【ALOHA STAR MUSIC DIARY No.3】 Escape - ジャーニー
1982年8月
伊浦ナオトは不思議なヤツだ。
この当時、オールナイトニッポンをまともに聴いてたヤツは
このクラスではカレだけだ。
ボクもタモリとビートたけしがパーソナリティを勤める水曜と木曜は、
ごくたまに聴くことはあっても、せいぜい月に一度くらい。
しかしナオトは、大の中島みゆきファンだから
月曜日の彼女の放送だけは毎週エンディングまで聴いてるらしい。
中島みゆきの曲なんて、ヒットチャートに入った数曲と、去年の金八先生で、
加藤優が逮捕されたときに挿入された「
世情」くらいしかボクは知らない。
「ありゃぁ最高だったなぁ」
ナオトは独特の低い声で呟く。
「まぁ泣けたがな。」
あのシーンが、ものすごく心に焼き付いているのは確かだ。
特に護送車を追いかけてくる加藤の母親にボクはヤラれた。
ナオトはまた、中島みゆき以上にビートルズの大ファンでもある。
親戚に貰ったというギブソンのエピフォン・カジノを弾きたくて、
学校からボクの家までの、ちょうど中間くらいに位置するナオトの家に
ボクはこうして学校帰りにたまに立ち寄っている。
そう。エレキギターを持ってるのもクラスではカレくらいなものだろう。
ボクは買ったばかりのレインボーの
『闇からの一撃(Straight Between the Eyes)』
を今日はウォークマンに入れてきている。
カレの部屋のカセットデッキにそれを差し込みちょっとだけボリュームを上げる。
カレの8畳ばかりの部屋の中で、ギターエフェクトが創り出す強烈な排気音が炸裂し、
やがてビートに乗ったリッチーのギターが始まるや否や、
ナオトはさも簡単そうに曲に合わせてリフを弾いてみせた。
この曲は何といってもイントロのリズムがものすごくカッコいい。
8ビートの刻みもイカしてる。
でも、カレはスゴイ!!
ボクは早速カレにギターを教わる。
どうしても、このリフを自分で弾いてみたかったのだ。
レインボーを何度か聴いた後、ボクは彼のレコード棚で
ジャーニーのアルバム『Escape』を見つけた。
もちろんボクもこのアルバムはすでに何百回と聴いている。
でも、「Escape」と「Dead Or Alive」のイントロのリフも
どうせなら教えて欲しかったのだ。
さすがにカレはまだこのアルバムに関しては練習してなかったようだ。
「来週までにどうにか覚えておくからよ」とカレは言った。
やがて「Don't Stop Believin'」のイントロが始まる。
ボクらは二ール・ショーンの早弾きリードが鳴り響くのを二人で待ち構えていた。
Escape - ジャーニー 
リリース 1981年8月|レーベル Columbia
『Escape』は全世界で1000万枚以上の大ヒットセールスを記録した1981年リリースのジャーニー通算7作目のスタジオアルバムです☆キャッチー&ハードなロックナンバーをつなぐ付箋的な役割として、アルバム両面のラストに美しいバラードソングが効果的に配置された、まさにロックの名盤と呼べるアルバムでしょう☆特にアルバムのフィナーレを飾ったナンバー「Open Arms」は、発売から30年以上経った今でさえ各種メディアのタイアップソングに使用され、彼らの新たな時代におけるファン層を獲得しています。 |