電車を待ちながら、さっきボクがみんなにそう告げたとき、李メイがいった。
「ワタシも、一緒に行ってもいいかな?」
って。――
それを聞いて、ショウカは、
「だったらさぁ、みんなで行こうよ」
と、田代ミツオヤや小山ミチコに同意を求めた。―――まぁ、さすがにメイと2人っきりにはさせてくれないだろうとは思ってたけど。
――去年、川澄マレンの誕生日に、葉山の海で一緒に流れ星を見たあの日より、江ノ島は、遥か沖合いに淡い墨色(ぼくしょく)のシルエットを浮かばせている。鎌倉の海岸を国道と並走する江ノ電が、内陸のほうへと折れていく腰越駅手前の小動岬(こゆるぎみさき)と江ノ島のちょうど真ん中には、あまりにも美しい富士山の輪郭が描き出されていた。
「本当に、すごくキレイ」
琥珀に黄昏(たそがれ)ゆく海の向こうに、そんな幻想的な風景を見つめ、ミチコも小さくつぶやいた。
ボクたちは砂浜へとは降りず、国道沿いの歩道を歩いた。7月にマレンと見つめた七里ガ浜の海岸が、だんだんと近づいてきている。薄明の空に浮かぶ葡萄(ぶどう)色した雲の端から、筋状の光芒(こうぼう)が無数に降り注ぐ。気つけば、ボクの左隣をメイが歩いていた。
「天使のはしご、――」
ふいにメイは柔らかく、そうささやいた。
「ん?」
ボクは彼女の横顔に目をやる。まどろんだ寝息のように、穏やかな波音を湛(たた)えて揺らぐ薄紫の海を背に、メイは微笑む。
「あの光の筋はね、そういわれてるの。『天使のはしご』って」
彼女の瞳に映し出されている空を、ともに見上げてボクも微笑む。
「へぇ、なんだかいい響きだね」
「ワタシ、あの光が照らし出す場所にね、子供の頃からずっと立ってみたいって思ってたの。そうすれば、『きっと願い事が叶うんじゃないかな』って信じてたから」
そんなメイの優しい言葉の余韻に、ボクは問いかける。
「えっ、李さんの願い事ってなに?」
するとメイは、少し恥ずかしそうにはにかんだ。ボクは、そんな彼女の表情をいままで一度も見たことがなかった。
「シーナ君、――ノストラダムスの予言って知ってる?」
意表を突いたそんな彼女からの質問に、ボクは一瞬、首を傾げながらも、
「あぁ、1999年に人類が滅ぶとかなんとかっていうヤツね」
と、笑う。メイは、はにかんだままでボクを見つめた。
「1999年って、ワタシたちがちょうど30歳くらいでしょ? ワタシね、そのとき人類が本当に滅んでも構わないって思ってるの」
江ノ島の灯台に明かりが灯され、瑠璃色の海にはほんのり街灯りが揺らいでいる。
メイは灯台の光が一周するのを待ってから、途切れた言葉をつむぎ合わせた。
「――その瞬間だけは、好きな人と一緒にいたい」
考えてみれば、彼女はまだ中学3年の女の子なのだ。だから、そうしたロマンティックな願い事を持ってたからって、なにも特別驚くような話ではない。――
けれど普段、透き通るほどの涼やかさをその身に纏(まと)い、ひとりだけボクらとは違う、まるで氷の世界に住んでるようにも感じられてた彼女から、そんな言葉を聞くだなんて思ってもみなかった。
「おかしい?」
そのとき、ボクがどんな顔をしてたかはわからないけど、きっとメイがそう質問したくなるような顔だったんだろう。
「いや、ぜんぜんおかしくないよ。きっと、みんなそう思うんだろうしね」
彼女の向こう側に、七里ガ浜の海が広がっていた。
(人類最後の瞬間、いちばん一緒にいたい人、――)
ボクの口からは自然と言葉が滑り落ちていく。
「オレの願いはね、――もう一度、2ヶ月前のこの場所に戻ること、かな」
たぶんさっきのボクと同じように、メイは不思議そうな顔をして涼やかな視線を向けた。
(失ってしまったものの大切さに気づかなかったあの日に、もう一度戻ることができるなら、きっともう手放すことはないのだろう。マレンも、――マレンと過ごす人生も)
「マキコから聞いたんだけど、――もしかしたら鎌倉に転校した彼女のこと?」
メイが、静かに問いかける。
「後悔っていう気持ちってね、時間とともに消えてくもんだと思ってたんだけど、なんだか違うみたいだ。――別に大きくもならない、……けれど決して小さくもなってくれない。いつだって勝手に心を連れ戻そうとするんだ。その気持ちが生み出されてしまった場所と時間まで」
「もう暗いからさぁ、とりあえず七里ガ浜の駅に向かうよ?」
前を歩くショウカが振り返ってボクらに訊ねる。
大きな声でボクは答えた。
「あぁ、もう帰ろう」
そして小さくつぶやいた。
「――こんな場所にきてみたところで、なにも変わらない」
気づくと、メイの右手がボクの背中に、そっと触れていた。
「よかった」
そんなメイの言葉に思わず振り向くと、彼女は口元にうっすら微笑みを湛(たた)えながら
「――最後にシーナ君の悩みが聞けて」
と、いいながらボクを見つめた。
西のほうから、秋めいた夜風が海辺を吹き抜ける。
「そりゃオレにだってさぁ、悩みくらいあるよ」
そういって言葉を風に投げかけて、ボクも少しだけ微笑んだ。
【ALOHA STAR MUSIC DIARY / Extra Edition】
【2012.06.24 記事原文】
ボクは基本的には無宗教であります!
が。強いていうならカトリック系のゴシックデザインは好きです。
教会建築も絵画も彫刻もロザリオも好き!
さらに、身に着けるのは常にクロスのペンダントです☆
さて。
ドン・モーエン氏と聞いて分かる人は一般的には少ないでしょうね。
おそらく日本で知ってるとすればクリスチャン系で音楽好きな人くらいでしょう。
彼は俗にいう「クリスチャンミュージック」系SSWで御座います。
彼が2003年にリリースしたアルバム『God Will Make a Way』 ☆
タイトルソングとなった「God Will Make A Way」は、Wikiると
彼の「子供三人が自動車事故で重傷を負い、一番上の息子を亡くした」
際に作られた歌であるということ。
まぁ内容を踏まえると、
哀しみを乗り越えて、これから生きていくための道を神はきっと示してくれる!
ということでしょうか。。。
とても優しいメロディですが、そういう背景を知ると哀しさが漂っているようにも感じます。
思想や宗教を超えて、何か哀しいことがあったときに聴いてみてはいかがでしょうか?
 |
God Will Make A Way - ドン・モーエン アルバム『God Will Make a Way』 2003年 |
The title song was written for his wife's sister and her husband,
who lost their oldest son in an auto accident while three other children were seriously injured.